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2020年4月29日 (水)

さくら

桜の花びらが風に舞っていた。
舞い踊る花びらを、ただ呆ーっと眺めていた。
暖かな日射しがわたしからコートを脱がせていた。
薄手のセーターがわたしの胸の膨らみをなぞっていた。
 
「どうした?」
声を掛けられた。
振り向かなくとも、わたしには声の主がわかっている。
「なんでもない。」
そう答えるわたしの声…
胸の膨らみと同様に、まだ馴染むことの出来ない甲高い声だった。
 
それは彼にしても同じなのだろう。
聞き慣れた声の筈が、録音された自分の声を聞いた時のように新鮮に感じられる。
その声は一週間前には、わたし自身が発していた声なのだ。
 
肉体に流れるホルモンがそうさせるのか、常に不安に駆られるわたしとは違い、彼は短期間でこの事象を受け入れてしまったようだ。
『入れ替り』
互いの意識が交換されてしまった。
何が原因なのかを科学的に解析することなど出来ないであろう。
魔法、呪術…
フィクションでしか語られない事象がわたし達の身に現出していた。
 
「まだ風は冷たいよ。」
と、わたしの身体を心配する彼…
その肉体の内には、わたしのこの肉体の本来の所有者の意識が入っている。
「大丈夫よ。それに、風邪をひいて熱を出すのは貴方ではないでしょ?」
自然と出てくる女言葉。
意識はわたしであっても、脳に刻まれた意識していない時の言動は彼女本来のものになってしまう。
 
そう、意識していないと…
彼が隣に腰を下ろし、わたしの肩に手を掛ける…
わたしは彼を見上げ、瞼を閉じてソレを待ってしまう。
わたしが気が付いた時には彼の唇がわたしの口を塞いでいた。
その唇が元々はわたし自身の物であった事も
わたしを抱くその腕がわたし自身の物であった事も
今のわたしにはどうでもよかった。
男であったわたしが同性に身を委ねているというのに…
 
わたしは差し込まれた舌に自らの舌を絡めていた。
唾液が混ざりあう。
その幾分かは、わたしの喉の奥に…
今のわたしにとって「彼」は異性だった。
身体が熱くなる。
乳首が硬くなっていた。
硬くなる筈の股間はとろとろに溶けだしている…
「っぁ…」
離れてゆく彼の唇を追うようにわたしの舌が宙を薙いでいた。
 
「お前は僕自身だった。」
彼の掌がわたしの胸を弄っている。
「僕はお前の悦ぶ場所を皆知っている♪」
ふっと耳元に息を吹き掛けられただけで、わたしは「あぁん♪」と喘いでしまう。
無意識にわたしの手が動いていった。
その先にあったのは彼の股間の膨らみだった。
「欲しいのか?」
わたしは首を縦に振っていた。
 
わたしの指はチャックに掛かっている。
彼はそこに顔を近付け易いようにエスコートしてくれた。
わたしは下ろしたチャック奥から、硬くなった肉棒を引き出し、咥えていた。
それが、自分自身の物であった事などわたしの頭の中には一切存在しなかった。
愛しさと、幸せ感に満たされてゆく。
 
「いくよ♪」
と彼が言い、わたしの口の中に彼のモノが放たれた。
濃い粘液がわたしの口を満たす。
溢れる前にそれを呑み込む。
美味しいとかは表現出来ない。
わたしはその「幸せ」を呑み込んでいた。
 
 
 
心地好い風が吹き抜けていった。
その風に桜の花びらが舞った。
わたしは幸せに包まれていた。
 
「戻りたいか?」
わたしは首を左右に振っていた。
でも、それは彼の問いへの答えではない。
わたしの股間を貫いている彼の肉棒からもたらされる快感に悶えての事だった。
わたしは抱かれたまま、彼の胸にわたし自身の乳房を押し付ける。
「このまま…ああっ!!」
快感が駆け抜けてゆく♪
「愛されていたいの♪」
それがわたしの答えだった。
この肉体にはまだ馴染めてはいないが、わたしはもう、この快感から離れられないのだろう。
「あん♪ああ~ん!!」
わたしの淫声が桜の花びらとともに、風に流されていった…

鯉のぼり

鯉のぼりが風に揺らいでいた。
 
今更、納戸の奥から取り出す気はない。
男の子のいない筈の家の庭に鯉のぼりが飾られているのを、隣家の人々はどう思うだろうか…
そう…この家にはもう、男の子は居ないのだ…
 
その日、高熱を発した息子を掛り付けの病院に連れて行くと、ここでは対応出来ないと、都内の大学病院に移された。
伝染病の類いではないと言われたが、息子は集中治療室で家族の面会も断られてしまった。
3日後に、病状は安定したからと通された病室に居たのは「娘」と変わり果てた我が子だった。
 
医者からは元に戻る事はないと告げられた。
息子…娘の体調が回復すると、月イチで経過観察の為に通院するように言われて退院となった。
突然、見知らぬ女の子が出入りするようになると、近所に何を言われるか知れないと、早々に引っ越す事にした。
 
娘はかなり早い段階で気持ちの切り替えを終えていたようで、引っ越し先で転入した学校では、女生徒としてかよい通していた。
 
 
 
「ねえパパ、もう鯉のぼりの季節なのね♪」
退院後はわたしの事を「父さん」ではなく「パパ」と呼ぶようになっていた。
「うちにもあったでしょ?もう、出さないの♪」
どう答えるべきかと逡巡し…
「うちには男の子がいないからな…」
と呟いていた。
「じゃあ」
と娘は言った。
「じゃあ、男の子が産まれたら、もう一度出してくれる?」
 
