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2020年4月29日 (水)

鯉のぼり

鯉のぼりが風に揺らいでいた。
 
今更、納戸の奥から取り出す気はない。
男の子のいない筈の家の庭に鯉のぼりが飾られているのを、隣家の人々はどう思うだろうか…
そう…この家にはもう、男の子は居ないのだ…
 
その日、高熱を発した息子を掛り付けの病院に連れて行くと、ここでは対応出来ないと、都内の大学病院に移された。
伝染病の類いではないと言われたが、息子は集中治療室で家族の面会も断られてしまった。
3日後に、病状は安定したからと通された病室に居たのは「娘」と変わり果てた我が子だった。
 
医者からは元に戻る事はないと告げられた。
息子…娘の体調が回復すると、月イチで経過観察の為に通院するように言われて退院となった。
突然、見知らぬ女の子が出入りするようになると、近所に何を言われるか知れないと、早々に引っ越す事にした。
 
娘はかなり早い段階で気持ちの切り替えを終えていたようで、引っ越し先で転入した学校では、女生徒としてかよい通していた。
 
 
 
「ねえパパ、もう鯉のぼりの季節なのね♪」
退院後はわたしの事を「父さん」ではなく「パパ」と呼ぶようになっていた。
「うちにもあったでしょ?もう、出さないの♪」
どう答えるべきかと逡巡し…
「うちには男の子がいないからな…」
と呟いていた。
「じゃあ」
と娘は言った。
「じゃあ、男の子が産まれたら、もう一度出してくれる?」
 
娘は大きく膨れたお腹を愛しそうに撫で擦っていた。

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コメント

娘さん何歳なんだよ!
手出されるの早くない?
それとも手を出したから「パパ」なのか?
(始まりのイメージが小学生位だったからこういう感想になった。あと馴れ馴れしい書き方ごめんなさい。)

コメントありがとうございます。
「その日~」からは「「ねえパパ」の前までは回想です。
表現がわかり辛くすみません.。

娘は普通に恋をし、結婚している設定です。

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