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2016年9月29日 (木)

奈落の部屋 の移転について

奈落の部屋  (旧HP 閉鎖延期 9/29 → 11/10)
http://homepage3.nifty.com/PFB01406/index.htm

ですが、NIFTYより現行HPサービス停止の連絡がありました。
移転先はhttp://pfb01406.o.oo7.jp/index.htmとなります。

2016年11月10日以降は旧HPはアクセスできません。

2016年9月24日 (土)

無題

その日、僕は「痴漢」に襲われた。
満員電車の中、身動きが出来ないでいる所に、お尻を撫でまわす手があった。
(まさか?)
とは思ったが、身動きがとれない僕に、その手を拒む事はできなかった。

それは新たな「都市伝説」だった。
その「痴漢」に犯られた者は「女」になる…

これがその「痴漢」の手とは限らないが…
ガタリと電車が揺れた。
痴漢の身体が僕の背後に密着した。
僕はお尻に硬い棒状の存在を感じていた。
それが勃起した痴漢のペニスである事は疑いようもない。
そして、それがあの「痴漢」である事が判った。
ズボンなどの物理的障壁を無視するかのように、ソレが直接僕の尻たぶの間に挟まってきたのだ。
そして、再び「痴漢」の手が伸びてくる。
コレも物理的障壁を無視して、僕の下腹部に直接触れていた。
掌が這い進み、僕の股間を被った。
中指が股間の中心を刺激している。
多分、女性であれば膣口のあるあたりだろう。
ジクッ…
何かが股間に滲み出てきた。
女性なら愛液といえるものだろうか?

グイっと身体が持ち上げられた。
尻に挟まっていた奴のペニスが前方に突き出る。
その上に僕の身体が降ろされる。
ペニスの先端が愛液に濡れた膣口に触れ…

ズッ…

と僕のナカに入ってきた。
電車の振動に合わせて、ペニスが煽動する。
つま先立ちの僕は溢れ出てくる快感に女の子のように喘ぎそうになる。
歯を食い縛り、僕は「快感」に耐える…

もうすぐ次の駅だ。
扉が開けば逃げ出すことができる…
(あと少し…)
だが…
僕のナカで奴のペニスが大きく膨れ、僕のナカに何かを放出した。

 

『つぎは~』
車内アナウンスが流れる。
放心状態の僕は圧し流されるようにしてホームに降り立っていた。
既に「痴漢」の気配はない。
そもそも痴漢に会ったような服の乱れも何もない。
が、僕は「痴漢」に襲われたのだ。
これは事実だ。
何故なら…

転生者(1)

軽巡洋艦は戦場に辿り着く前に嵐の海に翻弄されたあげく、波間に消えていった。
俺はあっという間に投げ出され、気付いた時には辛うじてライフジャケットの浮力に助けてもらっていた。
辺りには誰もいないようだ。
否!!
本来であれば、艦が沈んだのだ。他の生存者はともかく、何かしらの浮遊物が多数散らばっていなければならない。
が、俺の周りには静かな水面と、透き通るような蒼い海水しかなかった。

水温は低くはないものの、体力は次第に奪われてゆく。
勿論、食料などない。
それ以上に周りにこれだけ「水」があるのに、俺はその一滴たりとも飲むことを許されてはいなかった。

夜が来る。
満天に星が散らばっている。
が、ここには見覚えのある星座は見当たらなかった。
俺はうとうとし始め、気が付くと再び太陽が昇ってきていた。

幸いな事に俺を「餌」だと思うような肉食生物は現れなかった。
それどころか、魚一匹、鳥一羽とて見てはいなかった。

俺はただ、浮いたまま一日を過ごし、また夜を迎えていた。
 

 
パラパラとプロペラの機械音のようなものが聞こえた。
上空を過る影があった。
鳥ではない。
人工的な飛翔物である。
(救援か?)
だとしても、今の俺には彼等に存在を示す行為を行う体力さえない。
が、万に一つの奇跡が起こった。

飛翔体は高度を落とし、こちらに近づくと穏やかな海面に着水した。
(敵か?)
それは見たこともない機体だった。
フロートに支えられた翼の上にエンジンとプロペラを装備しているのだが…
プロペラは俺の知識にあるものより遥かに巨大で、前方ではなく、上を向いていた。
飛行艇は俺の脇を通り過ぎて停止すると、機体後部の扉が開かれゴムボートが下ろされた。
三人が乗り込み、こちらに近付いてきた。
「□※☆!!」
聞いたこともない言語だった。
が、次に彼らが口を開いた時、
「生きてるか?」
と聞こえた。
「なんとか…」
と応え、片手を上げた。が、俺の意思力はそこで尽きてしまった。

転生者(2)

そこが船の中であろう事はかすかな揺れで判った。
が、その部屋には窓はなく、動力船にある筈のエンジンの微細な振動も、駆動音も感じられなかった。
「気が付きましたか?」
若い女の声がした。
白い制服のような服を着ていた。
(スカートではなくズボンなのが残念だ♪)
「ジカラムの投与で体力は回復しつつあります。骨折等はありません。炎天下に曝されて顔面に炎症がありましたが、フチルサを塗っておきましたので程なく治まるでしょう。」
「ありがとう。助かったよ。今だ生きているのが信じられない。」
「転生された方は皆さんそうおっしゃいます。」
「転生?」
「その事は追って。落ち着いてからゆっくり説明します。」
「では別の質問。ここは船の中のようだが、どこに向かっているのかな?」
「この船は潜水艦:白瀬。東京に向かっています。」
「潜水艦?それにしては狭さを感じさせないね♪」
「あなた方の世界では潜水艦はあまり発達しなかったと聞いています。白瀬はあなた方でいう戦艦よりも巨大な艦となっています。」
当然、俺には想像もつかない大きさである。
「完全に回復するまではベッドで安静にしていた方が良いですよ。」
「判った。もう一眠りさせてもらうよ。」
彼女の提案に従ったが、あまりにも静かな所為か、なかなか寝付けなかった。
「どこか痛みますか?」
彼女は部屋を去らずにいたみたいだ。
「痛みとかはない。静か過ぎるというか、これまで俺が置かれていた環境とあまりにも違うので寝付けないだけだ。」
「何か音楽でも掛けましょうか?」
「音楽?」
「少しは落ち着けると思いますよ♪」
彼女が手元の装置を操作すると、部屋の中に琴と尺八の音色が響いてきた。
「ありがとう…」
俺は今度こそ、深い眠りに落ちていった。

 

カチャカチャと食器の音がして目が覚めた。
「すみません。起こしてしまいましたか?」
「十分に寝たので、目覚めはすっきりとしているよ。それは?」
「先ずはお粥から。胃に負担を掛けないように♪」
「美味しそうだな。」
と俺が起き上がろうとすると、
「ちょっと待ってください。」
と彼女が手元を操作した。
ベッドの上半身部分が自動的に起き上がってきた。
肉体に負担を掛けることなく、ベッドの上に座っていた。
「便利だね。だが、便利過ぎると身体が鈍ってしまいそうだ。」
「完治したら即にリハビリが始まります。多少厳しいメニューもありますが、鈍るような事はさせません。」
「判ったよ。今はコレで粥を頂かせてもらうよ♪」
とお椀から匙で粥を掬った。
良い香りが漂ってきた。
口に入れる。
「美味しい♪こんな美味い飯は生まれて初めてだ!!」
と、あっと言う間に椀の中からは粥が消えてしまっていた。
「物足りないかも知れませんが、おかわりはありません。」
「理解している。で、そのリハビリとやらはいつから始めるのかな?」
と聞くと、彼女は手元の書類を確認した。
「状況は安定しているようですので、午後に転生・転生者についてお話しします。その後で調整しましょう。」
「了解した。」

転生者(3)

昼までの間は、彼女が選曲してくれた音楽を聞きながらぼーっとしていた。
ベッドは平には戻さず、程よい傾きで止められていた。
再び彼女が食事を持って現れるまで、俺は時間の経つのを忘れていた。
昼食は小振りのおにぎりが二つと、沢庵にお茶というあっさりしたものだった。
おにぎりの中は梅とおかかだったが、朝の粥と同じく、大変美味しかった。
お茶を飲み干すと
「転生とか言っていたっけ?説明してくれるんだよな?」
と彼女に訊ねてみた。
「ええ。お話しするわ。」
食器を片付けると、再びベッドを倒した。
「リラックスして聞いてもらいたいの。」
彼女はベッド脇に椅子を置き、そこに座った。
「この世界があなたの記憶にある世界とは異なっている事は認識しているわね。」
「ああ」
「あなたは別の世界からこの世界に来た。でも、それはあなたの精神だけであって、肉体は元々この世界に属しているものなの。」
「俺のこの肉体が?」
「これまで、あなたが自分の肉体に意識を向けないよう、暗示を掛けてコントロールさせてもらっていたの。」
「暗示?」
「既に解除してあるわ。どお?」
「どお?と言われてもあたしの身体はあたしのものでしょ?…って、あたしって何?それに、この声…あたしの声?」
「深呼吸して落ち着かせましょう♪ここに鏡があります。これで一度自分の顔をじっくりと確認してみてください。」
俺は渡された手鏡を自分に向けた…

(?!)

