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2020年3月18日 (水)

兵役

とうとう俺のところにも「赤紙」が送られてきた。
いわゆる「召集令状」…軍隊への強制参加が求められるのだ。
しかとすれば、いずれ逮捕されて収容所での強制労働が待っている。
同じ肉体労働が強制されるにしても、素直に令状に応じた方が待遇も格段に違うと聞いていた。
 
しばらくは帰って来ないと聞いていたので、独り住まいの荷物をまとめて、長期用のレンタルボックスに放り込んだ。
その足で住まいを解約し、令状に書かれていた集合場所に向かった。
 
 
受付を済ませると学習室のような場所に通された。
広い部屋にポツリポツリと人が座っていた。
俺と同じような年齢であり、俺に手渡されたと同じような冊子に取り組んでいる。
彼らもまた赤紙が送られてきた口なのだろう。
 
空いている席に座り、その冊子を開いた。
適性検査のためのものらしい。
冊子と一緒に渡されたペンで設問に答えてゆく。
マークシートではなくチェックを付けるだけの選択式だが分量が多いので頭の中が真っ白になる。
 
時間が来たとかで途中で終わりになった。
続いて身体検査となった。
検査着に着替えさせられ、身長体重に始まり、レントゲンだけではなくMRIにも掛けられた。
全身をくまなく検査された。
 
検査は終わったが検査着のまま部屋で待つように言われた。
しばらくして書類をもった制服の男が現れ、先に検査の終わった者を呼び出した。
「南方への配属だ。」
呼ばれた男は筋肉質で即戦力になりそうだった。
 
続いて呼ばれたのは、いかにも切れ者の風貌をしていた。
「お前は戦略研究室だ。」
そいつはニヤリと笑い、呼びに来た制服の男と部屋を出ていった。
 
そして、部屋の中には俺一人となった。
そしてドアが開き、入って来たのは制服の…女だった。
「あなたは後方支援部隊に配属よ。」
どうやら肉体労働とは縁の薄そうなところのようだ。
俺は彼女の後に付いて別棟の研修所に入った。
「宿舎もこの中にあるの。基本的に配属まではこの棟から出られないからそのつもりでね。」
 
部屋は一人部屋だった。
同居人に煩わされることもないので良いのだが、食事も部屋に配膳されるのでジムで運動する以外は部屋に籠りきりとなった。
ジムでの運動はここでの導入プログラムに従って進められる。
軍隊と聞いて、無茶苦茶ハードなブートキャンプかと思いきや、どちらかというと柔軟体操のようなものが中心となっていた。
パワーを付けるのが主眼ではないことは、配給される食事の量からも推測できた。
実際、なんとか体力を維持できるギリギリのカロリーしかないのだろう。みるみる身体は痩せ細っていった。
 
 
「次のステップに進みます。」
と部屋に持ち込まれたのはVR学習装置だった。
運動の時間が削られ、この装置での学習に充てられた。
が、一人部屋の中での学習である。
誰にも見られていないと思い、気が緩んでしまい、いつも途中で居眠りをしてしまっている。
誰も咎めないので、そんな学習がしばらく続いていた。
 
 
「今日は水中エクササイズとなります。」
運動の時間になり、いつもとは違うフロアに連れていかれた。
「コレに着替えなさい。」
水中エクササイズをやるのであるから、水着に着替えるのは何の不思議もなかった。
しかし、どこかオカシイと感じながらも私はその紺色の水着に手足を通していた。
女性インストラクターに従い、プールに入った。
初めてだからかなのか、今回のエクササイズはプールの中を数回歩いただけで終了となった。
更衣室には着替えが用意されていた。
いつもの支給品とは少し違っていたが、私は下着を着け、被るようにしてそれを身に着けた。
割り当てられた鏡の前で濡れた髪をドライヤーで乾かしてゆく。
入隊して大分時間が経ち、髪の毛も相応に伸びてきたので、乾かすのにも時間が掛かる。
並んでいる同僚…とは言いつつも言葉を交わすことはないので名前も知らない…も同じように髪を乾かしていた。
(?)
同僚の胸元に目がいった。
新しく支給された服のデザインがそう見せるのか、同僚の胸が大きく膨らんでいた。
(羨ましい…)
と、自分の貧弱な胸を見直した。
寝る前のマッサージの時間をもう少し増やさなければ…と考えていた。
 
