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2016年7月11日 (月)

卵狩り

竜が空を過った。

大空を翔んでゆく竜の姿を見て、その背に跨がって自らも空を翔んでみたいと思うのは、子供ばかりではなかった。
真剣に竜を手なづけようとする輩。そいつらに孵化間近の竜の卵を高額で供給する輩。その報酬の高さに命を賭けて竜の卵を略奪しようとする輩…
竜の棲む山の近くでは、大人の汚れた思惑が混沌とした街がいくつもあった。

しかし、今もって竜の背に乗った人間は存在しない。
「彼女」達を「人間」と認めない限りは…

 

そう。ごく稀に竜の背中に人影が確認される事がある。
産卵を控えた雌竜が借り腹となる人間を連れてくる。
竜の卵は成竜からは考えられないくらい脆弱なため、人間の胎内に産み落とし、人間の血肉を養分として卵殻を強化するのだ。
勿論、借り腹の人間に逃げられては困るので、卵を抱いた人間は雄竜の背中に固定される。
そんな状態の竜はめったに棲みかを離れないが、稀に翔んでいる姿が目撃されることがあった。

雄竜の背中には人間を固定し、かつ人間を生かすために養分を供給する接続器官が存在した。
胎内に竜の卵を抱えた人間は、当然自ら飲食することはできない。雄竜から養分を得ることで行き長らえることができるのだ。
が、単に養分だけでは逃げられると思ったのか、養分の他にも雄竜は麻薬のようなものも与え常に背中の人間を快楽の中に置いておく。
彼女達は正常な思考を阻害される。彼女達は竜の背で性的な快感に満たされたような表情を浮かべ続けるのだ。

孵化の直前に雄竜の背中から下ろされ、股間から成長した卵を産み落とす。
孵化した竜は、目の前で放心状態でいる女を、初餌として食する。
彼女達はもう、この先がない。だから、竜に捕らわれた時点で、彼女達は人間と見なされることがなくなる。
ごく稀な例外を除いては…

 

 

竜の卵を奪うのは、竜が背中から女を降ろした時だ。
女が卵を産み落とすまでには個人差はあるものの、2~3日は掛かる。
隙を窺い、女を奪い去るのだ。
勿論、放心状態の女を連れて街まで行ける筈もない。
適当な場所で女の腹から卵を取り出し、女は捨て置かれる。

そうして、女はのたれ死ぬ事になるのだが、稀に意識を回復し生き延びる女がいる。
女の持つ知識と偶然が重なる場合に限られるが…

 
そんな女は多くを語らない。
そう…俺のように…

 

 

 
俺は幾度となく、竜の卵を略奪してきた。
が、そうそう成功が続くものではなかった。
雄竜の隙を窺っている間にも、孵化の兆候が現れてきた。
ここまで育ってしまうと、街に着く前に孵化してしまう。当然、売り物になる訳もなく、最悪、俺自身が初餌にされてしまう。
気付かれぬよう撤退を始めたのだが…

気が付くと雌竜に退路を断たれていた。
背後では、生まれたばかりの子竜が初餌にありつく音がしている。
俺もあの女同じように雌竜の餌となるのだろうか?
俺は指一本動かす事ができなくなっていた。
背後に雄竜が近づく気配がしたが、到底振り向く事などできない。

雌竜の口から泡状のものが吹き付けられた。石鹸のような匂いがし、体を洗われるような感じがした。
が、洗い流されたのは垢や埃ではなく、俺が着ていた衣服だった。丸裸にされ、指輪も溶け落ちていた。
雌竜の顔が近づき、細長い舌が伸びてくる。
ペロリと俺の前面を舐めあげると、今度は自らの股間に顔を埋めた。
再び現れた雌竜の舌先には、白い粒状のモノが付いていた。
雌竜の舌が、俺に…俺の股間に迫ってきた。
(この白い粒は竜の卵か?)
まさか…とは思った。
借り腹にされるのは「女」なのだ。男の俺に卵を抱かせる事はできないと…
だが、雌竜は俺の意思など構うことなく、股間に舌先を圧し付けてくる。
当然、そこには女には存在する胎への入り口は存在しない。
だが、雌竜は執拗に膣口を探す。
身動きの取れない俺は、何もできない。

…ぬっ!!