娘は大きく膨れたお腹を愛しそうに撫で擦っていた。

カタツムリ

蝸牛(カタツムリ)は雌雄同体の生物である。
互いに精子を交換して子供を造る。
物陰を好み、じめじめした場所でのんびりと生きている。
 
 
部屋に閉じ籠り、食事さえも部屋に運ばせる俺は家族からもカタツムリのようだと揶揄されている。
いじめからヒキコモリとなったのだが、部屋から一歩も出ずに生活する事も苦にはならなかった。
たまにトイレには出る。更に頻度は低いが風呂にも入ることはある。
とは言え、家族とも極力顔を合わせないようにトイレも風呂も皆が寝静まった深夜に入ることが多い。
孤独が好きだから…という理由で納得してもらっているが、それには別の理由があった。
寝ている以外はパソコンの前に座り続けていた所為か、痔になったようで時々尻に血が付くようになっていた。
家族に気付かれないようにパンツを処理するには深夜の風呂やトイレは丁度良かった。
そう、痔からの出血…そう思っていたが、それは痔ではないもののように思えてきた。
血の出てくるタイミングが毎月のような決まった周期となっているのに気付いた。
それは女性の「生理」みたいだ。と連想し、よくよく出血してくる場所を確認すると、
それは肛門ではなく、玉袋の下側に出来た裂け目から滲み出ている事が判った。
 
出血が治まっているときに、そこに指を這わせてみた。
指先が裂け目の中にめり込んでゆく。
第一関節…第二関節…
どこまで入ってゆくのだろう?
それは、指を根元まで咥え込んでしまっていた。
(俺は何をやっている?)
これは女の自慰みたいではないか!!
取り敢えず、快感のようなものはないみたいなので「女の自慰」とは言えないが、
割れ目が本物の女性器のように思えてくる…
もし、これで胸が膨れでもしたら俺は自分が「男」であると言い切れなくなるようで不安になった。
 
 
胸…確かに膨らんではいない。
が、乳首が異様に突出していないか?
「んぁっ…」
触れてみると、痺れるような快感のようなものに思わず声を漏らしていた。
(な、なんだよ…コレ…)
指先で摘まんで弄ってみると、そこから伝わってくるのが確かに快感であると確認できた。
ジッ…
腹の奥に疼きが生まれた。
女性であれば子宮が疼いたとでもいうのだろうか?
股間が熱を帯びる。
股間がぬるぬると湿り気を帯びてゆく。
俺は右手で乳首を弄りつつ、左手を股間へと伸ばしていった。
股間を濡らすものを指全体に纏わらせ、その奥へと差し込んでいった。
(足りない…)
指一本だけでは疼きを抑えることは無理のようだった。
俺は二本の指を揃えて突き入れていった。
「んあ…あぁん…」
俺の喉から喘ぎ声が漏れる。それはどうしようもない快感だった♪
「…っ!!」
指の腹がある場所に触れた時、衝撃のような快感が俺を貫いていった。
重点的にそこを攻めたてると、どんどん快感が押し寄せてくる。
「んあん、あぁあ~んっ!!」
俺は嬌声をあげ、快感の中に意識を失っていた。
 
 
(俺は何をしていた?)
それは完全に「女の自慰」ではないか?
ペニスは性的快感に精液を放出することもなければ、硬く勃起することもなかった。
(俺は…「女」ではない!!)
慌ててペニスを刺激した。
ペニスは俺の意志に従い硬さを増した。
ほっと安堵の吐息が漏れる。
更に刺激を与え続けると、いつもの感覚が戻ってきた。
やがて精液が放出される。
(俺はちゃんと「男」だった♪)
 
でも…
と別の思いが浮かんで来る。
このペニスを割れ目の中に入れたらどうなるのだろう?
この精液が中に入ったら…
もし、俺の胎の中に本物の子宮と卵巣があったら、俺は俺自身の精液で妊娠してしまうのだろうか?
俺は吐き出した精液の一部を指に纏わらせると、再び割れ目の中に挿入していた…

2020年4月18日 (土)

戦闘員

「パパ、またね♪」
と笑顔で手を振った。
…「パパ」か…
あたし…俺はポソリと呟いた。
 
俺は今、全裸でベッドの上にいた。
その股間には「パパ」のぺニスの感覚がまだ残っている。
俺は「女」として、男に抱かれ、いくばくかの現金を手にしていた。
「パパ、またね♪」
と造り笑顔で送り出してやると、数日を置かずに彼からも連絡が入ってくる。
俺にはそんな「パパ」達が何人もいる。
 
 
 
俺が女の肉体にも拘わらず自分の事を「俺」ということを不思議に思うのではないだろうか?
勿論「パパ」達の前では「あたし」と言っているし、意識しないとついつい自分の事を「あたし」と言っている。
それは、強制的に「あたし」が「俺」に「刷り込まれた」所為なのだ。
「人体・人格の刷り込み」
それは印刷機のように一定の型を人間に刷り込み、好ましい人格の人々で埋め尽くそうと考えた奇人の能力が公然と行使された所為に他ならない。
ヒーローものの悪役の手下にはコピー人間のような戦闘員達がいる。
勿論それは物語の中、架空の存在ではあったが、その奇人はそれが「現実のものとなる」と吹聴した。
奴は実証実験の機会を得、デモンストレーションとして有能な「戦闘員」を作ってみせた。
勿論、軍事関係者は色めき立った。
従順で有能な兵士を無尽蔵に手にいれることができるとみると、奴に惜しみない支援を申し出たのだった。
 
だが、潤沢な資金を手に入れた奴は、支援者達の思惑とは異なり、奴本来の目的に突き進んだのだ。
奴本来の目的…それは奴自身の「ハーレム」を造る…というものだった。
奴の好みの女達に囲まれて、悠々自適・酒池肉林の生活に思う存分浸り続けるということだ。
そして、その元となる「版」も出来上がっていた。
あとはその「版」を刷り込む肉体が揃えば奴のハーレムの完成は目前だった。
 
