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2016年8月15日 (月)

明日僕は…

『明日僕は、昨日の僕とデートする』

って、そんな事出来るのか?
渡された紙を読み上げると僕は目の前の彼女に聞いた。
「問題ないわ♪」
彼女は平然とそう言った。
「明日になれば全て判るようになってるから♪」
と彼女は服を脱ぎ始めた。
「汚しちゃいけないものね♪明日のデートもこの服でなくちゃね。」
じゃあ、君は明日僕以外の男とデートするのかい?
「それも良いわね♪でも、今は貴方の方が大事ね。良く見せて…貴方のカ・ラ・ダ♪」
言われるがまま、僕は服を脱ぎ去った。
「もうすぐ、このコともお別れね♪」
と彼女は僕のペニスに頬擦りすると、おもむろに口に咥えた。
あうっ…
僕のペニスは即に硬くなった。
昨夜もそうだけど、彼女は僕の弱い所を的確に責めたててくる。
あっあっ、ああ…
僕は呆気なく果ててしまった。
ゴクリと喉を鳴らして彼女が僕の精液を呑み込んだ。
「さあ、変化が始まるわよ♪」
変化?
「そう♪明日のデートに相応しいカ・ラ・ダにね♪」
僕はベッドに押し倒された。
手足に力が入らない?
僕は彼女の為すがままに彼女の前に股間を晒していた。
「大分小さくなってきたわね♪でも、感度は逆に高くなってるのよ♪」
彼女が僕の股間を舐めあげた。
!!!!
舌がペニスの尖端に触れたとき、声に出せない程の刺激が背骨の中を駆け上がり脳天を直撃した。
と同時に変わり果てたペニスの大きさに愕然とする。
勃起してる筈なのに、ソレはもう小指の先程の大きさもなくなっていた。
それに、射精に至る感覚がしてこない?
な、何なんだよコレ!!
「もう感じて来た?じゃあこっちも良いかな?」
ペニスから顔を離し、股間に被せるように掌が這わされた。
えっ?!
彼女の指が胎内に潜り込んできた。
くちゅくちゅと卑猥な音がする。
ん…ぁあん♪
僕はオンナのような喘ぎ声を上げていた。
「さあ、この快感を受け入れるの♪何も考えずにイッちゃいなさい♪」
な、何だよ「イク」って?
「昨日の貴方とデートする為よ♪」
昨日の僕と?
昨日、僕とデートしてたのは君だろう?
「だから、明日は貴方があたしになるの。夜が明ければタイムマシンが迎えに来るわ。」
言ってる事が判らないよ。
「大丈夫♪あたしにできた事だもの。貴女にもできるわ♪」
彼女の口が僕の膨らんだ胸の尖端にできた蕾を責めたてる。
僕の膣に挿入した指を絶妙に動かし、快感のポイントをこれでもかと刺激する。
これがイクッて事なの?
頭の中が真っ白になり、僕は意識を失っていた。

 

 
気がつくと、部屋の中に見たこともない機械が現れていた。
僕は彼女が着ていた服を着せられ、化粧をさせられ、踵の高い靴を履かされていた。
「じゃあ、デートを楽しんできてね。一昨日の僕にいっぱい可愛がってもらうのよ♪」
と機械…タイムマシンの中に送り込まれた。

「どうしたの?」
街角でボーっと立っていると声を掛けられた。

ふりむくと、そこに「僕」がいた…

同化

「異質」なものを認識するには、対象となるものと既知のものとの「差異」を見いだす所から始まる。
逆に、「既知」のものではあっても、他のものとの「差異」が許容範囲を越えると「異質」に変容する。
その許容範囲は個々人で異なるし、時が経てば、また、周りの状況が変われば、容易に変化してしまう。

僕が皆から「異質」とされたのは、僕の胸が急速に膨らみ始めたからであることは疑いようもない。
年が明けたころから徐々に膨らんでいた。
新学期になると学生服の上からでも膨らみが判るようになってきた。
マンガではサラシを巻いて誤魔化すとか書かれていたが、サラシなんか簡単に巻けそうにもない。
サポーターで胸を押さえることができたので、しばらくは誤魔化しができた。
が、夏になると水泳の授業が始まる。
勿論、サポーターをしたままプールに入る訳にもいかない。
これまで、恥ずかしくて誰にも話さなかったが、流石に先生に相談しない訳にはいかないだろう。

「病院へは行ったのか?」
早速にそう訊かれた。「まだです」と言うと、そのまま先生の車に乗せられた。

最寄りの病院ではなく、先生の知り合いの大学病院に連れて行かれた。
「女性化乳房だね。一時的なホルモンバランス失調によるものだ。」
「治るんですか?」
「一時的な…と言ったろう。時間が経てば元に戻るよ。それまでは無理に隠そうとしないで自然に振る舞えば良い。」
「薬とか飲むんですか?」
「なら、専用のサポーターを処方するよ。一般的にはスポーツブラと言われてるやつだがね。」

 

翌日からは処方されたサポーターを着けて登校する事になった。
ワイシャツの胸はその形を露にしていた。
更に、生地を透かしてサポーター…ブラジャーを着けているのが判ってしまう。
奇異の視線が遠慮なしに突き刺さってきた。
「静かに!!彼は病気で体型が変化しているが、一時的なものなので気にしないように。また、病気とは言っても伝染るようなものではないので、普段通り接してあげて欲しい。」
朝イチに先生が皆に言ってくれたので、僕がいちいち説明する必要は無くなったが、奇異の視線は無くなる事は無かった。

そして水泳の授業の初日。
先生が僕を職員用の更衣室に呼んだ。
「流石に君の胸を露出させるのは問題がある。水着はコレを使いなさい。また、着替えもココでするように。」
渡されたのは女子用の水着だった。
ここまで来て抗議をするのも時間の無駄と判っている。
僕はシャツのボタンを外し…
先生が僕の胸をじろじろ見ていたのに気づき、ちょっと睨み返してみた。
「あっ、済まん。名前の入っていないロッカーはどれを使っても良いからね。」
と言い残して先生は更衣室を去っていった。
女子用の水着に着替え、バスタオルを身体に巻いてプールに向かった。
既に皆は準備運動を終えて平泳ぎで慣らしを始めていた。
「独りで済まんが、準備運動してからこっちへ来てくれ。」
と言われ、バスタオルを外しラジオ体操を始めた。
…気が付くと水音が途絶えていた。
皆の視線が僕に集まっていた。
身体を動かす度に揺れる胸…ばかりではなく、彼らの視線は僕の股間にも注がれていた。
病院に行った後から、僕のペニスは急速に縮み始めていた。
何かの拍子に玉と一緒に体の中に潜り込んでしまう事もある。
時間が経てば元に戻るのだけど、今の僕は丁度そんな状態だった。
準備運動で広がった股間に、男のシンボルの痕跡は見当たらず、女の子のような割れ目が浮き出ているのに違いない。
「お…おい、お前達!!何を見てるんだ。アップを続けるんだ。出来ない奴は水から出すぞ!!」
先生は監視員席に座ったまま、そう叫んでいた。
誰もがその指示に従った。
(後で聞いた所では、皆勃起してしまっていたようだ)
準備運動を終えた僕は皆とは離れたコースで独りで泳ぐ事になってしまった。
更に「次からは体育は女子の方で授業を受けるように。」
と言われてしまった。

 

小さいながらも、股間にペニスが存在している間は立って小便ができたので、僕は「男子」として認識されていた。
が、それでも僕が男子トイレに入ると、皆一様にドキリとするようだ。
しかし、それも数週間の事だった。
ペニスが隠れる頻度が高くなり、隠れている間は女子のように個室に座って処理する事になる。
ペニスが復活するまで我慢できれば良いのだが、そうも言っていられない。
立っている姿が確認できないとなると、いよいよ男子達から完全に疎外されるようになる。
が、逆に女子から優しい手が差し伸べられてきた。
「一緒にお昼しよ♪」
と机を並べられる。
「帰りにケーキ食べに行かない?」
と誘われる。
「どうせなら女子トイレを使ってめ良いわよ。独りで入り辛かったら、誰かが一緒に行ってあげるから♪」
と、とうとう女子トイレを使わせてもらう迄になった。
男子達の好奇な視線から逃れて落ち着いて小便ができるようになった。

 
「遠い職員用更衣室じゃなくて、あたし達と一緒に着替えない?」
とうとう更衣室も女子と一緒になった。
水泳の授業は女子と一緒とはいえ、職員用更衣室で別々に着替え、いつも遅れて来るのと、一緒に着替え一緒に授業を始められるのでは、気分的に疎外感が違った。

「あれ?僕のズボン知らない?」
授業が終わり更衣室で着替えようとすると、ロッカーに置いていたズボンが無かった。
「ぐずぐずしてると次の授業に遅れるわよ♪」
そうは言われるが、パンツのまま更衣室を出る訳にはいかない。
「ほら、ちゃんとボトムが置いてあるじゃない♪」
確かに、ズボンの替わりに置かれていたものはあった。
勿論女子達の仕業である。
「下校迄にはズボン返してよね!!」
と宣言し、女子達の視線の中、僕はそれ…スカートを穿いた。
「綺麗な脚してるんだから、もっと織り込んで見せた方が良いわよ。」
と腰周りを調整され、膝が隠れていた裾が太股の所まで上げられてしまった。
「あら、急いで!!始まっちゃうわ!!」
と言う声にチャイムが重なる。
「キャー!!」
と叫ぶ女子の集団に巻き込まれながら、僕も教室に走り込んでいた。

 

始めて穿いたスカートの感触が気になり、授業はほとんど頭に入ってなかった。
少しでも気を抜くと膝頭が離れている。
皆は黒板を見ているが、先生は教壇に立っている。
机で隠れていると思っても、スカートの中を見られたのではないかと気が気ではなかった。

休み時間にトイレに行った。
スカートをたくしあげて用を済ますのも、ある意味ズボンを下ろすより楽に感じていた。
個室を出ると他の女子と出くわす。
いつもなら一瞬ギョッとした目をするのだが、今回はスルーされた。
スカートを穿いている事で僕は完全に女の子達と同類に見られるようになったのだろうか?