雌竜の舌が俺の腹の中に侵入した。
肛門である。
直腸の奥に置いてきたのだろう。抜き取られた舌の先には白い粒は見当たらなかった。

そして、俺は雄竜の背中に乗せられた。
接続器官が俺を貫き俺を固定した。
養分と麻薬が俺を満たしてゆく…俺は男とのSEXで快感に墜ちた女と同じ顔をしていた。

 

 

養分は定期的に与えられるようだ。
俺はそのインターバルに意識を取り戻すようになった。
慌てて逃げようとしてもどうにかなるものでもない。そして即に養分と麻薬に犯され意識を飛ばしてしまうのだ。
が、俺の肉体が特別なのか、次第に麻薬への耐性が付き、常に意識を保てるようになった。
しかし、それは残酷な現実を認識せざるをえない事でもあった。
俺の腹の中で卵は順調に育っていた。
俺の腹は妊婦のように膨らんでいった。そして、腹が膨らむとともに、俺の胸では乳房も膨らんでいった。
更に調べると、股間からはペニスが失われているのがわかった。
いつの間にか髪も腰まで延び、俺の姿は女にしか見えなくなっていた。
(もし、これが俺だけの特異な事象でないとしたら…)
俺は脳裏に、これまで卵を奪い放置してきた女、奪えずに子竜の初餌にされた女、そんな女達の姿が浮かんだ。
(その内の何人かは俺と同じに「男」だった女もいたかも知れない…)
だが、今それを知ってどうにかなるものでもないだろう。
俺の腹は着実に膨らんでいった。

 
やがて孵化する兆候があった。
雄竜の背から降ろされれば自由が効く…とはいえ、腹には卵を抱えていては「自由」にも制限が付く。
だが、俺はこれまでにも何度も女の腹から卵を取り出してきたのだ。俺自身の腹からでも問題はない筈だ…

時を経ずして、俺は雄竜の背から下ろされた。
隙をみて雄竜の死角に回り込む。逃げるのではない。隠れるだけだ。
雄竜は俺を…卵を探し始める。俺に逃げられたかと捜索範囲を広げる。
雄竜が離れたところで、俺は腹の中から卵を取り出した。
…これを売ればいくらになるか?
そんな考えが頭を過るが、今の俺に卵を運ぶ力はないのだ!!
雄竜から与えられた養分だけで生き長らえた…さらに、肉体は「女」になっている。
筋力が落ちているところに、肉体のバランスもこれまでとは違う。真っ当に身体を動かせるかさえ疑問が残るのだ。

俺は卵を残し、その場を離れた。
木陰や岩陰に隠れながら距離を取ってゆく。
時々、柔らかな草を口に入れて空腹をまぎらす。樹液を啜って渇きを癒す。
素足はぼろぼろで歩く事さえままならない。
…が、竜の棲みかからは十分に離れられた。人里も近い。
猟犬の吠え声を聞いた。
「た、助けて…」
俺は自分の耳に届いた声が「女」の声になっている事にようやく気づいていた。

 

 

街には様々な者がいる。
成功した者、失敗した者…そして、成功を夢見るもの…
竜の卵は高額で取引される。
一攫千金を夢みて卵の略奪に挑戦しようとする者は後を絶たない。
俺は、そんな若者を見ると堪らなくなる。
雄竜の麻薬の影響か、血気盛んな若者を見ると腹の奥が熱くなる…「雄の養分」に餓えてくるのだ…
「あんた、竜の卵を狙ってるんだろ?ゲン担ぎにお姉さんと寝ないかい♪」
俺は若者に声を掛ける。
そのままベッドに押し倒し、若者を硬くさせると、卵を産み落とした穴に導いてゆく。
自分では経験がないが、俺と交わった男達はコレを名器だと評する。
「んあっ!!凄いっ♪一気にイッちゃう~!!」
女のように喘いで、若者は俺の膣に精を吐き出した。
「まだよ♪若いんでしょ?どんどんイくわよ!!」
俺は更に若者のペニスを搾りあげてゆく…
「はぁ…、もう無理ですよ…」
若者は俺の下で息絶え絶えとなっていた。
俺の餓えは充分にまでは満たされなかったが、これ以上は無理と若者を解放した。
しかし、これでしばらくは「餓え」を凌げる…そう、こんな身体になった俺はもう「人間」ではない。

俺は聞く
「もし乗れるなら、竜の背に乗って飛びたいと思うか?」
(そう、お前のこれまでの人生を全て捨ててでも♪)

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