部屋に戻ると鏡の前に座る。
更衣室の鏡の前には最小限のものしか置かれていなかったが、ここには様々な容器が並べらている。
私はこれらの容器から液体を掌に取り、顔に塗り込んでいった。
(何でこんな事をしているのだろう?)
不意に疑問が浮かぶが
『何もオカシイことはないのよ♪』
頭の中で声がした。
それはVR学習装置から聞こえてくる教師の声だった。
鏡の前で行う所作はVR学習装置で散々習ったことじゃないか。
(オカシなことは何もないんだ!!)
と自分に言い聞かせる。
何も考えず、習った通りに鏡の前のものを次々と顔に塗ってゆく。
アイシャドウ、チーク、リップグロス…
ヘアブラシで髪を整えながら可愛くなった自分に満足する。
(ただ、胸はもっと大きくしたいよね♪)
 
部屋に戻ったときに水中エクササイズで使った水着をネットに入れ洗濯機に掛けておいたのが出来上がっていた。
取り出してハンガーに掛ける、浴室に干しておく。
最近は前日に着た衣服は自分で洗濯するようになっていた。
食事も完成品ではなく、材料が届けられ、自分で調理している。
これらは後方支援部隊として私達に必要な技能なのだ。
いずれは私達が前線で戦う兵士達の衣服を洗い、彼らに食事を提供するようになるのだ。
自らを可愛く見せるのも、彼らに安らぎを与えることになるし、柔軟な肢体はご奉仕の時に彼らの要求に応じた姿勢を容易に作れるようにする為だ。
ご奉仕を考えると、できればもう少し胸に膨らみが欲しいと思う。
彼らの中には胸でのご奉仕を喜ぶ者も多いと聞いている。
もっとも、彼らが一番喜ぶのは「生」でのご奉仕なのだが、VR学習ではまだそこまでのカリキュラムには到達していなかった。
 
 
 
いくつかの日々が流れ、カリキュラムも最終段階になっていた。
支給された衣服で部屋のクローゼットは満杯になっていた。
今では服のコーディネートも自分達に任されている。
あたしはもっぱらミニスカートを多く選んでいた。
それがあたしの可愛らしさを一番引き立ててくれるからだ。
(心配だった胸も充分に大きくなったものね♪)
赤い色に染めた髪の毛は左右に分け、お団子にした所にその日の気分で選んだ色のリボンを結んでいる。
ちょっと幼い感じがあざといとは思うが、教官達もコレで良いと言ってくれている。
そして、今日は初めての「生」でのご奉仕だった。
相手は教官達ではなく、もっと上層部の人達だ。
『ハジメテ』はそれなりに貴重なものなので経験豊かな方達が優しく対応してくれる。
あたしは担当の方に連れられて車で兵舎を離れていった。
兵舎の外に出るのはからり久しぶりだ。
そう…あたし達が入隊したとき以来…
 
(入隊した時?!)
 
あたし…なんで俺は自分のことを「あたし」って…
それに俺は今、なんという格好をしているのだ?
まるで「女の子」じゃないか?
それも超ミニのスカートを穿いて、化粧して…
それも俺自らが選んで身に着てきた?
そして、これから『ハジメテ』を経験するだって?
それは女の子が最初に男性を受け入れるって時に使うものだろう?
俺は「男」だ。
たとえVR装置で学習した「ご奉仕」が「女」として男性を受け入れる技能だったとしても実際にできるものではない。
(だが「できない」と言い切れるか?)
 
俺は「今」の自分自身の容姿を思い出してみた。
痩せた…というより華奢になった手足。
長く伸びた髪はピンクのリボンで左右に纏められている。
大きく膨らんだ胸はブラジャーのカップからはみ出すように満たしている。
スカートから伸びる白いナマ足はエロチック♪に輝いている。
その根元はスカートの下で小さなショーツに包まれている。
布地がピタリと肌に密着している。
(ピタリと密着?)
「男」ならそんな事はあり得ない!!
股間にはシンボルがあり、必ず隙間ができる。
俺の逸物はどこにいった?
 
思えば、毎日のシャワーでは「ここは大事な所だから」と、入念に洗うことをVR装置で学習していた。
そこには割れ目があり、学習した通りに洗っていた。
その際には心ならずも快感が伴っていた。
それは自慰のような…
 
入隊した当初の自慰を思い出す。
ぺニスを擦り、快感を得ていた。
が次第に快感と射精が切り離されていた。
射精することなく充分な快感を得ていると、次第にぺニスは小さくなっていった。
小さくなると同時にソレの感度はどんどん増していった。
「男」としての機能は失われ、ソレはもう陰核としか言いようがなかった。
小水の出る場所も変わり、その向こうには「男性」を受け入れるための器官も…
 