が、そこにある「肉体」は戦闘員を刷り込む為に揃えられた「男」の肉体ばかりであった。
奴は元々「男」に「女」の版を刷り込むことに無理はあると承知はしていたようだった。
が、「女」の肉体を手に入れるのは支援者への手前、しばらくお預けと判断し
手近の肉体からランダムに選び出したものに、ハーレムのための「版」の試し刷りを行った。
そう、戦闘員用に集められた肉体のひとつが「俺」であり、
ランダムに選ばれたのがこの肉体…「俺」だった。
 
「女」の版が刷り込まれた俺が意識を取り戻すと
「やはりな…」と奴が呟いたと聞く。
刷り込みは不十分だったようだ。
奴は刷り込み後に肉体に「俺」の意識が残っていると判ると、即座に失敗作…「あたし」を廃棄したのだ。
 
 
 
 
奴のハーレムが完成したかは知るよしもなかった。
俺の周囲の世界は平和を保たれているようなので、奴の作った戦闘員達はそれなりの成果をあげていたと思いたい。
俺はといえば、奴の所からは廃棄されたが、機密保持のため一時的に監視付きのマンションに抑留された。
とはいえ、「失敗作」の噂を聞きつけた要人が「お試し」にやってきていた。
造られた容姿はそれなりのものがあり、「あたし」には刷り込まれた能力があった。
能力…ハーレムの構成員としてご主人様=「パパ」には最高のご奉仕を提供するという能力だ。
つまり「女」として「男」を悦ばす…ということだ。
「俺」としての意識は拒絶しようとするが、「あたし」は嬉々としてその肉体でご奉仕してしまうのだ。
 
やってきた要人はあたしのご奉仕に十分満足したようだった。
そして、「お試し」の評価が要人達の間に急速に伝搬した。
何度かの「お試し」があったが、彼等は「お試し」だけでは満足できなかったようだ。
程なく、あたしから「監視」が外された。
刷り込まれた人格により、機密情報の漏洩が起きないと証明された(?)らしい、
やってくる要人…「パパ」達は監視を気にすることがなくなり、心置きなくあたしの「ご奉仕」を受けてゆく。
そして、「パパ」達はあたしに満足すると、少なくはないお小遣いを置いていった。
 
「監視」が外れると同時に「正式」な生活支援も打ち切られていた。
行き続けるためにはお金が必要であり、彼等のお小遣いは俺が生きてゆくのに欠かせないものとなっていた。
俺は「生き残る」事を選択した。
「俺」の意識は今もってご奉仕を受け入れられないでいる。
が、「ご奉仕」を「あたし」に任せておけば、俺は何をせずとも現金は手に入るのだ。
(そう割り切れば良いのだ…)
 
 
 
俺の部屋は可愛らしいモノで溢れていた。
ぬいぐるみ、アクセサリー、化粧品…
クローゼットもカラフルなドレスに埋め尽くされ、タンスには様々な下着が詰め込まれている。
無論「俺」が買ったのではない。
「あたし」が自分で買ったり、パパに貰ったりしたものばかりだ。
 
今、俺が手に取っているのはスケスケのネグリジェだった♪
(その選択は「俺」の意思である筈がない!!)
俺の意識は拒絶しつつも、俺は服を脱ぎ、ネグリジェをまとってゆく。
ショーツは紐パンに穿き替えていた。
 
「パパ♪お帰りなさい♪」
あたしは満面の笑みを浮かべて、今夜の「パパ」を迎え入れた。

 

 

 

百合じゃない!!

俺は百合なんかじゃないっ!!
 
元々の名前が「勇利」だからって、性別が変わって「百合」という名前になった…
って、そんな事を言ってるんじゃない。
百合…つまり、女性同士の愛情関係…レズビアンの類と俺を同一視するな!!と言っているんだ、
俺の性自認は男のままであり、好きになるのは異性なのだから、女の子を好きになるのは当然だろう?
 
や、やめろっ!!
スカートを捲るなっ!!
見えた?
「可愛い」と言うな!!
家にあるのはこんなのがプリントされたパンツばっかりなんだよ。
し…仕方なく穿いているだけだ。
断じて俺の好みじゃない!!
服だって、こんなピラピラのしかないんだ。
男の頃の服はサイズが合わないからと全て捨てられてしまったんだ。
裸でデートする訳にもいかないだろ?
ふ…服は問題じゃない。俺の内面は男なんだ!!
俺は男なんだから、デートでも男らしくちゃんと彼女をエスコートしているだろ?
 
 
じゃあ、先ずは喫茶店でお茶でもしよう。
そこの角を曲がった所に新しいお店が出来たんだって♪
「二人です。」
と店の人に告げて店内へ…
窓際の席で良いよね?
このお店、シノちゃん達がお勧めだっていってたの♪
特にパフェは秀逸だって…
って、お前はコーヒーだけかよ。
俺だけパフェっていうのもなんだな…
味見してみる?
そら「あ~ん♪」って、美味しいでしょ?
な、何見てるんだよ。
ほっぺに?
あらやだ!!
って、何勝手に取って…って、おい、それを自分の口に入れるなよ…
 
 
じゃあ、次どこ行きたい?
観覧車?良いんじゃない♪
おお、高い高い♪って、悪い。少し揺れたか?
胸?まあ体は女になっちまったからな♪
元男のクセにって、ひがむなよ。良かったら揉ませてやるぜ♪
…ん…ぁん。ち、違う。感じてるんじゃな…い…
な、何だよ?ちょっと股間がぬるぬるしてきた?
こんな…筈じゃ…
ひゃうっ!!
指をナカに挿れるな!!
お前を逝かす前に俺が逝ってちゃ話しにならないだろ?
俺が男として、お前を…俺が百合じゃないと証明され…
んあ、あぁん♪
や、止めろ…
隣のゴンドラから覗かれ…
あっ、ああ~ん♪
 
パシッ!!
 
