2020年7月25日 (土)

渡された物

「これは?」
渡された紙袋には布…何らかの衣服のようなものが入っていた。
部屋に戻ってから開けるようにと言われたので、僕はその紙袋を手に家に戻っていった。

そして、今紙袋は僕の机の上にあった。
誰から渡されたのか、記憶があやふやになっていたが、僕は何かに駆られるように、紙袋の中のものを取り出していた。
「?」
それが女性用の衣服の一式であることは即に判明していた。
僕が躊躇したのは一瞬であった。
僕は立ち上がり、今着ていたものを脱ぎ去ると、その女性用の衣服を身に着けていった。
勿論、下着…パンティやブラジャーもだ。

不思議な事に、パンティを穿いてもその股間には不自然な膨らみは生じていない。
それどころか、薄布の下にはうっすらと縦筋の存在が窺われていた。
ブラジャーを着けると、胸の肉が盛り上がりカップを充たしてゆく。
それを僕は異常な事であるとは認識できていなかった。
ブラウスを着る。
男物とは袷が逆なのに戸惑うことなくボタンを嵌めてしまう。
スカートを穿くとキュッとウエストが締まり、女性らしい身体のラインが完成した。


いつの間にか鏡の前に化粧品が並んでいた。
否…鏡自体、この部屋には存在していなかったものだ。
そして…
鏡に映っているのは、誰だ?!
それは「僕」ではない!!
僕がこんな…
その顔はどう見ても「女の子」でしかない。

その「女の子」は鏡に向かうと、化粧水を手に取り、顔に塗り込んでいった。
プルンとした肌にしっとりと染み込んでゆく。
そこにはチクチクとした髭の剃り跡など一切ない…
乳液、ファンデーションと下地を整えると、アイメイクに取り掛かる。
鏡の中の「あたし」が徐々に仕上がってゆく。
最後に口紅を乗せて完成した。


…って、何であたしはお化粧なんかしたんだろう?
さっき部屋に帰ってきたんじゃなかったっけ?

その時、ドアチャイムが鳴った。
誰?
時計を見る。
やだ、もうこんな時間っ!!
彼だ♪
「彼」って?
彼はあたしの彼氏…恋人じゃない♪
そう、これからデートだった♪
あたしはカーディガンを羽織るともう一度鏡で身だしなみを確認する。
OK、今日も可愛わよ♪
あたしはハンドバッグを手に彼の胸に飛び込んでいった。

2020年4月29日 (水)

鯉のぼり

鯉のぼりが風に揺らいでいた。
 
今更、納戸の奥から取り出す気はない。
男の子のいない筈の家の庭に鯉のぼりが飾られているのを、隣家の人々はどう思うだろうか…
そう…この家にはもう、男の子は居ないのだ…
 
その日、高熱を発した息子を掛り付けの病院に連れて行くと、ここでは対応出来ないと、都内の大学病院に移された。
伝染病の類いではないと言われたが、息子は集中治療室で家族の面会も断られてしまった。
3日後に、病状は安定したからと通された病室に居たのは「娘」と変わり果てた我が子だった。
 
医者からは元に戻る事はないと告げられた。
息子…娘の体調が回復すると、月イチで経過観察の為に通院するように言われて退院となった。
突然、見知らぬ女の子が出入りするようになると、近所に何を言われるか知れないと、早々に引っ越す事にした。
 
娘はかなり早い段階で気持ちの切り替えを終えていたようで、引っ越し先で転入した学校では、女生徒としてかよい通していた。
 
 
 
「ねえパパ、もう鯉のぼりの季節なのね♪」
退院後はわたしの事を「父さん」ではなく「パパ」と呼ぶようになっていた。
「うちにもあったでしょ?もう、出さないの♪」
どう答えるべきかと逡巡し…
「うちには男の子がいないからな…」
と呟いていた。
「じゃあ」
と娘は言った。
「じゃあ、男の子が産まれたら、もう一度出してくれる?」
 