 
「どうした?」
俺の相手となる男が声を掛けてきた。
「怖がることはなにもないよ。君は快感だけを感じていれば良い♪」
男の掌が俺の太腿に触れた。
(ジュンッ♪)
俺の内の「女」が期待に割れ目の奥を濡らし始めた。
「それとも、昔を…男だった頃を思い出して戸惑っているのかな?」
彼の言葉にハッとなった。
それは俺の表情に如実に反映されていたのだろう…
「あそこから離れると記憶操作が弱くなるからね♪」
「記憶…操作?」
「君達に与えているVR学習装置に繋がる人材育成システムと言われているモノだよ。君達を我々に都合の良い人材に造り変えるものだ。」
「この姿も?」
「君達の深層心理にあったこうなりたいという願望を引き出しただけだけどね♪」
「女になりたいなんて…」
「僅かでも思ったことがないとは言えないだろう?」
「そんなこと…ない…」
「男は誰でも理想とする女性像をもっている。我々はそこを起点に我々の欲する人材を造りあげたのだ。」
「…」
「もっとも、個人差はある。元となる素材が異なるので、同じ育成を行ってもおのずと完成度には差ができてくる。その中でも君は完璧に近い仕上がりを見せてくれている。」
「俺が?」
「そうだよ♪口では強がっていても、抱かれることを期待しているのだろう?」
「そんなこと…ない…」
「なら、なんでこの掌を払わない?」
彼の掌は更に俺の股間に滑り上がっていった。
「もう、ショーツが濡れているよ♪」
 
 
俺は指ひとつ動かすことができなかった。
触れられた所から波紋のように広がる快感に囚われてしまう。
「いやっ…」
それだけしか言えなかった。
滲み出す愛液がクロッチをグショグショに濡らしていた。
車が高級ホテルの玄関に停まっても、自分では降りることもできなかった。
男に抱き抱えられ、そのままエレベーターで上層階に昇った。
ベッドの上に寝かされる。
そこから見えた窓の景色は雲の点在する綺麗な空…
「さあ、始めようか♪」
服を脱がされた。
ブラジャーが外され、胸が露となる。
(ご奉仕しなくちゃ…)
意識に刻み込まれたVR学習の指示が「俺」を支配しようとする。
「今は何もしなくて良いよ。先ずは快感を受け止めるんだ♪」
男も全裸になっていた。
その股間には俺の股間にもあったモノが屹立している。
「あっ……」
脚が拡げられ、濡れそぼる股間を直に撫であげられた。
それは自らの指での自慰とは別次元の快感をもたらす。
膣の奥に熾火が灯されたようだ。
彼が指だけで俺を翻弄する…
 
 
 
「さあ、これからが本番だよ♪」
俺は訳も解らないうちに彼のぺニスに貫かれていた。
オンナの快感の渦に呑み込まれ、彼の動きにただ嬌声をあげるだけの楽器にでもなっていたみたいだった。
何度も快感の頂きに放り上げられた。
混沌とした意識の中で快感だけが俺を「あたし」に染めあげていった。
 
あたしは彼のぺニスを舐めあげていた。
彼の精液とあたしの愛液にまみれたソレを綺麗に舐め取ってゆく。
教育された手順に従って…
「もう良いよ♪」
彼があたしから離れた。
「シャワーを浴びてくる。」
と隣室に消えた。
あたしはベッドの上で待たされる。
自然と股間に指を這わせていた。
(ココに受け入れていたんだ…)
時間が経つにつれ「俺」の意識が戻ってくる。
が股間を弄る手を止めることはなかった。
俺は俺達後方支援部隊の任務が何であるかを反芻していた。
(前線で戦う兵士達に安らぎを与える…)
ここで得られた技能の全てを使って
ここで得られた肉体の全てを使って
ここで得られた心の全てを使って
だから俺は「あたし」にならなければならない。
それがあたしに与えられた「任務」なのだから…
 
 
その後、あたしは兵舎に戻ることなく任地へと配属されていった。
そこには配属が真っ先に決まって南方に送られた彼のような筋肉質の男達が待ち構えていた。
あたしは一晩に何人もの男達に安らぎを与えてあげた。
誰もあたしが「男」だったことなど思いもよらないだろう。
あたしが本物の女達と違い生理がないことにも気付かない。
妊娠の心配がないので、いつでも生でヤらせている。
そのせいか、あたしは大事にされている。
 
