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2016年8月15日 (月)

同化

「異質」なものを認識するには、対象となるものと既知のものとの「差異」を見いだす所から始まる。
逆に、「既知」のものではあっても、他のものとの「差異」が許容範囲を越えると「異質」に変容する。
その許容範囲は個々人で異なるし、時が経てば、また、周りの状況が変われば、容易に変化してしまう。

僕が皆から「異質」とされたのは、僕の胸が急速に膨らみ始めたからであることは疑いようもない。
年が明けたころから徐々に膨らんでいた。
新学期になると学生服の上からでも膨らみが判るようになってきた。
マンガではサラシを巻いて誤魔化すとか書かれていたが、サラシなんか簡単に巻けそうにもない。
サポーターで胸を押さえることができたので、しばらくは誤魔化しができた。
が、夏になると水泳の授業が始まる。
勿論、サポーターをしたままプールに入る訳にもいかない。
これまで、恥ずかしくて誰にも話さなかったが、流石に先生に相談しない訳にはいかないだろう。

「病院へは行ったのか?」
早速にそう訊かれた。「まだです」と言うと、そのまま先生の車に乗せられた。

最寄りの病院ではなく、先生の知り合いの大学病院に連れて行かれた。
「女性化乳房だね。一時的なホルモンバランス失調によるものだ。」
「治るんですか?」
「一時的な…と言ったろう。時間が経てば元に戻るよ。それまでは無理に隠そうとしないで自然に振る舞えば良い。」
「薬とか飲むんですか?」
「なら、専用のサポーターを処方するよ。一般的にはスポーツブラと言われてるやつだがね。」

 

翌日からは処方されたサポーターを着けて登校する事になった。
ワイシャツの胸はその形を露にしていた。
更に、生地を透かしてサポーター…ブラジャーを着けているのが判ってしまう。
奇異の視線が遠慮なしに突き刺さってきた。
「静かに!!彼は病気で体型が変化しているが、一時的なものなので気にしないように。また、病気とは言っても伝染るようなものではないので、普段通り接してあげて欲しい。」
朝イチに先生が皆に言ってくれたので、僕がいちいち説明する必要は無くなったが、奇異の視線は無くなる事は無かった。

そして水泳の授業の初日。
先生が僕を職員用の更衣室に呼んだ。
「流石に君の胸を露出させるのは問題がある。水着はコレを使いなさい。また、着替えもココでするように。」
渡されたのは女子用の水着だった。
ここまで来て抗議をするのも時間の無駄と判っている。
僕はシャツのボタンを外し…
先生が僕の胸をじろじろ見ていたのに気づき、ちょっと睨み返してみた。
「あっ、済まん。名前の入っていないロッカーはどれを使っても良いからね。」
と言い残して先生は更衣室を去っていった。
女子用の水着に着替え、バスタオルを身体に巻いてプールに向かった。
既に皆は準備運動を終えて平泳ぎで慣らしを始めていた。
「独りで済まんが、準備運動してからこっちへ来てくれ。」
と言われ、バスタオルを外しラジオ体操を始めた。
…気が付くと水音が途絶えていた。
皆の視線が僕に集まっていた。
身体を動かす度に揺れる胸…ばかりではなく、彼らの視線は僕の股間にも注がれていた。
病院に行った後から、僕のペニスは急速に縮み始めていた。
何かの拍子に玉と一緒に体の中に潜り込んでしまう事もある。
時間が経てば元に戻るのだけど、今の僕は丁度そんな状態だった。
準備運動で広がった股間に、男のシンボルの痕跡は見当たらず、女の子のような割れ目が浮き出ているのに違いない。
「お…おい、お前達!!何を見てるんだ。アップを続けるんだ。出来ない奴は水から出すぞ!!」
先生は監視員席に座ったまま、そう叫んでいた。
誰もがその指示に従った。
(後で聞いた所では、皆勃起してしまっていたようだ)
準備運動を終えた僕は皆とは離れたコースで独りで泳ぐ事になってしまった。
更に「次からは体育は女子の方で授業を受けるように。」
と言われてしまった。

 

