2007年2月14日 (水)

帰還

最強の剣を隠しておいた場所は未だ荒らされていなかった。
覆いの為に積み上げた岩塊には草が根を下ろしていた。俺が小刀を岩の隙間に差し込むと岩塊は覆いの役目を終え、崩れていった。
中には俺が隠した時と変わらずに俺の荷物と剣の鞘が置かれていた。が、最強の剣だけはその姿を失っしていた。

俺が女になっているのは最強の剣を手に入れたための代償であった。この剣を抜いた途端に俺の身体は女に変身してしまうのだ。しかし、剣を鞘に戻せば元の姿に戻れた。
が、肝心の剣が消えてしまっていた。俺はもう男には戻れないのだろうか?俺は崩れるようにしてその場にしゃがみ込んでしまっていた。
「それは姫の恋人の遺品なのでしょうか?」振り向くとそこに吟遊詩人が立っていた。「な、何でこんな所にいるのよ。」奴は俺の問いには答えず、いま一歩近付き俺の前に屈み込んだ。「涙に暮れる姫もまた美しい。」そう言って俺の頬を伝う滴を拭った。
俺は自分が泣いていた事にさえ気付かなかった。「ほっといてよ!」と奴の手を払う仕草まで俺は女になってしまっていた。
吟遊詩人は立ち上がり、後ずさった。俺の手に小刀が握られているのに気が付いたからだ。「皆の所には必ず戻るわ。だから、今は独りにしておいて。」そう言って俺の服を胸に抱えた俺は、どう見ても恋人を失った女の姿にしか映らないだろう。

陽も暮れかけていた。俺は荷物をまとめ、中身のない剣の鞘を持って街に戻った。宿の部屋で汚れた服を着替え、泣き腫らした目が目立たないように化粧を整えた。階下の酒場は賑やかにざわめいていた。
酒場のドアを開けると、そこには見知った男達の顔があった。「み、みんな…」俺が絶句していると、「今宵は私が席を戴いてもよろしいですかな?」「異議なし。」と男達。吟遊詩人が俺の隣に座り、いつもと同じ宴が始まった。

部屋に戻り、男の俺の荷物を解いてみた。あの時のままの品々が床の上に広がった。そこにないのは最強の剣だけであった。俺は鞘を抱き締めた。
この中に収められていた剣のことを思うと胸が熱くなる。ドクリと鞘が脈動した。いや、それは鞘の中に存在しているモノだ。俺は鞘を逆さにして中のモノを取り出そうとした。何度か振ってみると、コトリと落ちてきたモノがあった。干からびた木の枝のようにも見えた。手に取ると心なしか温かみがあった。
以前、どこかで同じような温かみを感じたことがあった。そう。ドラゴンの前で最強の剣の把に触れた時だ。剣の脈動に俺の意識が同調し、光に包まれると最強の剣は俺のものとなったのだ。
俺は枯枝に気を送ってみた。ピクリと身震いしたようだ。干からびたそれには水分が足りないのだろうか?しかし、水を取りに戻れば吟遊詩人が必ず怪しむ。そこで俺は口の中に溜めた唾液を垂らしてみた。
水分を得た枯枝は表面の滑らかな棒になった。良く見ると最強の剣の把の面影がある。「もしかして、お前は最強の剣なのか?」棒はYESのつもりか、俺の手の中で身震いするのだった。

鞘の中に棒を押し込んでも、俺が男に戻ることはなかった。しかし、希望はある。剣が元の姿を取り戻す事ができれば良いのだ。俺は荷物の底に棒を隠し、鞘を恋人の形見と称して刀身のないまま背中にくくった。

「姫」の一行は獲物を求めて、再び旅を再開した。

2007年2月10日 (土)

休日

俺が女の姿で過ごすようになって大分経つ。
俺が女になっているのは俺の意志ではない。俺の手に入れた最強の剣に付いていた代償のせいだ。この剣を抜いた途端に俺の身体は女に変身してしまうのだ。剣は抜いたままとある所に隠してある。俺が男の姿を取り戻すには、そこに戻らなければならない。俺はいつになったらそこに戻れるのだろうか?

