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2019年3月30日 (土)

失われた世界


その日、全ての男性の股間から…

ペニスが消えた!!

何が起きたのか、実体験とともに状況を把握した者もいれば、入浴するまで気が付かない者もいた。
性交の真っ最中に女の膣から消え失せ、呆気にとられる者。
小便中に消え失せ悲惨な状態に途方にくれる者。
宙を掴んだマスをかいていた手をそのまま股間に這わせ、新たな快感を探求し始める者もいた。

そう…ソレが失われた場所は、今度は女性器に変わっていたのだ。
後日の調査結果では、殆どの場合内性器も存在し、女性と同様な生理も確認されていた。
男性と性交すれば妊娠も可能と思われた。が、全ての男性からペニスが失われた今、妊娠が可能かを確認することは困難であった。
全ての男性器が失われたという事は、人類はこれから先、子孫を残す事ができないという事だ。
かろうじて、冷凍保存された精子があるが、人類を存続させるに足るほどの数がある筈もない。
そして、それらの精子は確実に妊娠できる女性に対してのみ提供されるため、男にできた子宮で妊娠が可能かなどの調査に廻せるものではなかった。

「んあ…ああん♪」
ベッドの上で悶えているのは、もともと女性化願望のあった青年だった。
念願の女性器を持つことができ、親友に組み敷かれて快感を貪っていた。
「ああっ、良いっ…!!」
青年は幾度目かの絶頂に達していた。
そして…
「これで赤ちゃんも産めたら最高なんだけどな。」
とポロリと愚痴が溢れる。

「贅沢を言うなよ。こんな状況だから出産は厳重に管理されているんだ。」
「解ってるよ…」
そう言いながら、青年は親友の腰に巻かれたペニスバンドを外した。
零れ落ちる愛液に舌を這わせる。
攻守が逆転した。
「ぁあん…ダメよ♪」
青年は慣れた舌遣いで親友の女性を責めたてていった。
「君ならその資格があるのになっ♪」
彼女の胸には豊かな乳房があり、元からの女性であることを示していた。

「どうせならこのおっぱいも、受胎許可証もなにもかも、みんなあんたにあげたいわ。」
喪失の日より以前、冗談のように性器を交換できたら良いのにね♪などと言っていたのだ。
(女として生きるより、男として彼を抱ければ良かったのに…)
皮肉にもそんな考えの彼女に数万人に一人の確率と言われる受胎許可証が届いていたのだ。
「ねえ、君の代わりに僕が受胎に行けないかな?」
「無理でしょ、そう簡単には騙せないわよ。」
「勿論、診察とかは君にいってもらって、最後の最後に入れ替るんだ♪受精卵が着床してしまえばもうこっちのものだよ♪」
「簡単に言うわね?」
「本物と変わりない人工乳房があるんだ。あとは僕の演技次第さ♪」

付き添いの女友達…を装って青年は彼女と一緒に病院に向かった。
施術前の検査が終わったところで服を替える。この日の為に二人とも同じショートの髪型にしていた。
ロングのウィッグを渡し、青年がしていたのと同じ厚化粧を施す。
青年が化粧を落とすと入れ替りが完了する。
なに食わぬ顔で青年は受胎術に臨んだのだった。


「君達はなんという事をしてくれたんだ!!」
入れ替りは程なく発覚した。
が、受精卵を元に戻す訳にもいかない。
受精卵は青年の子宮の中で順調に成長を続けていた。
「この事は公にする訳にいかない。君達の名前を取り替えてしまうしかない。」
「取り替える?」
「つまり受胎許可証は君に交付されていた。そして君は滞りなく受胎した。それだけの事だ。」
「良い?」
青年は親友にきいた。
「産みたかったんだろう?なら良いんじゃないか♪僕なら大丈夫だよ。」

胎児の成長とともに、元青年の肉体は急速に女性化していった。
乳房が膨らみ、乳腺が造られていた。
やがて母乳を与えることができるようだ。
骨盤も広がり、胎児を安定させている。
もう、他の妊婦との違いは何もなかった。

陣痛が訪れる。
彼女の手をしっかりと握りしめていたのは、すっかり男前になった彼女の「夫」だった。
「頑張れよ♪」
その「妻」に声を掛けた。
「うん♪」
彼女はそう答えて分娩室の扉の中に消えていった。
しばらくの後、この街に久々の産声が響き渡った…

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