そこに写っていたのは「女」の顔であった。
「転生時に異なった性別の肉体に入ることも希にあるのです。でも、肉体の記憶が残っているので、即に順応できますよ♪」
「肉体の記憶?」
「既に貴女は自分の事を〈あたし〉と言っているでしょう?意識して元の自分として行動しようとしなければ、自然とその肉体本来の行動を取れるものなのです。」
「あた…お・れ・は男だ。女の真似なんかできないわよっ!!」
「時間が経てば誰でも馴れていきます。が、今は気を落ち着けて、ご自身の肉体をじっくりと把握しておいてください。」
と彼女は部屋を出ていった。

残された俺は、もう一度鏡を見た。
何度見ても、そこには「女」の顔しか写ってはこなかった。
そして、手鏡を持つ手に目がいった。
なま白く、華奢な腕・指。黒く長かった体毛はどこにもない。
視線はそのまま胸元に落ちた。
何故、これまでその存在に気付かなかったのだろう?
そこには、女に特有の胸の膨らみがあった。
決して小さくはない。
寝間着の上から掌を当ててみた。
柔らかな女の温もりを掌に感じると同時に、乳房に触れられた…という感覚もあった。
指に力を入れる。
揉む…と揉まれる感触を同時に味わう…
(ジッ…)
股間に何かが零れた。

股間…

そこもまた「女」となっているのだろうか?
寝間着のズボンの上から見ただけでは判らない。
寝間着の上から掌を股間に這わせた。
ゆっくりと密着させる。
「男」の証は感じられなかった。
俺の股間は内から零れでたモノで少しだけ濡れていた。
それが、性的に興奮した女が分泌する「愛液」であると肉体の記憶が伝えて来る。
もっと気持ち良くする為には、直接触れるのが良い。
指を立て、膣穴に挿入し、肉壁に刺激を与えてゆくのだ…

「んあ!!」

指の腹が敏感な所に触れた。
俺は女のような喘ぎ声をあげていた。
否。その淫声は女の喘ぎ声そのものなのだ。
俺はこの肉体の感じる場所を知っていた。
そこを責めれば、快感が得られる。
淫声をあげれば、更にに快感が高まる。
俺…あたしの記憶が溢れだしてきた。
(指が止まらない…)
次から次に快感が押し寄せてきた。
俺の股間はくちゅくちゅと卑猥な音をたてている。
「ああん、ああん…」
淫声が止まらない。
その先に快感の頂が見えた。
(イクの?イッちゃうの?)
止めようもなかった。
俺の指は激しさを増す。
「あん、ああああーーん!!」
嬌声をあげ、俺はオンナとしてイッてしまった。
その強烈な快感の中で、俺は意識を失っていた。

転生者(4)

「良かったら艦内を案内しますよ♪」
の提案に応じた事を即にも後悔する事になった。
「寝間着でうろつかれては困りますので、これに着替えてください。」
と渡されたのは女物の衣服の一式だった。
「着方は肉体が覚えている筈ですが、貴女には初めてなのでお手伝いさせていただきます。」
と簡単に寝間着を剥ぎ取られていた。
先ずはブラジャーが胸に廻された。拒否する事はできなかったし、肉体がその快適さを訴えていた。
胸を締め付けられる違和感
胸にある質量の違和感
肩紐に掛かる重さの違和感
ただ、肉体はそれが普段の事だと言っていた。
肌着も滑らかな素材で、肩紐で吊るされる。
シャツはボタンが左右逆に付いていた。
「考えないようにすれば、自然と留まりますよ。」
と言われ、意識を他に向けていると、いつの間にかボタンは留まっていた。

下にはスカートを穿かされた。
姿見で初めて全身を写した。
俺の着せられたのと同じ服を着た可愛い女の子がそこに居た…
(これが「俺」なのか?)
と驚く一方
(やだ。髪がぼさぼさじゃない。)
と不満を口にする「あたし」がいた。
渡されたブラシで髪を透いた。
「ちょっとじっとしててね♪」
と言われ立ったままでいると、彼女の手に握られたモノが俺の唇に触れた。
(口紅?)
鏡の中の俺は、口紅が塗られた事で更に可愛さが増していた。
「ありがとう…」
不意にお礼の言葉が俺の口を吐いていた。
「じゃあ行きましょうか♪」
と俺は彼女に連れられて部屋の外に出ていった。

 

 
「ここが艦橋です♪」
扉が開かれると、潜水艦の中とは思えない空間が広がっていた。
正面の窓には大海原が広がっている。が、その画面に重なって幾何学的な図形…目盛の付いた同心円や矢印、放射状の線があった。
「この娘が転生者か?」
一段と高い席に座っていた精悍な男性が俺達を見下ろしていた。
「はい。艦内の案内を始めた所です。」
「そうか。目新しい物ばかりで驚くだろう?」
と話は俺に向けられた。
「窓に図が…」
「ああ。これは多目的モニタだ。窓じゃない。実際、この艦は海中を進んでいる。景色は合成したものだよ。」
と言われ目を凝らしたが、やはり窓から外を見ているようにしか見えなかった。
「図は現在の艦体の状況、進路、障害物の情報などが表示されている。」
「矢印の先が東京って事ですか?」
「そういう事だ。」
「提督!!」
と脇から声が掛かる。
「可愛い女の子が相手だからといって、軍機は程々に願いますよ。」
若い参謀だった。
(ちょっとあたし好みかも♪)
って、俺は何で男の品定めをしてるんだ!!
「男」の俺が男にときめいてどうするんだ!!
パニックになりかけた俺の手が引かれた。
「じゃあ、次に行きましょうか♪」

 

次に案内されたのは機関室だった。
とはいえ、機関本体はパネルに覆われ、どのような形状をしているかなど想像もできなかった。
「巨大な電池と電磁石だと思ってくれれば良いかしらね。」
と言われても想像が付かない。
いくつかの区画を示したパネルの前に数名の技術者が座っていた。

食堂では豊富なメニューに驚かされ、厨房の裏には畑まであった。
非番の乗組員のレクリエーション施設には緑の芝と木々も植わっていた。
トレーニング施設には見たこともない器具があり、多くの乗組員が…男も女も…筋肉を鍛えていた。

 

格納庫に案内された。
そこには俺を助けてくれた飛行艇があった。
巨大なプロペラは畳まれていたが、上向きの推力しか出せない構造である。
しかし、この機体が前進しているのを見ている。
が、その時も前方に向かう推力を発生させている装置は見当たらなかった。
「この機体に興味津々ね♪」
「あたし…オレの世界には無い機体だからね。これなら艦艇からの離着陸には便利だけど、よく直進する事ができるわね?」
「詳しい事は知らないけど、ローターの角度を変えて前後左右自由に動けるらしいわ。」
「まあ、こういう構造なら後進もありかもね。でも、スピードはそんなに出ないのでしょ?」
「この世界にはそこいら中に空中機雷があって、一定以上の高度や速度を越えるものは無条件に討ち落とされるのよ。」
「つまり、ジェット機みたいな航空機は存在しないってことね。」
「ジェット機がどんなものか知らないけど、交通・輸送手段は陸路か海路しかないわね。」
「で、潜水艦もこのように進化した訳ね♪」
「そう。高速で移動するには地中とか海中が一番なのよ。」
「地中?」
「地下にトンネルを掘った弾丸列車網が出来てるのよ。東京からロンドンまでわずか3日で到着するのよ♪」
あたし…俺には想像の付かない世界がそこにはあった。

転生者(5)

東京まではあと2日は掛かるという事で、俺は病室から新しく割り当てられた船室に移動した。
一人で艦内を出歩く事は許されていなかったので、その部屋で時間を潰す事になる。
「暇潰しにどうぞ♪」と彼女が差し入れてくれたのは数冊のムックだった。
だが、どれもが女性向けのファッション誌だった。
当然「男」の意識の俺は見向きもしなかった…が、ぼーっとしている内にページを開き読み耽っている「あたし」がいた。
この服…あたしが着たらどんな感じだろう?
あたしなら別のスカーフを合わせるのに♪
あの若い参謀さんとオシャレして銀座でデートなんかできたりしてっ♪
路地の木陰に入ってあたしを見つめている。
(アナタの好きにして良いのよ♪)
肩に手が廻されて…あたしがゆっくりと瞼を閉じる…彼の息を感じる…そして
彼の唇があたしの唇と重なる。
彼の舌が割り込んでくる。
あたしは自分の舌を彼のに絡める…
頭がボーッとしてくる。
足元がふらつくが、彼がしっかりとあたしを抱き締めてくれる。
「疲れたかい?どこかで休もうか?」
と近くにあった高級ホテルの一室に…
(あたしはそんな身軽なオンナじゃないんだけど…)
気が付くと、あたしは服を脱いでベッドに寝ていた。
胸が愛撫される。
「ああん♪感じ過ぎるわ…」
あたしの甘えた声に彼も見事な裸体を晒す。
その股間には逞しい勃起が存在していた。
「きて♪」
あたしが誘うと、彼は身体を重ねてきた。
広げた股間に彼の先端が触れる。
そして…

胎の内に異物が侵入して来るのを感じた。
「ああん♪イイっ!!」
あたしは淫声をあげる…
(否ッ!!)
何が「イイ」だ!!
違和感・不快感以外の何物でもないだろうがっ!!
そもそも、何で「俺」が男に抱かれ、女みたいに貫かれなければならないんだ!!

これが「女」の肉体の記憶から再構成された「白昼夢」であると認識はした。
が、俺はまだ男に貫かれたまま身動きがとれない。
金縛りにあったように、自分の意思では指一本うごかせない。
抵抗しないどころか、積極的に腰を振り始める女に、彼も興が乗ってきたようだ。
突き入れる激しさを増し、捻りを加えてくる。
「んあん、あああん♪」
肉体は勝手に淫声をあげ、昇り詰めてゆく。
肉体の記憶にある「快感」を俺に押し付けてくる。
「ああん♪イクぅ、イッちゃう~!!」
俺は強制的にアクメを体験させられた。
頭の中が真っ白になり意識が飛んでいった…

転生者(6)

気が付くと、俺は肉体のコントロールを取り戻していた。
「夢」ではあったに違いないが、俺の股間は愛液に濡れていた。
新しい下着を取り出し、股間の汚れを拭ってから穿き替えた。
当然、もう一度ファッション誌に向き直る気分ではない。

無意識に行動していると、この肉体の「女」の記憶が表面化して内に在る「俺」を拘束してしまうのではないかと考えた。

鏡に自分の顔を写してみる。
それは「俺」とは全く異なる「女」の顔である。
当然、髭など生えていない。掌を頬に当てても、剃り跡は感じられない。
すべすべとした肌…
陽に焼かれた跡も綺麗に消えていた。

俺はいつの間にかブラシを手に取り、髪を撫でつけていた。

慌てて手を広げブラシを床に落とす事で肉体の主導する行動を阻止した。
(今は俺の意思で肉体を動かせている)
俺は床からブラシを取り上げ、鏡の脇の棚に置いた。
棚には歯ブラシや積まれたタオルの他にいくつかの瓶が並んでいた。
整髪料かと思ったが、即に肉体の記憶に否定される。
瓶は化粧水や乳液…所謂女の化粧用品が並んでいるのだ。
(そういえば今朝から何もお手入れしてなかったんじゃない?)
と肉体の記憶に引きずられそうになり、慌てて気を引き締めた。