今夜も彼らの逞しい腕に抱かれ、あたしは歓喜に身をくねらせていた…
 

ご褒美

黒い雲が空を覆い始めていた。
俺は足を速めて街道を進んでいた。
 
「街道」とは言っても、人通りは全くない。前後遥かを見渡しても人影は何も見えない。
俺の後ろに迫る黒雲に呑み込まれた場所からは何人も出てくることはない。
また、その事を知りこの先に住む人びとはとうに逃げ出している。
ましてや黒雲に向かってゆく者など居る筈もない。
 
「だから転移魔法は危険だって言ったでしょ?」
そう俺の耳元でまくし立てるのは妖精のニニだ。
魔法使いでもない俺のような一般人が魔法を魔法を使うには妖精を媒介にするしかない。
が、直接使役する魔法ではないので、ちょくちょく間違いが起きてしまう。
今回も黒雲からは充分に離れた場所に転移する筈が徒歩で10分程の所に放り出されたということだ。
「お前、わざとやってるだろう?」
とニニを問いただした所でまともな回答を得られる筈もなかった。
 
 
 
何故俺がこんな危険な場所にやってきたかというと…
「お金に困ったからでしょ?」
とニニが割り込んでくる。
ちょっと博打でスッてしまい、仕方なくギルドに掲示された中でも高めの案件に手を出したのだった。
仕事の内容は「今」最大級の懸案事項である黒雲に関わるもので、黒雲の進路を予測するためのアイテムを街道沿いに敷設していく事だった。
更に、黒雲に近い場所程見返りがあった。
ニニは転移魔法が使えるので、かなり接近しても問題はないと踏んでいた。
とはいえ、アイテムの敷設にもそれなりの時間を要する。
黒雲に取り込まれる前に離脱できるだけの余裕は必要なのだ。
 
「そろそろ敷設を始めないと時間が来ちゃうわよ。時間までにお仕事を終えないと何ももらえないんでしょ?」
ニニのアドバイスは時として正鵠をいる場合がある。
俺は黒雲との距離を確認すると、アイテムの敷設を始めたのだった。
 
 
 
アイテムは決められた時刻ぎりぎりで組み上がった。
アイテムは自動的に起動し、黒雲の情報をギルド本部に送り始めた。
「どうする?アイテムを回収して帰れば、かなりの上乗せがあるんでしょ?」
俺はニニの言葉に気持ちが揺らいだ。
もう一度、黒雲との間合いを確かめる。
ギリギリではあるが出来ないタイミングではない。
「ニニ、転移魔法はいつでも発動できるようにしておいてくれ。」
と俺が言うと、
「さっきからそんなに時間は経ってないのよ。同じ魔法は連続して使えないくらい知ってるでしょ?」
その言葉で俺の頭の中は真っ白になった。
上乗せどころの話しではない。
アイテムを残して早々にこの場を離れなければ俺自身の身が危ないのだ。
 
 
 
とはいえ、走っていったところで永遠に走り続けられる訳ではない。
早足でも良い、とにかく黒雲との距離を置き時間を稼ぐことだ。
「ニニ、何か適当な魔法は出ないか?」
「それが最適なものかなんてあたしには判断出来ないよ♪」
「このままだと、俺と一緒に黒雲に呑み込まれてしまうぞ。」
「大丈夫。あたしは最後には飛んで逃げることができるからね♪」
「飛ぶ?」
それは天恵だったのだろうか?
俺はニニに聞いた。
「俺も飛んで逃げられないか?」
「見れば判るでしょ、あたしの羽の力では明らかに重量オーバーね。」
「お前に運んで貰わなくても良い。お前と同じように俺を飛べるように出来ないか?」
「出来ないことはないけど、それをやると大変な事になるわよ♪」
「あの黒雲から逃げ切れればどうなってもいい!!」
「じゃあやるわね♪」
(?!)…
 
 
 
 
 
「おい、ニニ。起きろ!!」
聞いたことのある男の声がした。
あた…俺はどうやら意識を失っていたようだ。
「ねぇ、黒雲はどうなったの?」
俺は声を掛けてきた男に聞いた。
「まだ余裕はある。がぐずぐずしていられないな。」
男の顔が間近にあった。
少し距離を置いて…
 
って?俺って飛んでないか?
そして俺の前にいるのは「俺」??
 