今日は狩りを休みにしている。俺の身体は見た目だけではなく、女としての機能を全て備えていた。妊娠することも可能であり、出産すれば乳房から母乳もでてくるのであろう。しかし、その前提として男との性交が必須条件となる。
俺の意識は男のままであったが、既に言動は女のものになっていた。男と接する時には、相手を男として意識してしまう。
格好良い男の股間が逞しく膨らんでいるのを見て、己の股間を潤ませたのも一度や二度ではなかった。最近では夜中に突然たかぶりを向かえ、自らの指で治めることもある。
そんな事のあった翌日は男達が異様に興奮しているのが感じられた。俺が屈強な男達の集団の中にいる唯一の女であることを思い出させる。

このままで良いのだろうか?
俺は自問してみた。今は良い。今は彼らも自制し、牽制しあって大事に至ることはない。しかし、ひとたびこのバランスが崩れたらどうなるのだろうか?一人、二人であれば何とか切り抜けられるだろうが、集団で来られれば防ぎようもあるまい。
そして妊娠でもしてしまえば、剣を戻しても男に戻れなくなるのではないだろうか?

「どうかしましたか?姫♪」声を掛けてきたのは吟遊詩人だった。
「浮かない顔をされていますね。」
うるさいわね!と退けようとしたが、そもそもこの男が俺に付きまとうようになったのは男の俺を探していたからだった筈だ。「いつまであたし達に関っているつもりなの?最強の剣の話しはどうなったの?」
「姫達とは話が尽きるまでご一緒させていただきたいと思っています。もちろん、最強の剣の方も諦めてはおりませんよ。まあ、最強の剣を手にしたという男の件はその後消息がつかめていませんのでガセだったかもしれません。噂では、その男が持ち去ったと言われていますが実は最強の剣はまだそこに残っているとの噂もあります。」
どういう事なのだろうか?ドラゴンは最強の剣は俺のものと交換と言っていたが、俺の持っていた剣は他の剣と一緒に床の上に転がしておいたはずだ。それを最強の剣と称するのなら、あの洞穴に行ける程度の男であれば持ち帰れない筈もない。
俺は俺の最強の剣の安否が気になりだしていた。体調は万全ではないが、即にでも駆けつけたかった。幸にも今回の獲物には相当の懸賞が掛けられていたので男達がしばらくここで遊んでいても問題はない筈である。俺は旅支度をして男達に言った。「あたしはちょっと旅行をしてくる。好きにしてくれていいが、絶対にあたしの跡を付けて来るなよ。」一人でも供を付けさせてくれと懇願されたが、俺の細身の剣を残し必ず帰って来ると誓わされてようやく納得してもらった。
街の外れで用意しておいた馬に跨る。あれだけ言い含めても追い掛けて来る奴は必ずいる。俺は街道を真っすぐに疾していったが、最強の剣には直接向かわずに追っ手をまくことを第一に馬を駆った。

女の身体が軽いのか、馬は思った以上に走ってくれた。しかし、これまでいろいろと回り道はしたが隠し場所からは離れる一方だったので、いくらとばしても1日や2日で走破できるものではない。第一、俺自身の身が保たない。
夜には宿を求め、ベットに横になる。

脳裏に残してきた男達の顔が浮かぶ。
俺の股間が潤んでいた。

狩り

俺の後を屈強な男達の集団が付いてきていた。別にパーティーを組んだ訳ではない。男達が勝手に後を付けてくるのだ。俺が本物の女であれば気分も良くなるであろうが、俺が女になっているのは俺の意志ではないのだ。

俺の手に入れた最強の剣には困った代償が付いていた。この剣を抜いた途端に俺の身体は女に変身してしまうのだ。今は訳あって剣を抜いたままとある所に隠してある。俺はそこに戻るまでは女の姿でいなければならない。
女の俺はかなりの美貌の持ち主だった。加えて狩人としても腕が立つとあれば荒くれ男達を魅了せずにはいられない。俺は男であるから男に言い寄られても嬉しくはない。ついつい冷たくあしらってしまうが、それがまた良いらしい。
こいつらが俺の正体を知ったらどんな顔をするのだろうかと思う半面、正体を知られた後の俺がどうなるのかと考えると次第に剣から足が遠のいてゆくのだった。