放課後にようやくズボンを返された。
明日の土曜に彼女達に付き合わされるのが条件だったが…

 

待ち合わせは駅前の時計の下だった。
予想通り、駅に隣接したショッピングセンターの婦人服売り場に連れて来られた。
彼女達の着せ替え人形にされるのは想像がついたが…水着の試着まであるとは思わなかった。
「結構、胸あるのよね。やはりココはセパレートでしょ♪」
と際どいラインの水着が揃えられた。
「男の子ならどれが一番興奮する?」
と訊かれても、中に隠れてしまった僕のペニスはピクリとも反応しなかった。
しかし、そこは答えない訳にもいかない。
当然、それを僕に着せようとするのだろうが、あからさまに大人しいデザインを選ぶと、この先更に恥ずかしい仕打ちも考えられる。
経験上、どんなデザインを男が喜ぶかは解っているが、自分が着る事を許容できる線は守りたかった。

「明日の日曜はコレでプールだからね♪」
水着だけではなく、プールに行く時に着るワンピースやサンダルまで揃えられた。
「お金の事は心配しなくて良いわよ♪」
と、紙袋が渡されて解散となった。
僕は誰もいなくなった駅前でしばらく立ち尽くしていた…

 

 

授業ではなく水に戯れる休日のプールはやはり楽しい。
特に水の中では膨らんだ胸の重みを忘れる事ができる。
と、同時に僕は女の子の水着…それも相当刺激的な…を着ている事さえも忘れ去っていた。
女の子達とキャアキャア言って水を掛け合い、潜ったり、泳いだり…

さすがに疲れてプールサイドに皆で寝転がった。
「少しは注意した方が良いわよ。」
と僕の下半身にバスタオルを掛けてくれた娘がいた。
良く見ると、元々長めのスカートが付いている水着を着てる娘でも、下半身を隠すようにしている。
中にはワンピースみたいに丈の長いティーシャツを着てる娘もいた。
「男子ってそういうの目敏いんだから♪」
「そうそう。気が付くと卑しい眼で見てるのよね♪」
もしかして僕もそんな眼で彼女等を見ていたのだろうか?
「ご、御免…」
「あんたが謝る必要はないのよ。悪いのは変態男子達なんだから。」
「ねーっ♪」
複数の女の子の賛同する声があった。

 

夏休みに入ってからもちょくちょく彼女達と出歩いていた。
プールにも度々行っていたので、僕の肩にはくっきりと女の子の水着の跡が付いてしまっていた。

「花火大会は浴衣で行かない?」
と提案する娘がいた。
「あたし、浴衣もってない…」
と言う娘が何人かいた。
「ママが趣味で浴衣を集めてるの。貸してあげるから家に来なよ♪」
と浴衣のない女の子達に集合が掛かった。
「あんたも浴衣なんて持ってないでしょ?」
と当然の如く僕も参加メンバーに入っていた。
並べられた浴衣をあれこれ手に取って賛否のかしましい声が飛び交っていた。
僕は金魚が散りばめられた柄を手にしていた。
「当然、着付けなんて出来ないでしょ?当日は二時間前にココに集まってね♪」

「お姉ちゃん達可愛いね♪」
屋台のおじさん達にひやかされながら花火会場に入っていった。
結構早めに来たと思ってたけど、既にかなりの人が集まっていた。
なんとか皆がまとまって見れる場所を確保して、屋台で買ってきた綿飴やチョコバナナなどを食べて始まるのを待っていた。
空が暗くなってきた。
場内アナウンスが開会を告げる。
ドーーン!!
と最初の花火が打ち上がった…

 
「今日は遅いから、浴衣を返すのは明日にしましょう。」
という事で、僕は浴衣のまま帰っていった。
独りになり、高揚した気分も鎮まると、着慣れない浴衣の所為か、寒気を感じてきた。
頭痛がし、下腹部に鈍痛が生まれていた。
部屋に戻り、浴衣を脱いでトイレに篭った。
下痢ではないが、本来とは異なる排泄感があった。
少し落ち着いたので一旦トイレを出ようとお尻を拭く…
(?!)
ペーパーが真っ赤に染まっていた。
便器の中も真っ赤になっていた。
(痔…じゃないよね…)
もうひとつの可能性が頭に浮かんだ。
「女の子のたしなみよ。バックに入れておきなさい。」
と小さな布袋をもらったのを思いだした。
単に胸が膨らんだだけで、性別は「男」の僕がコレを持ってないといけないなんて…
その時は軽く考えていたが、今のこの状態は正しく「生理」の症状に他ならない。
トイレを出ると、バックの中の布袋からナプキンを取り出し、説明書を読みながらショーツの股間に貼り付けた。
(明日は浴衣を返しに行く前に、ナプキンの買い足しと生理用ショーツを手に入れないといけないね♪)

 

 

秋になった。
衣替えの日。
僕は女子の制服を着て登校した。
「おはよう♪」
と皆が声を掛けてくれた。
「あれ?なんかあんたの制服姿って始めて見た気がするんだけど…」
そんな事をいう娘がいた。
「そう?」
と皆が記憶を確かめ始める。
「そう言えば、あんた男子だったんだよね?」
「夏休みの間中一緒に遊んでたから忘れてたわ。」
ようやく皆の記憶が戻ってきた。
「それで…」
と僕は皆に注目してもらう。
「先週、病院でもう男に戻る事はない。って言われたの。僕…あたしは正式に女の子…皆の仲間になったの。」

「…」
ひと呼吸置いて
「何言ってるのよ。あんたはもう夏休みの前からあたし達の仲間よ。」
「ほら、授業が始まるわ。席に着きましょ♪」
今日もまた、いつもと同じ一日が始まった。

女の子の木

机の上に置かれた小さな鉢…
この中には「女の子の木」が植えられていた。

 
「女の子の木」とは言っても大それたものではない。
腕や頭がそれらしく育った枝ぶりの盆栽もどきに、人形用のワンピースを着せ、長い髪の毛を模したカツラのようなものを被せたものだ。
フリーマーケットをぶらついていた時に見つけたもので、その時は「意表を突かれた」と思って思わず買ってしまったが…
毎日の水やりをサボると、途端に機嫌を損ね、しょんぼりしてしまう。
雨の日が続いても機嫌が悪くなる。
が、お日様の光を浴びて、適切な水分が確保できてると、元気な笑顔を見せてくれる…
勿論、カツラを貼り付けられた「頭」に相当する短太の枝には目鼻などはない。
当然ながら、コロコロ変わる表情など表現できる筈もないのだが、そこは気分の問題だ。

 

「ヨーコちゃん♪ご機嫌いかが?」
と話しかけると、嬉しそうに小さな葉を揺らす。
今日も機嫌は良いみたいだ。
(?)
ヨーコちゃんの髪の毛の合間に何か尖ったものがあった。
良く見ると短太の枝の先につぼみができていた。

夜になる頃にはつぼみは花開き、髪飾りのようにヨーコちゃんを引き立てた。
「綺麗だよ♪」
と言うと、恥ずかしいのか小刻みに花びらが揺れていた。

その夜、夢の中にヨーコちゃんが現れた。
「大切に育ててくれてありがとうございました。花が咲いたことで、あたしの生は尽きることになります。」
衝撃の告白に僕は飛び起きんばかりだった。
「あたしが死んだ後、残った実を植えてください。そしてまた、あたしの娘を育ててください。」
僕は金縛りにあったように動けなかった。

目が覚めると、机の所に飛んでいった。
ヨーコは全ての葉を落とし、立ち枯れていた。
そして、頭の上に赤い実を残していた。
「ヨーコォ……」
僕は赤い実を手に、延々と泣いていた。

 

 
僕は何を思ったのだろう…
熟し始めた実は甘い香りを漂わせていた。
(美味しそう♪)
口の中が唾液で溢れていた。
僕はヨーコの実を食べたがっていた。
しかし、ヨーコの願いはこの実を植えて育てる事だ。
(果肉は食べても良いんじゃないか?種を取り出して植えれば良いんだ♪)
そうなのか?
僕は邪な誘惑に囚われ始めていた。
(そうさ。種はあとで植えれば良い♪)
甘い香りが一段と部屋に充満していた。
(彼女は植えて欲しいと言ったが、あの鉢にとは特定してなかったよね?)
な…何が言いたい?
(種まで食べたらどうなるかな?)
実際、僕は果肉だけでは済まないような気がしていた。
(考え方を変えてみたらどうだい?)
何?
(そう、その実を「食べる」のではなく、君の身体に「植える」のだと…)

僕の意識は混濁していた。
口の中に甘い密が広がっていった。
満たされた満足感・多幸感が全身を包む。
その幸福の絶頂で

ゴクリ

僕は種を呑み込んでいた。
(種は一度分解され、君の身体の中を巡る。そしてもっとも適した場所に集まり、根を張るのだ。)
もっとも適した場所?
(その種はヨーコの娘となるものだ。体内で彼女を育てるのに適した場所はどこかな?)
心臓?
(確かに養分は豊富にあるだろう。しかし、そこを占拠しては君の生命に関わる。君が死んでしまうと元も子もない。)
腸とか?
(惜しいな。腹の中には違いない。それは子宮だよ。人間もそこで胎児を育てるだろう?)
しかし、僕は男だ。男には子宮はない。
(人間の遺伝子には設計図が記録されている。採用されなかっただけで、君の遺伝子にも子宮の設計図は存在するのだよ。)
じゃあ、種は?
(その設計図を元に子宮を作る。胎盤に根を張り、君の胎の中で成長していくのだ♪)

 

全ては夢だ…
と思いつつ、枯れたヨーコの立つ鉢を見つめていた。
「っあ…」
胎の中てヨーコの娘が動くのを感じた。
今、僕の腹は臨月の妊婦のように膨らんでいる。
実際、超音波検査でも、僕のお腹には子宮があり、胎児が成長してゆくのが確認されている。
「母体にも危険が伴いますので、このまま出産されるのが良いと思いますよ。」
勿論、僕は産むつもりだ。
ヨーコに頼まれたのだ。この娘をちゃんと育てて欲しいと…

 

その部屋から、強力な幻覚を起こさせる植物の残骸が発見された。
被害者は己が男性であると暗示を掛けられ、レイプされた事自体が「有り得ない事」として自ら記憶から抹消してしまっていた。
その為、彼女自身受胎した事を意識できずにいたようであった。
やがて、妊娠している事に気づいた奴らは、彼女に「木の実を食べたから妊娠した」と更なる暗示を掛けていたようだ。