小さいながらも、股間にペニスが存在している間は立って小便ができたので、僕は「男子」として認識されていた。
が、それでも僕が男子トイレに入ると、皆一様にドキリとするようだ。
しかし、それも数週間の事だった。
ペニスが隠れる頻度が高くなり、隠れている間は女子のように個室に座って処理する事になる。
ペニスが復活するまで我慢できれば良いのだが、そうも言っていられない。
立っている姿が確認できないとなると、いよいよ男子達から完全に疎外されるようになる。
が、逆に女子から優しい手が差し伸べられてきた。
「一緒にお昼しよ♪」
と机を並べられる。
「帰りにケーキ食べに行かない?」
と誘われる。
「どうせなら女子トイレを使ってめ良いわよ。独りで入り辛かったら、誰かが一緒に行ってあげるから♪」
と、とうとう女子トイレを使わせてもらう迄になった。
男子達の好奇な視線から逃れて落ち着いて小便ができるようになった。

 
「遠い職員用更衣室じゃなくて、あたし達と一緒に着替えない?」
とうとう更衣室も女子と一緒になった。
水泳の授業は女子と一緒とはいえ、職員用更衣室で別々に着替え、いつも遅れて来るのと、一緒に着替え一緒に授業を始められるのでは、気分的に疎外感が違った。

「あれ?僕のズボン知らない?」
授業が終わり更衣室で着替えようとすると、ロッカーに置いていたズボンが無かった。
「ぐずぐずしてると次の授業に遅れるわよ♪」
そうは言われるが、パンツのまま更衣室を出る訳にはいかない。
「ほら、ちゃんとボトムが置いてあるじゃない♪」
確かに、ズボンの替わりに置かれていたものはあった。
勿論女子達の仕業である。
「下校迄にはズボン返してよね!!」
と宣言し、女子達の視線の中、僕はそれ…スカートを穿いた。
「綺麗な脚してるんだから、もっと織り込んで見せた方が良いわよ。」
と腰周りを調整され、膝が隠れていた裾が太股の所まで上げられてしまった。
「あら、急いで!!始まっちゃうわ!!」
と言う声にチャイムが重なる。
「キャー!!」
と叫ぶ女子の集団に巻き込まれながら、僕も教室に走り込んでいた。

 

始めて穿いたスカートの感触が気になり、授業はほとんど頭に入ってなかった。
少しでも気を抜くと膝頭が離れている。
皆は黒板を見ているが、先生は教壇に立っている。
机で隠れていると思っても、スカートの中を見られたのではないかと気が気ではなかった。

休み時間にトイレに行った。
スカートをたくしあげて用を済ますのも、ある意味ズボンを下ろすより楽に感じていた。
個室を出ると他の女子と出くわす。
いつもなら一瞬ギョッとした目をするのだが、今回はスルーされた。
スカートを穿いている事で僕は完全に女の子達と同類に見られるようになったのだろうか?

放課後にようやくズボンを返された。
明日の土曜に彼女達に付き合わされるのが条件だったが…

 

待ち合わせは駅前の時計の下だった。
予想通り、駅に隣接したショッピングセンターの婦人服売り場に連れて来られた。
彼女達の着せ替え人形にされるのは想像がついたが…水着の試着まであるとは思わなかった。
「結構、胸あるのよね。やはりココはセパレートでしょ♪」
と際どいラインの水着が揃えられた。
「男の子ならどれが一番興奮する?」
と訊かれても、中に隠れてしまった僕のペニスはピクリとも反応しなかった。
しかし、そこは答えない訳にもいかない。
当然、それを僕に着せようとするのだろうが、あからさまに大人しいデザインを選ぶと、この先更に恥ずかしい仕打ちも考えられる。
経験上、どんなデザインを男が喜ぶかは解っているが、自分が着る事を許容できる線は守りたかった。

「明日の日曜はコレでプールだからね♪」
水着だけではなく、プールに行く時に着るワンピースやサンダルまで揃えられた。
「お金の事は心配しなくて良いわよ♪」
と、紙袋が渡されて解散となった。
僕は誰もいなくなった駅前でしばらく立ち尽くしていた…

 

 

授業ではなく水に戯れる休日のプールはやはり楽しい。
特に水の中では膨らんだ胸の重みを忘れる事ができる。
と、同時に僕は女の子の水着…それも相当刺激的な…を着ている事さえも忘れ去っていた。
女の子達とキャアキャア言って水を掛け合い、潜ったり、泳いだり…