「ニニ、もう転移魔法は使えるだろ?急いでここから離れるんだ。」
「ええ、わかったわ♪」
って、俺は何を言ってるんだ?
戸惑う俺の意識とは別に、俺の口は転移魔法の呪文を唱えていた。
 
 
 
転移魔法は成功し、黒雲からは充分な距離は取れていた。
「どういう事なの?」
あたしは「俺」に聞いた。
「お前がニニのように飛びたいと言ったからニニにしてやっただけだよ♪」
「じゃあ、どうすれば戻れるのよ?」
「妖精は自らの意志では魔法は使えないって事は知っているな?」
「あ…あたり前じゃない…」
「つまり、今の俺とニニの関係からすれば、俺がニニになりたいと思わない限り元に戻ることはない。」
「じゃあ、早くそう思ってよ!!」
「まあ、そう慌てるな♪俺はもう少しこの力強い肉体を楽しみたい。ニニも自由に空を飛ぶ事を楽しんだらどうだい?」
「もう少しってどれくらいなのよ?」
「そうだな、取り敢えずは明日まではこのままで良いんじゃないか?」
「あたしは即にでも戻りたいのにっ!!」
あたし…俺はプイと羽ばたき舞い上がっていた。
 
風に吹かれて冷静になると、先程までの自分の言動に赤面してしまう。
何故か自分の事を「あたし」と言い、自分が「ニニ」と呼ばれることに違和感を感じていなかった。
口調もまた「ニニ」そのものであり、はては「プイ」と飛び上がっていたのだ。
(言動が肉体に引きずられている?)
それは「俺」にも言えるようだ。
どう見ても「俺」は俺以外の何者でもないように見える。
もし、このままの肉体で時間が経ってしまうとどうなってしまうのだろう…
考えたくはなかった…と言うより、ニニの肉体に引きずられ、それ以上難しいことを考え続けることが出来なかった。
 
(♪)
花の薫りにつられていた。
飛んでゆくと色鮮やかな花畑があった。
あたしは羽で風を起こして花々の薫りを舞い上げると、全身にその薫りをまとい付けていた。
 
「ニニっ」
と呼ばれ彼の元に戻った。
「良い匂いがするな。」
と言われ
「てへっ♪」
と笑い、いつものポケットに潜り込んだ。
やっぱりココが一番落ち着くわよね♪
とあたしはポケットの中でうとうとし始めていた…
 
 
 
「ニニ、ギルドまで転移魔法だ。」
彼の指示に応じてあたしは呪文を唱えた。
あたし達妖精は自分で自由に魔法を使うことは出来ないし、マスターが命令を下したら物理的に出来ないのでない限り、その命令に従うことになっている。
呪文が完結すると、あたし達はギルドの玄関前に居た。
 
「オーケー、良くやった♪」
褒められた。
嬉しさに包まれながらも、何処かに違和感があった。
これまでも何度も転移魔法を使っていたが、今日みたいな精度で飛べたことはなかった気がした。
違う…、この前の転移からだ…
何が違っていたのだろう…
(でも、あたし達妖精はそう長い間難しいことなど考えてはいられない…)
 
彼がギルドで今回の報酬を手にしてきた。
かなり上機嫌で、
「お前にも何か買ってやろう♪」
と、いつもならその殆どを博打につぎ込んでしまうのに、何故かそんな事を言ってくれた。
彼はあたしを連れて服屋に入った。
上流階級向けのドレスが並んでいる。
一品物を仕立てるのがメインのようだが中・下級商家のご婦人向けに廉価版の既製服も置いていた。
「コレなんかどうだい?」
と何点か選んできた。
あたしへのご褒美の筈なのに、普通の人間の女の子の着る服ばかりってどういうこと?
「奥の部屋を借りるよ♪」
と、そのまま部屋に入っていった。
「じゃあニニ、人間の大きさになってご覧♪」
「っえ?」
あたしは意表を突かれ、一瞬何を言われたかがわからなかったが、条件反射的に呪文を唱えていた。
 
彼の選んでくれたドレスはどれもあたしにぴったり、しかも、あたしの可愛らしさを充分に引き立ててくれる。
その中でも一番気に入った薄緑色のドレスを買ってくれた。
「このまま着て行こう♪」
とドレスに合わせたいくつのアクセサリーと靴とバックも買ってくれた。
背中の羽根は広げられないので飛ぶことはできない…
けれど、こうやって彼の隣で並んで歩くのは、それはそれで嬉しい♪
指を絡めて手を繋ぐ…まるで恋人同士?
彼もまた、あたしを見せびらかすように街の中を歩いていった。
 
「ここが良いかな?」
足を止めたのはいつもより数段上のランクのホテルだった。
いつもならポケットに入ったまま通りすぎるフロントに、彼と並んで立っていた。
宿帳にはあたしの名前も書かれていた。
「さあ、行こうか♪」
と、自分の足で部屋に向かって階段を昇っていった。
彼が扉を開けると、広い部屋が広がっていた。
ベッドも広い。
あたしがいつもの姿に 戻れば本当に広すぎるくらいだ。
「今日はこのまま一緒に寝よう♪」
 