彼女は今、彼女の娘と病室にいる。
不思議な事だが、その娘は生まれた時に、手の中に赤い木の実を握りしめていたという。
その実が今どこにあるのかは誰も知らない…

パワースポット

「ご利益がある」とパワースポットを紹介する記事に釣られてはるばるやってきた神社だった。
(本当にここか?)
と聞き返したくなる程、その神社はうら寂れていた。
それでも神にすがらずにはいられず、タイマイを賽銭箱に放り込んだ。
「無茶苦茶可愛い彼女ができますように♪」
手を叩き、拝み込み、願いが届くようにと鈴を鳴らす紐を大きく振った…が、鈴はカサカサとしか鳴らなかった。
(流石に寂れた神社だけある…)

 

願いは掛けた。
結果か神様次第である。
帰りの電車に乗った。
隣の駅ではいくつかの女の子達のグループが乗り込んできた。
(彼女達の誰か一人でも彼女になってくれれば良いのに…)
などと思いつつ、彼女達の会話が耳に入ってきた。
どうやら、パワースポットを巡り歩いているらしい。
「百地神社」というキーワードが聞こえた。
(それなら、俺も今行ってきたぞ♪)
と共通の趣味がありそうで気分が高揚するが、彼女達もまた「百地神社」の帰りらしい。
(?)
俺は電車のドアの上の路線図を確認した。
「百地」の駅名は、彼女達の乗り込んできた駅だった。
そして、その一つ手前が「白池」という駅だ…
(嗚呼…)
どうやら、俺は行くべき神社を間違えてしまったようだ。
(通りであんなに寂れて…)

 
と、落ち込んでいた。
更に追い討ちを掛けるように、神社で虫に刺されたか、背中が痒くなってきた。
背中に手を廻すが、痒い所に手が届くことはなかった。
『そなたの望み叶えようぞ。』
そんな声が聞こえた。
「あ…」
その直後、痒い所に手が届いたのだ。
その位置であれば、角度・距離ともに届く筈のない所の筈なのだが…
(伸びた?)
と自分の腕を戻して見た。
(?!)
肘から先が無い!!
否。ロケットパンチよろしく、空中を舞い戻ってきた肘から先がカチリとそこに填まったのだ。

(どういう事?)

試しに腕を切り離して、お喋りに夢中になっている女の子達の方に行くようにイメージしてみた。
俺の腕はスッと抜けると、床の上ぎりぎりを飛んで行った。
ターゲットはロングスカート娘だ。
勿論、悪戯が見つかる確率の問題だけだが…
彼女の足に触れないようにスカートの内側を昇ってゆく。
誰も気づかないが、スカートは腕の存在を誇示するかのように膨らんでいた。
指先でショーツの端を摘まんでずり下げてゆく。
まだこの異常事態に気づかないのだろうか?
彼女のお尻が剥き出しとなった♪
指先を尖らせ…
(浣腸っ♪)

「ひゃっ!!」
と叫び声が上がる。
振り向けども、そこには誰もいない。
「どうしたの?」
と心配そうに彼女を見る女友達に、彼女は何が起こったかを説明できないようだ。
更にショーツを膝の上までずり下げてしまった。
彼女は何かが起こっているのは把握していたが、周りに悟られないよう必死のようだ。
掌を太股の内側に這わせてゆく。
今度はスカートが膨らまないようにぴったりと太股に貼り付いている。
そのまま彼女の股間に向かって行く。
指先が暑い息吹を感じた。
彼女は興奮しているのだろうか?
たらりと液体が滴ってきた。
(感じ易いんだね♪)
彼女は顔を紅潮させ、喋らなくなっていた。
「いやっ!!」
突然、大声で叫んだ。
俺が彼女の秘裂に触れた瞬間だ。
急いで腕を回収する。
崩れ落ちた彼女は、友達に支えられ、次の駅で降りていった。

 

 

家に帰り、もう一度腕を飛ばしてみた。
面白いように舞い踊る。
(こっちの腕だけなのかな?)
ともう一方の腕も飛ばないか試してみた。
勿論、問題ない。
腕ばかりか足も飛んだ。
指の一本一本まで飛ばす事ができたが、コントロールしきれないので元に戻した。
(元に?)
俺は両腕を左右逆に戻してみた。
(…)
ちゃんと繋がった。
今度は手と足を逆にした。
逆立ちしてるような…
腕が疲れるので元に戻した。
(手足は飛んだが…)
俺はごくりと唾を呑み込んだ。
こんな事をして良いのか…
意を決し、俺は「首」を飛ばした。

(♪)

俺は天井近くから「俺」を見下ろしていた。
「俺」と言っても首から上の無い俺の胴体だが…

色々な視点から俺の肉体を見ていた。
鏡でもビデオのモニタ越しでもない。あり得ない角度から「俺」を見てまわった。
勿論、立たせたり、寝かせたりは自在である。更に手を飛ばして足首を掴み、吊し上げたりもしてみた。
肉体が逆さになっても、どういう訳か頭に血が昇る事もない。
腕を切り離したときから気が付いていたが、切り口からは血の一滴も落ちてはいないのだ。
四次元的には繋がっているのか、今も首だけにはなっているが、しっかりと呼吸はできている。
試しに耳を飛ばして胸に押し付けると、心臓の鼓動がちゃんと聞こえるのだ♪

 

俺の目の前に、男の裸体が転がっていた。
「俺」の肉体だ。
但し、首はなく、手足も外れてバラバラ殺人の死体のようだ。
否。そこには血の一滴も落ちてはいない。強いて言えは、分解された塑像かマネキンだ。
が、その肉体は生きているのだ。
呼吸に合わせて胸が上下している。

もし、これが女の肉体であれば、たとえマネキンであっても萌えるのであるが…
(?)
俺が卑猥な事を考えた所為か、股間のモノが反応していた。
ピクリピクリと脈動しつつ、その太さを増して勃起してゆく。
いつもと違う角度で見ている所為か、余計グロテスクに見える。
(女はコレを自分のあそこに挿れなければならないのか…)
何か女性が可哀想に思えてきた。

ズンッ!!とソレがクローズアップされた。
無意識の内に俺はソレの前に顔を近づけていた。
自分の…ではあるが、不快な臭いが鼻を突く。
(女はコレを咥えたりするんだよな?)
俺は無意識のうちに舌を突き出していた。
首が近づき、尖端に触れた。
(♪)
確かに俺のぺニスは快感を感じた。
(女の子に咥えてもらえばもっと気持ち良いかな♪)
俺が軽く口を開くと、喉の奥まで一気に突っ込まれた。
…否…俺が自分の頭を「俺」の股間に押し付けただけだ。
自由に飛び回ることのできる俺のパーツ…その一つが「頭」だっただけだ…
(と、簡単に割りきれる話か?)
確かにフェラチオされるのは気持ちが良い。
(される方は良いが、何で俺が自分の…男のペニスを咥えなければならないんだ?)
何を休んでる?もっと気持ち良くさせろよ♪と、掌が頭を掴んだ。
頭が動こうとしなければ、外から動かしてやる必要があるのだと言わんばかりに、ペニスを咥えた頭を強引に前後させた。
おお♪気持ち良いぞ!!
と「俺」の肉体は声にならない歓喜の叫びをあげていた。
(く、苦しい。止めるんだ!!)
俺の意識は悲鳴をあげたが、肉体は従おうとしない。
快感の刺激が、決められた男の生理現象を起こす。
ドクリッ!!
俺の口の中に大量の精液が送り込まれていた。

快感に肉体が弛緩した一瞬を捉え、俺は頭から腕を振り払うと、トイレに向かった。
ドアを開け、便座をあげて口の中のものを吐き出した。
洗面台に向かい、水を出し、口の中を濯いだ。
(女じゃあるまいし、何でフェラなんかしなくちゃならないんだ!!)
ペッペと唾を吐いて口の中の違和感を拭った。
そして、頭を上げると鏡に俺の顔が映る…筈が、
(女?…これが俺の顔か?)
鏡に映っていたのは、俺の面影はあるものの、それは「女」の顔だった。
そりゃあ、男にフェラされるより女にされた方が気分が良いよな♪
女だったらフェラしても問題ないのだろう?
(確かに女なら…)
って、何を俺は考えているのだ?

そんな俺の視界にあり得ないものが写った。
鏡に部屋の中が映っている。
そこには「俺」の肉体が転がっているのだが…
(胸が膨らんでいる?)
俺は慌てて部屋の中にとって返した。

胸がBからDカップへと膨らみ続けている。
肌が白くなり、無駄毛が消えていた。
ウエストに括れができて、ヒップの丸みが強調されてゆく。
(もしやっ!!)
と、股間を見ると、いまだペニスは健在だった。
慌て胴体から切り離した。

先程の快感を覚えてたか、ペニスは真っ直ぐ俺の口に突っ込まんと飛んできたが、俺は意思の力で押さえ込んだ。
ベニスが空中で手持ち無沙汰にブラブラしているのを確認し、俺は肉体の変化の確認に戻った。

手足も指先から全てが女のように細くなっていた。
骨が削られ、筋肉が萎んでいた。
腕や大腿には脂肪が付いて弾力があるようだ。
脂肪は当然のように、尻や胸も膨らませている。
胸はメロン大で固定されたようだ。
重力に逆らうように球形を保っている。
腹から下腹部にかけても「女」にしか見えない。
俺は首を股間に移動した。

これまでの経験では、切断面はリアルな断面ではなくぼやけて肌と同化したようになっていた。
当然、ペニスの切断面も同様であると考えるべきだが、俺は万に一つの可能性を考えていた。
脚をM字に開かせ、せりあがった肉の合わせめに飛ばした腕の指で左右に押し開いた。
(ビンゴ♪)
そこにはしっかりと「女性器」が形造られていた。
舌を伸ばし膣口を舐めあげてみた。
(ひゃん♪)
思わず声を上げそうになったが、舌を噛んでしまうので必死に叫び声を飲み込んだ。