「姫」と男の一人が声を掛けてきた。「またあいつが来てますよ。」あいつとは自称吟遊詩人の男である。「やあやあ皆さんこんにちは。」と疎まれているのも気にせずに近付いてきた。「今日は姫に良い話しを持ってきたのですよ。」いつの間にかこの男も俺のことを「姫」と呼ぶようになっていた。「この先を西に行ったところに、厄介な奴が居るそうですよ。懸賞もかなりの額だそうです。」「で、どう厄介なのかも情報を得ているのだろう?」「もちろんです。」とどこから仕入れてきたのか、詳細なデータが彼の口から澱みなく流れでてくる。「何でそこまでするんだ?お前は狩人でないから分け前もないんだぞ。」と聞いてみた事がある。彼は「姫の活躍を伝えれば、それだけで金になる所もあるんです。もちろん私の方で多少の脚色は付けさせてもらっていますがね♪」と笑って答えていた。

獲物は6匹いた。やはりリーダー格の奴が最も手ごわそうであった。雑魚はあいつらが対応してくれると判っていたので、俺はボスを倒す算段を練った。が、ボスの脇にもう一匹離れずにいる奴がいた。どうやら軍師らしい。吟遊詩人の情報にはなかった奴だ。俺は隣の男に耳打ちした。「わたしはボスに向かうと見せ掛けて隣の奴をやる。その間ボスを牽制しておいてくれ。」俺は奴らの前に躍り出ると、ボスに向かって突き進んでいった。

「今回は俺が一番だな?」街に入り獲物を換金すると、酒場に乗り込み祝宴が始まる。男達は誰が俺の隣に座るかを協議する。その時の狩りでの功労者が選ばれる事が多い。今回は俺の援護をし、ボスを倒してのけた男がすんなりと決まった。
酒が注ぎ足され、気分が良くなると多少の事には厭わなくなる。男の手が俺の肩に廻される。その暖かさに気分が和らいでゆく。俺は女のように男にもたれていた。「姫、今回の俺はどうでした?」「あぁ、良くやってくれたよ。」「じゃあ、ご褒美を戴けますか?」俺は男を見上げた。これは最近の祝宴での恒例行事になりつつある。俺は男の頬にキスしてやった。

女の身体で過ごしていると、言動も女らしくなってくる。祝宴の翌日は休息日と決めていた。俺はスカートを履き、化粧をして街を散策していた。店先に並ぶアクセサリーの美しさにしばし心を奪われる。目に止まった髪飾りを頭に当てて鏡を覗き込み、自分に似合うか確認した。
その姿は既に女としてなんの違和感も感じさせていない。俺は自分自身がここまで女に成り切っている事に気付くことはなかった。
「姫」と声を掛けてきたのは吟遊詩人だった。「よろしければ、その辺りでお茶でもご一緒しませんか?」特にする事もなかった俺は「えぇ♪」と返事をしていた。

2007年2月 9日 (金)

俺は最強の剣を手に入れた。だが、その為に払った代償は大きかった。

俺は獲物を前に街道を大きく外れていった。俺は最強の剣を持っているが、今使えるのはもう一本の細身の剣しかない。俺は死角を探すと最強の剣を抜き、そのままそこに隠した。俺は荷物の中から防具と女物の下着を取り出した。
獲物を前にしてふしだらとは言うな。最強の剣を抜いた途端、俺の身体は女になってしまうのだ。身体に合った服や防具を着けるのは戦士の常識である。脱ぎ終えた服と荷物も隠し、細身の剣を持って立ち上がった俺は誰が見ても疑いのない「女」狩人だった。
俺は剣を抜き獲物に迫っていった。女の身体では男の時のような力押しはできない。地形を読み最も俺が有利な体勢を作り上げる。そして細身を構えて獲物の前に躍り出る。敵は力があり、男の時の俺であれば互角に打ち合えるのだが、今は女の身体で剣も頑丈にはできていない。俺は敵の攻撃を浮け流し、かいくぐり、敵の急所に肉薄してゆく。そして細身の剣を一尖させると、動きを止められた敵がどうと倒れていった。