娘は大きく膨れたお腹を愛しそうに撫で擦っていた。

2019年11月21日 (木)

小ネタ

竜宮城から戻ってきた浦島太郎。
もう一度竜宮城に行きたくて、玉手箱を開きます。
出てきた煙が太郎を包み込みました。
「ぐあ゛!!」
猛烈な痛みが太郎を襲います。
それこそ、全身の骨を砕かれ、内臓を捏ね繰り廻されるような…
そして、その後に襲ってきたのは例えようのない快感でした♪
「んあ、あああん♪」
太郎の口から溢れたのは、女のような…
否、それは女の喘ぎ声そのものでした。


煙が晴れた後には、一体の人魚が残されていました。
彼女こそ、浦島太郎その人でした。
人魚は陸の上を歩くことは出来ません。
太郎はこの先の一生を水の中で暮らすしかありません。
太郎は浜を這い進み海に入ると竜宮城を目指して潜って行きます。

竜宮城では乙姫様が太郎の戻りを待っていました。
変わり果てた太郎の姿を見ても乙姫様は驚くことはありませんでした。
乙姫様は太郎を抱き締めて言いました。
「今度は貴女にもオンナの素晴らしさを教えてあげられますね♪」
太郎は飽きるまで乙姫様を抱いて過ごした酒池肉林の日々を思い出しました。
今度は自分が抱かれる番だと思うと、一気に下腹が疼きだすのを感じていました♪

 

2019年3月30日 (土)

お兄ちゃんの花嫁


「結婚することになった…」
晩御飯の食卓でお兄ちゃんが突然そう言った。
「おめでとっ!!♪」とママは喜んでたけど、お兄ちゃんはそれほど嬉しそうじゃなかった。
「いつ?」とパパ
「突然だけど、明日なんだ。」
その言葉にパパとママが見合わせたまま固まっていた。
「礼服とかの用意はできてるから普段着のまま来てもらえば良いことになっている。」
「そ、それは余りにも突然だな。」
「僕は準備に時間が掛かるから、今晩は式場に泊まることになっている…」
「で、相手は誰なんだ?」
「来てもらえばわかるよ。父さん達もよく知っている人だ。」
と、お兄ちゃんは「ごちそうさま。」と封書を置いて席を立った。

「なんでシンプがお前なんだ?!」
パパがそれを見て叫んだときにはもうお兄ちゃんはいませんでした。
「新夫」のどこがいけないんだろう?と不思議に思ってたけど、翌日にはそれが「新婦」ということだとわかった。
パパやママと一緒にあたしもドレスを着て、通された先には純白のウェデングドレスに包まれたお兄ちゃんがいた。
「お兄ちゃん綺麗♪」
とあたしが言うと、あたしの頭にパパのゲンコツが落ちてきた。
パパは花嫁になったお兄ちゃんを「許さない」と言ってたけど、披露宴の最後にお兄ちゃんから花束を受け取った時には涙がしっかりと落ちてきていた♪

「今日からはお兄ちゃんではなくて、お姉ちゃんて呼んでね♪」
とお兄…お姉ちゃんは幸せ一杯のブーケをあたしに手渡してくれた♪

2019年3月24日 (日)

テスト

「これが試験問題?」
目の前に置かれた紙には
『あなたに性別を書いてください』
とだけ書かれていた。
俺は試しに「女性」と書いてみた…
 
試験終了ベルが鳴った。
紙が回収されてゆくと、ようやく周囲を見渡す余裕ができた。
(?)
あたしは何か違和感を感じた。
確か、この試験場は殆どが男性だったと思っていたのに、
今見ると、男女の比率がほぼ半々みたいだった。
(気のせいかもね?)
あたしは立ち上がると試験会場を後にした。

2018年11月 4日 (日)