俺はしっとりと濡れた女性器を見ながら、その膣口に指先を突っ込んだ。
「んあんっ♪」
女の喘ぎ声が俺の口から漏れる。
そう…この女性器は俺の神経に繋がっており、挿入された刺激が快感となって俺を喘がせるのだ。
とろりと愛液が滴る…その滴りが大腿の内側を這ってゆくの感じる。
(もっと…太いのが欲しい…)
俺の下腹部の疼きに、待機していたペニスが応える。
俺が制止しようとすれ間も与えず飛び込んできた。
「あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
強烈な痛み…と、悦感が俺を襲った。
俺は肉体のコントロールを失い、飛ばしていた腕と頭がぼたぼたと落ちていった。
視界が失われる。
五感の全てが股間に集中していた。
潜り込んだペニスの先端が子宮口に達するのが解った。
ペニスが前後に動き始める。
今の俺には、ペニスが感じている挿抜する快感は感じられない。
それ以上に全身をうち震わす挿入される…オンナの快感に全てを奪われていた。
「あっあっあ…」
どんどん昇り詰めてゆく。
(イクの?イッちゃうの♪)
俺のペニスが爆発し、俺の膣に大量の精液を吐き出した。
「あっ、ああーーーっ!!」
俺は嬌声を上げ、快感の中に意識を失っていた…

 

 
俺は再び白池神社に向かっていた。
電車の窓ガラスに映る(無茶苦茶可愛い女の子)が俺自身なのだ。
「彼女」ではないが女の子を手に入れたのだ。
同じようにタイマイを叩けば…

 
「無茶苦茶逞しくてカッコいい彼氏ができますように♪」
手を叩き、拝み込み、願いが届くようにと鈴を鳴らす紐を大きく振った。
カサカサと鈴が鳴る。
(これで良いかな?)
帰ろうと振り返った途端
「キャッ!!」
俺は何か…誰かにぶつかってしまった。
『大丈夫か?』
俺は転びそうなところを逞しい腕に支えられていた。
「あ、はい。大丈夫です。すみません♪」
見上げると、そこには超絶美形のお顔…
(キュン♪)
俺は一目で恋に落ちてしまった。

この神社の神主さん?
と思ってたら、神様ご自身でした。
「こんな寂れた神社に、よく尽くしてくれるね。よかったら巫女として働かないか?」
俺は即座にOKしていた。

 

 
が…
寂れた神社は寂れたままだった。
新しい巫女は仕事もせずに、四六時中神様とエッチしまくっていた♪

あしたの花嫁(1)

「何でこんな日に出張なんか入れて来るのかなっ!!」
俺は脳裏に浮かんだクソ上司の顔に三発のパンチと踵落としを喰らわせてやった。

(むなしい…)

タクシーは降りしきる豪雨の山道を下り、国道とは名ばかりのほとんど整備されてない舗装道路に辿りついた。
先程よりは多少スピードは上がったが、まだ山の中である事に変わりはなく、視界も悪いので上げられたスピードも高が知れていた。

「あっ!!」

運転手が声を上げる。
俺の体が宙に浮いた。
急ブレーキだと気付いた後から、ブレーキの軋み音が聞こえてきた。
俺は自分の体勢を把握できていなかった。
前方に投げ出されたが、そこは透明な仕切りに遮られた。
そして、慣性の力が俺の全体重を仕切りに押し付けられた頭に掛けてきていた。
当然、まともに息ができている筈もない。
フロントガラスの向こう側で景色がぐるぐる回っている。
(死ぬのか…)
俺は覚悟を決めるしかなかった。
(美穂…約束守れずに御免…)

 

美穂とは、明日彼女のドレス選びに付き合う事になっていた。
ドレス…そのウェディングドレスは俺との結婚式のためのものだ。
そう…二ヶ月後には結婚式が控えている。それさえも無効にしてしまう事になる。
(嗚呼、美穂の花嫁姿を見ておきたかったなぁ…)

俺の意識は、深い闇に包まれていった…

 

 

 

パイプオルガンの調べに瞼を開けた。
(?)
そこが教会である事は即に判った。
大きな木製の扉が開くと、白い布が祭壇まで敷かれている。
その先に司祭と、白いウェディングドレスの美穂がいた。
俺は手を引かれ足を前に進める。
歩き難いのは着ている服の所為か?
「皆さんに笑顔を見せてあげて♪」
耳元で囁かれた。
(笑顔っ…て?)
俺は参列者が皆、俺の方を見ているのに気付いた。
(くたびれた男の俺よりも、ウェディングドレスに包まれた花嫁の美穂の方を見てた方が良いんじゃないか?)
そうは思ったが、普通教会での結婚式は、新郎が祭壇で待っていて後から新婦が入場してくるものだと思い出す。
(何か変?)
俺が新夫…新婦であれば問題はない。
そして、この歩き難い服…どうみても、これはウェディングドレスだ。
ご丁寧にも顔の前にはベールが掛けられている。
「俺」が「花嫁」?
驚愕の事実が突き付けられた。
俺の目の先では、美穂がにこやかな笑みを浮かべていた。

 

あしたの花嫁(2) 

ピコン、ピコン…
電子音が耳に入ってきた。
俺はベッドに寝かされているようだ。
俺は「結婚式」の夢を見ていたようだ。
多分、ここは集中治療室なのだろう。
あんな事故だったのだ。命は救われたとしても、俺の肉体は相当なダメージを受けているに違いない。
事実、俺は今首から下に関しては何の感覚も得られてはいないのだ。
「おっ、気が付いたか?」
聞き覚えのある声だった。
「正樹君、私の声が聞こえるかな?」
やはり、彼は美穂の父=佐江戸博士のようだ。
が、返事をしようにも声を出す事ができない…
「無理に声を出そうとしなくても良いよ。モニタに表示される君の思考パターンから確認ができるようになっている。」
つまり、何か考えればそれだけで伝わるという事か?
「理解が早いね。流石は美穂が選んだ男だ。」
そ、そうだ。美穂は俺の状態を判ってるのか?
「美穂も毎日見舞に来ているよ。実を言えば、ここは私達の家の一画にある私の個人的な研究室なのだよ。」

博士が話している所に誰かがやってきたようだ。
「パパ♪正樹さんの意識が戻ったって本当?」
美穂か?
否、彼女が美穂以外の誰だと言うのだ!!
「ほら、お前の事を考えているよ♪」
多分、彼女にモニタを見せているのだろう。
「正樹さん。聞こえる?」
ああ。良く聞こえるよ。でも、約束を守れなくて御免。
「正樹君はお前との結婚式を夢にも見ていたようだ。」
折角のウェディングドレスなのに…俺がこんな状態じゃ結婚式どころではないよね。
「ドレスは大丈夫よ。素敵なのを選んでおいたから♪」
でも、俺がこんな状態じゃ…
「式まではまだ一ヶ月あるわ。準備はあたしに任せておいて♪」
こんな状態であと一ヶ月って…
「ねえパパ、以前作ったボディを彼に使って良いでしょ?今から〈正樹さん〉を作っていては間に合わないもの。」
どういう事?
「遠隔操作のロボットボディを使うの♪遠隔操作とは言っても、実際にその場にいるように感じる事ができるのよ。」
「それを使えば正樹君と結婚ができるには違いないが…正樹君はどうだろうか?見た目は君自身と掛け離れた姿になってしまうが…」
美穂と式があげられるなら、俺はどんな姿でも文句は言わないよ。
俺の頭の中には昔のSF映画に出てきたロボット達の姿が次々と浮かんできた。
「彼も問題ないようだから、その線で詰めていくわね♪」
「お前もそれで良いのか?」
「あたしが言いだした事だもの。問題ないわ♪」
と美穂は部屋から出ていったようだ。
「私も準備に入るから、しばらく独りにしてしまうが、我慢してくれ。」
そう言って博士も部屋を出ていってしまった。

 

 

突然「カチッ」と音がして意識が遠くなった。
「正樹君、大丈夫かな?」
博士の声に
「ええ、問題ありま…」
と、俺は「声」を出していた。
「声が…」
「接続は問題ないようだね♪目は開けるかな?」
多分、そこは俺のいた集中治療室とは別の部屋なのだろう。
そして足元に重力を感じた。
今の俺は立っているようだ。
向かい側に佐江戸博士の姿を認めた。
(博士の背が高くなった?)
真っ直ぐに見ていると、博士の胸しか見えない。
少し見上げないと博士の顔を見れないのだ。
「君本来の体格ではないから、かなりの違和感があると思う。だが、あと一ヶ月ある。そのボディに馴れるには十分だろう♪」
ボディ…遠隔操作のロボットボディを使うと言っていた。
俺の本体はまだ集中治療室にあり、遠隔操作でこのボディを動かしている…という事なのだろう。
「遠隔操作と言ってましたが、自分の体のように動かすことができるんですね♪」
そう言って再び違和感に教われる。
自分の口から出た声が自分の声とは違うのは理解できるが…その声は聞き覚えがあるような…
(?)
後ろを見ると、今までこのボディが納められていた筐体があった。
そして、その隣にあと二つ。同じ筐体が並んでおり、その中にはロボットボディ(?)が納まったままになっていた。
そのボディは揃って「美穂」そっくりである。
当然の帰着として、三つ並んでいた内の一つだけが異なる姿とは考えられない…

「か、鏡はありますか?」
と聞くと
「そこにあるよ♪」
と指差された。
(え!?)
いや…その事に気づいていて然るべきなのだが、俺の思考回路がまともではなかったと許してもらいたい。
鏡には「全裸の美穂」が写っていた。

他の筐体内の「美穂」も単なるロボットボディであるから、未稼働状態の体に服を着せていなくとも問題はないが…

慌てて両手で股間を隠した。
博士に見られていたことを思いだして赤面する。
「私は気にしていないよ。そのボディはメンテナンスの為隅から隅まで把握しているからね。」
「お、俺としてはいくら博士の前でも、裸でいるのは…」
「そうそう♪美穂が服を用意しておいたと言っていた。そこの衝立の裏に置いてある筈だよ。」
俺はカニ歩きで衝立の裏側に回り込んだ。
そこには衣服らしき布が畳まれて積まれていた。
…ある程度予想はしていたが…
その頂きに置かれていたのは女性用の下着…ショーツだった。
その下にあるのはブラジャーに違いない。
他に選択肢がないのは解っている…俺はショーツを手に取り、自分の身に着ていった。

