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2017年6月10日 (土)

刹那

…チェック…

駆動系異常なし
探査系異常なし
通信系異常なし
艤装・装甲異常なし

…オールグリーン…

俺がスティックを握るとマシンの駆動音が高まる。
ぐい、と加速が掛かり、マシンが動き出す。
モニタが逐次情報を表示する。
現在位置…
風向・風速…
粉塵濃度…
障害物予測、そして…「敵」

敵の属性を走査し、武器を選択する。
「抜刀っ!!」
俺は風下から接敵する。
「核」を狙い、刃を突き立てる。

ガシッ!!

切っ先が敵の防御に阻まれる。
次手を繰り出す前に、敵の攻撃が襲い来る。
スティックを捻り、攻撃をかわす。
考えていた次手には位置が悪い。
が、何もせずにいては攻められる一方だ。
機銃をフェイントにして、機体後部を接触させる。
こちらにもダメージがない訳でもないのだが、一矢報いることはできた。

間合いを取る…

お互いに次の一手を決めかねていた。
時間だけが過ぎてゆく。

と、一気に黒雲が沸き起こり、天を覆った。
雷鳴がとどろき、幾本もの閃光が大地に突き刺さった。
耐雷性があるとはいえ、この状況で戦闘を続けるにはリスクが大きい。
(決めるしかない!!)
痺れを切らして飛び出した俺は、奴に余裕を持ってかわされてしまう。
コクピットの俺に向かい、必殺の一撃が繰り出された。

!!!!!!!!!!

辺りが閃光に包まれた。
計器が沈黙する。
そればかりか、マシン自体が静まりかえって…
光の中に溶け込んでゆく?

俺は光の中に浮かんでいた。
そして、光の中にはもう一人…敵のパイロットであろう人影があった。
「お…おい。どうなってるんだよ!!」
俺が声を掛けると、
「うるさいわね。少しは自分で考えようとは思わないの?」
と、返ってきた。
「女か?」
「女じゃ悪い?その女を見下したような言い方…そんなに男が偉いって言うの?」

俺は女の問いなど無視していた。
女相手にほぼ互角の戦いとなった自分が情けなかった。
(女なんかに…)
言葉にはしなかったが、その感情は彼女に伝わっていたようだ。

「まだ言うか?!」
彼女の殺気のようなものが俺を刺し貫いた。
「女だから…人一倍努力して、ここまできたんだ。」
ずい、と彼女が近づいてきた。
「お前なんかに…」
彼女の瞳から、紅色の涙が滴っていた。
「………」

 

気が付くと俺は喧騒の中にいた。
そこがいつもの酒保であることは即にわかった。
見知った顔もいくつか見掛けた。
(俺はいつ、どうやってここに戻った?)
疑問は解決したかったが、それよりも気になる「違和感」があった。
俺が着ていた服は、いつもの軍服ではなかった。
袖がなく、異様に軽い。
胸元が大きく開き、その下には胸の谷間?!

「キャッ♪」
俺は思わず叫んでいた。
誰かに尻を揉まれたのだ。
が、今の声は何だ??
「俺」の声ではない!!
まるで…女の…

俺は漸く、今の自分が「女」になっていることを認識した。
「どうした?何ボーッとしてるんだ?」
多分、今の俺の立場は、酒保で俺達の相手をする「コンパニオン」なのだろう。
「ちょっと御免。」
立ち上り、席を離れようとしたが、ハイヒールにバランスを崩す。
「おっと♪」
と近くにいた男に支えられた。
そして、そのまま男の腕の中に…
「行くか?」
と男に抱えられたまま、裏手のドアを抜けた。
が…
男は何を勘違いしたか、仮眠室のひとつに俺を連れ込んだ。

(否。男は勘違いなどしていない!!)
そのことに思い至らなかったのは俺の方だった。
今の俺は女で、酒保のコンパニオンなのだ…
当然、男は「女」を抱くべくベッドに向かう。
そう、抱かれるのは…俺だ…

あっという間に服を脱がされていた。
自分が「女」であることをまざまざと見せ付けられる。
そして、男は自慢の逸物を俺の目の前に晒した。
「何をすれば良いかは解っているだろう♪」
と、その先端を俺の唇に触れさせた。
(これを咥えるしかないのか?)
男が「女」にさせようとしていることは明白である。
そして、その「女」が俺自身なのだ…

俺は拒絶する間もなく、それを咥えていた。
先端が喉の奥を刺激する。
塞がれた口は嗚咽を洩らすこともできない。
「いくぞ♪」
の声と共に、男の精液が喉の中に放たれた。
息の出来ない苦しみから、俺はそれを飲み込んでいた。

「良い娘だ♪」
と褒められると、無意識に笑みが浮かぶ。
「男」の俺が精液を飲まされて気分が良い筈はないのだが、俺の中の「女」がそれを喜んでいた。
「ご褒美をあげよう♪」
と、俺はベッドに転がされた。
その上に男が重なり、俺を貫いていた。

「ああん、あ~ん♪」
自然と淫声が洩れる。
それがオンナの快感であると意識する間もなく、俺はその快感に呑み込まれていた。
腟の奥を刺激する彼の動きが激しくなる。
「あ、あ、あっ…」
その先に快感の頂きが見え隠れしている♪
「これでどうだっ!!」
腟の奥に彼の放った精液が叩き突けられる。
「ああ~~~~っ!!」
俺は嬌声をあげ、快感の中に意識を失っていた…

 

 
「どお?女になった気分は♪」
俺達は再び光の中にいた。
「今の幻覚はお前が見せたのか?」
「幻覚じゃないわ。それは現実にあったこと…ちょっと因果を弄っただけよ♪」
「現実?」
「まだ気付かない?今の貴女自身の姿♪」
「俺の?」
そう言われ、自分を見る…そこには幻覚と同じ女の肉体があった。

「戻せ!!」
俺は叫んだ。
その声も女声であった。
「戻せないわ♪」
と女は笑って言う。
「既にあたし達は死んでいるの…いえ、死につつあると言った方が良いわね。そう、今は死ぬ間際の刹那の一瞬。」
「刹那?」
「すべての常識が意味を成さない、不条理の時。貴女にオンナを経験させるのも簡単なこと♪」
「な、なら俺を男に戻せ!!」
「嫌よ♪女を見下すのならば、女のまま死んで、来世もまた女に生まれ代わると良いわ!!」

「来世も女?!  …俺は…俺は女になんかなりたくない!!」
「無理ね。まもなく刹那の時が終わるわ。貴女は女として死ぬのよ♪」
彼女の言葉と共に、光が褪せてゆく。
刹那の時が終わりを迎えるのだ…
彼女の嘲笑う声が最期まで響いていた。

 

「おい。大丈夫か?」
暗闇の中、遠くから声がした。
潰れたコクピットの中で、俺は身動きも取れずにいた。
外装を引き剥がす重機の音がする。
光がさし込み、人影が近づいた。
俺のヘルメットに手が掛かり、外された。

一瞬の沈黙の後、その男が言った。
「お前、何者だ?どうやってそこにいる?!」

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