一緒に…って、ベッドの上には枕が二つ並んで置かれている。
布団は一枚しかない…
 
「んあぁ…ああん♪」
あたしは「ハジメテ」を彼に捧げた。
経験したことのない快感があたしを揺さぶる…
快感に淫声をあげてしまう。
隣の部屋にも届くのも気にする余裕がない。
(だからいつもより立派なホテルだったの?)
彼の指が、舌が、あたしを狂わせる。
彼の男性自身があたしを満たしてゆく。
幾度となく快感の高みに放り上げられる。
あたしのナカに彼の魂が注ぎ込まれ…
あたしは快感の中で意識を失っていた。
 
 
 
 
「おーい、大丈夫か?」
耳元にニニの声がした。
何がどうなっていた?
あたしがニニで、彼…俺に抱かれ、何度もイかされていた?
「大丈夫?」
あたし…俺の目の前でニニが羽ばたいていた。
「ニニ?」
そう発した声は「俺」の声だった。
「何がどうなってたのよ?」
「あなたがあたしのように飛びたいっていったから、あたしとあなたを入れ替えたの。」
「入れ替わっていた?あたし達が?」
あたし…俺の中にはまだニニであった時の影響が残っているようで、ついつい自身のことを「あたし」と言ってしまう。
 
「ごめんね。あたしもはしゃぎ過ぎちゃったみたい。」
「まあ、良いさ。黒雲からは逃げられたんだから♪…しかし…やり過ぎには違いないな。」
「…けど、あなたも満更じゃなかったんでしょ?」
不意にあたし…俺の頬が紅潮した。
「そ、そんな事言わないでよっ!!」
俺は両手で顔を覆っていた。
「シたくなったら何時でも替わってあげるわよ♪」
と、ニニがニヤついて言った。
 
 
「そ、それはともかく…」
俺は息を整えてニニに言った。
「確認したい事がある。俺が使った転移魔法がニニが使うより数段精度が高いようだ。ニニ、何か心当たりはないか?」
「妖精がそんな難しいこと考えられる訳ないでしょ♪」
「つまり、中身が俺だったことで、出現地点をより具体的にイメージできたということか…」
これは他にも応用ができる筈だ。
が、いくつか難点もある。
先ずは俺とニニが入れ替わらなくてはならない。
次に魔法の発動には「俺」からの指示が必要なことだ。
「俺」になったニニが正しく指示できるものなのかが不安として残る。
そして、どのタイミングで俺が「俺」に戻れるかだ。
 
「ねえ、お腹空いてない?」
と、ニニに考えを中断された。
確かに食事の時間をかなり過ぎてしまっていた。
「そうだな。」
と、立ち上がる。
「あたしもアレ着てみたい。」
ニニが昨日買ってもらったドレスを指していた。
「そうか?」
「だから♪身体を大きくして良い?」
俺が了解すると、ニニは昨夜の俺と同じ人間の姿になった。
いそいそとドレスを身にまとう。
「どお?」
とスカートをヒラヒラさせ俺に見せ付けた。
「もしかして、お前がコレを着たいために俺に買ってくれたなか?」
「てへっ♪」
ニニは笑って誤魔化していた。
 
 
 
 
 
 
「ニニ、替われっ!!」
俺が声を掛けるとニニの魔法が発動する。
あたしはニニとなり、攻撃魔法の照準を捉える。
あとは彼の指示があればいつでも撃てる。
「やっちゃって!!」
彼の指示とともにあたしの指先からの閃光が魔獣に向かって駆ってゆく♪
「「やったね♪」」
二人の声が重なる。
仕留めたのは結構大物だったようだ。
「ご褒美に新しいドレス、買って良いよね♪」
彼がウキウキとあたしに聞いてくる。
「これ以上荷物を増やしてどうするのよ?」
「良いじゃん♪あなたも着てみたいでしょ?」
俺としては止めさせたいのだが、肉体に引っ張られてしまう…
 
 
「あたし…綺麗?」
今日買ったのはドレスだけではなかった。
セクシーな下着もだ♪
そしてベッドの上…
ドレスを脱いだあたしは彼にそう聞いていた。
勿論、その答えは決まっている。
唇が合わせられ…セクシーな下着も剥ぎ取られる…
「当然でしょ♪あなたはあたしなのだから。」
あたしは彼の腕の中で再び快感に満たされていった♪
 