 
(どうすれば俺は「俺」を保っていられるのだろうか?)
考えても答えがでるものではないと知りつつも考えてしまう。
が、
その考えは突然中断された。

「キィーーーーーン!!」
突然の耳鳴り。
目の前が一気に暗くなる。
ドサリと音がしたのが、自分の倒れた音だとは認識できていなかった。
痛みより、押し寄せてくる強迫感に圧倒されていた。
「大丈夫?」
と声を掛けられ、ようやく自分が立っていない事に気付いた。
「何か感じたんじゃない?」
「…な、何か…」
「転生者は危機に敏感だと言われてるの。感じたなら教えて。どっちから感じたの?」
俺が指を伸ばし、強迫感の強い方向を指すと
「提督。2時の方向です。」
彼女がインカムに告げると、程なく艦が進路を変える加速度を感じた。
「立てる?行きましょう♪」
と俺は彼女に抱えられるようにして艦橋に入った。

艦橋は緊迫していた。
窓に見えた「モニタ」には様々な情報が表示され、刻々と変化を続けている。
「第二射来ます。」
「潜航して回避!!」
その直後、身体が浮くような感覚…
艦が下に向かったのだ。
モニタの中に二本線が上に向かって描かれた。
「回避しました。」
「舵を戻せ。左舷より斜行。敵潜は確認できたか?」

その時、俺は上から伸し掛かられる感じを受けた。
俺が上を見たのを見た提督が叫ぶ。
「最大船速!!この場から離れるんだっ!!」
「キャア!!」
急加速によろけた俺は、女の子のように叫んでいた。
よろけた先はクッション…ではなく、あの若い参謀の胸の上だった。
倒れないように逞しい腕に包まれていた。
「衝撃にそなえよ!!」
数百発の雷が一度に落ちてきたような音と振動に艦が震えた。
あたしは両手で耳を塞ぎ、ぎゅっと瞼を閉じた。

「船体に異常なし」
「軽傷も含め負傷者はありません」
艦橋には艦内の各所から報告が入ってくる。
艦橋は落ち着きを取り戻し始めていた。
浮かない顔の提督があたしを見ていた。
「と…特に変な感じはしていません。」
あたしは彼に支えられたまま、答えていた。
「あれは何だったんですか?」
「それは僕から説明しよう。提督はまだしばらくは忙しいからね♪」
と、彼があたしの質問に応えてくれた。
「物理的な攻撃については、想像ででしかないが、空中機雷と同様な物が海中に設置されていたと思われる。」
「海中機雷?」
「ネーミングはセンスの問題だが、ある一定以上の速度で移動するものを捉え、魚雷を起動させるようだ。」
彼は艦橋の隅のシートにあたしを誘導した。
「しかし、魚雷であれば探知も可能だが、敵は回避される事を想定し第二打を仕掛けていた。」
「あの大爆発?」
「そう。魚雷を回避した先に相当量の爆薬を仕掛けていたのだろう。君の示唆がなければ、我々は海の藻屑となっていただろう。」
「じゃあ、あたしの感じたアレは何だったの?」
「転生者の多くに現れる特殊能力だよ。まだ解明はされていないが、危機を予知する能力と言われている。」
「予知?」
「転生…それ自体に時間移動が含まれている。だから転生者は直近の未来を感じられるのではないかと言われている。」
「未来を見れるの?」
「いや。未来からの声を聞いているようなものだろう。最悪の事象にあげられた悲鳴が聞こえたんだろう。」
「じゃあ、悲鳴をあげた人は…」
「未来はいくつにも分岐している。実際にその危機に遭遇する分岐にいれば…」
あたしは目の前が暗くなるのを感じていた…

転生者(7)

気が付いたのはベッドの上だった。
「怖がらせて御免と言ってたわよ。」
あたし…俺は服を着たままベッドに横たえられていたようだ。
「彼が運んでくれたのか?」
「軽々とね♪まるでお姫様を抱いた王子様みたいだったわ♪」
「な、何ですか?その表現は!!」
「それから…」
彼女は俺の抗議を無視していた。
「彼がね〈お詫びに、東京に着いたら食事でもどうですか?〉って♪」
「それって…」
「デートに決まってるじゃない♪こちらに来てから結婚した転生者もかなりいるらしいわよ♪」

(デート…結婚…)
俺の頭の中がぐるぐるまわってゆく。
俺が…男と結婚?
あの人素敵♪結婚できたら良いな…あたし
結婚したら、白昼夢みたいに俺があの男とSEXするのか?
あの人の赤ちゃんを産んで、幸せな家庭を作りたいな♪
俺が赤ん坊に乳をやるのか?
それ以前に、俺が妊娠し、出産?

俺の思考は凍結した…

…彼との急接近にうきうきしているあたしがいた。
「ねえ、彼ってどんなタイプの娘が好みなのかな?デートの時の服を選ぶの手伝ってね♪」
「…」
彼女が唖然とした顔であたしを見ていた。
「どうしたの?」
「な、何か…普通の女の子だな…って。」
「あたしって、何か変だった?」
「転生者でしょ。それに性別まで…」
「性別?」
あたしは女の子よね?
…でも…
この世界に転生してきたあたしは…
(〈あたし〉じゃない!!)
転生する前の「俺」は心身ともに男だったのだっ!!
転生した先が女の肉体であっただけで、俺が「男」である事に変わりはない!!
「っあ、その顔。やっぱり元に戻っちゃうんだね。」
「く、くだらない事は言わないで欲しい。ただでさえ精神が不安定なの。ちょっとのきっかけで自分を失ってしまうみたい。」
「良いんじゃないの?最終的には第三の人格に統合されるとか言われてるから♪」
「他人事だと思って、気易く言わないで欲しいわね。第三の人格?まだ何かあると言うの?」
「いえ、多分あなたはあなたのままだと思うわ。あなたの中の二つの人格が混ざりあった…というか、〈二つ〉という垣根が意識できなくなった状態ね♪」
「良く解らないわ…」
「今は理解しようとしない方が良いかも。とにかく、今の自分に正直になる事ね。」
(正直に…)
俺は今、何を〈偽っている〉のだろうか?
俺の「男」の意識が女の格好をするのに抵抗を持っている。
確かにこの肉体では「男装」する方が「偽っている」という事になる。

女の肉体を美しく飾る事も悪くはない。ただ、その女の肉体が俺自身であることが不本意なのだが…
正直に言えば、鏡の中の女に化粧を施し、美しくなってゆくのを嬉しく思っている。
この肉体に似合う服を選んでいて、時間が経つのを忘れてしまう事もある。
そして…自分が飾りあげたこの姿を彼に見せたとき、「綺麗だね♪」と言われたらどんなに幸せな気分になることだろうか?

(自分に正直になれば良い…)
何か、スッと肩に掛かっていた重いモノが外れたようだ。
例え女の肉体で、女の服を着、女のように化粧をしても、俺は「俺」なのだ。
そう…少しばかり、この姿に相応しい喋り方をしたところで、この姿に相応しい仕草をしたところで…俺は「俺」なのだ。
彼に抱き止められ、幸せな気分になったのも、他の何者でもない「俺」だったのだ。
(否定すべきではない。正直になるだけだ。)
それが「デート」と言えるものかは解らない。が、折角彼が誘ってくれたのだ。
その食事への誘いを断る必要はない…否、俺は誘われた事を歓んでいるのだ。
素直になって彼の誘いを受けよう。
彼と並んで相応しい姿に着飾らせてあげよう。
彼のエスコートに、素直に従おう…そう、食事が終わってからも…

転生者(8)

「もうすぐ東京港に入港します。」
と俺は再び艦橋に招かれた。
あの後は転生者の能力が発動する機会もなく、順調に航海を進めていた。
「既に浦賀水道は越えています。」
モニタには陸地が写っていた。
その脇に東京湾の地図が表示されている。
(?)
それは俺の知っている地形とは若干異なっていた。
東京湾を横断する橋が幾本も架かっている。
それ以上に羽田空港の辺りが異様な構造になっていた。
滑走路になるべき場所に縦横に運河が通っている。
…そう、この世界では「航空機」は一般的なものではないのだ。
「あれは羽田埠頭群だね。民間の船舶が使用しているんだ。」
彼がモニタを指し示した方向が羽田なのだろう。
巨大な格納庫が並んでいるようだった。
「今は海面に出ているから、実際の景色が見れているんだ。」
そう言われ、再び岸に目をやり、違和感を感じた。
(?)
地図を確認し、もう一度埠頭を見た。
「橋が無い?」
「基本的に車や鉄道は地下を走らせている。運河を渡るのは橋ではなく、トンネルになっているんだよ♪」
つまり東京湾を横断していたのも、橋ではなく、全て海底トンネルだったのだ。

 

白瀬は晴海埠頭に接岸するようだった。
一際立派な格納庫が見えた。
扉が開き、艦がそのまま入っていった。
タラップやクレーンがせり出してきて、艦を囲んだ。
「船体固定完了」
「システム待機モードに移行」
報告を受けた提督が
「皆、お疲れ様。」
と到着を宣言した。
「じゃあ、艦を降りようか♪」
と彼に連れられて艦橋を後にした。
「荷物は後でホテルに届けさせるから。」
と、そのまま艦の外に出ていった。
「荷物って?」
救助された時には、何も身に着けていないような状況だったのだ。私物など持ってはいない筈だった。
「部屋で使っていた着替えや化粧品などだよ。もともとは艦の備品だが、使い掛けのもねは君に進呈するよ♪」

そんなやりとりをしながら通路を進んだ。
片側の窓から外が見えた。
運河の向こう側が都心であろう。
だが、摩天楼のような高層ビルはなく、その先には天守閣のようなものが見えた。
「あれは江戸城?」
「再建したものだけどね。」
建物を出ると、人力車のようなものがあった。
勿論、人が曳くのではなく、無人のオートバイみないなものが付属していた。
「乗って♪別に急ぐこともないし、これなら君もこの世界に触れられると思ってね。」

確かに、車は地下を走っているようで、道を行くのは歩行者か自転車ばかりだった。
運河を渡る橋もない訳ではないが、歩行者用の簡易な造りのようだ。
この人力車様のものであれば問題ないが、一般的な自動車であれば荷重に耐えられないに違いない。

築地を過ぎると洒落た感じの商店が増えてきた。
銀座の活気はこの世界でも同じだった。
運河…外堀を越えると映画館や劇場の立ち並ぶ区域になった。
道の先には江戸城の白亜の城壁が輝いていた。
内堀は広大な池のようだった。
池の中に巨大な江戸城が浮かんでいた。

圧倒される。

「これが、この世界の東京だよ♪」
周りには地方から出てきた観光客らしき人達が城をバックに思い思い写真を撮っていた。
「ホテルは即ぐ近くだから、歩いていこうか♪」
と、お堀端を歩いてゆく。
爽やかな風が吹き抜けていった。
(こんな〈風〉を感じたのはいつ以来だったろうか?)

