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2017年4月28日 (金)

やり直し

ひたひたと潮が満ちてくる。
俺は砂浜に首まで埋められて、身動きが出来ないでいた。
耳元に流れ込もうとする海水を防ぐ事も出来ない。
この先も、口や鼻からの浸入をも許さざるを得ないであろう。
無情にも、刻は過ぎて行く。
少しでも息をすれば海水は俺の肺の中を満たしてしまうであろう…

何故、俺はこんな場所にいるのだろうか?
勿論、その理由は判りきっている。
知らなかったとはいえ、組長の孫娘に手を付けたのだ。
まだ、その場で一思いにに斬り捨てられていた方がさっぱりしていただろう。
(どうする?)
突然頭の中に声が響いた。
(やり直してみないか?)
やり直す?
声はそう言った。
どういうことだ?
(言葉通り、過去に戻って現状を変えてみようとは思わないか?)
とにかく、このままでは待っているのは「死」だけなのだ。
俺は躊躇うことなくその提案に同意していた。

 

「どうした♪今になって怖くなったか?」
男の言葉に、俺は条件反射のように…
「そ、そんなことないわよ!!」
(「…わよ」?!)
な、何なんだ?この語尾は?
いや!!それよりもこの「声」だ。
まるで、女の子みたいに甲高い!!

(女の子?)

俺は部屋の壁のひとつが一面鏡貼りになっているのに気付いた。
そこには「俺」と「ミホ」が映っている。
ミホはそもそも発端となった組長の孫娘だ。
それに覚えているぞ。
ここは、俺がミホの処女をいただいたラブホテルだ♪

(過去に戻った?)

「そうか♪なら、良いんだな?」
男=「俺」が、俺を抱きしめた。
鏡にはミホを抱く「俺」が映っているが、それは「今」の俺ではない。
今は、俺がミホなのだ…
以前の俺がしたように、「俺」はミホをベッドに押し倒した。
…否…
俺が押し倒され、組み敷かれてゆく。
脚を開かされ、男の舌が俺の股関を舐めあげる。
「ん…あ、ああ♪」
俺は女のように喘ぎ声をあげていた。

(これは既視感か?)
俺の記憶にある通りに、男=「俺」は俺=ミホを責めたてた。
…そう…ここれは過去の再現なのだ。
俺は過去に戻り、現在の俺を「死」から救うべく…
「あっ!!ああ~ん♪」

俺は女の快感に呑み込まれてしまっていた…

俺は毎日のように「俺」に抱かれていた。
満たされる幸福感と、際限のない快感に、思考が停止していた。

気が付いた時は、既に「その日」だった。
来るはずの「彼」を待って眠れぬ夜を明かした時、ようやくその事実に気付いた。
(俺は何の為に過去に戻ったのだ!!)
「彼が死んじゃう…」
俺は化粧もそこそこに部屋を飛び出して行った。

「見つけたっ♪」
砂に埋もれた彼の姿を認めると、素足になって砂の上を駆け寄って行った。
「遅かったじゃねえか。」
と余裕をうそぶく彼…
「ばかばかばかっ!!」
と泣きながら砂を掘り返した。

ガバッと、砂の中から腕が現れてアタシを抱きしめた。
続いて上半身が起き上がった。
「別に俺のことなど放っておいても良かったんじゃないか?」
えっ?
アタシは頭の中がまっ白になった。
「別にこの肉体でなくとも、貴方は生き続けていられるのでしょう?」
「生きて…?」
「あなたはあたしより、いきいきとしてみえたわ♪」

(この人は誰?)
アタシの中で急速に疑問が沸き起こってきた。
「まだわからない?可愛くなった分、頭が悪くなったのかしら?」
「その言いかた…ミホか?」
「貴方が貴方であるようにね?」

アタシと彼は中身が入れ替わったまま、元に戻ることはなかった。
けれど、そちらの方が却って良かったようだ。
彼は「ミホ」の明晰な頭脳と「俺」の精力的な肉体とで、組織の中でメキメキと頭角を伸ばし、アタシのパートナーとして申し分ないことをお祖父様や周囲の人達に見せつけていた。
アタシはもう組織の目を気にすることもなくなり、全てを彼に委ねて快楽のみを追い求めていれば良かった♪

「あん♪ああ~ん!!」
アタシは今夜も彼に抱かれて嬌声をあげ続いていた…

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