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2020年4月29日 (水)

さくら

桜の花びらが風に舞っていた。
舞い踊る花びらを、ただ呆ーっと眺めていた。
暖かな日射しがわたしからコートを脱がせていた。
薄手のセーターがわたしの胸の膨らみをなぞっていた。
 
「どうした?」
声を掛けられた。
振り向かなくとも、わたしには声の主がわかっている。
「なんでもない。」
そう答えるわたしの声…
胸の膨らみと同様に、まだ馴染むことの出来ない甲高い声だった。
 
それは彼にしても同じなのだろう。
聞き慣れた声の筈が、録音された自分の声を聞いた時のように新鮮に感じられる。
その声は一週間前には、わたし自身が発していた声なのだ。
 
肉体に流れるホルモンがそうさせるのか、常に不安に駆られるわたしとは違い、彼は短期間でこの事象を受け入れてしまったようだ。
『入れ替り』
互いの意識が交換されてしまった。
何が原因なのかを科学的に解析することなど出来ないであろう。
魔法、呪術…
フィクションでしか語られない事象がわたし達の身に現出していた。
 
「まだ風は冷たいよ。」
と、わたしの身体を心配する彼…
その肉体の内には、わたしのこの肉体の本来の所有者の意識が入っている。
「大丈夫よ。それに、風邪をひいて熱を出すのは貴方ではないでしょ?」
自然と出てくる女言葉。
意識はわたしであっても、脳に刻まれた意識していない時の言動は彼女本来のものになってしまう。
 
そう、意識していないと…
彼が隣に腰を下ろし、わたしの肩に手を掛ける…
わたしは彼を見上げ、瞼を閉じてソレを待ってしまう。
わたしが気が付いた時には彼の唇がわたしの口を塞いでいた。
その唇が元々はわたし自身の物であった事も
わたしを抱くその腕がわたし自身の物であった事も
今のわたしにはどうでもよかった。
男であったわたしが同性に身を委ねているというのに…
 
わたしは差し込まれた舌に自らの舌を絡めていた。
唾液が混ざりあう。
その幾分かは、わたしの喉の奥に…
今のわたしにとって「彼」は異性だった。
身体が熱くなる。
乳首が硬くなっていた。
硬くなる筈の股間はとろとろに溶けだしている…
「っぁ…」
離れてゆく彼の唇を追うようにわたしの舌が宙を薙いでいた。
 
「お前は僕自身だった。」
彼の掌がわたしの胸を弄っている。
「僕はお前の悦ぶ場所を皆知っている♪」
ふっと耳元に息を吹き掛けられただけで、わたしは「あぁん♪」と喘いでしまう。
無意識にわたしの手が動いていった。
その先にあったのは彼の股間の膨らみだった。
「欲しいのか?」
わたしは首を縦に振っていた。
 
わたしの指はチャックに掛かっている。
彼はそこに顔を近付け易いようにエスコートしてくれた。
わたしは下ろしたチャック奥から、硬くなった肉棒を引き出し、咥えていた。
それが、自分自身の物であった事などわたしの頭の中には一切存在しなかった。
愛しさと、幸せ感に満たされてゆく。
 
「いくよ♪」
と彼が言い、わたしの口の中に彼のモノが放たれた。
濃い粘液がわたしの口を満たす。
溢れる前にそれを呑み込む。
美味しいとかは表現出来ない。
わたしはその「幸せ」を呑み込んでいた。
 
 
 
心地好い風が吹き抜けていった。
その風に桜の花びらが舞った。
わたしは幸せに包まれていた。
 
「戻りたいか?」
わたしは首を左右に振っていた。
でも、それは彼の問いへの答えではない。
わたしの股間を貫いている彼の肉棒からもたらされる快感に悶えての事だった。
わたしは抱かれたまま、彼の胸にわたし自身の乳房を押し付ける。
「このまま…ああっ!!」
快感が駆け抜けてゆく♪
「愛されていたいの♪」
それがわたしの答えだった。
この肉体にはまだ馴染めてはいないが、わたしはもう、この快感から離れられないのだろう。
「あん♪ああ~ん!!」
わたしの淫声が桜の花びらとともに、風に流されていった…

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