転生者(9)

ホテルの部屋には女性向きのトランクが届けられていた。
開けてみると、艦内で着ていた服や使い掛けの化粧品が入っていた。
「っあ♪」
思わず声が出たのは、詰め込まれていた服の中にあのワンピースが入っていたからだ。
実際、艦内で着た訳ではないので、入っているとは思わなかったのだ。
それは、彼女と選んだ明日の「デート」に着て行こうとしていたワンピースだった♪

それを広げた時、ひらりと一枚の紙切れが舞い落ちた。
そこには彼女の字で…
「健闘を祈る♪」
と書かれていた。
折角、彼女が気を利かせて入れてくれたのよね。
明日は是非とも、これを着て行かなくちゃね♪
あたしはハンガーにワンピースを掛け、ベッドから見える所に吊るしておいた。

 
久しぶりの「陸の上」での目覚めは快適だった。
殆ど揺れてはいなかったが、白瀬はずっと海中を移動していたのだ。
それに、本物の朝日も気持ちが良かった。
窓を開け、朝の空気を吸い込む♪
港側なのでお城は見えないけど、銀座の街並みの向こう側に東京港が広がっていた。
既に様々な船が行き交っていた。
元の世界では、銀座とホテルの間には鉄道や高速道路が走っているのだが、この世界では皆地下にあり、代わりに運河が巡らされていた。
道路にもちらほらと人影があった。
(こちらを見上げてる人もいる?)
あたしは「はっ!!」とした。あたしはまだ寝間着を着たままだった。
それに、あたしは「女」なのだ。
こういう行為は「はしたない」と責められてしかるべきなのだ。
慌てて窓から離れた。
(どこまで見られたのかな?)
あたしは洗面台の鏡を覗き込んだ。
幸いにも、髪の毛はあまり寝乱れていなかった。

早速、スツールに座り直し、髪の毛を整えて軽くお化粧を施した。
着替えは…今からあのワンピを着ててもしょうがない。
フリルの花柄スカートにシンプルなブラウスとカーディガンにした。
軽い朝御飯を済ませ、少しホテル内をぶらついてみた。
ホテルの中には美術館のように絵画が飾られ、彫刻が置かれていた。
「絵画に興味がおありですか?」
声を掛けてきたのは彼だった。
「ぁ、おはようございます。」
「今日も良い天気のようですね。ところで、絵画がお好きでしたらとっておきをご紹介しますよ♪」
「とっておき?」
「その部屋全体が絵画なんです。」
「壁画…ですか?」
「まあ、見てみてください♪」

案内された部屋は薄暗く、辛うじて壁面に何かが描かれている感じがした。
ドアが閉められる。
「明かりを灯します。」
とほんのりと柔らかな光が灯った。
「えっ!!」
あたしは発する言葉を失っていた。

それは墨絵のように、黒の単色で描かれていたが、遥かな奥行きを感じさせられた。
遠くに山々を望み、木々が生い茂り、川が流れ、鳥達が舞っていた。
まるで、羽ばたいている動きが見えるよう…
川のせせらぎが聞こえるよう…
風が通り過ぎてゆくよう…
「方角に合わせて四季を表現しています。」
紅葉に色付いた木々を裾野に、山は厳しい冬を感じさせた。
川は春の暖かさを…そして緑の野原は草の海のように波打っていた。
「天井にも…」
四方から雲が沸き立つ。
巧妙に仕掛けられた照明が天頂も照らしていた。
雲間に何かが存在していた。
「龍?」
「見る者により、その姿が変わると言われています。…が、僕にも龍に見えています♪」
昇っているのか、舞い降りてきているのか…龍は天頂を舞っていた。

〈お前は何者か?〉
龍が問いかけてきた。
(あたし…俺は「転生者」らしい。実際、この世界は俺のいた世界とは違うようだ。)
〈もう一度聞く。今のお前は何者だ?〉
(今…であれば、このホテルの宿泊客。海で救助され、昨日白瀬で東京に着いた…)
俺は足元がふらついていたようだ。
逞しい腕が俺を…あたしを抱き止めてくれている。
(あたしは女?そう、ただの「女」…)

「大丈夫?」
彼が聞いてくれる。
「ごめんなさい。いつも助けてもらってばかりで…」
「いや。この部屋はちょっと刺激が強すぎたかな?」
「そんな事ありません。素敵な部屋です。あたしの体調がまだ戻っていなかったかも…」
「じゃあお部屋まであ送りしますよ♪」

「きゃっ…」
あたしは小さく叫んでいた。
あたしは彼に抱きかかえられていた♪
多分、白瀬の艦橋からもこうして運ばれたのだろう。
あたしは少しでも彼の負担を少なくしようと、彼の首に腕を廻した。
「重たくないですか?」
「女性はそんな事、気にする必要はないんですよ♪」

あたしの部屋まではそう遠くはなかった。
ドアが開かれ、即にもベッドに下ろされた。
「ありがとう。何かお礼をしたいんだけど…」
「いえ、お礼なんて…では、今夜の食事、精一杯美しく装ってきてください。貴女が美しければ、僕も鼻を高くしていられます♪」
と彼は爽やかにあたしの部屋を辞していった。

転生者(10)

結局、あたしは三時間も前からデートの準備を始める事になってしまった。
それでも、着ていく服は決めてあったので、お化粧に一時間、髪の毛に一時間使ってもなお一時間の余裕があった。
…筈なのに…
アクセサリーを選んでいるうちに約束の時間を過ぎてしまっていた。
姿見でおかしなところがないか確認し、ロビーに降りてゆくと、満面の笑顔で彼が迎えてくれた。
「女性が仕度に時間が掛かるのは判っています。それに僕も注文を入れてましたからね♪」
「それでも遅れてしまいました…」
「僕の注文通り…いや、それ以上です。埋め合わせて余りありますよ♪」
「そんな…」
「では、行きましょうか♪」
とエスコートされてゆく。
ベルボーイが開いてくれたドアの先には黒塗りの車が停まっていた。
二人で後部座席に座ったが、前の座席には誰もいない。
「赤坂へ」
と彼が告げると、ドアが閉まり車はゆっくりと動きだした。

ほとんど音がしない。
坂路を下りながらスピードが上がる。地下の車道に合流する。
「全て管理された自動運転だし、歩行者もいないから、事故が起きる事もないんだ♪」
「白瀬もそうだったけど、すごく静かね♪」
「そうかい?僕らにはこれが当たり前なんだよ。騒がしい車なんて考えられないね♪」
そんな話しをしているうちにも、車は本線を離れ、坂道を昇り始めていた。
今度は地表には出ず、地下の入り口から建物に入っていった。
彼がカードを翳すとエレベータの扉が開いた。
円筒形の箱が上昇を始める。
加速度が反転して目的の階に到着する。
箱の中には一切階数を表示するものがないので、どのくらいの高さかは想像がつかない。
が、彼のこと、東京でも1、2の高さを争うような場所だとは想像できる。
ドアが開くと正面の窓には一面の空が写っていた。
遥か彼方に富士山の姿があった。
排気ガス等に汚れていない所為か、余計に美しく見える。
「ここが東京で一番高い場所にあるレストランだ。今なら60階、70階のビルを建てる技術があるけどね♪」
「建てられないの?」
「今は30階を越える建物を建てようとすると、空中機雷の餌食になってしまう。現存する高層ビルはみな空中機雷設置前の古いものばかりだ。」
「そんなに古い感じはしないんだけど…」
「ここに入っていられるって事はそれなりの格式も生まれてくるのさ。古さを感じさせない努力も怠っていないよ。」
「つまり、景色だけではなく、料理も一流ってこと?」
「その通り。失望はさせないよ♪」

窓際の席に案内された。
席数もそう多くなく、落ち着いた装飾の施された衝立が巧妙に配置され、個々のテーブルのプライバシーを確保してくれていた。

窓からは東京の街の西側が見下ろせた。
言われたように、高層ビルを見ることはできなかった。
それ以上に地下に交通網が発達した所為か、地表には緑が多く残されていた。

彼の楽しい話と美味しい料理を堪能している間に、空が茜色に染まり始めていた。
富士山の向こうに夕日が落ちてゆく。
「名画を見ているみたいね♪」
「絵はお好きですか?良かったら、明日は上野にでも行きましょうか♪」
「そんな…あたしに付き合ってばかりでは、貴方ご自身の時間が無くなってしまいます。」
「僕と一緒に過ごすのは苦痛ですか?」
「いえ!!そんなことありません。」
「それは僕も同じです。貴女と一緒にいることが幸せなんです♪」
彼の言葉にあたしの胸はキュンと高鳴った♪
「それって、なんかプロポーズみたい…」
「じゃあ、受けてくれますか?」
と彼はポケットから小さな箱を取り出した。
蓋が開けられると、中には…
「指輪?」
「貴女に受け取って欲しくて。」
あたしはあたまの中がくらくらするのを感じていた。
「大丈夫ですか?ちょっと急ぎ過ぎたようですね。別に、今即答えなくても良いんですよ♪」
あたしは「はい…」と言ってとりあえず小箱の蓋を閉じさせてもらった。

 
「あちらにソファがあります。珈琲でも飲んでゆっくりしましょうか♪」
と、店の反対側のフロアにエスコートされていった。
個室になっていて、珈琲以外にもソフトドリンクが好きなだけ飲めるようになっていた。
窓際にある大きなソファに腰を下ろした。
下に江戸城の天守閣を見下ろし、銀座のキラキラした輝きを中心に夜の東京の街が広がっている。
勿論、輝いているのは広告塔と街路灯がほとんどであり、車のヘッドライトやテールランプは見ることができない。
同じ「東京」なのに、あたしの知っている「東京」とは全然違っていた。
(「あたし」の?)
違う。あたしの肉体の記憶はこの「東京」を知っていた筈だ。
転生前の記憶は「俺」が記憶していた筈…
あたしは「あたし」として転生前の記憶を呼び覚ましているの?
「あの大きな運河の向こうが豊洲だ。白瀬の格納庫も見えるだろう?」
彼の言葉にあたしの思考が中断された。
「あんなにキラキラ輝いて…まだ大勢の人達が働いているのね?」
「ああ。次の航海に向けて急いでもらっている。」
「いつなの?」
「それは君にも言えないよ。軍機だからね♪」
あたしは白瀬での航海を思い出していた。
そして、それは本当の意味での「あたし」の記憶だった。

(?)