フラッシュが炊かれた?
見事に俺のアへ顔が写ってるじゃないか!!
そんなの買うなよ!!
何の記念だっ!!
 
 
 
って、何を持ってきてるんだ!!
それって「レズ」の定番アイテムじゃないか?
そんなの使ったら俺にも「レズ」の烙印を押されたと同じだろうが!!
俺は百合じゃないんだ。
あくまでも男としてお前を抱きたいんであって、お前とそんな事するってことは俺が女だって認めるようなもんだ。
俺はお前に嵌められるなんて絶対に嫌だからな。
ダメッ!!服は自分で脱ぐから…
何見てるんだ?
仕方ないだろう。この胸を支えるにはそれなりの装備は必要…
そこで羨ましがるなよ!!
って、もう装着してるのか?
ちょっと待て。
その体勢はないだろ?
この方が奥まで届く?
だから、俺は嵌められる訳には…
んあんっ!!
お、おい!! まだ覚悟が…
だ、ダメ…ちょっと…ぁ…イイッ!!
 
 
…俺、何回逝かされた?
よく数えてられたな。
これで、完全に俺も百合の仲間入りだな。
…違う?
男に目覚めた?
確かに胸は俺より小さいし、背も高い。
結構筋肉も付いてるし…
でも、俺はホモになる気はないからな!!
このままで大丈夫?
ホモにはならない?
そっか、俺ってもう女の子なのか…
って、そんな訳あるか!!
俺は…
ん…ああん♪
やめろって、またシたくなっちゃうだろう?
問題ない?
っひゃいん!!
やめろよ。今の俺は即にどうにかなっちゃいそうなんだ。
だから、そんなもん見せるな!!
ダメ…
もう知らないからっ♪
ヤるなら最後まで…
 
 
 
 
良いよ、お前が男になっても…
その代わり、一生面倒見てよね?
約束だよ♪

 

疫病

その街からは人の気配は一掃されていた。
まん延した疫病により、多くの者の命が絶たれ、残りの者達はこの街を離れていった。
だだ一部の免疫を持った者だけが生き延びていた。
俺もまたその数少ない免疫者のひとりである。
だが、その免疫を得る為には失わなければならないものがあった。
 
 
それはまだ実験段階…というよりは、まだ仮説でしかなかった。
今まで人類は空想の中だけに存在した特別な存在があった。
男性でありながら、男性の精を受けて妊娠・出産が可能な存在…単なる半陰陽ではない…勿論、性自認が男の女性でもない。
その特別な存在のみが免疫を持つという仮説であった。
自暴自棄となっていた俺は、その特別な存在への改造手術を受ける事を承諾した。
 
俺の股間に女性器が埋め込まれた。
とはいえ、本来の器官もそのまま残されている。
俺は男のまま、股間に女性器を持つ存在となった。
しかし、そこで終わりではない。
その股間に入れ替り立ち替り、男性を受け入れることになる。
確かに誓約書にはそのような記載はあったが、実際に男性を受け入れる段になると、精神と肉体が拒絶する。
最初は手足を固定され、強引に股間を開かされ、そこに突っ込まれたのだった。
 
勿論、それだけで終わりではない。
大量の精液を俺の子宮に注ぎ込むまで終わらないのだ。
それも一人だけではない。一日に幾人もの男の精液が注ぎ込まれるのだ。
その特別な存在は男でありながら妊娠が可能な者とされているからだ。
 
回数を繰り返すことで拒絶する事は抑えられ、手足も自由になった。
が、俺は最後まで「女の快感」というものを感じられたことはなかった。
最後とは、俺の胎内に注ぎ入れた精液に含まれた精子と俺の中で生成された卵子が結合し、俺の妊娠が確認されるまでである。
妊娠が確認されると交合は不用となる。
そしてある程度まで胎児の成長が確認されると、俺は腹を切り裂かれて胎児は取り出された。
 
その後、俺はこの疫病に強制的に罹患させられる。
特別な存在となった俺は発症せず、血液の中には免疫物質が確認された。

免疫の存在が確認されたことで、俺が「特別な存在」となったことが立証されたのだ。
そして、俺はベッドの上で血を絞り取られる日々を過ごした。
しばらくすると、胎内から取り除かれた存在の空虚感に襲われた。
(抜き取られた場所を元通りに満たす必要がある…)
とは言え、胎児をもう一度押し戻すことなどできはしない、
(なら、もう一度胎児を作れば良い?)
それには「男」の精液が必要である。
この建物には不自由することがないくらい「男」はいる。
俺はベッドを降りた…
 
 
 
しかし、不意に建物の中から気配が消えていた。
疫病がこの施設の中にも蔓延したようだ。
俺から採取した免疫物質がどうなったかは知る由もなかったが、ここにいた俺以外の人間は免疫を持っていなかった。
皆死に絶えてしまっていた。
この建物の中では、もう誰も俺の胎を満たしてはくれない。
俺は街に出た。
街にはまだ「男」がいた。
俺は彼等に俺の胎を満たしてもらった。
が、それも数日で困難となってしまった。
 
その街からは人の気配は一掃されていた。
まん延した疫病により、多くの者の命が絶たれ、残りの者達はこの街を離れていった。
 
だだ俺ひとりが生き延びていた。
空虚感を埋めるべく、俺は次の街に向かっていった…

 

出張(1/4)

