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2020年6月13日 (土)

新しい身体

目覚めは唐突にやってきた。
瞼を開く前に光が眼底を照らす…
否、瞼は既に開かれていたようだ。
スイッチを入れたように俺の意識が光を感知し始めたようだ。
 
それだけではない。
俺は今、直立していた。
無意識の内に倒れないようにバランスを取っている。
踵の下に障害物があり、つま先立ちに近い状態になっている。
脚に纏わり付く布地…
胸が締め付けられている。
その締め付けているものの中に水袋のような重しが詰められている。
それらに比べれば大きな障害ではないが…
耳に何かぶら下げられているものがある。
唇に何かが塗られている。
まつ毛が重たい…
 
「さて、意識は戻っているね?」
声のする方を確認しようとするが、金縛りにあったように身動きが取れない。
「だ、誰だ?」
声だけは出せた、
(?)
だが、これは「俺」の声か?
それは甲高い女のような…
「親に向かって誰だとは心外だね♪」
「親?いや、俺の親は二人とも死んでいる。」
「その肉体を造ったのだから、私は君の親と言えるだろう♪」
「肉体を…造った?」
「では、見せてあげよう。ほら、鏡だよ♪」
ガラガラと音がして、姿見が視界に入ってきた。
 
が、そこに「俺」の姿はなかった。
ファッション誌から切り取ってきたかのような美女がそこにいた。
踵の高いショートブーツを履き、ボリュームのあるスカート…
薄手のセーターの胸は魅惑的な膨らみが揺れている。
ストレートのロングヘアに見え隠れするように、大きなリングのイヤリング…
しっかりと化粧され、見開かれた瞳に長いまつ毛が揺れている。
唇には真っ赤な口紅が塗られている。
俺が舌を伸ばすと、鏡の中の美女の唇を割って舌が覗いてきた。
と同時に、舌に口紅が触れるのを感じた…
 
「制約を解除するから倒れないように注意するように。」
その声と同時に身体を動かせるようになった。
腕を曲げる…
鏡の美女も同じように…
首を曲げ胸元を見ると、鏡の美女の着ていたセーターと同じ色・柄が確認できた。
それ以上に大きく膨らんだ胸があることがわかる。
下から掌を当てて持ち上げる。
その質量を掌が感じると同時に、胸に触れられる感触を感じた。
「これが俺?」
「理解できたかね?」
俺は声のする方を見た。
 
操作卓の前に立っている男…
「パパ♪」
不意に俺は思いもよらない言葉を口にしていた。
そして知らない筈の記憶が俺の脳内に押し寄せてきた。
それは俺が小さな女の子だった時の記憶…
動物園、水族館、遊園地でパパと遊んだ記憶…
振袖を着てお参りした近くの神社…
仲良しの女友達…
好きになった男の子…
浴衣を着て二人でいった花火大会…
「こ…これは?」
「思い出したかい?自分の名前を言えるか?」
「思い出す?名前?あたしは…」
俺は何と答えようとしている?
頭に浮かんできたのはどうみても女の子の名前だ。
それは「俺」の名前ではない!!
それに、自分の事を「あたし」って…
 
「良いよ。無理に思い出さなくても良い。」
操作卓から離れてきたパパがあたしを優しく抱きしめてくれた。
「大丈夫。時間は十分にあるんだ。ここまでこれたのだ。焦ることはない♪」
「良いの?」
「ああ♪こうしてお前が戻ってきたのだ。今はそれだけで十分だよ♪」
 
ちょっと待て!!何がどうなっているんだ?
この男に抱きしめられていると、変な快楽物質が出て正常な思考を妨げる。
 
「は、放せ!!」
俺は強引にその腕を振り解いた、
「せ、説明を要求する。お前は何者で、何で俺はこんな姿になっているんだ?」
「あ、ああ…まだ安定化できていなかったか…」
「説明しろ!!」
俺はたたみ掛けた。
「わかった。そっちに椅子があるから、座って話そう。」
俺は不安定な靴に倒れないように注意しながら、奴の示した椅子に向かい腰を下ろした。
 
 
 
「その身体は三年前に死んだ私の娘を模したものだ。」
と奴は言った、
この肉体はこの男によって造られたものだということだった。
そして彼の娘を模しただけでなく、彼女の記憶さえも全て取り込まれているという。
だが「魂」だけはどうにもならなかったようだ。
肉体は娘そのものであったが、「魂」が無いためにその肉体が蘇生することはなかった。
そう「魂」だ。
奴は造り上げた肉体に「魂」を納めようと躍起になった。
「魂」を可視化し、捕らえ、この肉体に納める…
その執念で「魂」を扱う技術を確立した。
が、最初に試した動物の「魂」では「娘」の蘇生までには至らなかった。
やはり「人間」の「魂」でなければだめなのか?
そして墓場に浮遊していた「魂」、事故現場に地縛されている「魂」等試した。
が、「魂」そのものにある程度の活力がないと肉体に留めておくことが出来ず消失してしまう。
奴は「魂」の活力を計る装置も作り上げた。
そして最初に捕らえられた「魂」が「俺」だった。
 