あたしはいつから自分の事を「俺」ではなく「あたし」と言うようになったのだろう?
別に「あたし」だろうと「俺」だろうと大した違いではないと思うが…

転生者(11)

「まあ、出港を急がなければならないのは確かな事だけどね。」
「何かあったの?」
「それは君も経験したろう?海路上に巧妙な罠が仕掛けられていたんだ。」
「ああ、あれ?」
「我々は君のお陰で何とか逃れられたが、ここ数日での消息不明の艦艇が幾つか確認されたんだ。」
「それを探すの?」
「航空機を持っている艦は少ないからね。」
「あの変な飛行艇の事?」
「変な…はヒドイな。」
「でも、急ぐのなら航海を終えたばかりの白瀬ではなくても、他の船に運んでもらっても良いをじゃない?」
「ああ、君はアレ…UMU…の仕様は知らないんだったね。UMUは白瀬の電力で動いているんだ。」
「白瀬の?」
「モーターを回すには電力が要るが、あんな機体に重たい電池は載せられない。だから電力の豊富な白瀬から貰う。」
「じゃあ、線が繋がってるの?」
「細い線がね。その線の長さが行動半径になる。もっとも、今以上に自由に飛べても空中機雷の餌食になるだけだけどね。」
あたしはこの世界の特異性には付いて行けそうもなかった。
 

「で、僕も白瀬に乗ってしまえば、しばらく君に会えない事になる。」
彼の口調が変わった。
「その間に君に変な虫が付かないように唾を付けておきたかったんだけどね♪」
(?)
あたしにはもう窓の外は見えていなかった。
彼の真剣な瞳に射ぬかれてしまっていた。
(指輪のコト?)
あたしの中ではまだ整理が付いていない…
だけど、彼があたしの事を想っていてくれていると知って嬉しかった。
彼とコレで「おしまい」なんて嫌…

「今はまだ結婚なんて考えられないわ。でも、唾くらいは付けられても良いかも…」
「じゃあ♪」
彼の顔が急接近する。
あたしの唇に彼のが重なる。
唇を割り、彼の舌が侵入する。
二人の唾液が絡まり合う…

あたしは彼の行為を拒絶しようとは思わなかった。
否…彼の行為が嬉しかった。
頭がぼーっとして時間の感覚が失われ…
「っぁ…」
彼の唇が離れた。
彼の唇を追うように声が漏れた。
(もっとしていて欲しかったの?)
自分の意志が混沌としていた…

「これで唾を付けたからね♪」
あたしはぼーっとした目で彼を見ていた。
(もっとシて欲しい…彼とひとつになりたい♪)
あたしは自分が何を求めているか理解しきれていなかった。
「唾…だけ?」
(えっ?あたしは何を言っているの?)
「ちゃんと徴を付けとかないと…」
(徴?)
「徴?」
彼も理解できていない…

「あたし…を貴方の所有物にして♪」
あたしの手は勝手にあたしの身体から衣服を剥ぎ取っていった。
「あたしを…抱いてください♪」
あたしの裸体が彼の目に晒された。
「良いの?ここまでされると、僕も自分を抑えきれないよ。」
「元からそのつもりだったのでしょ?この個室に…」
あたしの手がレバーを引くと、ソファの背が倒れた。
「ベッドまで用意してたんだものね♪」
「本当に良いのか?」
「ココまでしているオンナにそれはナイでしょ♪」
彼は慌てて自分の服を脱いでいった。
トランクスの内側がパンパンに張っていて、少し苦労しているみたい♪
そして、トランクスも外され怒張した彼のペニスがあたしの目の前にあった。
あたしは前屈みに顔を突きだし、伸ばした舌先で彼にふれようとした。
「前戯は要らない。即にも君を僕のものにしたい♪」
彼は覆い被さるように、あたしをベッドの上に倒した。
「もう充分に濡れているのだろう?」
あたしは首を縦に振った。
「なら問題ないな♪」
彼の逞しい腕があたしの脚に掛かり、股間を広げるとその間に彼の腰を割り込ませた。
「いくよ♪」
その声とともに膣口に触れていた彼の尖端がズイと押し入ってきた。
あたしは痛みに顔を歪めたが、それ以上に彼と一体になれた幸福感に満たされていった。
あたしの膣に収まった「彼」が動き始めた。
徐々に痛みが退いていくと同時に、これまで経験したことのない快感が次々と沸き起こってきた。
「ああん…イイっ♪」
自然とあたしの口から「オンナ」の喘ぎ声が漏れだしていた。
「良い締まり具合だ。僕たちの相性はかなり良いみたいだ♪」
あたしは快感に翻弄され始め、彼の言葉に応じることができなくなっていた。
喘ぎは淫声となり、部屋中に響く嬌声に変わっていた。
快感にも変化が見えてきた。
目の前に快感の頂を感じていた。
その頂に向かって真っ直ぐに昇ってゆく。
頂の先に何があるかはわからないが、あたしの意識はどんどん頂に近付き…頂を越えていった。

転生者(12)

頂の先で、あたしは「あたし」になった。
頭が真っ白になり意識を飛ばした後、あたしは自分自身が何者であるかを認識した。
あたしは自分が「転生者」である事は認識していた。
前生が「男」であった事も記憶には残っている。
けれど、あたしの中に占める「彼」の存在は否定しようがない。
あたしは彼を愛する「女」でしかないのだ。
「結婚」する事への不安はまだ残っていたが、彼が戻って来たら良い返事ができそうな気がする♪

彼が出て行く前にあたしは地図を見た。
「伊豆半島の東側に何かあるみたい。」
あたしの目は日本地図の上にいくつかの黒い影を捉えていた。
そのひとつが相模湾の西側に浮かんでいた。
多分、そこには危険な罠が仕掛けられているに違いない。
彼をそのような場所に行かせたくない…というのはあたしの「女心」なのだろうか?

でも、何も知らずに罠に向かっている訳ではないのだ。
それが、彼の…白瀬の乗組員達の任務だから…
罠を無効化できれば、他の艦船が被害に会わないで済むのだ。
あたしは彼の無事を祈って待っているしかない。

 

 

彼が出て数日が経った。
ふと地図を見ると、いつの間にか黒い影は無くなっていた。
そして、その次の朝…
あたし宛に電報が届いた。
「シユビヨシ キカンオマテ」
あたしは窓を開いた。
海の彼方の白瀬の姿は見える筈もないのだが…
「待ってます♪」
あたしは海に向かい呟いていた。

海賊の掟

海賊船幻影号の主コンピュータは俺の旧友であった科学者伊・那の頭脳を取り込んだ生体コンピュータである。
その中には伊の意識が顕在化しており、自然言語でのインタフェイスを可能としていた。
更に伊は意思の疎通を円滑にすべく、艦橋内に立体映像を投影し、彼の疑似人格を具現化した。
「イナちゃんで~す♪聞きたい事があったら何でも聞いてね?」
と現れた伊那の姿は、彼本来のものとは全く異なっていた。
「何?あたし、どこか変?」
と10代の女の子がくるりと回るとスカートが広がり、パンツのお尻にプリントされた愛らしい熊の姿が露になった。
「お前は…乗組員逹の目の毒だっていうのが判らないのか?」
「このセーラー服って結構評判良いのよ♪でもね…皆さんが期待してるのは…」
「い、言わんでも良いっ!!」
「そうよね♪船長はあたしがスクール水着で艦橋に現れるなんて絶対に許さないわよね♪」
辺りから「おお…」とどよめきが上がった。
皆、こいつの水着姿を想像していたに違いない。
「航海士!!前面モニタに航路図を出せっ!!」
俺は気を引き締める為、航海士に指示を与えた。

 

 
海賊船幻影号は「海賊船」ではあるが、海賊行為は殆どした事がない。
艤装が軍の巡洋艦と同等の火力・防御力を持っている民間船であり、特定の企業の自警団に属している訳でもない為「海賊船」に分類されているだけだ。
その船速と堅さで整備の行き届かない辺境航路での荷物運びや航路整備の仕事を大手企業や政府から下請けして報酬を得ているのだ。
「現時点では予定航路上に本船に危険となるような障害物は見当たりません。」
航海士からの報告を聞いた。
「まあ、港から出たばかりだ。当分は楽な道程が続く筈だ。今のうちに交代で休息を取っておけ。」
俺がそう言うと
「イエッサー!!」
の声が艦橋に響き渡った。

「あたしが必要な人はいつでも呼んでね。イナちゃんは即に駆けつけま~す♪」
の声に
「おお♪」
と声が上がった。
「おい、伊!!」
「イナちゃんだよ♪いいかげんに覚えてよね♪」
「何がイナちゃんだ!!お前には男としての矜持は無いのか?」
「そんなの、肉体と一緒に消えちゃたわよ♪今のあたしには性別なんて意味ないしぃ。だったら、皆が悦んでくれるイメージを実現させてあげた方が良いでしょ?」
「それは単純に最適解を求めただけなのか?お前の中のアニマが暴走してるんじゃないのか?」
「もし、そうだったら?」
「お前をもう親友とは呼べなくなる。」
「じゃあ恋人にクラスチェンジね♪」
「バカな事言ってるんじゃない!!」

もう何度も繰り返された伊との問答だ。
結局いつも答えは出ることはなかった。

乗組員逹に呼ばれた伊…イナちゃんが、彼らの船室で何をしているかはプライバシーの問題もあり、聞く事はできない。
俺には恐ろしくて想像もできなかった。
「でも知りたいんでしょ?」
と俺の傍らに伊=イナちゃんが現れる。
「なんたって、この船には男しかいないものね♪」
「そうだ。女が居ると風紀が乱れる。」
「海賊船に女は要らないってのがあんたのポリシーだったものね♪」
「何故そこで過去形にする?」
「アレスの薔薇に刺されちゃったんでしょ?」
「…発症するのは十万人に一人だ…」
「でも、発症しちゃったんでしょ?あたしはこの船の主コンピュータなのよ。この船の中で隠し事はできないわ♪」

と、俺は追い詰められた。
俺はこの船に女は要らないと言い続けていた。
なのに…
「そうだよ!!発症したよ!!発症して、俺は女になってしまったよ!!」
「だから、あたしはとっくに知っていたわ。あんたが悩み抜いていることもね。」
「じゃあ、俺にどうしろと?」
「カミングアウトするなら、この船に女性を乗せることね♪そうでなければ、あたしのシてる事に口出さないこと!!」
「だ…だから、お前のしてる事って?」
「単なる最適解よ♪」
「?」
「彼らの性欲の吐け口を作る事で、女性化したあんたの肉体の存在を気付かなくしてるの♪」
「…お、俺の為なのか?」
「あたしには親友のあんたが一番大切なのよ。こんな肉体になってしまったんで直接あんたを悦ばすことはできないけど、あんたを守ることぐらいはね♪」
「…ありがとう、伊那…」
「だーかーらー、イナちゃんだってばぁ♪」