打ち合わせの時間まではまだ大分余裕があった。
午前中の打ち合わせとはいえ、日帰りは難しいタイミングだったので前乗りしていたが、その日は朝早くから目が覚めてしまっていた。
ホテルを出て時間潰しに街中を散策していると、公園でフリーマーケットが開かれていた。
冷やかしに覗いてみると、よく解らないモノが並んでいる店があった。
ホレ薬にホレられ薬
還魂薬、憑依薬、性転換薬、不老薬
暗殺薬、自殺薬、他殺薬…
(薬って、売るには薬事法とかの制約があったじゃないかな?)
「コレなんかどうだい?」
と売り子に声を掛けられた。
瓶のラベルには「モテ薬(男)」と書かれていた。
「営業の前にひと呑みしておけば好感度アップで商談も即にまとまるよ♪」
その隣には「モテ薬(女)」の瓶があった。
(男)が商談での好感度アップということは、商談相手が男性だからなのだろう。
女性相手は(女)の方ということなのだろう。
まあ、なんちゃってグッズの一種ではあろうが、大事な商談前に得体の知れないものを口にする訳にもいくまい。
明日は会社も休みだから、変なことになってももう一泊する分にはバチはあたらないだろう。
コレを呑んでバーかスナックで女の子にモテたらそれはそれで話しのネタになるだろう♪
 
と、買ってしまった薬の瓶が鞄の底に転がっていた。
夜はバーかスナックかと頭の中がピンク色になっていたせいか、商談は惨敗だった。
憂さ晴らしにヤケ酒を煽っていて、しばらくしてからこの瓶の存在を思い出したのだった。
こんな居酒屋で女にモテてもしょうがないが、ヤケ酒の勢いも駆って、グビッと呑み込んでいた…
 
 
 
記憶が飛んでいた。
気が付くとそこはベッドの上だった。
(本当にモテて女の子をホテルに連れ込んでしまったのか?)
壁の一面は全面が鏡のようになっていて、ベッドが映っていた。
ベッドの上には全裸の女の子がこちらを見ていた。
記憶に無い中で、どんな容貌の娘を連れ込んだのかと心配もあったが、その娘の容姿は申し分ないものだった。
 
が…
ベッドの上にはその娘ひとりしかいない?
首を傾げると、その娘も同じように首を傾げている。
手を上げてみた。
その娘も同じように手を上げる…
鏡ではなく、自分のいるベッドを確認すると、ベッドの上には自分ひとりしか存在しない?
その視線を自分自身に向けてみた…
胸には双つの膨らみがあった。
掌をあてると弾力のあるそれは「女」のソレと同じに感じられる。
更に、胸からはそれが「揉まれている」感覚が伝わってきた。
鏡を見るとベッドの上では女の子が自分の胸を弄っている姿を映していた!!
 
(どうなっているんだ?)
ベッドを降りて鏡の前に向かった。
全裸の女の子が近付いてくる。
それよりも、胸が揺れるのに気を取られる。
更に、何か股間から滴ってくるものがあった。
鏡に映っているのは女の子であり、その股間にはぺニスなど存在しない。
当然だが、今の自分の股間が映されているのだ。
ソコに手を伸ばせばぺニスに触れることはなく、代わりに女の子の割れ目に触れることになる。
指先に良く知った白い粘液が絡みついていた。
(誰の?)
というより、この肉体が男に犯されたという事実をどう捉えれば良い?
それは、自分が「男と性交した」ことの証に他ならない。
男に抱かれ、股を開かされ、突っ込まれ、ナカに射精されたのだ。
 
 
 
勿論、記憶にはない…

徐々に記憶が戻ってきたみたいだ。
 
薬を飲んだ直後に猛烈な排泄衝動が襲ってきた。
嘔吐することはなかったが個室の便座に座った途端、大小が一気に排泄されていった。
それは尋常な量ではなく、排泄しながらも何度か水を流す必要があった。
多分、その時点でも体重は半減していたに違いない。
ズボンが落ちないようにベルトで締め上げ、トイレを出るとそのまま会計を済ませた。
 
店を出て歩いていると、あの公園があった。
「使ったんですね♪」
そこにはあの売り子が立っていた。
「これはオマケです」
と紙袋を渡された。
「そこで着替えると良いですよ♪」
と公園の公衆トイレを指し示された。
まるで暗示に掛かったかのように紙袋を手にトイレに向かっていた。
紙袋の中には女物の衣服が入っていた。
その時点では既にもう女の肉体になっていたが、なぜか違和感を覚えることはなかった。
着ていた服を全て脱ぎ捨て、ショーツ、ブラジャーなと女物の衣服をそれを着るのが当然のように身に着けていった。
「なかなか可愛いじゃないか♪これならモテまくること間違いないね♪」
そういう彼を後ろに繁華街に戻っていった。
 
彼の言うように、色んな男達から声を掛けられた。
しばらく適当にあしらっていると、一人…ピンっと来た人がいた。
何の躊躇いもなかった。
その人と一緒に真っ直ぐにホテルに向かっていた。
小川の水が流れてゆくように、全てが自然と動いてゆく…
ホテルの部屋に入るなり、濃厚な接吻に酔い痴れる。
服が脱がされてゆき、ベッドに寝かされた。
繰り返される愛撫は、小川が水かさを増して立派な川となっていくように快感を増幅させていった。
せせらぎの水音のようだった喘ぎ声は、しっかりとした水流の音のように部屋の中に響いてゆく。
そして…
 
川は谷間を流れ落ちる急流となった。
激しくぶつかり渦を巻くように、快感に揺さぶられる。
滝の中に放り込まれるように、幾度となくイかされた。
甲高い嬌声が響きわたる…
 
やがて、川は大河に合流した。
ゆったりとした流れのように、これまで経験したことのないような幸せに包まれていた。
それは安らかな眠りを誘う…
そして、意識は途絶えた。

 

出張(2/4)

ベッドの脇のソファーには服が畳まれて置かれていた。
それは公園で着替えた女物の衣服の一式だった。
勿論、今の肉体では本来の自分の服はサイズが合わないし、今はこれしか着るものがない。
さっきも、シャワーを浴びてこの肉体が全くの「女」であることも確認した。
薬の効果が切れるまでは「女」として振る舞うしかないのだろう。
 