告白

僕は頭の中がまっ白なまま…気が付くと神社の階段を上っていた。
自分の中の滓のような勇気を掻き集めて、ようやくの事、片思いの女の子、乃亞さんに告白した結果…
「あんたキモいから絶対に付きまとわないで頂戴!!」
との冷たいお言葉。

僕は頭の中がまっ白になって…
気が付くと神社の階段を上っていた。
当然の事ながら足下は覚束無い。
あと数段という所で踏み外し、一気に転げ落ちていった…
 
 
 
 
目覚めたのは病院のベッドの上のようだった。
あれだけの高さを転げ落ちたにも関わらず、身体に痛みはなかった。
が、何か違和感があった。
ぐるりと胸の下側を締めつけられていた。
腰の回りのベルトも高めに絞められている?
否、どうやらズボンは穿いていないようだ。
何がどうなっているか…今の僕は動けない訳ではない。
なら、この目で確認するのに越したことはない♪

掛かっていた毛布を剥いで、上半身を起こした。
(?!)
先ず目に入ったのは、紺色の幾つかの折り目の付いた布地が脚を被っている。
連想するのは「スカート」…
まるで女子の制服のような…
と、僕は胸元に目を向けた。
白い生地だが、ワイシャツより滑らかで光沢があるようだ。
確か、女子の制服のブラウスがこんな感じだった。
そして、女子はこの下にブラジャーをしておっぱいを固定している…

僕が感じていた胸を締めつけていたのがブラジャーであれば…
はたして、僕の胸は僅かではあるが膨らんでいた。
胸に手を宛て、掴んでみた。
ブラジャーのカップ越しに指先が肉塊に沈んでゆく。
と、同時に僕の胸では(揉まれている)という感覚があった。

鏡はないのか?
部屋の中を見ると入り口脇に洗面台があり、鏡もあるようだ。
僕はベッドを降り、鏡の前に立った。
(…乃亞さん?)
鏡に映っているのは、僕が告白した想い人その人だった。
(何で僕が乃亞さんになってるんだ?!)

そこに女性の声がした。
「乃亞、もう起きて大丈夫なの?」
彼女の母親だった。
「っあ、うん。大丈夫。」
ここで変な事を言って騒ぎになるのも嫌なので、僕はそう答えていた。
当然だが、そう答えた僕の声もまた乃亞さんの声になっていた。
「クルマを回してくるから、ここで待っててね。」
と病院の入り口まで僕を連れてくると、母親は駐車場に向かった。

(?)
受付のカウンターの上に今日の日付けが掲げられていた。
その日付けは僕の知る今日の日付けと違っていた。
(今日は昨日?)
確か乃亞さんは昨日、気分が悪くて早退したと聞いていた。
病院に寄っていたのか…
このままでいけば、僕は明日僕自身に告白される事になる。
もし、僕が僕の告白を受入たらどうなるのだろうか?

それ以前に、僕という存在が同時に二人いることになる。
そんな事があり得るのだろうか?

などと考えているうちにクルマは乃亞さんの家についていた。
「振り返すといけないからベッドで寝てなさい。」
と乃亞さんの母親に言われ、僕は乃亞さんの部屋で制服からパジャマに着替え、乃亞さんのベッドの上に横になった…
 
 
 
気が付くともう次の日の朝だった。
あわただしく学校に向かう仕度をした。
下着を換え、制服を着て、髪をとかす。
朝食のトーストと目玉焼きを食べ、歯を磨き、リップを塗った。
「行ってきます。」
と、いつものように家を出た…

(いつものよう?)

