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2018年11月 4日 (日)

告白

僕は頭の中がまっ白なまま…気が付くと神社の階段を上っていた。
自分の中の滓のような勇気を掻き集めて、ようやくの事、片思いの女の子、乃亞さんに告白した結果…
「あんたキモいから絶対に付きまとわないで頂戴!!」
との冷たいお言葉。

僕は頭の中がまっ白になって…
気が付くと神社の階段を上っていた。
当然の事ながら足下は覚束無い。
あと数段という所で踏み外し、一気に転げ落ちていった…
 
 
 
 
目覚めたのは病院のベッドの上のようだった。
あれだけの高さを転げ落ちたにも関わらず、身体に痛みはなかった。
が、何か違和感があった。
ぐるりと胸の下側を締めつけられていた。
腰の回りのベルトも高めに絞められている?
否、どうやらズボンは穿いていないようだ。
何がどうなっているか…今の僕は動けない訳ではない。
なら、この目で確認するのに越したことはない♪

掛かっていた毛布を剥いで、上半身を起こした。
(?!)
先ず目に入ったのは、紺色の幾つかの折り目の付いた布地が脚を被っている。
連想するのは「スカート」…
まるで女子の制服のような…
と、僕は胸元に目を向けた。
白い生地だが、ワイシャツより滑らかで光沢があるようだ。
確か、女子の制服のブラウスがこんな感じだった。
そして、女子はこの下にブラジャーをしておっぱいを固定している…

僕が感じていた胸を締めつけていたのがブラジャーであれば…
はたして、僕の胸は僅かではあるが膨らんでいた。
胸に手を宛て、掴んでみた。
ブラジャーのカップ越しに指先が肉塊に沈んでゆく。
と、同時に僕の胸では(揉まれている)という感覚があった。

鏡はないのか?
部屋の中を見ると入り口脇に洗面台があり、鏡もあるようだ。
僕はベッドを降り、鏡の前に立った。
(…乃亞さん?)
鏡に映っているのは、僕が告白した想い人その人だった。
(何で僕が乃亞さんになってるんだ?!)

そこに女性の声がした。
「乃亞、もう起きて大丈夫なの?」
彼女の母親だった。
「っあ、うん。大丈夫。」
ここで変な事を言って騒ぎになるのも嫌なので、僕はそう答えていた。
当然だが、そう答えた僕の声もまた乃亞さんの声になっていた。
「クルマを回してくるから、ここで待っててね。」
と病院の入り口まで僕を連れてくると、母親は駐車場に向かった。

(?)
受付のカウンターの上に今日の日付けが掲げられていた。
その日付けは僕の知る今日の日付けと違っていた。
(今日は昨日?)
確か乃亞さんは昨日、気分が悪くて早退したと聞いていた。
病院に寄っていたのか…
このままでいけば、僕は明日僕自身に告白される事になる。
もし、僕が僕の告白を受入たらどうなるのだろうか?

それ以前に、僕という存在が同時に二人いることになる。
そんな事があり得るのだろうか?

などと考えているうちにクルマは乃亞さんの家についていた。
「振り返すといけないからベッドで寝てなさい。」
と乃亞さんの母親に言われ、僕は乃亞さんの部屋で制服からパジャマに着替え、乃亞さんのベッドの上に横になった…
 
 
 
気が付くともう次の日の朝だった。
あわただしく学校に向かう仕度をした。
下着を換え、制服を着て、髪をとかす。
朝食のトーストと目玉焼きを食べ、歯を磨き、リップを塗った。
「行ってきます。」
と、いつものように家を出た…

(いつものよう?)

これは乃亞さんの日常であって、僕自身のものではない。
何故か僕は乃亞さんがするように朝の仕度をしてしまっていた。
(肉体が覚えている…ということなのだろうか?)
友達に声を掛けられ、
「おはよう♪」
と返していた。
勿論、僕の友達ではなく乃亞の友達の女の子だ。
僕が意識しない所では肉体が勝手に反応してくれているようだ。
教室に入り、乃亞さんの席に座った。
見ると教室の片隅で「僕」が頻繁に僕=乃亞さんを窺っていた。
(大丈夫。君の告白にはちゃんと応えてあげるから♪)

とは思ってはいたが、本当に僕にあの時の乃亞さんと異なる言動ができるのだろうか?
放課後が近づくにつれ、そんな不安がどんどん大きくなってきた。

授業は何事もなく終わっていった。
「乃亞、帰りに寄って行かない?」
千鶴に声を掛けられた。
このまま「僕」と会わずに帰ってしまうこともできるのだ。
が、それでは乃亞さんに振られたことと同じで「僕」は神社の階段を転げ落ちてゆくことになるのだろう。
「ゴメン。ちょっと用事があるんだ。」
そう言って僕は乃亞さんの鞄を持ってあの場所に向かった。

そこでは「僕」が待っていた。
「あんたキモいから…」
気を抜くとあの台詞が口を吐いて出そうになるのを押さえ込み、
「そうね、それも良いかも。」
と何とかそう答えていた。
「じゃあ、一緒に帰ろうか♪」
と「僕」が満面の笑みを僕=乃亞さんに向けた。
僕は断り切れずに彼に手を引かれ、歩き始めた。

やがて、あの神社の前にきた。
「ねえ、記念にお参りして行かない?」
と、彼が階段を上ろうとする。
「ダメっ!!」
俺は叫ぶように止めた。
「今日一日は階段は使わないで…」
「何で?」
と言いつつも彼は神社に上る階段の前を通り過ぎてくれた。
これで「僕」が階段を転げ落ちることはなくなった。

(過去が変わった?)

僕は乃亞さんに振られて、神社の階段を上り、そこから転げ落ち、僕は乃亞さんになった。
この「僕」はもう過去に戻り乃亞さんになることはない。
「僕」は「僕」のまま、未来を歩き始めていた。

なら、この僕は何者なのだろうか?
確かに肉体は「僕」の想い人の乃亞さんだが、その中身は僕なのだ。
そんな僕=乃亞さんを「僕」は愛し切れるのだろうか?
それ以前に、僕が「僕」自身を受け入れられるのだろうか?
「ねぇ♪」
僕…あたしは「彼」を呼び止めた。
「なに?」
立ち止まり、振り返った彼にあたしは抱き付いた。
彼を見上げる。
「ねぇ、キスしてくれる?」
あたしはそのまま瞼を閉じた。
恐る恐るといった感じで彼の唇があたしの唇に触れた。
彼を抱くあたしの腕に力が籠もる。
舌を伸ばして、彼の舌に絡めた。
彼は拒絶することはなかった。
彼もまた、しっかとあたしを抱きしめた…

(大丈夫。あたしはちゃんと乃亞としてやっていけるわ。)

あたしは彼の抱擁に身を委ねていた…

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