さすがに疲れてプールサイドに皆で寝転がった。
「少しは注意した方が良いわよ。」
と僕の下半身にバスタオルを掛けてくれた娘がいた。
良く見ると、元々長めのスカートが付いている水着を着てる娘でも、下半身を隠すようにしている。
中にはワンピースみたいに丈の長いティーシャツを着てる娘もいた。
「男子ってそういうの目敏いんだから♪」
「そうそう。気が付くと卑しい眼で見てるのよね♪」
もしかして僕もそんな眼で彼女等を見ていたのだろうか?
「ご、御免…」
「あんたが謝る必要はないのよ。悪いのは変態男子達なんだから。」
「ねーっ♪」
複数の女の子の賛同する声があった。

 

夏休みに入ってからもちょくちょく彼女達と出歩いていた。
プールにも度々行っていたので、僕の肩にはくっきりと女の子の水着の跡が付いてしまっていた。

「花火大会は浴衣で行かない?」
と提案する娘がいた。
「あたし、浴衣もってない…」
と言う娘が何人かいた。
「ママが趣味で浴衣を集めてるの。貸してあげるから家に来なよ♪」
と浴衣のない女の子達に集合が掛かった。
「あんたも浴衣なんて持ってないでしょ?」
と当然の如く僕も参加メンバーに入っていた。
並べられた浴衣をあれこれ手に取って賛否のかしましい声が飛び交っていた。
僕は金魚が散りばめられた柄を手にしていた。
「当然、着付けなんて出来ないでしょ?当日は二時間前にココに集まってね♪」

「お姉ちゃん達可愛いね♪」
屋台のおじさん達にひやかされながら花火会場に入っていった。
結構早めに来たと思ってたけど、既にかなりの人が集まっていた。
なんとか皆がまとまって見れる場所を確保して、屋台で買ってきた綿飴やチョコバナナなどを食べて始まるのを待っていた。
空が暗くなってきた。
場内アナウンスが開会を告げる。
ドーーン!!
と最初の花火が打ち上がった…

 
「今日は遅いから、浴衣を返すのは明日にしましょう。」
という事で、僕は浴衣のまま帰っていった。
独りになり、高揚した気分も鎮まると、着慣れない浴衣の所為か、寒気を感じてきた。
頭痛がし、下腹部に鈍痛が生まれていた。
部屋に戻り、浴衣を脱いでトイレに篭った。
下痢ではないが、本来とは異なる排泄感があった。
少し落ち着いたので一旦トイレを出ようとお尻を拭く…
(?!)
ペーパーが真っ赤に染まっていた。
便器の中も真っ赤になっていた。
(痔…じゃないよね…)
もうひとつの可能性が頭に浮かんだ。
「女の子のたしなみよ。バックに入れておきなさい。」
と小さな布袋をもらったのを思いだした。
単に胸が膨らんだだけで、性別は「男」の僕がコレを持ってないといけないなんて…
その時は軽く考えていたが、今のこの状態は正しく「生理」の症状に他ならない。
トイレを出ると、バックの中の布袋からナプキンを取り出し、説明書を読みながらショーツの股間に貼り付けた。
(明日は浴衣を返しに行く前に、ナプキンの買い足しと生理用ショーツを手に入れないといけないね♪)

 

 

秋になった。
衣替えの日。
僕は女子の制服を着て登校した。
「おはよう♪」
と皆が声を掛けてくれた。
「あれ?なんかあんたの制服姿って始めて見た気がするんだけど…」
そんな事をいう娘がいた。
「そう?」
と皆が記憶を確かめ始める。
「そう言えば、あんた男子だったんだよね?」
「夏休みの間中一緒に遊んでたから忘れてたわ。」
ようやく皆の記憶が戻ってきた。
「それで…」
と僕は皆に注目してもらう。
「先週、病院でもう男に戻る事はない。って言われたの。僕…あたしは正式に女の子…皆の仲間になったの。」

「…」
ひと呼吸置いて
「何言ってるのよ。あんたはもう夏休みの前からあたし達の仲間よ。」
「ほら、授業が始まるわ。席に着きましょ♪」
今日もまた、いつもと同じ一日が始まった。

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