これは乃亞さんの日常であって、僕自身のものではない。
何故か僕は乃亞さんがするように朝の仕度をしてしまっていた。
(肉体が覚えている…ということなのだろうか?)
友達に声を掛けられ、
「おはよう♪」
と返していた。
勿論、僕の友達ではなく乃亞の友達の女の子だ。
僕が意識しない所では肉体が勝手に反応してくれているようだ。
教室に入り、乃亞さんの席に座った。
見ると教室の片隅で「僕」が頻繁に僕=乃亞さんを窺っていた。
(大丈夫。君の告白にはちゃんと応えてあげるから♪)

とは思ってはいたが、本当に僕にあの時の乃亞さんと異なる言動ができるのだろうか?
放課後が近づくにつれ、そんな不安がどんどん大きくなってきた。

授業は何事もなく終わっていった。
「乃亞、帰りに寄って行かない?」
千鶴に声を掛けられた。
このまま「僕」と会わずに帰ってしまうこともできるのだ。
が、それでは乃亞さんに振られたことと同じで「僕」は神社の階段を転げ落ちてゆくことになるのだろう。
「ゴメン。ちょっと用事があるんだ。」
そう言って僕は乃亞さんの鞄を持ってあの場所に向かった。

そこでは「僕」が待っていた。
「あんたキモいから…」
気を抜くとあの台詞が口を吐いて出そうになるのを押さえ込み、
「そうね、それも良いかも。」
と何とかそう答えていた。
「じゃあ、一緒に帰ろうか♪」
と「僕」が満面の笑みを僕=乃亞さんに向けた。
僕は断り切れずに彼に手を引かれ、歩き始めた。

やがて、あの神社の前にきた。
「ねえ、記念にお参りして行かない?」
と、彼が階段を上ろうとする。
「ダメっ!!」
俺は叫ぶように止めた。
「今日一日は階段は使わないで…」
「何で?」
と言いつつも彼は神社に上る階段の前を通り過ぎてくれた。
これで「僕」が階段を転げ落ちることはなくなった。

(過去が変わった?)

僕は乃亞さんに振られて、神社の階段を上り、そこから転げ落ち、僕は乃亞さんになった。
この「僕」はもう過去に戻り乃亞さんになることはない。
「僕」は「僕」のまま、未来を歩き始めていた。

なら、この僕は何者なのだろうか?
確かに肉体は「僕」の想い人の乃亞さんだが、その中身は僕なのだ。
そんな僕=乃亞さんを「僕」は愛し切れるのだろうか?
それ以前に、僕が「僕」自身を受け入れられるのだろうか?
「ねぇ♪」
僕…あたしは「彼」を呼び止めた。
「なに?」
立ち止まり、振り返った彼にあたしは抱き付いた。
彼を見上げる。
「ねぇ、キスしてくれる?」
あたしはそのまま瞼を閉じた。
恐る恐るといった感じで彼の唇があたしの唇に触れた。
彼を抱くあたしの腕に力が籠もる。
舌を伸ばして、彼の舌に絡めた。
彼は拒絶することはなかった。
彼もまた、しっかとあたしを抱きしめた…

(大丈夫。あたしはちゃんと乃亞としてやっていけるわ。)

あたしは彼の抱擁に身を委ねていた…

2018年8月14日 (火)

異世界

異世界への入口はどこにでもあった。
しかし、その存在を知る者は殆どいない。
なぜなら、その存在を知った者はその場で異世界に取り込まれてしまうからだ。
 
そう…その路地を曲がったところに♪
 
 
 
あっ…
薄暗がりの路地を曲がったところで僕は躓いてしまった。
なんとか転ぶのだけは堪えたが、次の瞬間…
僕は異世界に居ることに気付いた。
 
そこが「異世界」だということは疑いようもない。
街中を歩いていた筈が、僕のまわりには見知らぬ木々が鬱蒼と繁っていた。
夜中の筈が、燦々と太陽の光が照りつけている。
その太陽が二つに見えたのは目の錯覚ではなかった。
 