 
俺はふぅと一息吐くと、キャプテンシートに身を沈めた。
「イナちゃん」と宜しくやって上機嫌の当直要員逹は、計器の監視に集中している…
(全て伊に任せるよ…)
誰も見ていないのを確認すると、俺は誰にも聞こえない声で呟いた。

船内着の胸のボタンを外して胸元を緩める…
袷から左手を忍び込ませる…
俺は、大きく膨らんだ乳房をゆったりと揉み始めた。

命令

(命令!!)
突然、俺の頭の中に見知らぬ男の声が響き渡った。
電車の中。席に座ってうとうとしていた時だった。

はっ…と目が醒めた。
(向かい側の席に女が座っている。)
声の言う通り、俺の向かい側には「美人」に分類される若い女性が座っていた。
ヘッドホンで何か聞きながら携帯を弄っていた。
(幽体離脱して彼女に憑依しろ!!)
その命令が「絶対」であることは無意識に理解していた。
が、幽体離脱や憑依などという事象はフィクションの世界のものである。やり方など知る筈もないし、そんな事ができるとも信じ難かった。
(即に実行しろ!!)
その絶対的な命令には逆らう事などできなかった。
何をどうやったか…気付くと、俺は手に携帯を持ち、ヘッドホンから流れる音楽(?)を聞いていた。

音楽はこれまで聴いた事のない、おどろおどろしい音楽だった。
携帯の画面には
(即に実行しろ!!)(幽体離脱して彼女に憑依しろ!!)
(向かい側の席に女が座っている。)
(命令!!)
〉向かい側の男
と打ち込まれていた。
この女が俺に命令していたのか?
俺が携帯から目を離し、向かい側を見るとにやけた顔をした「俺」がそこにいた。
車内アナウンスが次の駅への到着を告げた。
「俺」が立ち上がった。
「ほら、いくぞ。」
と俺の腕を掴み、引き上げた。
と同時に、俺の手から携帯を取り上げた。
カチャカチャと操作する。
ヘッドホンが外されると、一気にあの声が流れ込んできた…
(命令!!
 お前は今腕を掴まれている男の命令には逆らえない。
 お前はその男の愛人だ。
 お前は淫乱な女で即に男の愛撫を欲しがる。
 お前は魂に刻まれた過去の事を一切思い出せない。
 お前は「女」なのだ!!)

 

背後で電車の発車ベルが鳴っていた。
俺は愛する男の腕にしがみつくように、並んで駅の階段を降りていた。
「あまりくっ付き過ぎるな。歩き辛いだろう?」
と言われ、少し離れた。
でも、彼の温もりを感じていたくて、手は繋いだままだ。

ピンポーン!!

改札を通ろうとした俺の前で扉が閉まってしまった。
「お前はバカか?どうすれば良いか脳みそ洗い直せ!!」
そう言われ、バッグの中にICカードが入ってるのを思い出した♪
慌てて取り出し、改札機にタッチした。
俺は離れてしまった彼に追い付こうと足を早めようとした…
が、巧く歩けない。それもその筈。俺はこんなに踵の高い靴など履いたことないし、スカートだって…
(?)
俺って「女」なんだよな。踵の高い靴はともかく、スカートを穿いた事がないなんてあるのか?
脳の記憶を辿る…
俺は殆どスカートばかり穿いていたようだ。
勿論、中高はセーラー服だったし…
そう…今の俺は何と変な歩き方をしているのだ!!
これじゃあまるで男みたいじゃないか!!
俺は女なのだから、女の骨格・肉付きに合わせた歩き方をすべきなのよ!!
あたしは彼の元に駆け寄っていった。
胸の揺れもいつも通り♪
少しはセックスアピールできたかしら?
「ゴメンね。あたし、なんかボーッとしてたみたい。」
「仕方ないさ♪魂が肉体に馴染むまではな♪」
「魂?あたし幽霊とかお化けとかダメなの!!」
ああ…今は早くあたしを抱いて、忘れさせてっ!!
「判ったから、そんな眼で見ないでくれ♪今にも歩道に押し倒してしまいそうだ!!」

 
「あん♪ああ~~んッ!!」
あたしの艶声がホテルの部屋を埋め尽くしていた。
こんなに淫れたのは初めてかも知れない♪
あたしは彼の上に跨がり、大きく腰をくねらせてゆく。
彼のペニスがあたしの膣の奥深くまで突き刺さっていた…

彼の手が、枕元の携帯に延び、カチャカチャと何か操作した。
(命令!! 魂の記憶を思い出せ!!)
あたし…俺の頭の中に再びあの声が響いた。
俺の下で彼…「俺」がニヤリと笑った。

俺は状況の把握に手間取っていた。
女の脳がパニックに陥っている。
正常な思考ができない。
俺は今、自ら股間にペニスを咥え込んでいる?
俺は女に憑依していたのを思い出した。
俺は愛する「俺」に跨がり、オンナの快感に浸っていたのだ!!

「さあ♪イッちゃいな!!」

その言葉と共に「俺」は俺のナカに大量の精液を撃ち込んできた。
「゛゛゛!!」
俺は何の嬌声も上げられずに、快感の波に呑み込まれていった…

異世界

ここが異世界だという事は即に解った。
異世界ではあるが、見慣れた景色ではある。
ここは、僕が好んでプレーするRPGの世界…そのものだった。

「どうした?ぼーっとして。」
と声を掛けてきたのは、このパーティーのリーダー:勇者アーサーだ。
僕たちはオープンカフェで朝食を採っている所のようだ。
「単にアーサーに見とれていただけだろう?」
低い声でコメントを入れたのは戦士ガイ。
「おぉ、ジンが戸惑っている…」
と訳の判らない事を言っているのは魔法使いのムだ。
僕の属しているパーティは四人で構成されている。
残りの一人は妖精ナルだ。
ナルはこのパーティーの紅一点で、アーサーに惚れて付きまとっている…という設定だった。

確かに、テーブルには僕を入れて四人が席に着いている。
人数はそれ以上でも以下でもない。
そして、僕の前には妖精ナルが好んで食べる果物サラダが置かれている。

…つまり…
僕が「ナル」なのか?!
「何で僕がゲームの世界に…それも妖精の女の子になってるんだ?」
声に出すと確かに「僕」の声ではないどころか、甲高い女声にしか聞こえなかった。
「ジンが言っている…」
とム。
「今は全てを受け入れ、状況に身を任せるしかない。と…」
「この状況を受け入れろって?そんな簡単に言ってくれるなよ…」
「落ち着けナル。お前がヒステリーを起こすとパーティーは動けなくなる。」
とガイ。
「ヒステリーって何だよ!!他人事だと思って、皆適当な事を言って!!」
「ジンは沈黙した…」
「またそれ?」
「今はナルに落ち着いてもらうのが最良だ。」
「だからぁ、こんな状況で落ち着いていられる方がどうかしているよ!!」
「だからと言って、今即にどうこうできるものでもない。」
「でも…」
と言葉を続けようとする僕の手を、隣からアーサーがぎゅっと握り締めてきた。
「ナル…」
アーサーが僕を見つめている。
ドキッ
って僕の心臓がトキメいた。
(何で?僕は男なのに…)
アーサーの美しい瞳が「僕」だけを見つめていた。
「ナルはナルだよ。どのような状況であっても、君が君以外の者となることはないんだ。」
アーサーの言葉の意味は半分も判っていなかったけど、アーサーの言葉だと納得してしまう。
「うん…」
と僕は項垂れた。
「良い娘だ♪」
とアーサーが僕の頭を撫でてくれた。
何故か僕は幸せな気分に満たされてゆくのだった。

 

「今日はナルもまだ本調子じゃないようだから、軽めのクエストにしておこう。」
とアーサー。
「まあ、それが無難だな。」
とガイが立ち上がった。
「ジンも否定していない…」
ムもいつの間にか立っていた。
「クエスト?」
とアーサーを顧みる。
アーサーも立ち上がった。
「それが僕らの日課であり、収入源だ。それは解るだろ?」
アーサーが伸ばした手を掴み、僕=ナルも立ち上がった。
流石に妖精なだけあって「ナル」の身体は軽く、簡単に空を飛んでしまいそうだった。

街を出てしばらくは草原が続いていた。
「ナル。ちょっと上から近くのダンジョンの位置を確認してきてくれないか?」
とアーサーに頼まれた。
僕=ナルは妖精だ。背中には薄い羽があり、設定では飛翔が可能である。
(本当に翔べるのか?)
半信半疑で僕は背中の羽に意識を集中した。
だらりと服の一部のように身体にまとわり付いて羽は生気を取り戻して大きく拡がった。
トンッ
と軽く跳躍しただけで、アーサーの頭の上に達していた。
更に羽を動かすと、ぐいっと身体が上へと持ち上げられていった。
しばらく上昇し、下を見るとアーサー達が僕を見上げていた。
そして視界を広げると、そこには見慣れたゲームの地形が俯瞰できた。
ダンジョンの位置を思い出す。
(アーサーは軽めと言っていたよね♪)
東の小高い丘の下にダンジョンがあった筈…(♪)
妖精の視力はかなり優れているようで、上空からダンジョンの入り口を視認することができた。
皆の所に戻り、ダンジョンの場所を報告した。
「では行こうか♪」
アーサーの声に移動を開始する。
アーサーが先頭で、その次が僕。その後ろがムで、しんがりがガイだ。
そのままの体勢でダンジョンも進んでゆく。
現れる怪物をアーサーが斬り倒す。
軽めのダンジョンだから、アーサー一人で十分だった。
ダンジョンの最奥の部屋にあった宝箱から金貨を手に入れた。
「まあ、今日はこのくらいにしておこう♪」
と、まだ陽の高いうちに街に戻ってきた。
そのまま居酒屋に入る。
料理と酒が並び、ガイが喋りまくり、アーサーが適当に相槌を打つ。
ムはいつものようにマイペース。
そして僕は…アーサーばかり見ていた。

