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2020年10月12日 (月)

被憑依

気が付くと、俺は何者かに憑依されていた。
金縛りにあったように、俺は指一本動かせなかった。
逆に、そいつは俺の肉体を勝手に動かし始めた。
俺のスマホを手に取ると、アプリをインストールした。
次に、俺の服を脱がす。
全裸になると、インストールしたアプリで全身を自撮りした。
画面に様々な数字が表示される。
見知った数値があった。
項目名はHeight…身長のようだ。
俺の身体的情報が採取されたようだ。
続いて開かれたのはファッション系の通販サイトのようだ。
俺には全く縁のないキラキラ・ヒラヒラのドレスやセクシーな下着…
その全てが女性用のものである。
憑依したやつはその中から何点かをカートに入れてゆく。
次は化粧品・アクセサリー…
最後にロン毛のかつらを放り込み、俺のカードで決済していた。

次にトイレに向かった。
俺自身には排泄が必要な感じはまったく無かったが…
便座に座るなり大・小が一気に放出された。
一度排泄物を流した後も、腸が勝手に蠕動してゆく。
まるで浣腸をしたかのように腸内の物が全て排泄されてしまったようだ。

続いて風呂場に向かった。
全身に泡立てた石鹸を塗り込めると、カミソリで体毛を剃り落としてゆく。
指先から腕、脇…
胸毛、乳毛、腹毛…
脚も尻も股間も…
本来の俺であれば手の届かない場所へも憑依したやつは巧に筋肉を制御して届かせてしまう。
時間を掛けて、剃り残しのないように洗い流しては再び石鹸をまといカミソリを滑らす。
勿論、俺には何の干渉もできない。
俺であれば、どこかに剃り傷を作ってしまうであろう。
奴の巧な手技は俺の皮膚に傷ひとつ付けることなく、髪の毛とまつ毛を残し全身の毛を剃り落としていた。

風呂から出てしばらく休息していると、宅配便が到着した。
下着も着けず、ズボンとシャツだけを着て荷物を受け取った。
さっきの通販サイトで購入した品々だった。
最初に取り出したのは化粧品関連のもののようだった。
ズボンとシャツを脱いで再び全裸となると、ボトルからクリーム状のものを手に取り全身に塗り込めていった。
肌がしっとり、プルンとするような感じになった。
次にブラジャーとショーツを取り出す。
慣れた手つきで背中のホックを止める。
勿論、俺の…男の胸ではカップの中はスカスカである。
と、取り出したのは人工乳房のようだ。
裏側に接着剤を付け、胸に押し付け、ブラのカップに納める。
人口乳房との境目が薄れてゆくと、俺の胸に本物の乳房が付いているみたいだ。

床に尻を着くと、股間を広げた。
さっきの接着剤をペニスの付け根の左右に塗り込んだ。
そして、ぐいっとペニスを股間に押し込む。
先端だけが少し露出するようにして、左右の皮膚を合わせる。
そこに塗ってあった接着剤がペニスを閉じ込め、固定する。
手を離すと、そこには女のような縦の筋が出来上がっていた。

ショーツを穿かされ、キャミソール、ブラウスと着せられてゆく。
下半身はパンストで覆われ、スカートを穿かされた。
頭にネットを被せられると、次は化粧だった。
何をどう塗っているのかは分からなかったが、次第に俺の顔は女の顔に変わっていった。
爪を塗り、アクセサリーを付け…
最後にかつらを被せられ、長い髪を起用に結い上げる。
鏡に映った「俺」はどこから見ても「女」でしかなかった。

「あ、あ、あー」
と声を出していた。聞こえるのはいつもの俺の声だ。
「あー、あー、あー、あー、あー」
と音程が上がってゆく。
裏声になると、今度は裏声のまま音程が下がっていった。
「まあ、こんなもんかしらね♪」
いつの間にか、俺の口からはハスキーだが女のような声が出ていた。
勿論、俺が喋っているんではない。
俺に憑依したやつが喋っているのだ。
そいつは満足したかのように、鏡に向かってウィンクしていた。

踵の高いパンプスを履き、バックを手に外に出てゆく。
本来の俺であれば、まともに歩くことのできない不安定な靴にも拘わらず、やつは余裕をもって歩きだしていた。
タクシーを止め、目的地であろうホテルの名前を告げた。
移動する間にスマホで誰かと連絡を取り合っていた。
目的地のホテルで落ち合うようだ。

 