公園に向かった。
そこは幼い子供達とその若い母親達で溢れていた。
自分が「場違い」であると感じていると
「お姉ちゃん、一緒に遊ぼう♪」
と子供達に囲まれてしまっていた。
困惑しているのに気付いた母親のひとりが
「お姉ちゃん困ってるでしょ。」
と子供を引き離し
「すみませんね♪」
とこちらに頭を下げた。
このままでいると再び子供達に囲まれてしまいそうなので、こちらも軽く頭を下げて公園を後にした。
 
子供達を引き付けたのも、あの薬の効果なのだろうか?
子供にモテてもしょうがない。
否。今はモテる事自体が問題なのだ。
薬の効果が切れなければ、モテ続けるし、この姿のままなのだということだ。
一刻も早く薬の効果は切れて欲しい。
遅くとも明後日には休みが明けるので、出勤しなくてはならない。
惨敗した商談の後始末も必要だ。
たとえこの姿のままでも仕事を休む訳には行かないだろう。
自宅に戻れば何とか自分を証明する事は出来る筈だ…が
 
ここには出張で来ていたのだ。
自宅に戻るには帰りの切符が必要だった。
切符は財布に入れ、上着の内ポケット…
(!!)
上着はこの服に着替えた時に公衆トイレのゴミ箱に棄ててきた?
自宅の鍵も一緒だ。
 
「お困りですか?」
不意にあの男の声がした。
モテ薬を売っていた彼だ。
「ここに鞄と服があります♪」
「か、返せ…返してもらえませんか?」
「無料でという訳にはいきませんね。」「だが、金はそっちにしかない。」
「いえ、お金ではありません。今晩、もう一晩男性に抱かれてください。今度の相手はこちらで指名させていただきますがね♪」
 
(抱かれる)
そう聞いた時、もう二度とあの快感には流されまいと思うと同時に、もう一度あの快感で満たされたいと…
この肉体が反応していた。
ジクッと股間の奥から滲み出すものがあった。
 
「な…何で?」
「貴女にはそれを知る権利はありません。こちらの言う通りにするか、そのままで放り出されるかです。」
「もう一度だけで良いのか?」
「貴女がオーケーすれば、支援は惜しみませんよ♪」
「本当に一度だけか?」
「明日にはこれを返します。約束は絶対です。」
と鞄と服の入った紙袋を持ち上げた。
 
 
 
「ここは?」
まだ夜までには時間があったが、それまでにも色々することがあるらしい。
「エステサロンです。貴女を更に磨き上げてもらいます。」
サウナで汗を流し、全身を揉みほぐされ、得体の知れない液体を全身に塗られた。
「全身パックです。リラックス効果もありますのでしばらくはお休みになっても構いませんよ♪」
催眠効果のあるBGMと相まって、いつの間にか眠ってしまっていた。
眠っている間に、どうやら手足の爪にネイルアートも施されたようだ。
 
ヘアサロンでは髪の毛を金色に染め上げられ、カットされ、これでもかと盛りあげられた。
メイクもかなり派手なもので、そこらじゅうでラメがキラキラと輝いていた。
用意されていた新しい服も、これまで以上に「オンナ」を強調していた。
本来は「男」である自分がこのような姿を晒すことになるとは思いもよらないことだった。が…
鏡の中に変わってゆく自分を見て、更にどう変わってゆくのかという好奇心も生まれていた。
 
「あとは口調と仕草だな。」
「無理だよ。中身は男のままなんだから。」
「可愛い声でそう言うのもギャップ萌えで喜ぶ客もいるが、今回はそうも言ってられないんだ。」
「だから無理だって。」
「いや、昨夜も本番になれば無意識に可愛いい仕草や言葉を出していたじゃないか♪」
「き、記憶にないな…」
「まあ成るようになるかな♪試しに自分のことをアタシって言ってみな。」
「自分のことをアタシって言った所で何が変わるっていうのよ。…のよ?」
「これなら問題ないな♪」
「どういうことなの?アタシって…元に戻ってもこんなじゃ嫌よ!!」
「まあ、今晩ひと晩そのままでいてくれれば良いんだ。無理しなければ自然と仕草や言葉遣いは補正される筈だ。」
彼はアタシの言うことなど聞いてないみたいだ。
 
連れてこられたのは高級クラブのような場所だった。
姿だけならアタシはナンバーワンのホステスにも負けないと思う。
(って、何でそんな対抗心が沸いてくるのよ!!)
奥の個室…って言ってもかなりの広さのある部屋だった…に通された。
「ここで待ち合わせることになっている。言うことを聞いて一晩従っていればそれで終わりだ。」
そう言って鞄と紙袋を持ち上げ
「これは明日迎えに行った時に渡してあげるからね♪」
と言って彼は部屋を出て行った。
アタシは独り部屋に残されている。
たとえここから逃げ出したとしても、こんなピラピラなドレスでは昼間の街中を歩けないし、着替えを買おうにもお金も持っていない。
(まあ、成るようにしか成らないのよね♪)
と、慣れないピンヒールのサンダルで疲れた脚を休めるように近くにあったスツールに座った。
 
