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2018年8月14日 (火)

無題

「うりゃ~~!!」
掛け声と共に長太刀が魔獸達を斬り倒す。
一撃で半数が、返す刀で残りの半数が消え去っていった。
残った魔獸は3体となっていた。
 
魔獸に対峙しているのは鍛え上げられた褐色の肉体の男だ。
そして、ここまで鍛え上げたのは他ならぬ俺自身だった。
しかし、「今」その肉体を操っているのは俺ではなかった。
俺は男の斬撃を邪魔しないように、木の幹の陰に身を潜めているしかないのだ。
 
今の俺には彼を手助けする術が全くない。
自ら身体を動かすことはできるが、彼の持つ長太刀はおろか、細身刀でさえ振り回す体力がないのだ。
鍛えれば…とは思うが、今の俺が装備として持っている飾り物のような細身刀では今彼の対峙しているような魔獸には傷ひとつ負わせることなどできない。
「剣舞を見せてくれる程度なら良いけど、その肉体を元のあんたみたいに筋肉鎧にはしないでね!!」
と釘を刺されている。
 
「今のあんたはあたしに護られてれば良いの♪余計な事はしない、考えない!!あんたはあたしの腕の中で悦んでれば良いのよ♪」
と彼は女言葉でまくし立てる。
そう…今の俺たちは魂と肉体が入れ替っている。
今の俺は何の力もない「女」の肉体に、彼女の魂が元々の俺の肉体の内にあった。
なおかつ、俺と彼女の関係は肉体が入れ替っても変わることはなかった。
…ただし、立場は肉体に応じたものであったが…
 
昨夜も俺は「彼」の逞しい腕の中で淫らに悶え狂っていた。
肉体から与えられる快感にはどうやっても抗うことはできない。
男では経験することのできない乳房を揉み上げられる感覚、乳首を弄られる刺激に耐性などある筈がない。
ましてや彼の肉棒に貫かれては…
俺はオンナの艶声をあげて、イき続けるしかなかった。
 
「ほら、終わったぞ♪」
と彼に頭を撫でられ我に返った。
俺達の周りには死骸となった魔獣が散らばっていた。
その中に動ける魔獣は一体としていなかった。
「さあ、先を急ごう!!」
と歩き出す彼の後を追う。
普通に歩いているだけの彼ではあるが、俺は少し早歩きしないと置いていかれる。
体格の違いを痛感する。
以前の俺であれば、彼女を見下ろし、簡単に頭を撫でてやれたのだ…
が、今ではキスをするにも彼を見上げ、その首に腕を回して引き寄せなくてはならないのだ。
 
…否っ!!
俺が彼にキスをせがんだりしているのではない…
彼女の肉体がそれを求めるのだ。
夜になり、彼と二人だけになると無性に彼の温もりが欲しくなる。
(彼と身体を触れあわせていたい…)
肉体の欲求が無意識に彼と手を繋ぐ。
指を絡め、腕を絡め、身体を密着させてゆく。
「ん?」
と俺を見下ろした彼の顔が目に入ると、俺の視線は彼の唇から逸らせられない…
 
気が付くと、俺は彼の首に腕を掛けて引き寄せている。
彼の腕が俺の腰に回る。
唇が重なり、彼の舌が侵入してくる。
互いの舌を絡め、唾液が混ざり合う…
俺は気持ち良さに意識が飛びそうになる。
 
「おい。」
と、彼の声に意識が戻った。
彼との距離が開いてしまっていた。
「ぁ、ごめん♪」
と駆け寄る。
「急ごう。野宿よりはベッドが良いだろ?」
ベッド…と聞いて即座に俺の股間が潤みだす。
男ではあり得ない肉体の反応にも、もう戸惑うことは無くなっていた。
俺の肉体が放ち始めた芳香に彼の肉体が反応している♪
俺に合わせてくれたように、歩く速さが遅くなっていた。
 
点在する民家に灯が点きだしたころ、俺達は町に辿り着いた。
魔獸の牙を換金して、それなりの宿を手配した。
「?!」
部屋に入るなり、俺はベッドに押し倒されていた。
「ま…まだ飯も食ってないんだぞ!!」
「さっきからあたしを誘い続けてるその肉体がイケないのよ♪もう我慢できないわ!!」
あっと言う間に俺は服を剥ぎ取られていた。
「ンあんっ!!」
股間が舐めあげられると、反射的に甘い淫声があがってしまう♪
「問題ないわね♪」
と全裸になった彼がのし掛かってくる。
股間には彼の逸物があてがわれ、一気に俺を貫いた♪
相当に堪えていたのか、二度、三度とスイングしただけで、彼は俺のナカに精を解き放った。
だからといって彼が萎えたりすることはない。
次からはじっくりと責めあげてくる。
再度彼が達するまでには、俺は幾度となくイかされていた。
 
彼が離れたあとも、俺は余韻に浸っていた。
「あたしは飯を食ってくるけど、あんたはどうする?」
と聞いてきた。
「独りでどうぞ…」
と俺は即答したいた。
彼の精液で俺の空腹は既に満たされていた。
人前に出るにはシャワーを浴びて纏い付いた芳香を洗い流さなければならない。
それ以上に、俺はまだしばらくは彼の余韻に浸っていたかったのだ。
 
