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2018年11月 4日 (日)

変身…

「おい!!どうなってるんだよ、コレは!!!!」
気が付いた俺は、乳白色の空間に浮かんでいた。
それだけではなく、俺の肉体は俺本来のものではなく全くの別物…女の身体になっていた。

「こうすることでしか、貴方の命を救うことが出来なかったのです。」
まさか応えがあるとは思ってもなかったので、一瞬思考が停止してしまった。
「わたしの命と貴方の命を混ぜ合わせました。貴方の世界で一年ほどすれば命を分離できるくらいには回復します。」

「俺は…死んだのか?」
ようやく頭が回り始めた。
「それはこちらの手違いなんです。事故に巻き込まれて貴方の肉体は消失してしまいました。そのままでは貴方の命も失われてしまうので、一時的にわたしの内に取り込ませていただきました。」
「で、一年経てば俺は元に戻れる…ということなんだな?」
「正確にはもと通りという訳ではありません。わたしにはスペアの肉体があります。命の分離が可能になり次第、わたしはスペアの方に移ります。その後はこの肉体は自由に使っていただいて構いません。」
「とはいえ、この肉体はどう見ても『女』じゃないか。俺はこの先、女として生きていかなければならないのだろう?」
「それは問題ありません。貴方の元の姿に変えることができます。」
すると、俺の廻りに輝く粒子が舞い始め、俺を覆ってゆく。
そして、輝きが消えると、そこには『俺』の肉体があった。
「ひとつだけ注意してください。最低でも一週間に一度、3分程度は『わたし』の姿に戻ってください。それが出来ないと貴方の姿を維持することができなくなります。」
「それだけか?」
「はい。」
そんなやりとりの後で、俺は再び意識を失っていた。
 
  
俺は、何事もなかったかのように普段通りの生活を続けていた。
ただ、言われた通り、毎週土曜日の夜に3分ほど女の姿になっては元の姿に戻っていた。
自分が本当に女の姿になるのか半信半疑の最初の変身は確認のためもあり洗面台の前でやってみたが、部屋の中が輝く粒子に満たされてしまった。
その光が漏れて、この事が他人にばれるのを危惧して、以降は布団にくるまって変身することにした。

変身して3分で元に戻っていたが、ある晩変身したまま寝落ちしてしまった。
朝目覚めた時、自分が女の姿のままであることに気付き、慌てて元に戻った。
その時、ふと気付いた。
(律儀に3分で戻る事もないのでは♪)
試しに次の日曜日はまる一日女の姿で過ごしてみた。
が、月曜の朝には問題なく元の姿に戻れた。
当然ではあるが、日曜日一日は裸のままでは寒いので、自分の…男物の服を着ていた。
しかし、体型の違いには悩まされることが多々あった。
(次にまる一日女の姿でいる時には女物の服が必要になるな…)

勿論、俺には『女装』の趣味はない。
が、女の身体には女物の服が必要な事には間違いなかった。
俺は通販を使って女物の服を揃えた。
そして次の日曜日の朝、俺は初めて女物の服を身につけた。
(なんかクセになりそう♪)
姿見の前でスカートを靡かせて悦に入っていた。
(お化粧すれば外にも出れるわよね♪)
その場で通販で化粧品を一式注文していた。
月曜の夜には宅配ボックスに届いていたので、一週間を待たずに変身するとお化粧にチャレンジしてみた。
…が、結果は散々だった。
小さい頃から遊び感覚でお化粧に親しんできた訳ではない。
色んな技を友達や母親から伝授された事もない。
ネットで女子中学生向けのお化粧入門書を探して、その週の終わりにはやっと見られる形になってきた。

次の日曜日、俺は意を決して外に出た。
所謂『女装』ではない。
女の身体に女物の服を着ているのだ。
何も恥ずかしがることはない。
ちゃんとお化粧もしている。
ただ、馴れないハイヒールにふらついてしまう。
そして、ついつい『男』の仕草が出てしまうのに注意しなければならなかった。

これまで足を踏み入れたことのなかった婦人服売場に入っていった。
咎められるどころか、店員が盛んにお勧めのものをもってくる。
確かに、今着ているワンピース以外にも服が必要だとは感じていた。
「試着してみませんか?」
そう言われて、彼女が選んできた服と一緒に試着室に送り込まれた。
「素敵です。凄く似合ってるわ♪」
おだてでもない。鏡に映った俺…あたしはワンランク女度が上がった感じがした。
「次はコレなんかどうですか?」
あたしは時間を忘れて試着室のファッションショーに興じていた。
 