そして僕自身の姿…
RPGのキャラクター然とした服になっている。
腰には剣が提げられていた。
冒険者…否…正確には女冒険者だ。
胸当てはその下にあるもので押し上げられていた。
胸元を覗き込むとくっきりとした谷間が確認できた。
お腹の周りには着衣はなく、かわいらしい臍の穴が覗いていた。
太腿を剥出しにする半ズボンの股間には、当然のように親しみのあった膨らみは存在しない…
ショートブーツにつながる脚はカモシカのように細く、白く弾力のありそうな肌には脛毛などはない。
 
カサリ
と草葉の擦れる音がした。
見ると、そこに見たこともない小動物がいた。
「?」
その小動物は僕を見返していた。
「小動物やない。ワシにはルータンという名前があるんや!!」
そいつが喋った?
「ワシは勇者の案内人や。そこいらの魔法少女のペットとは格がちがうんやで!!」
どうやらこいつは僕の頭の中が読めるらしい…
「だから、ワシはルータンだと言っているだろう?」
「ん?ああ…で、そのルータン君は一体僕に何のようがあるんだい?」
「なんや、僕っ娘かいな。」
「心が読めるなら僕が本当は男だってことも知ってるんだろう?」
「当然やがな♪だからその姿で僕、僕言うのに違和感があると指摘してるんや。」
「あたし…って言うのか?僕には無理だよ。」
とは言うものの「あたし」って言った時、それは今の僕の声に合ってたのは確かだ。
「要はあんたが自分のことを女だと認めることができれば自然と言えるようになるわな♪」
 
ルータンはいつの間にか僕の肩の上に昇っていた。
「で、ワシは勇者の案内人と言ったやろ?これからあんたが一人前の勇者になれるよう指導してやろうってことやな♪」
「僕が…勇者?」
「だからそんな格好をしてるんやろ?ワシがここに呼び出されたのもあんたが勇者の卵だからに他ならんのや!!」
「別に僕は好きでこんな格好をしてるんじゃないよ。気が付いたらこの姿でここにいたんだ。」
「なら、あんたは勇者になりたくないんゆうんやな?」
「そもそも僕は元の世界に戻りたいんだ。」
「そか…勇者になりたくないんか…」
ルータンは少し考え込んでいるようだ。
「ルータン?」
と僕が声を掛けると、
「仕方なかか…」
と力なく呟いていた。
「本来であれば勇者となって魔王を倒したのち、王様より与えられる望みを叶える魔法の水晶の力で元の世界に戻すんやが…」
「今戻れるなら、即にでも戻りたいな。」
「ワシに出来んは元の世界に戻すだけやからな。」
「お願いします!!」
 
僕がそう言うと、ルータンは呪文のようなものを唱え始めた。
と同時にクラクラと眩暈がし始めた。
 
 
 
プアッ!!と警笛の音…
自動車の走り去ってゆくエンジン音…
「ケイコ、大丈夫?」
と女の子の声…
 
目蓋を開いた。
そこはもう異世界ではなかった。
普段通りの街の景色がそこに広がっていた。
が…僕は元の「僕」ではなかった。
「どうしたのよ?ぼーっとして♪」
と女の子が僕の顔を覗き込んできた。
僕は本来の啓吾という男子ではなく、啓子という女の子になっていた。
僕は生まれた時から女の子だったことになっていた。
 
僕はもう一度異世界に行き、本来の自分を取り戻したかったが、異世界への入口はなかなか見つからなかった。
 
「僕」が放り込まれたあの場所にも何回も足を運んだけど、今もって僕…あたしは異世界に行けていない。
そう…時は冷酷にも、あたしを「女の子」であることに馴染ませてしまう。
もう「男」だった時の自分を思い出せない…
「どう?諦めはついた?」
と彼が声を掛けてきた。
あたしはついに首を縦に振った。
それは、長い間保留していた彼のプロポーズへの返事でもあった。
 
異世界への入口はどこにでもあった。
しかし、その存在を知る者は殆どいない。
なぜなら、その存在を知った者はその場で異世界に取り込まれてしまうからだ…

2014年8月 7日 (木)