「俺…はどうして魂だけになっていたんだ?」
「覚えてはいないか?」
「俺はもう死でいるのか?」
「死んではいない。君の身体はちゃんと保管している。生命維持装置を付けているから大丈夫だ。」
「なら、すぐに元に戻せ!!」
「わかった。ただ、一つだけ実験に付き合ってもらいたい。」
「実験?」
「君の魂がどこまでその身体に定着できたのかを確認しておきたいのだ。」
「その実験にはどれだけ掛かる?一年とかは無しだぜ。」
「大丈夫だ。明日には元に戻してあげられる。」
「一晩だけなんだな?」
「約束する。」
 
実験を始める前に腹ごしらえをしよう。と男は言った。
支度をしている間に…と入浴を奨められた。
「わかったわ♪」
と席を立ち、風呂場に向かった。
(?)
俺はどこに風呂場があるのか知っているのか?
それが「肉体」に刷り込まれた「彼女」の記憶であると判った。
洗面台で化粧を落とし、複雑な女物の衣服を難なく脱ぎ去り、全裸で風呂に入る…
慣れた手つきで女のデリケートな肉体を綺麗に洗い…
湯舟に身を沈めていた。
「ふぅ…」
溜息を吐いたのは「俺」だった。
湯に浸かることで心身ともにリラックスしていた。
そして…
俺はまじまじと、この身体を「見る」ことになった。
それは「女」の肉体だった。
胸が膨らんでいる。
乳房を持つ…という感覚を堪能する。
掌が腹から下腹部に這い進む。
股間にあったものがない…
そこには割れ目があり、その内側には女性器が存在するのだ。
そこはさっき入念に洗った場所ではある…が、自分の意志でそこに触れるとなると、また感じが違ってくる…
 
 
 
風呂から上がるとバスタオルを身体に巻く。
女性がするように、胸元で留める。
濡れた髪にもタオルを巻いて、寝室に向かった。
チェストから新しい下着を取り、身に付ける。
ゆったりとした部屋着もあったのでそれを着て食卓についた。
「美味しいか?」
「うん♪」
久しぶりのパパの料理の味だった…
(!!)
気を抜くと彼女の記憶に支配されてしまうようだ。
「それで、実験はいつ始めるんだ?」
「今は食事を味わってくれ。まだ夜は長い♪」
 
美味しい食事だったが、少し食べただけで満腹になってしまった。
「俺」としてはまだまだ食べたかったが「‎あたし」にはいつもの分量なのだと彼女の記憶が告げる。
「後片付けはあたしがやるわ♪」
と俺は食べ終えた食器を厨房に運んでいった。
カチャカチャと食器を洗う。
いつものように軽い鼻歌を歌いながら…
って、俺はそんな事をするような人間ではない!!
 
「では、実験を始めよう。」
と寝室に連れていかれた。
「ベッドに横になって。」
実験室ではなく、なぜ寝室で?
疑惑を確認するより先に、俺はベッドに上がっていた。
部屋着が脱がされていた。
「っんぁ…」
乳首が弄られ、あたしは軽く喘ぎ声を漏らした。
「これから何をするか判るね?」
そう聞かれ、あたしは首を縦に振った…
何をするかって「俺」は知らないぞ!!
俺は腰を上げ、ショーツが脱がされるのを助けていた。
俺は全裸になっていた。
(いつもの事だから♪)
彼女の記憶が教えてくれる。
 
奴もまたベッドの上がっていた。
奴も全裸となっている…そして、その股間はしっかりと勃起している?!
何をしようとしている?
状況からすればスルことは想像が付く…
父娘ではないのか?
それに「俺」は男だ!!
(だいじょうぶよ♪)
彼女の記憶に誘われる。
奴が俺の乳首を口に含み、刺激が与えられる。
乳首の先端から全身に快感が広がってゆく。
(いつもと同じでしょ?)
彼女の記憶が押し寄せてくる。
記憶にあるように、パパの手があたしの股間に触れてくる。
クチュクチュと愛液を汲み上げてゆく。
陰核を刺激しながら膣口を揉み解す。
「ぁあ、ああん♪」
快感に媚声を漏らす。
指がナカに差し込まれる。
膣壁が刺激される。
肉襞が蠢いている。
「あたし」がソレを欲している…
 
「キテ♪」
俺が呟くと奴は「ああ」と応えた。
脚を間に奴の腰が割り込んでくる。
俺の股間が広げられ、その中心にソレが触れていた。
ソレ…ペニスだ。
愛液に濡れた俺の膣に奴のペニスが侵入してきた。
「あ…ああっ!!」
俺のナカに根元まで突き入れられた。
「俺」が奴に満たされてゆく。
奴が動くと快感に貫かれる。
「あん、ああ~ん♪」
俺は快感に喘ぎ続けた。
何度も何度も快感の頂に突き上げられる。
そして…
「いくよ♪」
その言葉と同時に、俺の中に奴の滾りが打ち付けられる。
俺はもう何も考えられなくなっていた。
 
 
 
朝日が寝室に漏れ込んでいた。
あたしはパパの腕の中で目覚めていた。
「起きたかい?」
既にパパは起きていたようだ。
「ん…おはよう、パパ♪」
あたしがパパの胸にキスすると、パパもあたしの額にお返しをしてくれた。
「さぁ、どうするね?」
「どうする?」
「君の身体に戻るか?ということだ。」
「あたし…の身体?」
「どうする?」
あたし…俺はもうどうでも良くなっていた。
「この身体があたしの身体でしょ?」
あたしはパパの腕の中から抜け出した。
「朝ごはん、作ってくるわね♪」
あたしは寝室のカーテンを開け、新しい朝日を身体に浴びせた♪
 


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