パチパチパチと手を叩く音と共に若い男が現れた。「いや~素晴らしいですね。ほれぼれしますよ。」と馴れ馴れしく近付いて来る。
「何だお前は?」「まぁ、吟遊詩人みたいなものです。噂を聞き付けては事の真偽を確かめ、市井の人々にこれを広めるのです。こ度は最強の剣なるものを手にした男の噂を聞き付けやってきましたら、何とそこには妙齢の美女が居ではありませんか。それも、かなり腕が立つ。もしや私の情報に誤りがあり、むさい男ではなく、このようなご婦人が最強の剣を手にしていたとあればそれはそれでおいしい話しになるのですが、貴女のその剣が最強の剣なのでしょうか?」
俺は奴の話しの半分も聞いてはいなかった。話しが途切れた所で「うるさい。うせろ!」と叫ぶのが精一杯だった。
やつの姿は消えたが、しばらくは付きまとわれるのを覚悟しなければならない。少なくともこの獲物を換金し、街を出るまでは元の姿に戻ることはできないのだろう。
俺は獲物の証を切り取り袋に詰め込んだ。いつもの俺であればこんな手間は掛けずに獲物ごと持ち込むのだが、この姿ではそれにふさわしいやり方をするしかなかった。街に戻り獲物の証を換金する。奴がしつこく付け回すのが見えている。狩人は獲物を倒した晩は祝杯を上げるのが習わしである。このまま街を抜け出す訳にもいかず、俺は宿を取ると着替えの為の服を調達した。

俺は女の服を着て宿の酒場で祝杯を上げていた。予想通りに奴がやってきた。「これはこれは、どこぞのご令嬢かと思いましたよ。」
俺は委細構わず「うせろ!」と言ってやった。奴は言葉を続けようとしたが酒場に屯していた屈強な男達に睨まれるとその場を去らざるをえなかった。
俺は男達と酒を酌み交わしていた。いつものペースで盃を空けていたのだが、思った以上に廻りが速かった。気が付いた時にはテーブルに顔を埋め、意識を朦朧とさせていた。
男達の話声がした。揉めているようだが、彼らにしては珍しく紳士的であった。血を見るどころか、声を荒げる者もいない。やがて結論が出たようだ。
一人の男が俺に近付いてきた。酩酊状態の俺は何も反応する事ができなかった。そんな俺を男は軽々と抱き上げた。俺は女のように身を横たえて抱かれていた。

「おやすみ。お姫様♪」そう言って男はドアを閉めた。俺は反論するどころか、ベットの心地よさに眠りの中へと引き込まれてゆく。
階下の酒場では再び男達の喧噪が始まっていた。

2007年2月 7日 (水)

ドレス

俺は最強の剣を手に入れた。だが、その為に払った代償は大きかった。

今、俺はこの剣を抜けない。いや、抜くことは出来るのだが、抜いた途端に俺の身体は女に変身してしまう。女の身体では筋力が不足し、剣を持つことさえおぼつかなくなるのだ。
従って、俺はこの剣を抜かない。しかし、狩人の俺が剣を抜かないでは仕事にならない。俺は荷物になるのを承知で細身の剣を持つことにした。最強の剣を持ったまま戦うにはここまで譲歩するしかなかった。しかし、細身の剣は俺の全開したパワーに耐えられない。抑制しようとしても、戦いの中では抑制しきれるものではなかった。
幾本かの剣を折ったある時、戦いのさ中に背中に固定していた紐が緩み俺の激しい動きに耐えられず放り落とされた。剣が何かの弾みで鞘から抜け出してしまった。俺は細身の剣を構えたまま、自分の身体が為す術もなく女になってゆくのを感じていた。幸にも、敵も俺の突然の変容に驚いて動きを止めていた。俺は一気に近付くと敵の急所に細身の剣を突き立てていた。

俺は脚を掛けて斃た獲物から細身の剣を抜き取り剣の無事を確かめた。女の身体で初めて剣を振るったことになるが、細身の剣は俺の手に馴染み俺の身体の一部のように扱うことができた。更に女となったことで低下した筋力は細身の剣に掛かる負担を少なくしていた。
俺の頭に一つのアイデアが浮かんだ。この身体であれば細身の剣を折らずに済む。俺の剣技をもってすれば女の身体でもある程度までは戦える筈だ。女になることには抵抗があった。が、これから失われるであろう細身の剣の数を思うと好き嫌いも言っていられなかった。