美穂が用意してくれていたのは美穂自身の私服だった。
俺も何度か美穂が着ていたのを見ている。
このボディが美穂をモデルにしているので、美穂の服が合うのは当然だ。
が、彼女はズボン系も何点か持っていた筈だ。
ごく一部の特殊な事例を除き、男性がスカートを穿くことはないのだ。
それも、こんなに丈の短いスカートでは、何かの拍子にスカートの中…パンツが丸見えになってしまう。
ただでさえ恥ずかしいのに、そのような事態は受け入れ難い…
「美穂を始め、世の女性はそのような服をちゃんと着こなしているのだよ。先ずは姿勢だ。立つ・座る・歩く。女性としてこれらの動作が行えるようにするんだ。」
「俺は男なんですよ。」
「君はどんなボディでも良いと言ったんだ。とにかく、この一ヶ月でそのボディで自然な行動ができるようにならなければ、君達の結婚式は開く事はできないんだよ。」
勿論、今から男のボディを作ってもらっても、一ヶ月後の結婚式に間に合う筈もない。
美穂と結婚式を挙げる為には、このボディを受け入れなければならないのだ。

 

二週目の後半からは化粧の練習も始まった。
使う化粧品は美穂と同じものを使う。
一度美穂が来て手順を教えてくれた。
「結婚式の当日は美容師を手配してるから、お化粧もお任せで良いけれど、式までの毎日は自分でお化粧しないとね♪」
式まで一週間を切ると、外出の訓練もするようになった。
「こんにちわ♪」
と近所の人に笑顔で挨拶する。
「もうすぐお式ね。今が一番幸せな時期よね♪」
「はい。ありがとうございます。」
当たり障りなく応じ、ボロが出ないうちに離れておく。
なんとか俺が「美穂」本人でない事は隠し通していられたようだ。

近くのスーパーで食材を買ってきた。
「夕食を作るのが次の課題だ。」
と言われ渡されたレシピ本の通りに足りない食材を確認すると
「近くにスーパーがあるから、そこで買って来ると良い。」
と女物の財布と、財布を入れるポシェットが渡されたのだ。

買ってきた食材を台所に並べると
「これを着けた方が良い。」
とエプロンを渡された。
食材を切って、炒めて、味付けをして…
俺自身は料理などほとんどした事がないのだが、体が覚えているのかテキパキと調理を進めていた。
 

俺自身はロボットボディのため、食事を採る必要はないのだが、テーブルの上には二人分の料理が並んでいた。
どうしようかと悩んでいては料理が冷めてしまう。
「博士、できましたよ♪」と声を掛けた。
「そうか?」
と博士が食堂に現れた。そして、その後ろにもう一人…
「美穂…」
久しぶりの再会であった。
「頑張ってるようね♪」
と俺に声を掛け、博士の向かい側に座り、俺の作った料理を食べ始めた。
俺は彼らのの脇に立ち、空いた皿を下げ、お茶を用意したりしていた。
「正樹も大分馴れてきたようね♪料理も良くできていたわ。」
「ありがとうございます。」
俺は無意識のうちに頭を下げていた。
(な、何で俺が美穂に頭を下げなければならないんだ?)
と不満げに思う一方、美穂に誉められたことで幸せな気持ちになっている自分に戸惑っていた。
「美穂から見ても問題はないのだな?」
「ええパパ。十分に仕上がってるわね♪問題ないわ。」
「と、いう事だ正樹君♪」
突然話が俺に振られて、それまでの思考が強制的に中断された。
「間に合って良かったね。君達の結婚式は予定通りに催そう♪」
その言葉に目頭が熱くなり、視界がボヤけ始めた。
「正樹、大丈夫?」
と美穂が近づいてきた。
本来であれば美穂を見下ろせる身長の俺だが、今は美穂の姿をしたロボットボディだった。
何故か美穂の方が背が高く見えた。
「良かったね♪」
と頭を撫でられた途端、俺は美穂の胸に顔を埋め、女みたいに泣き崩れてしまっていた…

 

あしたの花嫁(3) 

「ちょっと変則的になるけど、正樹にもウェディングドレスを着てもらうから♪」
結婚式の当日に俺はそう宣言された。
確かにこの体ではタキシードなど似合う筈もない。
「実際、どっちにするか迷ってたのよね♪これなら〈あたし〉が両方着られることになるわ。」
と二つ並んだウェディングドレスの一方を俺に差し出した。
「ほら♪ぐずぐずしないで服を脱ぎなさいよ。係りの人が待ってるでしょ。」
と美穂はとっとと服を脱いでいった。
(彼女と同じ場所で着替えても良いものか?)
と考えている間にも、彼女は全裸になり、用意されていた純白の下着を身に着けてゆく。
「お手伝いしましょうか?」
と聞かれ
「大丈夫です。」
と美穂に続いて全裸になると、美穂と同じ純白の下着を身に着けた。
只でさえ女性の衣服に疎い俺である。
次々と出て来るものの名前など知る由もないが、ある程度は何に使うものかは想像ができた。
それに、美穂が俺より先に支度を進めてゆくので、彼女の通りにして行けば間違いはないようだ。

美穂と並んで髪の毛が結いあげられ、飾りが嵌め込まれる。
清楚で上品ではあるが、目や唇などのメリハリを付けた化粧が施される。
それなりの時間を掛けて豪奢なウェディングドレスに包まれた二人の花嫁が出来上がった。

式が始まるまでの時間を使い、二人の写真が撮られた。
写真屋など、詳細な事情を知らされていないスタッフは、花婿がいない事に怪訝に思っているようだ。
そんなスタッフに美穂は
「あたしたち双子で、昔から一緒に結婚式しようねって約束してたんです♪」
と言い、
「彼等は仕事でぎりぎりになるからって、別撮りしてます♪」
と応じ、納得させてしまっていた。

 

写真を終わると美穂は扉の向こう側に、俺は祭壇の手前で迎える位置に着いた。
司祭が
「式を始める前に…」
と参列者に語り掛けた。
「本日の新郎の正樹君は事故で身動きが取れない状態でした。しかし、新婦のお父上、佐江戸博士の尽力により仮の身体ですがこのように皆様の前に立つことができました。」
と俺が紹介された。
「まさか…」
と、このウェディングドレスの女が「俺」だとは思ってもいなかったのだろう。
いっ時、式場内がどよめいた。
「本来のお式とは若干逸脱する事があると思いますが、そのような事情ですのでご了承ください。」
と司祭が控え、式場のざわつきが鎮まるとパイプオルガンが前奏を奏で始めた。

(正樹、聞こえる?)
突然頭の中に美穂の声がした。
(言葉にしなくても大丈夫よ♪今日はイロイロと楽しみましょうね。)
楽しむ…って?

ふと視線を上げると、そこには木製の扉があった。
「おっ、正樹君かな?」
隣で博士の声がした。
「済まないが美穂の我儘に付き合ってくれ。」
その言葉の直後に扉が開かれた。

(さあ、花嫁さんの入場よ♪)
俺の前には祭壇に向かって白いバージンロードが敷かれていた。
(ロボットボディは三体あったでしょ?今、あたしもボディを使って様々な角度から結婚式を楽しみたいなって♪)
じゃあ、今君が祭壇の前に?
(いえ、変装して親族席から「あたし」の入場を見ているわ♪少し表情が固いわよ♪)
親族席を見ると、厚化粧の女性が手を振っていた。
たぶん、彼女が美穂なのだろう。では祭壇の前で立っている「俺」は?
(ある程度は自律して動く事はできるわ。特に決められた行動を繰り返すのは簡単ね♪)

「美穂をよろしくな♪」
と博士の腕が解かれ、目の前に進み出てきた「俺」に委ねる。
美穂は?と親族席を見ると少しぼーっとした表情になっていた。
(今のあたしはこっちよ♪)
と腕が引かれた。
崩し掛けたバランスを彼女が支えてくれた。
(これじゃあ、花婿と花嫁が反対ね♪)
不意に視点が変わる。
俺に寄り添うように立つ美穂…二人並ぶと参列者はどちらが本来の「花嫁」か判らなくなるんじゃないか?
(二人とも「花嫁」で良いんじゃないの♪)

 

司祭が俺たちに問いかけた。
彼にもどちらが本物ね美穂だか解らないに違いない。
「佐江戸美穂。あなたは生涯、ここにいる右京正樹を夫とし……を誓いますか?」
と俺に言ってきた。
(ほら♪今は貴女が美穂なのよ!!)
と隣から小突かれた。
「はい…誓います…」
と答えると、今度は美穂に向かい…
「右京正樹。あなたは…」と始めた。
その言葉が終わると
「はいっ!!誓います!!」
と美穂が堂々と答えていた。
(しばらくは貴女が美穂であたしが正樹ね♪)
と決められ、指輪も俺が美穂の指輪を嵌め、美穂が正樹の指輪を嵌めた。
そして互いに向き合う。
俺の方が少し膝を屈めるように言われる。
美穂は自らのベールを外すと、俺の顔の前にあるベールを開いた。
(さあ、誓いのキスよ♪)
俺は美穂からのキスを受ける側にいた。
男なのに女のように抱き締められている。
が、俺の心の奥には(サイコーに幸せ♪)と喜んでいる自分がいた。
美穂の唇が離れてゆくと同時に、再び視点が入れ替わった。
(しばらくは「あたし」をエスコートしといてね♪)
親族席の女が生気を取り戻していた。

 
「美穂」は満面に笑みを浮かべて、俺のエスコートに付いてくる。
参列者に混ざって、美穂がフラワーシャワーの準備をしていた。
「おめでとう♪」
の声の中、二人で階段を降りてゆく。
美穂の撒いた花びらが俺たちの前を舞っていた。
(次は難易度が高いかな?)
何?
(「美穂」が投げたプーケをあたしが貰うの♪勿論、投げるのは貴女の役目よ♪)
何か目一杯楽しんでるね。
(当然でしょ♪)
いつの間にか俺ね手にはブーケが持たされていた。
参列者に背を向ける…
(5時の方向ね)
一瞬、彼女の目で俺の後ろ姿を見た。
「せーのぉ!!」
俺が放り投げた途端、突風が吹き抜けた。
勿論、ブーケも流される。
その先でボーッと立っていた博士の手に、スッポリとブーケが収まっていた。
「えっ?」
と女の子達の視線に、ようやく事態を理解した博士は隣に立っていた小学生の女の子にホイと渡してしまった。
「ありがとう、おじさん♪」
と無邪気な笑顔に女の子達も毒気を抜かれてしまったようだ。