「…ナル?」
声を掛けられ、僕は酒に酔ってかテーブルに伏して居眠りをしていたのが判った。
「宿に戻るかい?」
とアーサーに訊かれ、
「うん…」
と同意して立ち上がったが、足元がおぼつかない。
僕はアーサーに付き添われて、宿の部屋に入った。
二人部屋だった。
そして、ベッドは大きいのが一つあるだけ…
アーサーはそこに僕を寝かせて立ち去ろうとした。
僕は無意識に彼の腕を掴み引き寄せていた。
「一緒に…」
と彼の首にもう一方の手を掛け引き寄せる。
「…寝よ♪」
アーサーの顔がどんどん近づき、そのまま僕は彼の唇を奪っていた♪
アーサーの肉体が僕の上に重なる。
彼の逸物が硬くなっているのが判った。
僕の意識は「男」のままなのに、不快感はなかった。
それ以上に「僕」に反応してくれた事が嬉しかった。

服の紐を解き、少し身体を動かすだけで、僕は全裸になっていた。
この肉体はナル…オンナだった。
既に股間はしっとりと濡れていた。
アーサーのズボンを脱がすと、立派な逸物が露になった。
「キテッ♪」
僕がそう言うと、彼は重ねた身体を更に密着させた。
僕が脚を広げると、彼の先端が僕のナカに潜り込んでくる…
「あ、ああーん♪」
僕は艶かしいオンナの喘ぎ声をあげていた。
僕のナカで彼が動く。
僕は快感に満たされていた…

 

朝…
異世界の日差しが僕達を優しく包んでいた。
「もう一回良い?」
と聞くと、アーサーは優しく微笑んでくれた♪

ネトラレ

出張から早めに帰宅した。
「ただいま。」
と玄関の扉を開けた。
(?)
そこには見慣れぬ履き古されたスニーカーが転がっていた。

「おっ、帰ってきたのか?」
と寝室から妻の声がした。
俺はもう一度「ただいま」と寝室のドアを開けた。
(!!)
ベッドの上に全裸の妻が起き上がっていた。
その脇には若い男が、これも全裸で転がっていた。
「ほら♪ご主人のご帰還だよ。」
と妻が若い男を揺り動かす。
「えっ?あ…、きゃっ!!」
若い男は女のように叫び、毛布を胸元に引き上げた。
「み、美里!! どういうことだ?」
俺が声を荒げると、
「あ、あなた…これは……っえ?何?」
と、俺に答えたのは若い男の方だった。
そして、
「悪いな。あんたの奥さんを寝取らせてもらったよ♪」
と、妻が意味不明な事を言う。
「あ…あたしのカラダ…」
その間にも、若い男は自分の身体を触りながら変な事を呟いていた。

「そうか。まあ、即には理解できないだろうな。だが、経験してみれば解るよ♪」
妻は立ち上がり、唖然としている俺に近付くと、俺の服を脱がせていった。
「へぇ、りっぱなモノ持ってるじゃないか♪」
と妻が俺の股間を持ち上げた。
(この女は妻の姿をしているが「美里」ではない)
俺はそう直感した。
その真相は程なく解明する。
俺は押し倒され、その上に妻が股がってきた。
股間に俺のモノを咥え、妻がヨがり始める。
条件反射のように、俺の股間も反応してしまう。
「んあっ、ああーーっ!!」
妻が達すると同時に俺も妻のナカに放出していた。

 

「どうだい?感想は?」
男の声がした。
いつの間にか俺は起き上がり、男を組み敷いていた。
「こうやって寝取るんだよ♪」
男は「俺」だった。
俺は股間に異物が挟まっているのに気付いた。
それは俺の膣に挿入された「俺」のペニスだった。
…そう。俺は今、妻の肉体の中にあった…

 

男=「俺」は唖然としている俺達を他所に、服を着直すと
「早速、このりっぱなモノを試させてもらうわ♪」
と外に出ていってしまった。

あたりは暗くなっていた。
「そうだ。晩御飯の支度をしなくちゃ♪」
と若い男=美里は立ち上がると裸エプロンでキッチンに立った。
(いくらセクシーなシチュエーションでも男の身体じゃ勃つモノも勃たない…)
と、今の自分にはその勃つべきものさえ無いのを思い出した。
「さ、ご飯にしよ♪」
妻のナイトガウンを着させられ、テーブルに着いた。
そこにはいつもの美里の手料理が並んでいる。
「食欲…ないの?」
と若い男が心配そうに俺を覗く。
「い、いや…そんなんじゃ…」
「そうよね。見知らぬ…それも男と二人だけっていうのは辛いわよね。…ちょっと待ってね♪」
と美里はクローゼットを漁り始めた。

しばらくして…
「これならどうかしら?」
と美里はサイズの合わないワンピースを着て、長髪のカツラを着け、元の顔が判らないくらいの厚化粧をして俺の前に現れた。
「っぷ。何だよそれは?できそこないのオカマか?」
「あっ、笑った?少しは緊張が融けたかしら?」
「わ、判ったよ。ちゃんと食べるから。」
と、見た目は女?二人での夕食が始まった。

 

数日後…
「俺」の死亡の知らせが届いた。
交通事故…即死だったそうだ。
俺は「妻」として、美里はその友人として俺に付き添い、葬式まで済ませた。
多分、死んだ「俺」は既に「奴」ではなかっただろう。
一時「奴」を探し出せば元に戻れるかも…とは思ったが「俺」の死とともに、それも不可能となった。

俺は「未亡人」として多額の保険金を手にし、当分は働かなくても良いようになった。
家事は美里が一切をやってくれる。
俺はただ一日をぼーっと過ごし、夜を迎える…

「んあん!! ああ~~ん♪」
「妻」の媚声が寝室に響く。
俺は快感に我を忘れる。
美里が俺を貫き、全身を責めたててゆく。
どこが感じるか…彼女は俺の肉体を熟知していた。
「ああん♪イッちゃう~~!!」
俺の淫声に美里が応じる。
「じゃあ、コレでイッちゃいなっ!!」
俺の膣に美里の精液が突っ込まれた。
「あ、あ、あああ……!!」
俺の意識は遥か高みへと放り投げられた…

 

落ちる

ポロリと指が落ちた。
(何っ!?)
と落ちた指を拾おうとすると、触った途端にぐずぐずと崩れ落ちてしまった。
(どうなっているんだ?)
と指を失った手を見た。
血は一滴も落ちていないし、うずうずとした痒さはあるものの痛みはない。
(何だ?コレは!!)
失った指の跡を除き込むと、そこには歯が生え替わるように、次の指の先が見えていた?
良く見ると指先がどんどんせり出してくる。
真新しい指は生まれたてのように、色白でか細かった。

ぽとん…

反対側の手の指も落ちた。
即に生え替わる。
そして、手足10本の指が生え替わると、次は全身がゾワゾワと粟立つような感じがした…

パラパラと髪の毛が落ちていった。
慌てて鏡を覗き込む。
(!!)
左右からどんどん髪の毛が抜け落ち、坊主頭に近づいてゆく。
否。髪の毛だけではない。眉毛も睫毛も抜けてゆく。
良く見ると、鼻毛も産毛も髭も無くなっていた。
それは顔だけではない。
全身の体毛が抜け落ちていた。
胸をはだけ、胸毛が消えているのを確認した。
ズボンもパンツも脱ぐ。
臍の下から陰部までを被う剛毛も消えていた。
そして…

ポトリッ…

股間から珍宝が落ち、床にぶつかり、粉々に砕け散った…

(コレも生え替わるんだよな…)

背筋を冷たいものが滴っていった。

頭が痒くなった。
髪の毛が再生を始めたのだろう。
コマ落としの植物の成長のように、頭皮から黒い髪が伸びだしてきた。
少し細目で柔らかそうだが、黒々と艶を放っていた。
髪の毛は元の長さを越え、背中の中程まで達していた。
睫毛も濃く、長くなっていた。
(いつの間にか二重になっている?)
鏡の中からばっちりと大きく見開いた眼が見返していた。

眉毛の復活は申し訳程度だ。
男の眉毛としては貧相でしかないが、これまでより一回り大きく見えるようになった目とのバランスは良いようだ♪
(とは言え、まるで女のような顔だな♪)
髪の毛は背中側はかなり伸びていたが、前面は切り揃えたかのように眉毛のラインで伸びるのを止めていた。
その髪型が余計に女の顔に見せていた。

胸がむずむずしてきた。
ポトリとないようで存在していた乳首が落ちた。
その跡に生え替わってきたのは、ぷっくりと膨らんだ女の乳首だった。
更に乳首に吊られるように、胸が双つの膨らみに育っていった。
(これで珍宝が戻らなければ、完全に「女」じゃないか!!)
慌てて床に腰を下ろし、股間を確認する…が、良く見えない。
鏡は目の前にあるが、高さが足りない。
(♪)
強引に洗面台の上によじ登った。
そこで股間を開き、鏡に映す…

 

保健体育の授業を思い出していた。
その時は非リアルなイラストだったが…

膣口がテラテラと輝いている。
何か欲しいのか、ヒクヒクと蠢いている。
肉襞に隠れるように、小さな珍宝が再生していた。
(否。それはもう珍宝ではないぞ!!)
授業では陰核とか言っていたっけ?俗には「お豆」とか「クリ」とか言われている奴だ。
「ひっ!!」
触れると物凄い感覚が脳天を突いてきた。
ぷしゅっ!!
と膣口から汁が飛び散り鏡に降り掛かった。
鏡の中で全裸の「女」が淫らな笑みを浮かべていた。
「欲しいのか?お慢孔に突っ込んでもらいたいと言ってるのか?」
と聞くと、鏡の女は「うん♪」と頷いたように見えた。
「じゃあ、これでどうだ?」
指を三本束ねて送り込む…
「んあっ…」
快感に喘ぎ声が出かかる…その時、
ポロリ
と喉から落ちていったものがあった。
鏡を見ると、女の中で一点だけ相応しくなかった喉の突起が無くなっていた。
(いえ、そんな余計なコト考えてる余裕なんてないでしょ?)
突き上げてくる快感に喘ぎ声を抑えてはいられなかった。
「あん♪あ…あ、あ~~ん!!」
その直後。オンナの淫ら声が響き綿っていた。

入れ替わり

多分、この部屋は僕以外の誰かの部屋に違いない。
それも「女の子」の部屋だ。
机の上には勉強道具以外に、櫛や髪止めなど女の子らしい備品が置かれていた。
その中に手鏡があった。

恐る恐る手に取り、鏡の面を自分に向けた。
(…)
そこには見知らぬ女の子の顔が写っていた。
とりあえず納得する。
これが、僕本来の顔であれば滑稽であろう。
女の子のように細い腕、膝丈のスカートを穿いている。
胸は膨らみ、ブラジャーで支えられている事は明らかだった。