RPG

電車の車窓を赤く燃えているような塊が過っていった。
「翼竜め。とうとう居場所を突き止めたか!!」
俺の隣で携帯ゲーム機を手にした男が呟いていた。
「先ずは防御結界が必要だな。グライツ、頼むぞ。」
男がそう呟くと、男を挟んで俺の反対側にいたサラリーマンが立ち上がった。
一瞬後、彼の服が魔導師のローブに変わっていた。彼は手にした杖を掲げ呪文を唱え始めた。
が、一瞬遅かったか、頭上を掠めた翼竜の火焔弾が電車の屋根を吹き飛ばしていた。
「ドワーフ達。時間を稼いでくれ!!」
すると、吊革に掴まっていた人々が男女を問わず小柄で筋肉質のドワーフになっていた。
斧やこん棒を手に、半裸のドワーフ逹が車両の後方に向かって走ってゆく。
そのまま、手にした武器を翼竜に投げつける。
翼竜が怯んだ隙に、どうやら結界が完成したようだ。

「メルン、ラキア。行け!!」
俺の向かい側で不安に見詰め合っていた女子高生が、奴の呟きに反応して立ち上がった。
セーラー服が露出度の高い女性用防具に変わる。素足にサンダルを履き、手には弓矢が握られていた。
メルン、ラキアとなった二人は左右の椅子に上がり、弓を引くと慎重に狙いを定めた。
ブン!!
と矢が放たれた。
白銀の矢は翼竜の羽根の付け根に突き刺さった。
翼竜が叫び、高度を落とす。羽ばたきが止まっていた。
が、今だ仕留めた訳ではない。
翼竜は群がって来るドワーフ逹を片端から払い退けている。
その体力は尽きる事がなさそうだ。
「フィレーネ。お前が止めを差してこい!!」
奴の目が俺を捉える。
(つまり、俺がフィレーネってか?)
俺は無意識のうちに立ち上がっていた。
服が、メルン逹と同じ防具に変わる。勿論、女性用だ。
俺の肉体も女になっていた。胸当てを押しあげるように乳房が盛り上がっていた。
剥き出しの腕は贅肉もなく、細くしなやかだ。(が、筋力は高まっているようだ)
両手に刀が握られていた。俺=フィレーネは軽々と刀を振り回すと、翼竜に向かって走りだしていた。

みるみると翼竜が近付いてくる。
「はあーーーっ!!」
と叫ぶ声は、その姿に似つかわしい美しい女声だった。
俺はジャンプしていた。
それまで俺がいた場所を翼竜の尾が薙ぎ払っていた。
飛び上がっていなければ、まともに一撃を受けていただろう。
そのまま空中で体を反転させる。
俺の目は一瞬たりと翼竜から離れることはなかった。
俺は翼竜の即脇に着地していた。
そのまま刀を水平に旋わす。
翼竜の脚の腱を切り裂いていた。
翼竜はバランスを崩すが振り回される尾の力は衰える事がない。
飛び退き、間合いを取る。
翼竜が俺を睨み付けていた。

翼竜の動きが一瞬止まった。
メルン逹はその時を待っていたかのように第二射を放っていた。
それぞれの矢が翼竜の目玉を貫いていた。

翼竜が咆哮する。

今を逃してはならない。
俺は翼竜の懐に飛び込んだ。
短刀で翼竜の喉を切り裂いた。
激しく血が飛び散る。
翼竜の動きが鈍る。
(心臓の位置は?)
俺の脳裏には翼竜のスケルトンが浮かびあがっていた。
心臓の位置、それを守る胸骨の並び、その隙間の場所が翼竜の胸にマーキングされる。
俺は両手で長剣を構えると、真っ直ぐにマーカーに突き立てていった。

切っ先が翼竜の心臓に届き、突き破った。
刺した場所から、一気に血が噴き出してきた。
俺はその血を盛大に浴びていた。
「俺」の意識は生臭さに閉口していたが「フィレーネ」は翼竜を倒した事を実感し喜びに溢れていた。

(アリエナイ!!)
俺はフィレーネとしての歓喜を圧して心の底から叫んだ。
翼竜が現れるなど、ゲームの世界の話でしかない筈だ。
人々が変身して戦うなど、現実世界にあってはならない!!