そう…座ったのはスツールだった。
近くには立派なソファーがあったにもかかわらずに…
(アタシって、根っからのホステスなのかしら?)
脚を休めながらぼーっと時間が過ぎてゆくのを待っていたら、しばらくして外に人の気配があった。
アタシは立ち上がるとスカートの乱れを直し、鏡で笑顔を確認した。
「待たせたね。」
と、恰幅の良い男性が入ってきた。
テレビの国会中継に映っていたような人だった。
「私が何者かは詮索しないこと。今宵ひと晩は君は私のパートナーだからね♪」
そう言われた途端、アタシはこの人のパートナーであることを自覚していた。
彼が上着を脱ぐのを手伝い、上着をハンガーに掛けた。
彼がソファーに座るのを見ながら、バーカウンターに向かった。
「何にします?」
とアタシが聞くと
「ブランデー…今は少しだけで良い。」
アタシは言われた通りにブランデーをグラスに注いだ。
彼はグラスを受け取ると、そのままアタシの腕を引いた。
「キャッ!!」
アタシはバランスを崩してそのまま彼の膝の上で抱き止められた。
「君と出会えた奇跡に♪」
と、彼はグラスを掲げてブランデーを口に含んだ。
そしてそのままアタシの口に…
彼の口からブランデーが注ぎ込まれた。
喉が熱くなり、その液体を呑み込むと、その熱が全身に広まってゆく。
「良い反応だ♪」
彼はグラスをサイドテーブルに置くと、その手をアタシの胸元に差し込んできた。
「ん…ぁあん♪」
指先で乳首が弄られ、アタシは軽く喘ぎ声を漏らしていた。
「感度も良いんだね♪」
とそのままアタシを抱き上げた。
見た目の年齢以上に体力があるようだ。
そのままお姫様だっこでカーテンで仕切られた裏側に…
そこには立派なベッドが鎮座していた。
 
「そのままで良い♪」
ベッドに寝かされたアタシの上に彼が股がってきた。
そのまま股間の逸物を引き出すと、アタシの目の前に近付けた。
その先端がアタシの口に押し込まれた。
まだ十分には勃起していない柔らかなソレを、アタシは口の中で丁寧に刺激してあげた。
 
それが硬く勃起すると、彼はアタシを四つん這いにさせた。
服は着たまま、下着だけを剥ぎ取っていた。
アタシはもう股間がグショグショに濡れていることなど隠そうとも思っていなかった。
指先で軽く膣口が揉み解されただけで、彼は一気に突っ込んできた。
「んあっ、ああん!!」
快感がアタシの中を突き抜けてゆく。
でも、それはまだ始まりでしかないと分かっていた。
 
繋がれたまま、服が脱がされてゆく。
ブラのカップから溢れでた乳房の先端を弄られる。
「あっ!!ああっ♪」
痛みと快感が入り交じる。
結い上げられた髪が解かれ、背中に広がった。
誰がどう見ても、アタシは淫乱な「オンナ」だった。
再び、アタシの内で彼が暴れ始めた。
「ああ、ああ、ああ~ん♪」
突かれる度にアタシは淫声をあげる。
激しさが増すとともに快感も増大してゆく。
「これはどうかな?」
と角度が変わった途端
「あっ、ああ~~っ!!」
アタシはイかされていた…

 

出張(3/4)

目覚めはベッドの上だった。
場所は変わっていないが、そこにはもう彼の姿はなかった。
その代わりに奴がいた。
「おはようございます♪」
と奴の視線がアタシに注がれた。
「いやぁ!!」
アタシは全裸だったのに思い至り、叫ぶと同時に手近の布で体を隠した。
「では、これをお返ししますね♪」
と鞄と紙袋が差し出された。
その男物の鞄が自分のものだったことに気付くまでにしばらく時間がかかった。
そして、何で自分が男物の鞄を持っていたのかに思い至る。
「これって、アタシのものなのよね?」
紙袋の中も確認する。
「一昨日までこれを着ていたんだ…」
今のアタシにはひと回りもふた回りも大きい。
着たとしても彼シャツのようにブカブカに違いない。
 
「こちらには昨日の昼間に着ていたものです。今日はどちらを着ますか?」
当然、今のこの体に似合うのは女物の方…
何でそんなことを聞いてくるのだろう?
「もし宜しければ、そちらの鞄と服は当方で処分しておきますよ♪」
「どういうこと?」
「貴女がこの先、女性として存在するのであれば、一昨日までの過去は重荷になるでしょう?」
「この先…も?」
 
 
 
 
鞄の中身は新しく買った旅行鞄に詰め替えた。
一昨日までの服も紙袋ごと詰めている。
更に新しく買った着替えの服といくつかの化粧品も入っている。
アタシは女物の旅行鞄を足元に置き、帰途に就いていた。
モテ薬の効果は次第に薄れていくとのこと…
「この先もモテ続けていられるかは貴女次第ですよ♪」
彼はそう言い残して去っていった。
 
(モテ続ける…か…)
アタシはこの先のことなど何も想像できなかった。
しばらくはこの姿のままだろうし、何よりも明日はこの姿で出社しなければならない。
そう…商談惨敗の報告をしなければならないのよね…
モテ薬の効果が効いて、なにもかもがうやむやになってしまえば良いのに…
アタシは心地好い振動に、眠りの中に引きずり込まれてった。
 
 
 
レディースのスーツ、黒のパンプス、小さな鞄には必要最小限のものだけを入れた。
いつもはすし詰め状態の満員電車も、周りに壁が出来たようにポッカリと誰にも触れることのない空間があった。
カツカツとヒールの音をたてながら会社に向かった。
IDカードはすんなりとアタシを通してくれる。
自分の席に着こうとすると、部長に呼ばれた。
「出張ご苦労様。今朝ほど先方から連絡があって、再度検討した結果うちと契約してくれるということだったよ。」
(何が起こったの?)
まさかモテ薬の影響が飲む前にまで作用してるの?
アタシの周りだけなら、こんな姿になっても受け入れられるとは思ってたけど…
「良くやった♪契約の為なら枕営業だろうが何だらうが私は許すよ♪」
「ま、枕…って、それセクハラですよ!!」
「下ネタはいつもの事…って、お前って女だったっけ?」
「部長、いいかげんにしてください。彼女も困ってるでしょ!!」
と、部の紅一点だった娘が助け舟を出してくれた。が…
「彼女…で良いのよね?」
と頭を悩ませ始めてしまった。
雲行きが怪しそうなので
「外回り行ってきます♪」
と部屋を後にした。
 
