« 百合じゃない!! | トップページ | カタツムリ »

2020年4月18日 (土)

戦闘員

「パパ、またね♪」
と笑顔で手を振った。
…「パパ」か…
あたし…俺はポソリと呟いた。
 
俺は今、全裸でベッドの上にいた。
その股間には「パパ」のぺニスの感覚がまだ残っている。
俺は「女」として、男に抱かれ、いくばくかの現金を手にしていた。
「パパ、またね♪」
と造り笑顔で送り出してやると、数日を置かずに彼からも連絡が入ってくる。
俺にはそんな「パパ」達が何人もいる。
 
 
 
俺が女の肉体にも拘わらず自分の事を「俺」ということを不思議に思うのではないだろうか?
勿論「パパ」達の前では「あたし」と言っているし、意識しないとついつい自分の事を「あたし」と言っている。
それは、強制的に「あたし」が「俺」に「刷り込まれた」所為なのだ。
「人体・人格の刷り込み」
それは印刷機のように一定の型を人間に刷り込み、好ましい人格の人々で埋め尽くそうと考えた奇人の能力が公然と行使された所為に他ならない。
ヒーローものの悪役の手下にはコピー人間のような戦闘員達がいる。
勿論それは物語の中、架空の存在ではあったが、その奇人はそれが「現実のものとなる」と吹聴した。
奴は実証実験の機会を得、デモンストレーションとして有能な「戦闘員」を作ってみせた。
勿論、軍事関係者は色めき立った。
従順で有能な兵士を無尽蔵に手にいれることができるとみると、奴に惜しみない支援を申し出たのだった。
 
だが、潤沢な資金を手に入れた奴は、支援者達の思惑とは異なり、奴本来の目的に突き進んだのだ。
奴本来の目的…それは奴自身の「ハーレム」を造る…というものだった。
奴の好みの女達に囲まれて、悠々自適・酒池肉林の生活に思う存分浸り続けるということだ。
そして、その元となる「版」も出来上がっていた。
あとはその「版」を刷り込む肉体が揃えば奴のハーレムの完成は目前だった。
 
が、そこにある「肉体」は戦闘員を刷り込む為に揃えられた「男」の肉体ばかりであった。
奴は元々「男」に「女」の版を刷り込むことに無理はあると承知はしていたようだった。
が、「女」の肉体を手に入れるのは支援者への手前、しばらくお預けと判断し
手近の肉体からランダムに選び出したものに、ハーレムのための「版」の試し刷りを行った。
そう、戦闘員用に集められた肉体のひとつが「俺」であり、
ランダムに選ばれたのがこの肉体…「俺」だった。
 
「女」の版が刷り込まれた俺が意識を取り戻すと
「やはりな…」と奴が呟いたと聞く。
刷り込みは不十分だったようだ。
奴は刷り込み後に肉体に「俺」の意識が残っていると判ると、即座に失敗作…「あたし」を廃棄したのだ。
 
 
 
 
奴のハーレムが完成したかは知るよしもなかった。
俺の周囲の世界は平和を保たれているようなので、奴の作った戦闘員達はそれなりの成果をあげていたと思いたい。
俺はといえば、奴の所からは廃棄されたが、機密保持のため一時的に監視付きのマンションに抑留された。
とはいえ、「失敗作」の噂を聞きつけた要人が「お試し」にやってきていた。
造られた容姿はそれなりのものがあり、「あたし」には刷り込まれた能力があった。
能力…ハーレムの構成員としてご主人様=「パパ」には最高のご奉仕を提供するという能力だ。
つまり「女」として「男」を悦ばす…ということだ。
「俺」としての意識は拒絶しようとするが、「あたし」は嬉々としてその肉体でご奉仕してしまうのだ。
 
やってきた要人はあたしのご奉仕に十分満足したようだった。
そして、「お試し」の評価が要人達の間に急速に伝搬した。
何度かの「お試し」があったが、彼等は「お試し」だけでは満足できなかったようだ。
程なく、あたしから「監視」が外された。
刷り込まれた人格により、機密情報の漏洩が起きないと証明された(?)らしい、
やってくる要人…「パパ」達は監視を気にすることがなくなり、心置きなくあたしの「ご奉仕」を受けてゆく。
そして、「パパ」達はあたしに満足すると、少なくはないお小遣いを置いていった。
 
「監視」が外れると同時に「正式」な生活支援も打ち切られていた。
行き続けるためにはお金が必要であり、彼等のお小遣いは俺が生きてゆくのに欠かせないものとなっていた。
俺は「生き残る」事を選択した。
「俺」の意識は今もってご奉仕を受け入れられないでいる。
が、「ご奉仕」を「あたし」に任せておけば、俺は何をせずとも現金は手に入るのだ。
(そう割り切れば良いのだ…)
 
 
 
俺の部屋は可愛らしいモノで溢れていた。
ぬいぐるみ、アクセサリー、化粧品…
クローゼットもカラフルなドレスに埋め尽くされ、タンスには様々な下着が詰め込まれている。
無論「俺」が買ったのではない。
「あたし」が自分で買ったり、パパに貰ったりしたものばかりだ。
 
今、俺が手に取っているのはスケスケのネグリジェだった♪
(その選択は「俺」の意思である筈がない!!)
俺の意識は拒絶しつつも、俺は服を脱ぎ、ネグリジェをまとってゆく。
ショーツは紐パンに穿き替えていた。
 
「パパ♪お帰りなさい♪」
あたしは満面の笑みを浮かべて、今夜の「パパ」を迎え入れた。

 

 

 

« 百合じゃない!! | トップページ | カタツムリ »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 百合じゃない!! | トップページ | カタツムリ »

無料ブログはココログ