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2016年9月24日 (土)

転生者(8)

「もうすぐ東京港に入港します。」
と俺は再び艦橋に招かれた。
あの後は転生者の能力が発動する機会もなく、順調に航海を進めていた。
「既に浦賀水道は越えています。」
モニタには陸地が写っていた。
その脇に東京湾の地図が表示されている。
(?)
それは俺の知っている地形とは若干異なっていた。
東京湾を横断する橋が幾本も架かっている。
それ以上に羽田空港の辺りが異様な構造になっていた。
滑走路になるべき場所に縦横に運河が通っている。
…そう、この世界では「航空機」は一般的なものではないのだ。
「あれは羽田埠頭群だね。民間の船舶が使用しているんだ。」
彼がモニタを指し示した方向が羽田なのだろう。
巨大な格納庫が並んでいるようだった。
「今は海面に出ているから、実際の景色が見れているんだ。」
そう言われ、再び岸に目をやり、違和感を感じた。
(?)
地図を確認し、もう一度埠頭を見た。
「橋が無い?」
「基本的に車や鉄道は地下を走らせている。運河を渡るのは橋ではなく、トンネルになっているんだよ♪」
つまり東京湾を横断していたのも、橋ではなく、全て海底トンネルだったのだ。

 

白瀬は晴海埠頭に接岸するようだった。
一際立派な格納庫が見えた。
扉が開き、艦がそのまま入っていった。
タラップやクレーンがせり出してきて、艦を囲んだ。
「船体固定完了」
「システム待機モードに移行」
報告を受けた提督が
「皆、お疲れ様。」
と到着を宣言した。
「じゃあ、艦を降りようか♪」
と彼に連れられて艦橋を後にした。
「荷物は後でホテルに届けさせるから。」
と、そのまま艦の外に出ていった。
「荷物って?」
救助された時には、何も身に着けていないような状況だったのだ。私物など持ってはいない筈だった。
「部屋で使っていた着替えや化粧品などだよ。もともとは艦の備品だが、使い掛けのもねは君に進呈するよ♪」

そんなやりとりをしながら通路を進んだ。
片側の窓から外が見えた。
運河の向こう側が都心であろう。
だが、摩天楼のような高層ビルはなく、その先には天守閣のようなものが見えた。
「あれは江戸城?」
「再建したものだけどね。」
建物を出ると、人力車のようなものがあった。
勿論、人が曳くのではなく、無人のオートバイみないなものが付属していた。
「乗って♪別に急ぐこともないし、これなら君もこの世界に触れられると思ってね。」

確かに、車は地下を走っているようで、道を行くのは歩行者か自転車ばかりだった。
運河を渡る橋もない訳ではないが、歩行者用の簡易な造りのようだ。
この人力車様のものであれば問題ないが、一般的な自動車であれば荷重に耐えられないに違いない。

築地を過ぎると洒落た感じの商店が増えてきた。
銀座の活気はこの世界でも同じだった。
運河…外堀を越えると映画館や劇場の立ち並ぶ区域になった。
道の先には江戸城の白亜の城壁が輝いていた。
内堀は広大な池のようだった。
池の中に巨大な江戸城が浮かんでいた。

圧倒される。

「これが、この世界の東京だよ♪」
周りには地方から出てきた観光客らしき人達が城をバックに思い思い写真を撮っていた。
「ホテルは即ぐ近くだから、歩いていこうか♪」
と、お堀端を歩いてゆく。
爽やかな風が吹き抜けていった。
(こんな〈風〉を感じたのはいつ以来だったろうか?)

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