(まっ、良いか♪)
と変装したボディを博士に預け、美穂は「花嫁」のボディに戻ってきた。
「次はパパが花嫁になるって言うのも面白かったわね♪」
と俺達は教会を後にした。
「このボディで飲み食いしても面白くないから、披露宴はなしにしといたの。一旦屋敷に戻りましょう♪」
ウェディングドレスのまま、俺達は用意されていたリムジンに乗り、佐江戸の屋敷に戻っていった。

 

あしたの花嫁(4)

二体のロボットボディが筐体に戻された。
俺の使っているロボットボディはそのまま…ウェディングドレスは脱いで美穂の服に着替えていた。
一段落し、三人で夕食を囲んだ。
「俺の分も?」
「食べても毒にはならないよ。尤も栄養にもならないけどね♪」
「気分の問題よ♪今日はあたしと正樹が夫婦になった日だからね。」
「とりあえず、乾杯しよう♪」
博士の音頭でささやかな宴が始まった。

「今夜は家に居るんだろう?」
「ええ。式を挙げたことで一段落したからね。」
「美穂にはすごく迷惑掛けてしまったね。俺がこんな…にならなければ、もっと普通の結婚式ができたのに。」
「これはこれで楽しかったわ♪一度に三役ができたもの…新郎として誓いのキスをするなんて、なかなかできるものではないわね♪」
「俺も博士とバージンロードを歩くなんて思っても…」
「どうしたの?」
「何か、以前同じシーンを白昼夢に見たような気がした…」
「正樹君が花嫁になるのは運命だったのかな?」
「パパ?彼女は今はもう〈美穂〉よ。間違えないで♪」
「な、何だよ突然に?」
「貴女は神様の前で〈佐江戸美穂〉としてあたしの妻になる事を誓ったのでしょ?今日からはあたしが夫で貴女が妻よ♪」
「はは~ん♪さては家事を全て正樹君に押し付ける気だな?」
「そ、そんなコトな…ぃ…」
「良いですよ、家事くらい。この体では俺が働きに出る事はできないのでしょ?元の肉体が回復するまでは家事一切を引き受けますよ。」

 

 
「…で、初夜…なのよね♪」
俺達はキングサイズのベッドの前に立っていた。
既に服は脱がされ、二人とも全裸である。
「美穂…」
俺は彼女を抱き締め、ベッドに押し倒そうとしたが、以前のような体格差がないので要領を得ない。
「やはりロボットはご主人様の命令に従うものじゃないかしら?」
「ご主人様?」
「妻は夫に従うものって言った方が良いかしら?」
「誰が妻だよ…っあん♪」
俺の抗議は一切届かず、俺は美穂に押し倒されてしまった。
(それに、っあん♪て女みたいな声を出して…)
「貴女はハジメテでしょうけど、あたしはこの肉体を熟知してるのよ。悪いようにはしないわ。全てあたしに任せて♪」
「しかし、俺の立場は…」
「貴女はあたしの妻の美穂。結婚したての新妻。初夜…貴女は初めてオンナとして抱かれるの♪」
頭の奥で「カチリ」と何かのスイッチが入ったような気がした。
その途端、俺は何も考えられなくなっていた…

 
「んあん♪何かクる。これがイクって事なの?ああーん、イクゥ…イッちゃう~~!!」
俺は美穂の責めに耐えきれず、あっと言う間に昇天させられてしまった。
「気持ち良いでしょ?夜は長いわ。まだ何度でもイかせてあげるわ。男と違って打ち止めなんてないからね♪」
再び彼女の指で股間を弄られると、さっきとはまた違った快感が込み上げてくる…
「いひゃっ!!それ以上はダメ!!」
口では拒絶しようとするが、身体は快感を追い求めるように美穂の動きに服従してしまう。
やがて…
「んあん、あああ~~ん♪」
オンナの嬌声を止めることもできずに喚き散らしている。
快感に支配され、再び昇り詰めてゆく。
「貴女はこの快感の虜になるの。でも、貴女はあたしの妻なのだから、いつでもこの快感に浸ることができるの♪」
「いつでも?妻だから?」
「この快感は手放したくないでしょ?」
「はい…」
「なら、認めることね♪言ってご覧なさい〈あたしは美穂。あなたの妻です。〉って♪」
お…あたしは…
そう…あたしは神様の前で誓ったじゃない。
そう…あたしは今日からこの人の「妻」なのだ。
「はい。あたしは美穂。あなたの妻です♪」
「良く言えました。忘れないでね♪」

あたしは再び歓喜の渦に巻き込まれていった…

 

最強を目指して…(1)

そこは「俺」の世界だった。
俺こそが最強で無敵の覇者であった。
戯れでピンチな状況を作ったとしても、最後には逆転してしまう定めだった。
俺を負かす奴は、この世界に一人として、一匹として存在する事はなかった。

 

「つまらん!!」
声に出したが、余計に虚しくなってしまった。
勢いのまま、「勇者」として全ての「魔王」を討ち尽くしてしまった。
気が付くと戦う相手がいなくなっていた。
それならば…と、俺自身が「魔王」となり「勇者」と対峙した。
が、次第に挑戦してくる「勇者」もいなくなってしまった。
様々な偽情報をリークして「勇者」を誘き寄せてはみたが、そんな情報に乗ってくる「勇者」はどれもが二流以下でしかなかった。

戦いのない時間は、美女をはべらせ、酒池肉林の宴としたが、これもいい加減飽きてきた。
「刺激が欲しい!!」
と叫んでも「魔王」の肉体には銃弾・ミサイルを打ち込んでも、素肌に蚊が止まった程の刺激も与える事はできない。
肉体がだめなら精神的な刺激を試してみたが、舞いも謡いも見飽きた、聞き飽きた。
勿論、SEXにも飽きてしまっている。
「何とかならんのか?」
とサポートAIに問いかけた。

いつもであれば
「現在のランクがマックスです。これ以上はありません。」
と返ってくるのだが…
「イレギュラーな事象が確認されています。それを適用すれば…」
「何でも良い。即に適用しろ!!」
「しかし、詳細の説…」
「〈即に〉と言っただろ?」
「っあ、はい!!」

 

 
そして、俺は目の前の動かない「俺」を見ていた。
「この魔王は眠りに就きました。アナタが再びクラスを回復し魔王との戦いを望む時、魔王は目覚めます。」
「つまり、俺が俺自身と戦う事になるのか?」
そう言った自分の「声」に違和感を感じた。
それは、録音された自分の声に違和感を感じるのとは全く別次元のものである。
その声は、まるで女の声のように甲高かった。
「AI!!」
「はい?」
「どういう事だ?」
「と申されるのは?」
「何で俺が〈女〉になってるんだ?ルールではリアルの性別を使用し、顔には面影を残すように決められていただろう?」
「そこが今回のイレギュラーの所以です。アバタの容姿は随時変更が可能ですが、2体のアバタを保有する事はできません。」
「しかし、この〈魔王〉も俺なのだろう?」
「はい、アバタを残したまま、別の性別でログインした場合、2体目のアバタが作成可能となるのです。その肉体、お気に召しませんか?」
「気に入る…とかの以前にまだ頭が混乱している。女になるとは思ってもいなかったんでな…」
「一応AIから忠告しておきます。その可愛い姿で男言葉を使われますと怪しまれます。少なくともご自身の事はわたし…譲歩してもボクまでです。」
「俺…あたし…か?結構キツいものがあるぞ。で、プロファイルは…」
あたし…否、俺は絶句するしかなかった。
レベルを始め、所持品その他諸々が、新参者の設定値になっていたのだ。
「これまで俺が築き上げてきたものが無に帰してしまっている…」
「それは仕方ありませんね。こればかりは魔王の肉体から切り出せるものではないので…」
剣の一本でも貰っていきたかったが、今のレベルでは所有することもできなかったのだ。
「貴女にはこれまで培ってきた経験…ノウハウがあります。有効に活用して、一日も早くこの場所に来られる日をお待ちしております。」

 

 

荒野に放り出された俺は、途方に暮れ…ている暇はなかった。
手頃な獲物かと思ってか、鬼蜥蜴が近付いてくるのが見えた。
俺は鬼蜥蜴の習性を思いだし、風下にならないよう移動を始めた。
移動速度をランダムに変える事で、鬼蜥蜴は俺…あたしの位置を見失っていた。
横から襲い掛かり、首を押さえ込む。
踵で鬼蜥蜴の四肢を踏み潰して動けないようにしてから、手を放す。
「せーの♪」
あたしは高く飛び上がると、両足の踵で鬼蜥蜴の頭を踏み潰した。
WINという文字と褒賞金の額が空中に表示された。
こんな端金などしばらく見たことがなかったが、今では1クレジットでも大金なのだ。
その後、もう一匹鬼蜥蜴を仕留め、スライムを十数体やっつけて、近くの村に転がり込んだ。

 
一晩寝て体力を回復する。
朝起きると手持ちのお金を数え、武器屋に向かった。
防具はともかく、武器を持たずに素手だけでポイントを稼ぐのは効率が悪過ぎる。少なくとも剣は必須だ!!