無題

彼女の細い指が僕の股間に這わされる。
ソコにあるべきモノは存在せず、代わりに他のモノがそこにあった。
「ねえ、ゾクゾクするでしょう?」
僕が答えるより、ソコは雄弁であった。
ジワリと体液が溢れてくる。
それは「愛液」に他ならない…
 
 
 
 
「たまには趣向を変えてみない?」
何度目かのデートの後、彼女はそう切出した。
「別に良いけど。」
と僕が応じると、彼女はとあるお店に僕を連れてきた。
一見どこにでもあるようなブティックだった…が、その店の奥のフィッティングルームはかなりの広さがあった。
用意されていた服は可愛らしいワンピースだったが、彼女が着るにはサイズが違うようだ。
「じゃあ服を脱いで♪」
と彼女に促された。
「まさか…僕がコレを着るの?」
「言ったでしょう、趣向を変えてみようって♪大丈夫。下にコレを着れば何も問題ないわよ♪」
と彼女から渡されたのは肌色のストッキングのようなものだった。
いわゆる「全身タイツ」だ。
彼女の提案に「良いよ」と言ってしまった手前、今更断る訳にもいかない。
 
 
一旦全裸になり全身タイツに手足を通した。
「じゃあ、コレを穿いて♪」
と、手渡されたのはパンティだった。
よく見ると股間にある筈の男性シンボルは綺麗に隠されていた。
これならスカートの下がもっこりと膨らむことはないだろう。
パンティは僕の股間にピタリと張り付いているようだった。
「次はコレね♪」
とブラジャーが渡された。
「そこまでやるのか?」
と聞くと
「見て♪」
と僕の胸に彼女の掌が被せられた。
どういう仕掛けか、そこはほんのりと盛り上がっていた。
彼女の指が揉むように動くと、僕は胸が揉まれるような感じがした。
「もっと大きく出来るけど、最初はAカップからね♪」
彼女が掌を放すとき、指先でソレを弾いた。
「ぁんっ♪」
と僕の口から女の子のような声が漏れた。
胸の先端にはプックリと乳首が膨らんでいた。
「敏感だから着けておいた方が良いわよ♪」
 
僕は彼女にされるが儘、ブラジャー、キャミソール、ワンピースと着せられていった。
お化粧をさせられ、耳や胸元にアクセサリーが施され、ロングのかつらが被せられた。
髪の毛が整えられてから鏡の前に立たせられた。
「これがボク?」
鏡に映っていたのは可愛い女の子だった。
その娘が僕自身であるとは想像もできなかった。
瞬きし、腕を上げ、その娘が僕と同じように動くのがわかり、ようやく自分自身が映っているのだと理解した。
 
「じゃあ、デートに行きましょ♪」
服に合わせた白い花が足首のベルトを飾る可愛らしいサンダルを履いた。
慣れていない僕が転ばないように踵の低いタイプだったのは彼女の気遣いなのだろう。
僕の手を引く彼女はいつもの格好なので、デートというよりは女の子同士のお出かけのような感じだった。
彼女に手を引かれ、いつもは立ち寄らないファンシーなお店やブティックをはしごしていった。
 
「ちょっと疲れた…」
と僕は彼女の耳元で囁いた。
喋れば男であると知られてしまいそうで周りに聞かれないような小声しか出せなかった。
「そうね♪お茶にしましょうか。」
とこれもいつもはいかないようなお店に連れて来られた。
いつものようにホット珈琲を頼もうとすると、
「口紅が落ちちゃうからストローで飲めるものにした方が良いわよ♪」
とアイスに変えられた。
勿論、注文は全て彼女に任せるしかないのだ。
 
椅子に座り、喉が潤って落ち着いてくると、今度は別の心配事がわき上がってきた。
それは冷たい飲み物の所為だったかも知れない。
「ねえ、トイレはどうすれば良い?」
と耳打ちする
「問題ないでしょ?入る方を間違えないでね♪」
「じゃなくて、全部脱がないとダメだよね?」
と聞くと
「そろそろ馴染んでる頃ね。ショーツを下ろすだけで大丈夫よ♪」
大丈夫と言われても全身タイツの股間にはあれを引き出すような切れ込みなどなかったように記憶している…
その時までは単なる女装でしかないと思っていた。
ショーツを下ろすだけってどういうこと?などと考えている内にかなり切迫してきていた。
「じゃあ行ってくるね…」
と席を立った。
 
入る方を間違えないでという彼女のことばはこの格好で紳士側に入るのは無理ということなのだろう。
後ろめたさを感じつつも、言われたように女性用の扉を開けた。
そう大きくない店なので、他の客とは一緒にならなくて済みそうだった。
当然だが、そこには個室しかない。
中に入り、スカートをたくしあげ、パンティを下ろして便座に座った。
あれを出す切れ込みがないかと確認する間もなかった。
座った途端、シャーッと勢い良く小水が迸ってゆく。
幸にもそれは便器の中に収まってくれた。
タイツが濡れた感覚は何もなかった。
 
