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2022年3月26日 (土)

シカエシ?

弟はこれまでも、何の躊躇いもなくちょくちょく女の子の格好をしていた。
「男なら男の格好をしろ!!」
と言い続けていたのだが…

 

神様の気まぐれか、俺がTS病に罹り女になってしまった。
どうせなら女装好きの弟が罹れば良かったものである。
しかしながら罹ってしまったのは俺の方である。
当然、頭の中は男のままだ。
肉体が女になったからといって「女装」することには躊躇いがある。
が…

 

「姉ちゃんも女なんだから女の格好をするんだよね♪」
と言ってくる。
これまで何度となく女装を咎められていた鬱憤で、ここぞとばかりに責め立ててきた。
なんやかんだで俺は初めて女装して外に出た。
一人では心細いので弟についてきてもらった。が…
「何でお前も女の格好何だ?」
「姉ちゃんがちゃんと女らしくできたらボクも考えるよ。それより、その口調。男のまんまだよ♪」
「な…何を言ってるん…のょ…」

 

「まだまだだね♪では女の子に慣れるためのそのイチ!!」
「な、何なんだよ…ですの?」
「先ずはお買い物。自分の下着は自分で買ってきましょうね♪」
と、ランジェリーショップに放り込まれていた。

 

何がなにやら分からないうちに、ブラとショーツのセットとキャミソール、ストッキングを買わされていた。
「あと、これもね♪」
とショーツを単独で数枚買うことになった。
(それが生理用のショーツであると知るのはまだ先のことだった…)

 

次に薬局に向かった。
目薬や風邪薬などを買うので寄ったことのある店だったが、連れてこられたのはいつもとは違う場所だった。
椅子に座らされ、担当のお姉さんが商品を並べる。
それは化粧をするための品々だ。
色々説明してくれたが、当然の如くチンプンカンプンである。
いくつか試供品を袋に入れて渡してくれた。

 

 

「明日は本格的に服を買おうね♪」
「って、スカートとか?」
「当然でしょ♪姉ちゃん背丈があるから、ボクのを着回すには無理があるからね。」
「今まで履いていたジーンズとかあるから大丈夫…よ…」
「ダメダメ。即に脂肪が付いてお尻が入らなくなるって言われてるよ。それに、お洒落しないと誰にも声を掛けてもらえないよ♪」
「だ、誰に声を掛けられるんだ?」
「勿論、素敵な男性にね♪姉ちゃんもいずれはお嫁さんになるんだから♪」
「お嫁さんって、俺が男と結婚するっていうのか?」
「当然でしょ♪女の幸せは愛する男性と結ばれて、子供を産み、暖かな家庭を築くことでしょ?」
「俺が…産む…?」
「その為の器官はちゃんと出来上がってるって聞いているよ♪」
「…」
俺はもう、何も言い返せなかった…

 

風呂を出て、買ってきた下着を身に付ける。
女の為のものであるので、着心地が良いのは当然なのだろう。
胸は綺麗に盛り上り、尻の丸さがウエストの括れを強調する。
弟が言っていたかが、もう昨日までのズボンは入らなくなっているに違いない。
辛うじて伸縮性のあるジャージなら着てられそうだが…

 

 

 

今日は服を買う。
弟は今日も女装して付いてきている。
「もう一人でも大丈夫だよ。」
と言う傍から、
「まだ男が残ってるわね。まあ、あと少しなんだけど♪」
と言ってくる。
(確かに、少しでも気を抜くと「男」が出てるよな…)
店に入ると店員があれやこれやと薦めてくる。
俺にはコーディネートとがどうのとかはサッパリわからないが弟が適宜アドバイスをしてくれた。
丈の長めのスカートにブラウスとカーディガンでこざっぱりとした感じに仕上がった。
着てきたジャージを一緒に買った物と一緒に紙袋に入れてもらった。
「次は靴ね♪」
とこちらも服に合わせたパンプスに履き替えた。
さすがに踵の高いのでは歩けないので、かなり平坦なものにしたのだが、それでも普段履き慣れたものではないのでバランスが取り辛い。
「女を意識すればなんとかなるよ♪」
との弟のアドバイスでそれなりに歩けるようになったが…
自分が少しずつ「女」に染まっていくようで不安になっていた。

 

家に戻りくつろいでいると…
「姉ちゃん♪」
不意に声を掛けられ、次に何をさせらせるか不安になった。
「な、何よ?」
「今日はこんなもんかな?明日は映画でも見に行かない?」
「映画?」
「勿論、今日よりはお洒落して出掛けるんだよ♪」
「そんな…まだ、恥ずかしいわ。」
「大丈夫。ボクが保証するよ♪」
そう言って弟はベッドに入っていった。

 

 

 

化粧を終える。
「どぉ?」
と聞くと
「悪くはないな♪」
そんな返事をした弟は、今日は「男」の格好をしていた。
「今日はデートだな♪」
「姉弟でもデートって言うの?」
「ボク達はどこから見ても男と女だよ♪これがデートでなくて何なんだい?」
弟の指が顎に掛かり、彼の顔が近付いてくる…
「な、何をさせるのよっ!!」
と、腕を突っ張って彼との間に距離を置いた。

 

 

映画はごく普通の恋愛映画だった。
が、気が付くとヒロインに感情移入してしまっていた。
彼女と一緒に喜び、怒り、哀しみ…そして幸せに包まれたまま映画は終わっていた。
「愛ってものを再認識させてくれたみたい♪あたしも彼女みたいな恋をしてみたいわ♪」
「姉ちゃんなら大丈夫だよ♪」
「そぉ?」
「けど、化粧は直した方が良いね♪」
「っえ?ウソ!!」
確かに、けっこう涙流してたから…
あたしは近くの化粧室に駆け込んでいた。

 

鏡に映る「あたし」の顔…
彼が言っていた程お化粧は崩れてはいなかった。
それでもマスカラを少し整え…って!!
「俺」は今、どこで、何をしているのだ?
俺は今、何の躊躇いもなく女子トイレの鏡の前に立っている?
それも、化粧を…マスカラを整える?
な、何をしているのだ!!

 

しかし、鏡の中の「俺」をよく見ると…
そこに居て何の不自然さも感じられないのだ。
(それは、今の俺がどこから見ても「女」だからなのか?)
この「女」が俺…あたし…なのだ…
俺は…あたしはもう「女」なんだ…
今みた映画のように、男に愛され、男を愛す存在…
その愛の中に幸せを感じる存在…
今のあたしはひとりの「女」以外の何者でもないのだ…

 

 

「このあとどうする?」
お化粧を直して戻ったあたしに彼が聞いてきた。
「っえ?」
(何を?…今は…)
俺…あたしは彼の顔をじっと見つめた。
「愛して…」
「ん?」
今のあたしには彼の顔以外何も見えていなかった。
「あたしを…愛してくれる?」
「もちろんだよ♪」
あたしは彼の顔を見たまま、ゆっくりと瞼を閉じた。
彼の唇があたしの唇に重なる…

 

 

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