 
「…って、コレは玩具か?」
「お嬢ちゃんの扱えるのだとね♪魔法の杖ならバリエーションは豊富なんだが…」
店主がチラリと見た先に並んでいたのは、武器屋の奥に設えられた店主の個人スペースなのだろう。
魔法少女の変身アイテムや武器らしきアイテムが並んでいた。
「え、遠慮しておく…」
と、華美な装飾の施された細剣を手にした。
だが、予想に反して舞踊用の竹光ではないずっしりとした刀身の重みを感じた。
抜けば、研ぎ込まれた刀身が現れる。
「こんな成りだが、そうそう刃こぼれすることはないね♪」
自慢げに店主が言い放った。
「試し切りはできるか?」
と聞くと、裏庭を教えてきた。

 
確かに今の体力では、これより大きな剣は扱えないのがわかる。
それ以上に、この剣はあたしの身体と一体となってくれた。
武器屋を後にし、そのまま荒野に出た。
鬼蜥蜴も簡単に頭から真っ二つになる。
スライムも邪魔するやつだけ斬り払うだけにし、もっと上級の獲物を探しだし、斬り倒していった。

陽が傾き、一日を終える頃にはそれなりに褒賞金が貯まっていた。
明日はこれで防具を揃えようか…と村に戻っていった。

 

「また、あんたか…」
武器屋の隣に服屋があった。
てっきり別の店だと思っていたら、現れた店主は昨日の武器屋の店主だった。
「ドレスでも仕立てるかい?」
という店主も、あたしの殺気を込めた視線に考えを改めた。
「防具…ですよね?嬢ちゃんのサイズだと…」
再び奥の部屋に目を向けた。
そこにはひらひらの魔法少女風のコスチュームが並んでいる。
「マジックアイテムで如何に防御力がしっかりしていると言っても、アレは無しだぞ。」
と念を押しておく。
「とは言え、女性用の防具はデザイン重視なので…嬢ちゃんに合うのはコレしかないな♪」
流石にスカートではないが、大腿を露出させるショートパンツだ。
この上に、胸当て兼用と思われるブラジャーに丈の短いジャケットの組み合わせだ。
当然だが、臍はまる見え。腹周りは完全に無防備状態だ。
「一応、防御魔法が掛かっているが、衝撃を和らげるくらいで、過信はしない方が良いよ♪」
と忠告されるが、それを補う方法なりアイテムなりないのか?
そもそも、コレ以外の選択肢(魔法少女のコスを除く)がない事自体、作為を感じる。
「…で、この値段かよ!!」
提示された額は、昨日稼いだ有り金の殆どを注ぎ込む事になる。
マント位は買い足しできるかと思っていたが、あてが外れてしまった。
(その分はこの後稼ぎ出せば良いのだ♪)
と気を取り直し、今日も店を後にした。

最強を目指して…(2) 

剣を手に入れ、名ばかりかも知れないが「防具」に身を包んだあたしは、貯えの少ない事もあり、ダンジョンに挑んでみる事にした。
あたし(このアバタ)のスキルは今だ大した事もないし、防具の性能は予想もできないでいる。
こんな状態で挑めるダンジョンは初心者クラスとなるのも納得しなければならないのだろう。
遥か昔の記憶を頼りに初級ダンジョンの攻略手順を復習いながら、店で聞いたいくつかの候補のひとつに辿りついた。
「では、小手調べといきましょうか♪」
とあたしは闇の中を下層へと降りて行った。
電撃がメインの雷蝙蝠は集団で来ても簡単に斬り捨てられた。
地面に影響を与えこちらの動きを制限する沼土竜も、剣が届く距離まで近づけば瞬殺である。
またたく間に最下層に辿りついていた。

ご多分に漏れず、ラスボスが宝箱の前に立ちはだかっていた。
蛸のような10本近くの足を振り回す怪物だった。
目前の足に気を取られていると、思わぬ方向から別の足が飛んでくる。
「はうっ!!」
勢い余り、壁に打ち付けられた。
服に施された防御魔法のお陰で、肉体的ダメージはなかったが、こんな事を繰り返してる訳にもいかない。
「てぃやっ!!」
あたしは思いきり怪物の懐に飛び込んでいった。

が…

本体の手前で手足を絡み取られてしまった。
(身動きが取れない…)
魔法防御は打撃には対抗できても、絡み付いてくるものまでは阻止できなかった。
(?)
奴の足の一本が、あたしの拘束から外れていた。
その先端をあたしに見せつける。
その一本だけは、他の足とは違う形状をしていた。
見るからに、それは男性器=ペニスの形にそっくりだった。
鈴状の先端がテラテラと輝いている。
透明な液体を滴らせながら、あたしの口に潜り込もうとしていた。
首を振って逃れる事もできない。
堅く閉じた口に猛烈な圧力が掛かる。
堪えきれずにそいつの侵入を許してしまう。
当然のように、歯を立てても歯形さえ付かない程硬い肉棒である。
それが、あたしの喉を手前から奥まで蹂躙してゆく。
鈴状の先端が喉の壁に擦られ、圧迫されると、更に液体を垂らしてゆく。
そして、ある程度喉の奥が開いたとみると…
ドクリ♪
と粘液質の物体が喉の奥に送り込まれた。
それが胃に到達すると同時に、あたしの肉体は熱を帯びた。
頭がボーっとし、汗をかいてゆく。
汗だけではない。
下半身の奥が熱くなり、その熱気が股間に吹き出してゆく。
汗と汗以外のもので湿度が上がり、ショーツに水分が付着してゆく。
やがてそれはショートパンツの股間にも滲みでている感じがした。

「あつっ!!」
強烈な刺激に意識が戻る。
口の中を蹂躙した足は、あたしの胸を責めたてていた。
先端が二つに割れ、器用に乳首を摘まみあげている。
飲まされたモノの所為か、痛みが快感に変換されてしまう。
快感にビクビクと肉体が痺れ、その度に股間から液体が迸ってゆく。

あたしがイキ過ぎてぐったりしていると、奴は足を胸から移動させてゆく。
濡れた先端を肌から離さないように、体液で筋を作るように、ツーッと下に向かって擦り下ろしていった。
胸の谷間から胃の上を通り、臍の上でひと捻りした後、ショートパンツの端に到達した。
腹の隙間から侵入してくる…
「っあ。イヤッ!!」
あたしは女の子のように叫んでいた。
その先に何があり、奴が何をしようとしているのかが解る。
自らも触れた事のない、ソノ場所さえも蹂躙されようとしている。
が、あたしの四肢は力を失っていた。
そう。今のあたしは奴にされるがままでいるしかないのだ。

先端が下腹部を回り込み、縦筋の上に這うように留まっていた。
そして、圧力を掛けるように濡れそぼった割れ目に沈み込んでくる。
膣口の肉襞に触れる…

 
ビクッ!!

 
あたしの身体の中を電撃が走り抜けていった。
と同時に奴が動きを止めている。
全身が小刻みに震えている。
あたしが感じたものの数十倍の電撃が奴を襲ったみたい…

電撃はあたしに力を取り戻させていた。
絡み付く奴の足を振りほどき、床に落ちていた剣を拾いあげる。
「はぁぁぁあ!!」
そのままの勢いで怪物の胴を両断し、剣を振りかぶると真っ二つに斬り割いていた。

…何故か、宝箱の中にはドレスと女性用の下着が入っていた。
怪物を退治した興奮が去ると、怪物に刺激された身体の芯の疼きが蘇る。
意思の力で抑え込むが、濡れきった下半身の不快感には耐えきれなかった。
ショートパンツとショーツを脱ぎ、宝箱に入っていた白のショーツを手にした。
絹のような肌触り、複雑に編み込まれた紋様、華美過ぎず上品に仕上がったショーツは相当に高価なものであろう。
下着は換えたが、この上に再び濡れたショートパンツを穿く訳にもいかない。
かといってパンツ丸出しで歩き回るのも問題である。
解決案は…そこにあるドレスを着れば下半身を隠すことができる。
とは言え、村まで戻るまでに戦いが起きない保証はない
上半身だけでも防具を着けていたかった。
折角のドレスだが、今は見映えなど気にしていられない。
胸当ての上からドレスを被り、その上にジャケットを着込む…
珍妙なスタイルではあるが、防具がなければいくらドレスがあるとはいえ、丸裸で放り出された気分になるだろう。

剣を手に地上に向かった。
ダンジョンの中では攻撃される事はなかったが、荒野にでるとスライムや鬼蜥蜴が彷徨いている。
偶然に出くわした場合、スライムであれば逃げ切る事もできるが、鬼蜥蜴の攻撃は受けるしかない。
返り血でドレスが汚れるのも仕方ないか…と足早に村に戻っていった。


村には剣を振るう事なく辿り着き、宿で一息ついたが日没まではまだ時間があった。
(少しは村の中を歩いてみるか♪)
と思い立ち、自分の姿を確認する。
(村の中では剣や防具は要らないよね♪)
あたしは胸当てを外し、ダンジョンの宝箱にあったショーツとセットのブラを着けた。
(いつもより胸が大きく見える?)
実際、このブラでドレスを着直すと、美しいラインが現れたのだ♪
「これが あ・た・し?」
鏡の中には、それが自分であるとは思えないくらい「お姫様」した女性が映っていた。

この姿を他人に晒すことに、一瞬躊躇いはあったが、宿を出ていった。
「お姉ちゃん♪ちょっと寄っていかない?」
恰幅の良い中年女性に呼び止められた。
そこは丁度、武器屋の向かい側だった。
「もしかして、向かいの…」
「あっちは亭主の店ね♪あっちのお得意さんなら悪いようにはしないわよ。」
腕を引かれて店に入った。
「…薬屋?」
「毒消し、精力剤…媚薬、惚れ薬も置いてあるわ。でもね、今の貴女に必要なのはこっちね♪」
と、店の奥にそこだけ雰囲気の違う場所があった。

鏡の前に座らされた。髪の毛に霧吹きが掛けられる。
ブラシを当てられる度に髪が伸びてゆく。
「魔法?」
「そうよ♪女の子は髪が長い方が良いのよ。いろいろとアレンジできるでしょ?」
「しかし、戦うには邪魔よ。必要ないわ。」
「そうは言わずに、一度髪を結い、ちゃんとお化粧してご覧なさい。考えが変わるわよ♪」
「け、化粧もするのか?」
あたしは彼女の手の中から逃れようとした。
「?」
身体が動かない?
「亭主の店のお客なら、じっとしていてくれそうもないのでね。霧吹きの中に痺れ薬も混ぜておいたの。既に全身に廻ってる頃でしょ?」
「な、何をする気?」
「言ったでしょ?貴女にお化粧して、もっと可愛くさせてあげるの。女の子の快感をじっくりと教えてあげるわ♪」
「か…勝手にしろ!!」
既に手足が動かせない状態で何ができるのか…少なくとも彼女があたしに危害を加えることは無さそうだった。