 
俺がそう意識したのがきっかけかは定かではないが、目の前に倒れている翼竜の姿が霞んでいった。
と同時に、翼竜に破壊された施設が次々と元通りになってゆく。
遅れまじとドワーフ逹が車両に戻る。
吹き飛ばされた屋根が復元されると、ドワーフ逹は姿を消し、いつもの車内の風景が戻っていた。

!!っ。それを眺めている「俺」はまだ車両の外にいた。
破壊された箇所は修復され、ドアも閉じられている!!
電車は動き始めていた。

俺は線路上に取り残されてしまった。
ファーン!!
と遠くから警笛が近づく。次の電車がやってきていた。
俺は慌てて線路脇に避ける。

ガシャッ!!

耳慣れない音がした。
刀の鞘が線路脇の壁に触れたのだ。
(刀?)
俺の腰には大小二本の刀が差されていた。
(変身が解けていない?)
俺は胸元を覗き込んだ。
そこには、膨らんだ胸と、胸に押しあげられた胸当てがある。
俺は女性用防具をまとった「フィレーネ」の姿のままであった…

2014年4月22日 (火)

海外支援

わたしが学校に行けない理由は、「女の子だから」。
アフリカ系女の子のドアップの写真とこんなコピーの入った広告があった。

 
小さな文字で、貴男の支援が必要です。と続いていた。
30才の男性なら、10才の少女3人を男の子にして学校に通わせることができます。貴男の支援が必要です。性の対価交換をしませんか?

海外支援機構とあったが、連絡先などは何も書かれていない。
何かの冗談かとも思ったが、女の子だからって学校に行けないって事には憤りを感じていた。

 

《ご賛同いただけるのでしょうか?》
どこからともなく声が聞こえた。辺りを見渡したが、それらしい人物の姿は見えなかった。
《貴男の脳に直接語り掛けています。返事も声に出さなくて大丈夫です。》
SFか何かにあるテレパシーってやつか?幻聴の一種かも知れない…
《貴男方からすれば信じられない技術ですが、我々はこれを日常的に使っています。
 話を戻しますが、少女逹の望みを叶える手助けに協力してもらえないでしょうか?
 貴男も憤りを感じていたでしょう?》
確かに、彼女逹が可哀想だとは思う。しかし、性を交換するなんてこと本当にできるのか?
《問題ありません。これも、我々が日常的に使っている技術です。試しにやってみませんか?》
試しか…なら、やっても良いかな?
《ご協力感謝致します。早速、性を交換させていただきました♪》

 

 

あたしは、まだその広告を見ていた。
何をそんなに好き好んで学校に行きたい訳?それより遊んでた方が楽しいじゃん♪

って、何であたしはこの広告の前に立っていたんだろう?
何か引っ掛かるモノを感じたが、あたしは女の子の広告から視線を引き剥がした。
あたしはその広告に背を向けて歩き出す。ハイヒールを鳴らし、雑踏の中に紛れてゆく…

2014年1月28日 (火)

僕の兄貴

僕の兄貴は燃える男だ。
「気合いだ~!!」
と正拳突きを連発する。

僕の兄貴は萌える男だ。
「気合いだ~♪」
とオタ芸に磨きを掛ける。

僕の兄貴は萌えられる男の娘だ。
「キアイって?」
とネイルに磨きを掛けている。

僕も気合いを入れて胸のサラシを締め上げる。
僕が女の子だって事はまだまだバレていないよ♪

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