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2016年9月24日 (土)

転生者(1)

軽巡洋艦は戦場に辿り着く前に嵐の海に翻弄されたあげく、波間に消えていった。
俺はあっという間に投げ出され、気付いた時には辛うじてライフジャケットの浮力に助けてもらっていた。
辺りには誰もいないようだ。
否!!
本来であれば、艦が沈んだのだ。他の生存者はともかく、何かしらの浮遊物が多数散らばっていなければならない。
が、俺の周りには静かな水面と、透き通るような蒼い海水しかなかった。

水温は低くはないものの、体力は次第に奪われてゆく。
勿論、食料などない。
それ以上に周りにこれだけ「水」があるのに、俺はその一滴たりとも飲むことを許されてはいなかった。

夜が来る。
満天に星が散らばっている。
が、ここには見覚えのある星座は見当たらなかった。
俺はうとうとし始め、気が付くと再び太陽が昇ってきていた。

幸いな事に俺を「餌」だと思うような肉食生物は現れなかった。
それどころか、魚一匹、鳥一羽とて見てはいなかった。

俺はただ、浮いたまま一日を過ごし、また夜を迎えていた。
 

 
パラパラとプロペラの機械音のようなものが聞こえた。
上空を過る影があった。
鳥ではない。
人工的な飛翔物である。
(救援か?)
だとしても、今の俺には彼等に存在を示す行為を行う体力さえない。
が、万に一つの奇跡が起こった。

飛翔体は高度を落とし、こちらに近づくと穏やかな海面に着水した。
(敵か?)
それは見たこともない機体だった。
フロートに支えられた翼の上にエンジンとプロペラを装備しているのだが…
プロペラは俺の知識にあるものより遥かに巨大で、前方ではなく、上を向いていた。
飛行艇は俺の脇を通り過ぎて停止すると、機体後部の扉が開かれゴムボートが下ろされた。
三人が乗り込み、こちらに近付いてきた。
「□※☆!!」
聞いたこともない言語だった。
が、次に彼らが口を開いた時、
「生きてるか?」
と聞こえた。
「なんとか…」
と応え、片手を上げた。が、俺の意思力はそこで尽きてしまった。

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