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2017年7月29日 (土)

無題

世の中には、どうにもならないことが道端の石ころのように転がっている。

加藤武はただでさえ、女の子達にキャアキャア言われるイケメンである。
下半身も充分に鍛えられていて、グラスの女子の半分は既に彼に抱かれてると言われている。
つまり、残りの半分以下の女の子を彼以外の男子達が奪い合うのだ。
当然の事ながら、残りの男子達とて条件は均等である筈もない。
加藤には及ばないものの、それなりのルックスを持っている奴。
顔はいまいちだが、スポーツに秀でた能力を持つ奴。
顔も体躯もいまいちだが、頭の良い奴。
などなど…
十羽ひとからげにさえも落ちこぼれる僕などに、女の子と付き合うチャンスなど微塵の欠片さえないのは推して知るべしである。
どうにもならないことではあるとは理解してはいるが、その不満は心の奥底の淀みに、どろどろになって固まっていった。

「その悩み♪快決して進是よう!!」
唐突に僕の前に現れた男は、胡散臭い事この上ない雰囲気をばらまいていた。
「な、何なんですか、あなたは!!」
「わしは通りすがりの仙人じや。ほれ、この棒に念ずれば、即に望みは叶うでな♪」
「仙人?」
と、僕が戸惑っている間に、仙人を名乗る男は僕に棒を渡すなり掻き消すように姿を消していた。

僕の手元に残った棒だけが今の事が現実であったと告げていた。
(本当に願いを叶えてくれるのか?)
半信半疑ではあったが、悪魔との契約と違い、代償は何も求められていない…
ダメ元で願いを掛けてみても良いか♪
では、どうする?

と、真っ先に頭に浮かんだのは、イケメンの加藤の顔だった。
女の子達から見向きもされなくなるようなブサメンにしてやろうかとも思ったが、それではあまりにも勿体ない。
ようは女の子達との関係がナシになれば良いのだ。
じゃあ、どうすれば彼がイケメンのままで女の子達から見向きもされなくなる?
(!!)
要は、彼女達とは対極の者との関係を深めてやれば良い♪
それは天からの啓示だった。

では、その「対極」とは?
と自問する前から答えは見えていた。
それは「僕」だ。
彼の嗜好の対象を僕にすり替えてしまえば良いのだ♪
僕だけを見つめる加藤に、女の子達は幻滅するに違いない。

僕はその夜、棒を握りしめて加藤が僕を見るように、これまで女の子達に向けていた意識を全て僕だけに向けるように、他の女の子じゃなく僕が彼の一番になる!!
そう願いながら眠りに就いた…

「おはよう。マイハニー♪」
彼の声に起こされた。
(何で彼がここにいるの?)
その疑問に答えを見つけようとして辺りを見渡し、ここが自分の部屋ではないことに気付いた。
噂には聞いていたが、彼が女の子を抱く時は決まって彼自身の部屋に誘うらしい。
今は対極である「僕」がその女の子達の立場に取って代わったのだ。
…だから…
夕べは僕が彼女達に代わってこの部屋で彼に抱かれたというのか?
慌てて起き上がると、僕は自分が裸であることに気付いた。
(?!)
僕の胸に双つの膨らみがあった。
まさか…
………
……

彼に促されて僕はシャワーを浴びた。
僕は自分の肉体が完全に「女の子」そのものになっているのを確認した。
記憶を辿ると、昨夜は確かに「女の子」として僕は彼を受け入れていた。
あの棒に願ったことで、僕は彼の「一番の女の子」ということになってしまったようだ。

身体を拭き、ショーツを穿いてブラを止める。
着てきたセーラー服を着て、スカーフを結ぶ。
何故かそれらが自然とできてしまう。
鏡を見ながら髪の毛を整えると、そこにはいつものあたしがいた。
「じゃあ行こうか♪」
と武が声を掛けてくる。
ローファーを履くと武の腕に絡み付く♪
ドアの鍵を締めると武が困ったような顔を見せる。
「良いでしょう?武はあたしだけのモノなんだから♪」
そう言うと
「はいはいお姫さま♪」
と笑顔を見せ、チュッと挨拶代わりのキスをしてくれた♪

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以前「棒の手紙」というものが話題になった。
知っている人もいるかと思うが、
これは字の汚い人が手書きした「不幸」が
いつの間にか「棒」に変化して連鎖していった…

そんなイメージが私の中で「棒」に付きまとっています。(奈落)

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