腰まで伸びた髪に鋏を入れながら結い上げてゆく。
飾りの付いた髪止めを効果的に配してゆく。
あたしの髪は、本当に「お姫様」のように結い上げられていた。

その次にはお化粧…下地とかいって様々な薬品が顔から首筋に満遍なく塗り込められた。
合間に産毛を剃られ、眉毛を細くされ、首筋も綺麗に剃り上げられていた。
「余計な毛は生えて来ないようにしておきますね♪」
とまた別の薬液が塗られていった。
その上に皿に肌を白く見せる粉を叩き込み、影や頬の赤みを刷毛で描き込んでいった。
特に目の周りは念入りに描かれる。
眉毛は細く整えられ、睫毛が長く、濃くなり、更に極細の筆で目の縁が黒く描かれた。
(…)
あたしは何も言えなかった。
鏡の中に、極上の美女が現れていた。
「これが、あ・た・し?」
「女の顔は化粧ひとつでいくらでも変えることができるのよ♪清純な少女、淫蕩な娼婦、知的な女史、慈愛に満ちた母の顔…」
「そ、それに何の意味があるって言うの?」
「貴女もその顔に見とれてたでしょ?美しさを追い求めるのは理屈じゃないわ。強いて言えは、より良い男を捕まえるためかしらね♪」
「男?」
「女は子を産み、乳を与えて育てるものよ。より良い子孫を残すには〈種〉を選ばなくちゃね♪」

 

あたしの頭は思考停止寸前だった。
「男」だったあたしが男に抱かれて子供を産む?
これまで一片の想像さえした事のない事象である…

「おこぼのあんたにゃ雲の上の話かも知れないが、それが現実なのよ。そうね♪〈男〉を知れば即に解るわ。」
と言うと、女将は店の奥に声を掛けた。
「はい。マダム♪」
若い男の声で返事があった。
(どきっ♪)
続いて現れた男の顔を見て、何故か胸がときめいた。
精悍な顔立ち、均整の取れた肉体、優しそうな雰囲気…
その声とともにあたしの中の「女」が反応したとでもいうの?
「彼女をベッドに運んであげて頂戴♪」
女将の指示に「はい」と答え、あたしの脇の下と膝の裏に腕を差し込んで抱えあげた。
(こんな格好で抱えられるなど…)
あたしは自分が「女」であることを次々と再確認させられてゆく。
そして、痺れ薬で身動きが取れないことも忘れ(彼になら…)と抵抗する事も忘れている自分がそこにいた。

ベッドに運ばれた。
ベッドの端に座らされる。
男の顔が近づいたと思うと、濃厚なキスをされた。
口が塞がれ、頭の中がボーっとしてゆく。
彼の手があたしのドレスを脱がせてゆく。
ブラが外され、彼の掌があたしの胸を揉みあげてゆく…
「ぁ…ああっ♪」
オンナの喘ぎ声があたしの口から落ちていった。

ベッドに横たえられる。
ショーツも脱がされ、あたしは彼の前に全裸を晒していた。
恥ずかしさより、もっと彼に見てもらいたかった。
あたしの肉体で彼に興奮してもらいたかった。
あたしに欲情し、あたしを抱いて、あたしの中に彼の分身を…
(あたしは何を考えているの?)
女将の言った「より良い子孫の〈種〉を選ぶ」という言葉が暗示のようにあたしを支配しているような気になる。
彼なら申し分ない♪
あたしは彼を受け入れる気になっていた。

いつの間にか彼も服を脱ぎ去っていた。
その股間は雄々しく勃起していた。
(欲しい♪)
あたしの中のオンナが声をあげる。
股間が緩み、愛液が垂れてゆく。
「怖がらないで。身体から力を抜くと良い♪」
彼が伸し掛かってくる。
両脚を押し開くようにして股間に割り込んでくる。
「感じ易いんだね♪」
あたしの股間が十分に濡れているのを確認した。
先端が入り口に触れていた。
そのまま、ぬっ、と入り込んでくる。
更に奥まで…
その先端が壁に当たる。
「どうだい?」
あたしは首を軽く左右に振った。
痛みはなかった。
満たされるような快感はあるが、嬌声をあげるような強烈な快感には程遠い。
「じゃあ、動かすね♪」
彼が腰を引いた途端
「んあっ!!」
快感が沸き起こった。
膣内の肉襞が擦れ、その刺激が快感となって全身を駆け巡ってゆく。
抜けそうになるまで引いて、再び押し入ってくる。
「あああっ!!」
膣内の鋭敏な箇所が突かれ、叫び声があがる。
彼の尖端にソコを突かれる度に、あたしは快感に叫び、喚き続けた。
そして…
「さあ、行くよ♪」
彼が最期のひと突きをする。
どくり…
彼の内から送り込まれてくるものがあった。
「あ…あああ…」
それはあたしの膣を満たし、子宮の中にも入り込んできた♪
あたしには、突き上げてくる快感を受けきれそうもなかった。
「あ、あ、ああ~~~!!」
あたしは叫び声とともに意識を失っていた…

 

 

ベッドの上で目覚めた。
元通りドレスが着せられていた。
痺れ薬の効果は切れているようで、自分の肉体を自由に動かす事ができた。

立ち上がり、鏡の前に進んだ。
美しく化粧を施された〈あたし〉の顔が写っていた。
寝乱れた筈の髪も、女将に結いあげられた通りになっていた。
あたしが男に抱かれたことが白昼夢だったかのようだ。

「起きたかい?」
女将が現れた。
「良い顔になってるよ♪欲しくなったらいつでもおいでなさい。」
と店を後にした。

宿に戻るまでの短い間にも、何人もの男から声を掛けられた。
が、彼を基準に考えると、あたしを満足させてくれそうなのは一人もいなかった。
宿に戻ると、あたしは即に服を脱ぎ、全裸になってベッドに上がった。
「彼」を思い出しながら股間に指を這わした。
既に股間は潤み始めていて、あたしの指は何事もなくその谷間に呑み込まれていった…

 
朝には濡れていたショーツも乾いていた。
「男」を漁り、昨日のような快楽に浸っていたい誘惑を振り切るように防具を着け、剣を手にした。
「あたしが目指すのは魔王のダンジョン。そして魔王を目覚めさせてヤルのよ♪」

最強を目指して…(3) 

「おや?貴女でしたか♪」
久しぶりにAIの声を聞いた。
あたしの目の前には動かない〈魔王〉の肉体があった。
あたしはようやくココまで来たのだ。
この〈魔王〉と対峙するために、あたしは今まで以上にスキルを積み重ね、最上位のレベルに再び戻ってきた…否、それ以上のスキルさえ上乗せされている。

ただ、あたしが戦ってきた魔王達は勇者だった時の〈魔王〉に全滅させられた以降に魔王となった者ばかりである。
故にあたしもまた魔王となり各地の勇者に挑み、これを倒してレベルを極めてきた。

そして今、あたしは〈魔王〉の前に立った。
「AI!!何故彼は目覚めない?」
あたしはAIを呼んだ。
「ここまで来たあたしでも、まだ相手にはできないという事か?」
「一意的な〈戦い〉という事でしたら、絶望的ですね。」
「今のあたしに何が足らないというのだ?」
「足らないと言うよりは、あまりにも〈魔王〉に近づき過ぎましたね。魔王は勇者と戦います。魔王同士で戦うことはありません。」
「…なっ!!何という…」
あたしはその場に膝を突いてしまっていた。
「あたしのしてきた事は全て無駄だったと言う事か?」
「いえ。貴女にはもう一つの戦い方があります。〈魔王〉と同等のレベルに達した貴女だからできる戦い方が♪」

 

あたしはAIの助言に従い、防具を始め一切のモノを外して全裸となった。
そして動かない〈魔王〉の懐に入り込む。
彼のズボンの中から「彼自身」を導き出し、あたしは指で、舌で、口で…これまで培ってきた性技を注ぎ込んだ。
(ピクリ)
と彼が反応した。
更に刺激を加えてゆく。
ソレは思っていた以上に大きく、硬くなっていった。
「如何です?ご自身の逸物をそのような形で弄ぶのは♪」
自分の?
あたしはAIの言葉に虚を突かれた。
そう…コレはあたしの…俺のペニスなのだ!!
俺は俺自身のペニスを咥えて悦んでいるのか?

ゆっくりと「俺」が動き始めた。
瞼を開けると、そこに全裸の「あたし」がいた。
そう…あたしは〈魔王〉と戦いに来たのだ!!
が、今のあたしは全裸…剣も防具もない…単純な力だけでは〈魔王〉に敵う筈もない…
「貴女が獲得したスキルはそんなものでしかなかったのですか?」
AIの言葉…スキル?!…あたしが獲得した〈魔王〉には存在しえないスキルがあるではないか!!

あたしは〈魔王〉を見つめた…チャーム…蠱惑な視線で彼の瞳を貫く。
(ビクンッ!!)
彼ではなくあたしの肉体が反応していた。
彼の醜悪な顔が、あたしのハジメテの男よりも数十倍に素敵に見えた。
(チャームが返された?)
あたしの心臓がドキドキしている。
気を紛らすように、あたしは彼のペニスを刺激する事に集中した。
次第に下半身が熱くなる。
溜まっていたモノを爆散させたくて仕方なくなる。
俺の股間を絶妙に刺激してくる技には耐えられそうもなかった…

あたしにはその瞬間が判ってしまった。
あたしの選択肢は二つ…受け入れるか、受け入れないか…
あたしはその瞬間、喉の奥を開き、吐き出された彼の精液の全てを飲み込んでいた…

 

 

「あたし」は「俺」であり、「俺」は「あたし」だった。
覚醒した俺は「女」の俺を抱き締めていた。
大量の精液に酔い痴れていたあたしは、愛しくてたまらない「男」のあたしに抱き締められていた。
言葉は要らなかった。
そのまま床の上に背を付け、股間を広げてゆく…
ゆっくりと伸し掛かるようにもう一人の「俺」に被さってゆく…
屹立した「俺」が「俺」のナカに入ってゆく。
「俺」達は再び「ひとつ」になった♪

「あん♪ああ~~ん!!」
オンナの嬌声がダンジョンに響き渡る。

俺の感じる所をあたしが的確に突きあげてゆく。
俺はあたしのペニスを締め上げ、快感を与え続ける。
俺の指はあたしの全身をくまなく刺激し、あたしは俺に見せつけるように妖しく肢体を悶えさせる…

いつ果てるとも知らない狂宴がダンジョンの奥底で続いていた♪

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