タクシーから降りると慣れた感じでフロントを通過してゆく。
エレベータで目的の階に上る。
「待っていたよ♪」
転がり込むように部屋に入ると、がっしりとした男の腕に抱えられていた。
「長かったわ…」
俺の目から滴が落ちてゆく。
男の舌が涙を拭い、そのまま俺の唇に吸い付いてきた。
「ぁ、ああ…」
俺が嗚咽を漏らす。
全身から力が抜けたようになり、そのまま男に抱えあげられた。
ベッドに寝かされる。
「時間は十分にある。」
そう言って男に頭を撫でられると、少しずつ落ち着きが戻ってゆくようだ。

窓の外で陽が傾いてゆく。
空が茜色に染まり、照明を落とした室内も同じ色に染められる。
男は何も言わず、ずっと俺の手を握っていた。
「長かったわ…」
再び俺はそう言っていた。
「来世なんて…もう信じられなくなっていた…」
「でも、こうして君は戻ってきてくれた♪」
「信じてくれていたの?」
「勿論♪」

「愛してるわ♪」
俺はそう口にしていた。
「僕もだ♪そう…ずっと君の事を愛し続けていた。」
「あたしも…」
俺はそう言うと身体を起こした。
「だから、今度こそ…」
「そうだね♪」

俺は服の脱ぎ、下着も外していた。
人口乳房はまるで俺自身のものであるかのように晒されている。
なにもない股間が熱を帯び、汗を滲ませたかのように濡れ始めていた。
再びベッドの上に寝転ぶ。
「来て♪」
俺が言うと男も全裸で身体を重ねてきた。
その股間には勿論屹立した男性自身…
俺はそれが当然のように彼を股間に誘導してゆく。
「んあっ…」
俺が吐息を漏らす。
それが俺のナカに差し込まれたのだ。

(ナカ?!)
確か、俺の股間は女の股間みたいに細工されていた。
ペニスが押し込められているが、それは皮一枚で細工されていただけの筈。
俺の股間にはソレを受け入れるような場所などないのだ。
そう、男娼がするように肛門であれば可能であるかも知れない。
が、そこは肛門ではない!!

ヌッ…
更に突き入れる。が、そこで一旦停止する。
「ハジメテなのだろう?痛いと思うが耐えてくれ。」
男がそう言う。
「大丈夫よ♪」
と俺。
…って、俺は処女なのか?ハジメテって、痛みって?
「!!!!!!!!ッツ!!」
俺は眉間に皺を寄せているのだろう。
破瓜の痛みというものなのだろう。
何もできない俺は、ただ痛みを感じているだけだった…

「入ったよ♪」
男がそう言う。
「感じてるわ♪」
目に涙を浮かべているが、それは悦びに満たされているようだ。
俺は俺の胎の内に男のモノの存在を感じていた。
男が動くとオンナの快感なのだろう、快感に満たされてゆく。
「あ、ああ…いい…♪」
女が喘いでいる。
いつしか、俺も快感に自ら喘いでいた。
「ああ、そこ♪もっと…」
男が動き、快感が溢れてくる♪
「ぁ…い、いく…」
「僕も、限界だ♪」
男の精が俺のナカに放出された。
「あ、ああああ~~~~!!」
強烈な快感に俺は嬌声を発し、そのまま意識を失っていた…

 

 

「大丈夫?」
男が俺を覗き込んでいた。
「お互い、憑依されていたとはいえ、こんな事になって申し訳ないと思っている。」
「…憑依…?」
俺は自分で声を出せるようだ。
「彼等はちゃんと成仏できたようだ。が、原因が何であろうと、僕も男としての責任は取るつもりだ。」
「責任?」
「ハジメテだったのだろう?それに避妊もせずに…」

俺が状況を把握するまでにしばらく時間が掛かった。
そう…俺は「男」の筈である。が、肉体は「女」になったとしか思えない…
「シャワーを浴びて来ます…」
そう言って立ち上がった。
股間からは彼の精液が滴っているように感じながら風呂場に向かった。
頭から湯滴を被る。
肩から胸、腰、脚へとお湯が流れ落ちてゆく。
造り物の筈の乳房の境目が見つからない…
先端の乳首に触れると、触れられている感覚がある。
股間に手を延ばす…
割れ目の中に指が入り、押し込んだモノの痕跡を探すが見つかる筈もない。
そこには彼を受け入れた膣口があり、更に奥へと続いていた。
指で彼の精液が掻き出せるようだ…

これはもう「俺」の肉体だった…

風呂場から出てくると机の上に置手紙があった。
「今夜はそのまま休んでいってください。
 何かあったらここに連絡してください。」
と彼の電話番号とメールアドレスが残されていた。
何故か俺の目からは涙が零れ、その後一晩泣き明かしていた…

 

 

 

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