 
 
それは思いもよらないトラップだった。
魔物に囚われた彼女を救い出すために降りていったダンジョンの最下層には、ラスボスと鉄格子の奥に彼女が佇んでいた。
狭い洞窟内では思うように長太刀を振るうことが出来ない。
が、なんとかラスボスの急所を捉えられることができた。
断末魔の叫びを残し、ラスボスは倒れた。
俺は彼女が囚われられている鉄格子に向かい、入り口に絡まる鎖を錠前ごと断ち切った。
 
「キャーーーッ!!」
女の悲鳴が洞窟内に響く。
響きが増幅され俺の頭を揺さぶった。
既にトラップは発動していた。
俺は俺自身の魂が自らの肉体から弾き出されるのを感じた。
そのまま俺の魂は女の方に飛んでゆく…
ふと気が付くと、俺は彼女になっていた。
 
「大丈夫?」
と「俺」が鉄格子の入り口を開いて入ってきた。
その時の俺は、彼が「俺」自身であることに気付かず、自分よりも巨大な体躯の男に迫られ…
「キャッ!!」
と、女のように悲鳴をあげていた。
 
彼は俺をお姫様のように抱き抱えると、一気にダンジョンを駆け上がって地上に戻っていた。
「どうやら、あたし達の魂と肉体が入れ替わってしまったようね。」
「トラップか…」
「ラスボスの最後のアガキみたいね。あたしが無事に戻らなければラスボスの企みは成就する事になるものね。」
「…」
「大丈夫。あたしも多少は剣を使えるわ。貴女を守って送り届けることもできるわよ♪」
こうして、護る者と護られる者が入れ替わったまま、帰途に就いたのだが…
俺達の帰路には予想以上に魔獣達が潜んでいた。
 
最初に遭遇した魔獣達の一団をようやくのことで彼が斬り倒した後、疲労した彼を癒してゆく流れの中で、俺は彼に身体を許してしまっていた。
否、自分が「女」であることのできていなかった俺には、彼を拒絶する選択肢などはなかった。
いつの間にか俺は彼に抱かれ、もたらされる快感に喘ぎ声を漏らしていたのだ。
 
 
 
 
 
カチャリとドアの開く音がした。
彼が俺を覗き込んだ。
余りにも酒臭いので俺は眠ったフリを決め込んでいた。
「ふ~~う♪」
と溜め息を吐いて、彼はソファーに座り込んだようだ。
「そろそろ頃合いかな?もう、奴も充分女に染まっただろう♪俺もそろそろお姫様の相手ばかりでは物足りなくなってきたしな…」
いつもと違う彼の口調に、俺の背中を冷たいモノが走っていった。
「ニンゲンとはひ弱なものとは思っていたが、この肉体は魔物に近いものがある。少しは補強が必要だが、この肉体でダンジョンを支配するのも一興か♪」
 
騙された?!
「俺」の内にあったのは、俺が倒したラスボスの魂だというのか?
……合点はいく。
いくら「俺」の肉体とはいえ、普通の女が長太刀を振り回すだけならともかく、戦闘を行うことなどできる筈もないのだ。
それに、多くの魔法は術者が死ねば解法されるのものだ。
(だが、どうすれば良い?)
か弱い女の肉体では彼に傷一つ付けることもできないだろう。
もし、刃に毒を塗れたとしても彼に効くとは思えない。
それ以前に彼に監視されている状況で毒を手に入れることさえもできないだろう。
今の俺に何ができるというのだろうか?
 
「おい!!目は覚めているんだろう?」
奴が俺を呼んだ。
「俺の正体も判ったようだな♪良い事を教えてやろう。俺は肉体交換の他に催眠暗示を掛けることができる。そう長い間ではないがな♪」
(?)
「お前の戦ったラスボスは、自分をラスボスだと暗示を掛けられたお姫様自身だったんだ。」
「?!」
「お前はお姫様を救出するどころか、その手で殺しちまったんだな♪」
その言葉に俺は思考停止に陥った。
「今度はお前にも催眠暗示を掛けてやるよ♪」
俺は隙だらけだったのだろう。奴の暗示に抗う術はなかった…
「そう…良い娘だ♪お前は生まれながらの娼婦だ。そうだ、それに相応しい肉体を持っているだろう♪」
(…)
 
 
 
「…んぁん♪」
艶かしい女の吐息が聞こえていた。
それが俺自身の発していたものだと理解する。
俺は幾人もの男に組み敷かれていた。
奴の暗示が切れたのだろう。
暗示下の記憶と、その前までの記憶が融合する。
俺は娼館に売られ、奴はどこかに行ってしまった。
既に数日が経過している。
(奴を追うか?)
追っても「俺」の肉体を取り戻すのが困難であることは明白である。
 
「あっあん!!」
男に貫かれ、俺は快感に嬌声をあげていた。
 
このまま…このまま娼婦として一生を終えるのも悪くはないかも…
俺は男としての意識を閉ざし、オンナの快楽に全てを委ねた。

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