飛沫が飛んだ所をペーパーで拭いた。
触れた感じはタイツ生地越しではなく、直接地肌に触れているみたいだった。
彼女が「馴染んでる」といったのがソレなのか、僕の股間はまるだ女性のもののようだ。
肉の合わせ目はほんのりと暖かみがあった。
 
水を流し、パンティを引き上げ、スカートを戻す。
洗面台の前の鏡に映っているのは、ごく普通の女の子でしかなかった。
「大丈夫だったでしょ?」
僕の後ろには彼女が立っていた。
「お化粧、少し直しとこうね♪」
と口紅を足してくれた。
「どういう事?」
と発した僕の声も女の子のように高い声になっていた。
「その服を着ても不自然にならないようにしているだけよ♪ちゃんと元にも戻れるから心配することないわ。」
 
 
彼女とのデート?は進み、街は夜を迎えていた。
いつものように僕達はホテルに向かっていた。
「って、このままでヤるの?」
と聞くが昼間からの流れで主導権は彼女が握っていた。
「あたしに任せておけば良いの♪ちゃんと気持ち良くさせてあげるからね♪」
服を脱がされてベッドに転がされた。
全身タイツは着たままだが、着ているという感じはまったくなかった。
「だいぶ育ったわね♪」
僕の胸の膨らみは、もう「乳房」としか言いようがなかった。
「ん…あぁん♪」
彼女がソレを揉み上げると、僕は女の子のように喘ぐしかなかった。
彼女が僕の乳首を咥える。
先端が唾液にまみれる。
その快感に、僕は身を捩るしかなかった。
 
 
 
「じゃあ、ココはどうかな?」
と、彼女の細い指が僕の股間に這わされた。
ソコにあるべきモノは存在せず、代わりに他のモノがそこにあった。
「ねえ、ゾクゾクするでしょう?」
僕が答えるより、ソコは雄弁であった。
ジワリと体液が溢れてくる。
それは「愛液」に他ならなかった。
溝を刺激するだけではなく、彼女の指は僕のナカに潜り込んできた。
そこが「膣」…男のぺニスを受け入れ、放たれた精液で受胎した後、産道となり、ここから赤ちゃんが産まれてくる?
 
「…まさか、子宮まで出来てしまうの?」
「産みたい?」
「いや…」
と口では否定していたが、男の僕が経験する事のない妊娠・出産に興味がない訳ではなかった。
「このまま脱がずにいれば生理もあるらしいわ。子供を産んだとかは聞いたことないけど、やってみる?」
「僕が?」
「そう♪あたしがぺニスを付けてあなたのナカに射すのもありかも。」
 
僕が彼女の子供を産む?
男であればそんな事など想像することも出来ないが、今の僕は「女の子」だ。
大好きな人に愛され、その結実をこの身に宿すことに幸せを感じてしまう。
「結婚」の二文字が頭をよぎる。
もしかすると、今のってプロポーズだったりして♪
 
そんな事に意識が向いていると、
「でも、今は女同士で楽しみましょう♪」
と、彼女も全裸になって僕を抱きしめてきた。
二人の間で4つの乳房が押し潰される。
僕のは彼女のに比べるとまだまだ小さいのが思い知らされる。
「っあ、ああん♪」
僕は快感に媚声をあげる。
彼女の脚が僕の脚の間に割り込み、太腿を僕の股間に押し付けてきたのだ。
更に僕の股間を押し広げると、彼女の女性自身を僕の所に密着させた。
「これが女の子同士しか出来ないキッスね♪」
二人の愛液が混ざり合い、敏感な所が擦れ合う。
彼女もまた嬌声をあげていた。
僕は女の子の快感に呑み込まれ、もう何も考えられなくなっていた…
 
 
 
 
…やっぱり「デキチャッタ婚」になるのかな?
結局、僕は彼女と結婚する事になった。
僕はタキシード、彼女はウェディングドレスを着ているが、僕のお胎の中には二人の愛の結晶が育まれていた。
(僕もウェディングドレス…着たかったな…)
などと思うのは贅沢なのだろう。
それに、披露宴ではちゃんとカミングアウトして、化粧直しでは僕も真っ赤なドレスを着るのだから♪
 
僕は介添えの人に促されて、彼女の顔を覆うベールに手を掛けた…
 

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