 
「今日も可愛いね♪」
いつものお得意先に顔を出すと、いつもとは違う挨拶となっていた。
いつもは
「なんだ、今日も来たのか。よっぽど暇なんだな?」
とか言われるのだが、今日は何故かお茶まで出てきた。
「この間言ってたやつ、うちでも前向きに考えたいんで見積り持ってきてくれないかな?」
と、こちらが切り出す前からそんな事を言ってきた。
出張の商談もそうだが、全部がモテ薬の所為なのだろう。
だとすると…
「…と言うことで、この後ホテルに行かない?」
と手を握られた。
「そ、それはまたの機会に…」
と振りほどいて立ち上がった。
「では後日、見積りを持ってきますね♪」
と、お得意先を後にした。
 
 
まだ仕事中だと言うのに、路を歩いているとワラワラとナンパ男達が集まってくる。
多少強引にでも進んでいかないと、囲まれて身動きが取れなくなりそうだった。
(どうせならもっと大人の男が良いのに…)
などと変な考えが浮かぶとまたピンっときた男性が目の前に現れた。
アタシの頭の中からは仕事のことなど消し飛んでいた。
真っ直ぐにホテルに向かっていた。
シャワーを浴びるのももどかしく、アタシは彼のぺニスを咥えていた。
「ああ、活き返るわ♪」
生命力のみなぎるような彼の精液を呑み込むと、アタシの中の「オンナ」が噴火する火山のマグマようにせり上がってきた。
アタシの股間はもうトロトロになって彼を待ち望んでいる。
「来てっ♪」
全裸になりベッドに転がり、股間を拡げていた。
彼もまた全裸となり、禍禍しく復活した屹立を遠慮もなくアタシのナカに突っ込んできた♪
「ああん、ああ~んっ!!」
アタシは抑えることなく嬌声を発し、幾度となく昇り詰めていった…

 

出張(4/4)

再びあの場所に出張することになった。
成約のお礼が必要だと部長に勧められてのことだ。
挨拶の後、一席が設けられているという事で、前回とは違い昼前の出発で問題なかった。
(その晩の宿泊も先方で用意してくれているらしい)
こんな気楽な出張などこれまで経験した事はなかった。
先方に向かうタクシーの中でお化粧を直す手間も苦にはならなかった。
前回対応してくれた担当者が迎えに出ていた。
「こちらへどうぞ♪」
とビルの最上階にある応接室に通された。
 
「済まないね。わざわざご足労いただいて♪」
と手を伸ばしてきた男性…
「まさか、あなたが?」
彼とは初対面ではなかった。
自分では枕営業などした覚えもなかったが、彼こそがこの姿になって二人目の男性、その人だった。
伸ばしてきた手は握手ではなく、そのままアタシの背中に回り、ギュッとアタシを締め付けてきた…
「君の事は忘れられなかった♪」
そのまま隣の部屋へ…
そこにはベッドがあり、窓の外には綺麗な夕焼けが広がっていた♪
「良いよね♪」
アタシは答えをひとつしか知らなかった。
彼の首に腕を回し、引き寄せ、口付けを交わしていた。
 
気が付くと、街の灯りと夜空の星の輝きが部屋の中を照らしていた。
窓が鏡のように部屋の中を映す。
アタシは全裸で彼の上に跨がっていた。
屹り立つ彼の逸物がアタシのナカを埋めている。
アタシが腰を振るだけで、アタシのナカの敏感な所が思うがままに刺激される。
ここがお客様の会社の中だってことなど忘れ果て、アタシは悦感に淫声をあげ続けていた。
 
 
 
「また、来てくれるかい?」
彼の腕に頭を預け微睡んでいた。
「また?…ううん、帰りたくないかも…」
「じゃあ、ずっとこっちにいるかい?」
「こっち…あなたの側がいいな♪」
幸せの余韻の中、自然にそんな言葉がこぼれ落ちる。
「本気にしてしまうぞ。」
「そうよね…それは出来ないものね…」
「いや、本当に君が望むのなら…」
アタシは…心の奥でそれを望んでいるアタシがいる。
もう一方に冷めた瞳のアタシが無言でアタシを見つめていた。
(アタシは本来、存在しない筈の人間なのよ!!)
アタシは「誰」なの?
 
彼は言っていた、
(貴女がこの先も、このまま存在するのであれば、過去は重荷になる…)
過去…アタシの過去って?
記憶にある「アタシ」…
小さい頃…小学生…赤いランドセル…
中学はセーラー服…
女友達とアイドルの話題で盛り上がっていた
まだ初恋の経験もなく女子高に…
(?)
これってアタシの記憶?
 
どうでも良い…
アタシは今の幸せに包まれていたい♪
「もし許されるのなら、アタシはこのままあなたの側にいたいわ…」
アタシがそう言うと
「そういう事だ。」
とドアの向こうに声を掛けた。
ドアが開かれると奴がいた。
「お二人とも宜しいですね。」
「もちろんだ。」
と彼。
アタシはただ頷いていた。
「では、良い明日を♪」
と言い、奴は最初からそこにいなかったかのように姿を消していた…
 
 
「どうした?」
彼が聞いてきた。
アタシはさっきまで何を考えていたのだろう?
そう、この幸せがずっと続けば良いな♪って…
「このまま、ずっと幸せでいたい…」
「問題ない。」
と彼が起き上がる。
「先ずは食事をしよう。その後、君のマンションに送ってあげるよ♪」
アタシの…愛人であるアタシを囲ってくれている…アタシの帰る場所。
…帰る…
 
(アタシはどうして此処にいたの?)
頭の片隅に「出張」の単語が浮かんだが、会社勤めなどしたことのないアタシには無縁のもの…
でも、彼の出張に付いていって温泉旅館でシてもらうのも良いわよね♪
そんな事を考えながらお化粧を済ます。
「お待ちどうさま♪」
アタシは彼に抱かれるように、その部屋を後にした。

 

 

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