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2016年9月24日 (土)

転生者(2)

そこが船の中であろう事はかすかな揺れで判った。
が、その部屋には窓はなく、動力船にある筈のエンジンの微細な振動も、駆動音も感じられなかった。
「気が付きましたか?」
若い女の声がした。
白い制服のような服を着ていた。
(スカートではなくズボンなのが残念だ♪)
「ジカラムの投与で体力は回復しつつあります。骨折等はありません。炎天下に曝されて顔面に炎症がありましたが、フチルサを塗っておきましたので程なく治まるでしょう。」
「ありがとう。助かったよ。今だ生きているのが信じられない。」
「転生された方は皆さんそうおっしゃいます。」
「転生?」
「その事は追って。落ち着いてからゆっくり説明します。」
「では別の質問。ここは船の中のようだが、どこに向かっているのかな?」
「この船は潜水艦:白瀬。東京に向かっています。」
「潜水艦?それにしては狭さを感じさせないね♪」
「あなた方の世界では潜水艦はあまり発達しなかったと聞いています。白瀬はあなた方でいう戦艦よりも巨大な艦となっています。」
当然、俺には想像もつかない大きさである。
「完全に回復するまではベッドで安静にしていた方が良いですよ。」
「判った。もう一眠りさせてもらうよ。」
彼女の提案に従ったが、あまりにも静かな所為か、なかなか寝付けなかった。
「どこか痛みますか?」
彼女は部屋を去らずにいたみたいだ。
「痛みとかはない。静か過ぎるというか、これまで俺が置かれていた環境とあまりにも違うので寝付けないだけだ。」
「何か音楽でも掛けましょうか?」
「音楽?」
「少しは落ち着けると思いますよ♪」
彼女が手元の装置を操作すると、部屋の中に琴と尺八の音色が響いてきた。
「ありがとう…」
俺は今度こそ、深い眠りに落ちていった。

 

カチャカチャと食器の音がして目が覚めた。
「すみません。起こしてしまいましたか?」
「十分に寝たので、目覚めはすっきりとしているよ。それは?」
「先ずはお粥から。胃に負担を掛けないように♪」
「美味しそうだな。」
と俺が起き上がろうとすると、
「ちょっと待ってください。」
と彼女が手元を操作した。
ベッドの上半身部分が自動的に起き上がってきた。
肉体に負担を掛けることなく、ベッドの上に座っていた。
「便利だね。だが、便利過ぎると身体が鈍ってしまいそうだ。」
「完治したら即にリハビリが始まります。多少厳しいメニューもありますが、鈍るような事はさせません。」
「判ったよ。今はコレで粥を頂かせてもらうよ♪」
とお椀から匙で粥を掬った。
良い香りが漂ってきた。
口に入れる。
「美味しい♪こんな美味い飯は生まれて初めてだ!!」
と、あっと言う間に椀の中からは粥が消えてしまっていた。
「物足りないかも知れませんが、おかわりはありません。」
「理解している。で、そのリハビリとやらはいつから始めるのかな?」
と聞くと、彼女は手元の書類を確認した。
「状況は安定しているようですので、午後に転生・転生者についてお話しします。その後で調整しましょう。」
「了解した。」

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