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2021年10月16日 (土)

時間管理官

「すまない!! m(_ _)m」
と、目の前に現れた男に突然謝られたが、何がどうなっているのか意味がわからない。
「あの~、どうされたのでしょう…」
そう、聞き返そうとした俺の言葉にとんでもない違和感があった。
(何なんだ、この丁寧な言葉は?)
(それに、コレは「俺」の声なのか?)
それは、確かに自分の口から出ていたが、俺が言いたかった言葉ではないし…
そもそも何でこんな女のような声なんだ?
「そのぉ、少し声の調子がいつもと違っているようなのですが…」
(お、俺は何を言っているんだっ!!)
「これも、貴方がお謝りになっている事と関係があるのでしょうか?」

「そ…そうですね。今から説明します。」
と、その男は辺りを見回し、
「少し長くなるかも知れませんので、そこの喫茶店でお茶でも飲みながらにしましょう♪」
「そうですね。わかりました。」
俺の意志とは別に俺はその男の後に従い、喫茶店に入っていた。

 


「先ずは鏡を見てください。」
と男はカバンの中から手鏡を取り出して俺に渡した。
「あら、これがワタクシなんですね?」
鏡の中には見知らぬ「女」の顔が映っていた。
その「女」が今の「俺」であることは疑いようもない。
鏡に映る服も、さっきまで俺が着ていたものとは違っていた。
(そういえば、さっき椅子に座るときスカートの裾を整えていなかったか?)
意識を自分の肉体に向けると、男物の衣服とは異なる感覚を感じる。
胸の周りを締め付けるのはブラジャーに違いない。
俺自身の胸に存在する「質量」をカップが覆い、それを支えるストラップが肩に食い込んでいる。
脚には第二の皮膚のようにナイロン生地が密着している。
踵の下が持ち上げられているのはハイヒールだろう。
足首に巻かれているのもその一部に違いない。
いつもであれば股間を開いて座るのだが、今は膝頭がぶつかる程に太股がピタリを合わさっている。
そして、その股間には…
「俺自身」の存在を感じることはできなかった。

「当方のちょっとした手違いで、あなたという存在を女性として再設定してしまったのです。」
「再設定…ですか?」
「時間管理官としてパラドクスの修復を行っておりました。近接次元との整合性の調整中に…」
「あまり難しいことはわかりませんので、もう少し簡単に説明していただけないでしょうか?」
「これはすみません。ついつい専門的な話になってしまって…」
と男は手にした装置の画面を俺に見せた。
そこには今鏡で見た女の顔が表示されていた。
「これでパラメタを調整します。」
俺=女の顔の横に様々な記号が表示されていた。
「これを少し動かすだけで…」
「…ち、ちょっと何か変よ。あ、あたしが変わってる?何かやったの?戻してよ!!」
「この装置では、完全に元に戻す…ということは出来ないのです。」
と再び男が操作した。
何かトンデモない事に巻き込まれて「ヤバイ」と思っていた気分が、ふっと落ち着いていた。
「そ、そうなの?何かさっきより頭悪くなってるようなんだけど?」
確かに今のあたしは難しいコトなんか何にもわからない…
「まあ、このように設定変更を行って整合性の微調整を行っているのです。」
「ふ~ん。で、その微調整なんたらってのは終わったの?」
「今のあなたへの処理で全て終わりました。」
「あたしの?」
「そう。あなたはご自身の存在をどう見ていますか?」
「あ、あたしはあたしでしかないっしょ?」
「たとえば、私という男性が援交を申し出たとして…」
「援交?別にイイよぉ♪どんだけ出してくれんのかなぁ?」
「あなたは男性に抱かれることに嫌悪感とかないですか?」
「別に~♪だって、気持ちイイじゃん!!」
って、あたしってオトコに抱かれたことあったっけ?
何か気持ち良かったコトだけ漠然と覚えてるんだけど?

 


「…ぁあ、イイ♪ そ、そこっ!!」
(何かが違うような気がする…)って頭の隅っこに引っ掛かってるんだけど…
「巧い具合に調整できたようですね♪手違いもバレなければ…」
このヒトなんか良く解らないコト言ってる。
ケド…このヒト上手♪
あたしの気持ちイイとこ、あたし以上に知っているみたい♪
「んあっ!!ああああ~~ん♪」
あたしはベッドの上で何度目かの絶頂に達していた♪

「『時間』は十分にありますから♪もっと、もっと愉しみましょうね♪」

 

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