この肉体はこの部屋の持ち主のものであり、僕の意識(魂か?)がこの娘の中に入り込んでいるのだ。

(?)
携帯電話が鳴っていた。
取り上げると発信元の電話番号が表示されている。
「僕」の携帯電話からだ。
「もしもし?」
と応じてみた。

「あんた誰?何で勝手に他人の携帯使ってるのよ!!」
多分、それは「僕」の声なのだろう。
「何とか言ったらどうなの?」
「…何とか…」
「………ば、バカにするんじゃないわよ!!解ってたらこの事態、説明してよね!!」
「解っている事は、君と僕の肉体と意識が入れ替わっているという事だ。あとは、君の名前が里穂っていう事と、僕と同じ高校二年生だってことかな?」
「か、勝手に他人のプライバシーを覗くんじゃないわよ!!」
「この状況ではかなりの情報交換の必要があるね。ちなみに僕の名前は堀田郎…野郎の郎と書いてガイと読む。」
「ほりたがい…井形里穂の逆さね。それが入れ替わりの原因なの?」
「今はまだ何とも…それより、会って話しができないかな?」
「それは良いけど、ここどこ?」
「神奈川県は鎌倉市になる。こっちは?」
「小田原よ。割りと近いのね。」
「これが沖縄と北海道だとまず会えなかったね。」
「じゃあ途中の平塚とかで待ち合わせる?」
「君は初めての場所でも迷わない自信ある?僕は割と方向感覚良い方だから僕が行こうか?僕の部屋なら家族に知られずに入る事ができるし。」
「そ、そうね。あたしも鎌倉ってあまり詳しく知らないから…」
「二時間は掛からないで着くと思うよ。」
「っあ。服はそのままで来て。髪の毛は少しはブラシしておいてね。椅子に掛けてあるリュックを忘れずに持ってきてね。」
「解ったよ。じゃあまた後で。」
と電話を切った。
確かに着替えとなると、見知らずの女の子の裸を見てしまうことになる。
このまま入れ替わりが続くとなると、いずれは風呂にも入らなければならなくなるのだろうが…
今は彼女と直接話すのが先決だろう。
言われた通りに髪にブラシを掛け、リュックを背負って外に出た。

小田原駅もすぐに判った。スイカの残額を確認して東海道線に乗った。
席はガラガラに空いていたけど…今の僕は女の子でスカートを穿いているのだ。
座ってしまうとつい膝が離れて大股開きになって恥ずかしい目に会うのが目に見えていた。
僕はドア脇に立って流れてゆく景色を見つめていた。

大船でJRを降りる。
鎌倉と言っても、僕の家は鎌倉駅の近くにある訳ではない。
モノレールに乗り西鎌倉で降り、坂道を上ってゆくと僕の家がある。
静かに門を開け閉めして庭に向かう。
離れの部屋が僕の部屋だ。

カーテンの隙間から窺うと「僕」が机に伏していた。
コンコンとガラスを叩くと彼女は気付いたようだ。
窓を開ける。
「ちょっと引き上げてもらえないかな?」
「ここから入るの?」
「普段の僕なら簡単なんだけどね♪」
僕が伸ばした手を掴み、引き上げてくれた。
「キャッ」
と最後にバランスを崩してしまったが、彼女がしっかりと抱き止めてくれた。
(あのキャッって僕が叫んだのか?まるで女の子じゃないか…)
「あの…靴を脱ぐから…」
そう僕が言って、ようやく僕を抱き締めていた腕が解かれた。

「初めまして…って、自分の顔に言うのも変だけどね♪」
「あたしも…始めまして。井形里穂です。」
見慣れた「僕」の顔なのだけど、何故かドキリと胸が高鳴る。
さっき抱き締められてから、何か変な感じがある。
しかし、それは自分だけの話ではないようだ。彼女=彼も何か痛みを堪えているようだ。
「痛いの?さっき、どこかぶつけた?」
「ぶつけた訳じゃないけど…ズボンが窮屈で痛い…」
と、言われた所を見る…股間が膨らみ…ズボンに勃起が阻害されているようだ。
これは「男」にしか解らない痛みだろうし、普通であればこうなる前に無意識に楽な形に動かしている…
「恥ずかしいかも知れないけど、これは僕の身体だからね♪ ズボン…脱がすよ。」
と僕は彼の後ろに回り、ベルトを外し、チャックを下ろし、トランクスと一緒に膝まで下ろしてしまった。
(?)
見慣れたモノの筈だが、いつもより大きく、硬く感じた。
「どうすれば治まるの?」
放っておけばそのうち…とは言えなかった。
部屋に居るのは「僕」独りではないのだ。
原因は僕…女体が側にあるからに違いない。放っておいて治まるものではない。
バランスを崩した僕を抱き止めた時、その手にしっかりとオンナの肉体を記憶してしまった筈だ。

「溜まったのを射せば…」
僕は何を言っているのだ?
そんなことを言っても彼女が自分でできる筈ないじゃないか。
「どうすれば良いの?」
当然訊いてくる。
「僕がやってあげるよ。」
そ、そりゃあ…コレは「僕」のだし、幾度となくマスはかいてきたのだ。が…
いつものように握ろうとすると、彼の背後に廻る必要がある。
が、背後からだと思うように動けなかった。
では…と前に戻る。が…
正面からでは今イチ感覚が掴めない。
僕の意識の上では単なるマスかきなのだが…

それに「僕」がその行為を見下ろしているのだ。
…第三者が見たら、僕が女の子にご奉仕してもらってる風にしか見えないよな♪
(♪)
そう。今の僕は女の子なのだ。
僕自身がマスかきするのを手伝うのではなく、AV女優のように抜いてやる感じでやれば良いんじゃないか?
AV女優はどうしていた?

僕は口を開くとソレを咥え込んでいた。
「何コレ?凄く気持ち良い♪」
僕は舌と上顎で刺激を与え、中から溜まったものを吸い出すように息を吸った。
「な…何か、出る…」
ドクリとペニスの中を塊が込み上げてきた。
僕の喉の奥に彼の精液が吐き出された…
思わず飲み込んでしまった。

僕の口からペニスが離れてゆく。
僕は舌で汚れを舐め取った。
「これで良いの?少しは柔らかくなったみたいね。」
「それは良かった。」
と僕が彼を見上げると…
「あ…またっ!!」
彼の股間はあっと言う間に勢いを取り戻していた。

「もう一度する?」
僕が聞くと
「いや…もっと良い方法を思い出したよ♪あたし…僕の肉体が覚えていた。」
と、僕の前に膝を突き、首の後ろに手を掛け、耳元にフッと息を掛けた…
<<ズキュン!!>>
脳天を撃ち抜かれる衝撃が全身を貫いた。
「その肉体の弱い所は皆知ってるから♪」

スッと服が脱がされていた。
「な…何を…」
「もう判ってるでしょ♪」
僕は床の上に押し倒され、パンツ…ショーツが剥ぎ取られてる。
両膝の間に下半身剥き出しの「彼」がいた。
その股間には硬く勃起したペニスが威容を見せつけていた。
「覚悟は良いかい?なんて聞いても無駄だよね♪君はまだ何も理解できてないだろ?」
否。理解はできる。
僕は「女」で、裸にされ、目の前にはペニスを勃起させた男がいる。
このまま女を犯さないで終える男はいる筈もない。
ただ、これが僕自身に為されようとしているという「実感」が伴っていないのだ。

「あんっ!!」
思わず声がでた。彼の指が僕の股間を撫で上げていったのだ。
「ちゃんと濡れてるね。準備は良いよいだ♪」
彼が伸し掛かってきた。
先端が入り口を探すように僕の股間をつついている。
「いくよ♪」
彼の宣言とともに、僕のナカに異物が侵入してきた。
ゆっくりとだが、ずんずん奥に入ってゆく。
そして、障壁の前で停まった。
「子宮口だね。僕のペニスは完全に君の膣に収まっているよ♪」
二人の股間はぴたりと合わさっている。そして、彼の硬い棒がしっかりと僕の股間に嵌め込まれていた。
「動かすよ♪」
その途端、言葉にできない「快感」に満たされていった。
「ああん♪あ~~ん♪」
自然と、僕は快感に媚声をあげていた。
その声により、彼も僕も快感を高めてゆく。
「んあん。何?これ以上責められたら、意識が飛んじゃうよ…」
「それがイクッてことだよ。もう少しなんだね。何も気にせず、イッちゃいなよ♪」
「そ…そんなぁ…僕が僕でなくなっちゃうよ!!」
「気にする事はないよ♪僕はもう〈僕〉になっちゃったみたいだからね。君も〈里穂〉に成りきってしまえば良いんだ♪」

快感に染まってゆくにつれ、僕は僕の知らない里穂の記憶が甦ってきたように感じていた。
(意識が肉体に侵食されている?)
そんなフレーズが頭に浮かんだけど、今のあたしには何の事か理解できなかった。
「さあ♪コレでイッちゃいな!!」
彼は最期のひと突きと、熱い精液の塊をあたしの子宮に向けて打ち付けてきた。
「ぁ………♪」
あたしは嬌声もあげる間もなく、快感の中に意識を没っしていた…

 

彼があたしの髪を撫でていた。
満たされた気分の中で目覚める。
「もう、大丈夫だね?」
「大丈夫って?」
「もう情報交換は必要ないって事。必要な情報は即に思い出せるだろ?」
あたしは自分の記憶にアクセスしてみた。
小さい頃の里穂の記憶…一緒に遊んだ女友達…学校の事…小田原の街…パパやママの事…
そう。あたしは「井形里穂」なんだ。

「駅まで送っていってやるよ。」
彼にそう言われ、あたしはリュックの中から換えの下着を取り出して身繕いした。
靴を履き、彼のサポートを受けながら窓から庭に降りた。
続けて彼も身軽に窓から抜け出してきた。

西鎌倉の駅に向かって二人ならんで坂道を降りていった。
頭上をモノレールが通り過ぎていった。
駅の手前であたしは彼に聞いた。
「これからも、時々逢ってもらえる?」
「それってデートって事?」
「っバカ。…でも、デートっていうのもナシじゃない…かな?」
「いつでも電話して来いよ。電話番号は判ってるだろ?」
「うん。じゃあ帰るね♪」
あたしは駅に上がり、やってきたモノレールに乗った。

そう、あたしは「あたし」の家に帰るの。
あたしはこれまでも、これからも「里穂」なのだから♪

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