俺は女の服を買って宿に戻った。剣を下ろし、服を脱いだ。剣を鞘から抜き取ると、俺の身体は女になった。買ってきた服は少し大きめだったが、着られないことはなかった。細身の剣だけを持って俺は道具屋に向かった。
女の防具は思ったより揃っていたが、そのどれもがデザイン重視で実用に耐えなかった。ただ一つ目を引いたものがあった。運動性は高く、確かに急所は防いでいる。が、他の部分は何も被われていない。相当腕とスタイルに自信のある女が着けていたものだろう。
しかし俺の目に適ったものは他にはない。試しに着てみたが、あつらえたようにフィットしていた。店主は店の目玉商品を手放すのを渋ったが、俺以外にこれを買えるような客がいないのも確かである。俺はこれから失われずに済む細身の剣の本数を考えながら店主に金を渡した。

女の狩人は数が少ない。更に今の俺はその防具が丁度良い程に魅惑的な肢体をしていた。この格好で街を歩いて注目を得ない方がおかしい。ようやくその事に気付いた俺は着替えるべき服をサイズが合わないからと捨ててきた事を後悔した。手近の服屋に飛び込んだは良いが、犧の羊を手にした店員に店中の服を試着させられた。試着だけでも遠慮したかったが、いつの間にか店はファッションショーの会場となっていた。モデルは俺だった。マダム達が取り囲む中、一段高い通路を往復させられる。もちろん顔には化粧され、そこらじゅうをしゃらしゃらとアクセサリーに飾られている。最後に純白のウェディングドレスを着せられてショーは終了した。
控室でぐったりしていると、店員の一人がやってきた。「ありがとうございました。おかげさまで多くの引き合いをいただくことができました。」とお礼のつもりかショーで着た服の一部が詰められた紙袋を渡すと、忙しそうに部屋を出ていってしまった。

... このドレス、どうやったら脱げるんだ?...

俺は途方に暮れていた。

2007年2月 3日 (土)

ベットに入りサイドテーブルに置いてある瓶から一錠の薬を取り出す。「良い夢が見れますように。」そう言って飲み下すと、一気に深い眠りへと引き込まれていった。

俺は最強の剣を求めて旅をしていた。噂を聴いては秘境に赴き伝説の剣といわれるモノを手に入れてきた。しかし、そのほとんどが宝剣の類いで家庭の包丁にも勝てないものばかりであった。
中には相応の剣もあったが、これまでに俺を満足させたものは一本もなかった。

俺は今、密林を分け入っていた。この先の光の泉に棲むドラゴンが剣をもっているという。俺は数々の難所を経て光の泉にたどり着こうとしていた。
これまでの苦難を考えると、それはありきたりの泉であった。密林が途切れそこにだけ光があたっているのでそう名付けられたのであろう。俺は泉に感銘を受けることなく、脇にあった洞穴に足を踏み入れた。
奥には広い空間があった。床一面に剣が散らばっている。そのほとんどが結構な業物と思われた。
「剣が欲しいか?」突然頭上から声がした。見上げるとそこにドラゴンの顔があった。俺は剣を抜き、ドラゴンと向き合った。「最強の剣があると聞いてやってきた。力ずくでも頂いてゆくぞ。」「ふ~む。なかなか良い剣を持っているな。お前の剣と交換してやる。もし、お前が剣を抜けたならばな。」ドラゴンがそう言うと目の前の壁が二つに分かれていった。その奥の壁に目的の剣が突き立てられていた。俺は剣の把に手を掛けた。把は生温かかった。
一気に抜こうとしたがビクともしない。何度か繰り返すうちに把が俺の手の中で脈動しているのに気付いた。つまり、剣と気を合わせないとならないと言うことか?俺は剣の気に意識を集中させた。
「ぁあ、うっうう~」突然、ドラゴンが呻き声を上げた。と同時に剣が光輝いた。今だ。俺は一気に剣を引き抜いた。溢れ出た光が俺を包んでいた。

俺は洞穴の中で目覚めた。気を失っていたようだ。壁は元通りになっていたが、俺の手の中には最強の剣が握られていた。
俺は起き上がると今までの剣を床に投げ捨て、最強の剣を鞘に収めた。

「さて、」誰もいなくなった洞穴の中でドラゴンが動き始めた。「新しい剣を練るとするかね。」と、脚を開き股間を覗き込んだ。
岩壁と見えたのはドラゴンの脚であった。その股間には今までの剣に代わり、あの男のペニスがあった。

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