 
 
月曜日の朝、気持ちよく目覚めたあたしは真新しいネグリジェを脱ぎ、昨日買ってきたブラジャーを着けると、鏡の前でお化粧を始めていた。
(今日は何を着ようかしら♪)
とコーディネートを考え…
「!!」
…俺は今、何をしている?!
平日の朝だというのに、元の姿にも戻らずに、化粧なんか始めている。
化粧して、女の服を着て、どこに行こうとしていたんだ?
俺は慌てて元の姿に戻り、化粧を落とし、男の服を着込んだのだった。

外にでてしばらくした時、妙に胸が苦しくなっているのに気が付いた。
ぐるりと胸の廻りを縛ってるものがある?
…ブラジャーだ…
外さずに男物の服を着てしまったのだ。
肩には紐が掛かっている。
今はジャケットを着ているから隠していられる。
ジャケットを脱げばブラジャーの存在は容易に見分けられる。
今日はジャケットを脱ぐことはできないorz…
 
 
夜になり、家に戻るとフウとため息を吐いた。
今日一日は本当に気が気ではなかった。
服を脱いで下着姿になる。
男の胸にブラジャーが巻かれていた。
女の身体に戻ると、カップが満たされてゆき、心も落ち着いてゆく。
(このままで過ごせたら楽なのに…)
あたしはブラジャーを外して裸になると、湯槽に身を沈めた…
 
 
 
何だか『女』でいる時間が長くなっていた。
休日をまるまる女でいることが増えてゆく。
前の晩から月曜日の朝までになり、平日も女の姿で寝るのが常になった。
そして、平日に外に出ている時以外はほとんど女の姿で過ごしていた。

10日ほど連続した休みとなった時、俺は女の姿で旅行に出た。
温泉宿で浴衣を着せてもらい河原を散策した。
何も気にせずに女の姿を晒して歩く。
「お姉さん♪独りで傷心旅行?」
若い男に声を掛けられた。
誘われるままにお茶を飲んだ。
髪飾りをプレゼントしてもらった。
その日はそのまま別れたが、次の日にもう一度彼と出会った。
旅先の開放感のままに、あたしは彼に抱かれていた。
初めての女としてのセックス…
あたしは快感に満たされていた♪

彼とは旅先だけの関係だったが、それ以降、夜には毎晩のように自分の女性自身を慰めるようになっていた。
あたしは日中も女物の下着を着けたまま過ごすようになった。
服もユニセックス…そして、全くの女物も厭わなくなった。
ついには男に戻ることもなくなっていた。

そして、あの日から一年が過ぎた。
あたしは再び乳白色の空間に浮かんでいた。
「もう一年が経ったの?」
「はい。スペアの肉体に移ることができるようになりました。この肉体はあなたの自由にできます。」
「元の…男の姿に戻ってしまうの?」
「どうしますか?」
「どう…って?」
「変身の能力はわたし固有のものです。わたしが去ったらもう変身はできなくなりますが最期に一度だけ。つまり、このままか元に戻るかの選択になります。が…」
彼女は言葉を詰まらせた。
「どのくらいの期間変身せずにいたのですか?既に変身の能力が消えてしまってます!! も、元の姿に戻すことが…」
「こ、このままで良いです!!」
あたしは即答していた♪
 
 
 
いつものように目覚めた朝…
あたしは真っ先に鏡を覗いた。
いつもの『あたし』がそこにいた。
試しに「元の姿に戻れ」と念じてみたけど、この姿が変わることはなかった。
調べてみると『俺』の存在はうやむやになり、あの事故もなかったことになっていた。
あたしの部屋にももう『俺』だった痕跡は何も残っていなかった。
クローゼットの服も、チェストの下着もみんな『あたし』のものばかりになっていた。
誰もがあたしが生まれた時から女だったと疑うこともない。
あたし自身の記憶もあやふやになってゆく。

あたしから消えてしまった記憶がなんだったのか…などと考えることもなくなっていた。
あたしは彼に抱かれ悦びの声をあげる。
この幸せはもう手放したくはない。

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