« 棒 | トップページ | ライセンス »

2016年7月11日 (月)

同窓会


(彼女、誰だっけ?)
久しぶりに参加した同窓会。
男どもは頭が薄くなったり、白くなったりはしていても、昔と変わりはない。
しかし、化粧っ気のなかった女の子は、見事に誰だか解らない。…とはいえ、面影は残っているので、旧姓を聞けば何とか結び付ける事ができた。
が、ただ一人彼女だけはどうしても思い出せなかった。

 

「百川の事、気になるんだろ?」
仲の良かった坂田が俺に話し描けてきた。
「百川?」
俺の記憶には、そんな名前の女子はいなかった。
「やはり知らなかったか♪百川裕だよ。」
「ゆたか?」
確か男子サッカー部に居たモテ男が「百川裕」と言う名前だった事を思い出した。
「文化祭のミスコンを覚えてるか?あれが切っ掛けで役者を目指すようになったって…」

 
文化際のミスコン…男子・女子まぜこぜで美しさやユニークさを競っていた。
そんな中でもサッカー部代表の百川は飛び抜けて美しかった。
(ああ、だからだ…)
その時の面影が今も残っているので「彼女」に違和感を感じなかったのだ。

 

「あっ、竹山君。久しぶり♪」
あれだけ百川を見続けていれば、彼=彼女にも気付かれるのは必然だった。
女の子達の輪を抜けて、俺の方にやってきた。
「お、おう。久しぶり。今、役者をやってるんだって?」
「単なる〈役者〉じゃないわ。〈女優〉よ♪間違えないでね?」
「何か大変な事に挑戦してるんだな。凄いと思うよ。」
「大変だったのはあなたの方でしょ?病気の方はもう良いの?」
そう。俺がこれまでなかなか同窓会に出てこれなかったのは、ある病気が発症していたからだ。
「とりあえず、こういう場所に出てこれるまでになったよ。」
「よかったらあたし達と二次会行かない?まだ独り身なんでしょ?時間があるならそうしてよ♪あなたにはいろいろ聞いてみたい事があるのよね♪」

 

…二次会と言いつつも、結局は俺と百川の二人だけでカウンターに並んでいた。
「それにしても、昔と変わらないのね?」
「俺も少しはズルしてるけどね♪」
「少し…ね?病気の事、聞いてるわ。あたしの場合は単に女装しているだけなんだけど…」
やはり、その話になるのだろう。
俺は就職して即に俗に言うTS病に掛かり「女」になってしまったのだ。
会社では「竹山ひかる」改め「竹山ひかり」としてOLになる事でそのまま雇用を継続してもらえた。
勿論、会社では女子の制服を着、化粧をし、自分の事を「あたし」と言って過ごしている。
俺の肉体は完全に「女」になっているので、女の服を着ていても「女装」には見えない。
会社でも、一部の人間しか俺が「元男」である事を知らない。
俺はなんとか「女」として生きる術を見つけていた。
が、その事が俺を同窓会から遠ざける原因にもなっていた。
「男」だった俺が「女」の姿で現れたらそれだけで騒ぎになる。
そして、懐かしい奴等と顔を会わせれば「男」だった自分が舞い戻ってくる筈だ。
外見と中身のギャップに、途端に場が白けてしまう事が危惧された。

そんな俺が「男装」のアイテムの存在を知る事になった。コスプレで女の子が男性キャラに変身する時に使うので、かなり手に入り易くなっていたのだ。
胸の膨らみを押さえ、昔の髪型にしてみた。
肌が大分白くなっていたので、日焼けしたような化粧をしてみた。
(これなら昔の「俺」とそう違わないよな♪)
ようやく、自信をもって同窓会に出れる…
と張り切って来てみれば、そこに居たのは女装して女子達の輪に入り違和感のない「百川」だった。

「病気の事…って?」
わざとしらばっくれるが、
「どう?こんな美人を隣にして…あそこビンビンにしてる?それとも、しっとりと濡らしてるのかしら?」
「わかったよ。そうだよ。俺はTS病で女になってる。けど、お前が女になりたいと言ってもこれは伝染病とかじゃないから、俺にはどうにもできないよ。」
「良いのよ。あたしは別に女になりたい訳じゃないもの♪男のまま一流の女優を目指してるの。」
「じゃあ、俺に聞きたい事って?」

「いくら親しくなっても、女の子に聞けない事ってあるじゃない。それに、貴女なら、男女の違いを身をもって経験してるでしょ?」
「な、何か生々しい話だな。」
「あたしが女優をしてゆく上で〈女〉を知らないと完璧な演技をする事ができないのよ。だから、貴女に教えて欲しいの♪」
「お、俺には演技指導なんてできないぞ。」
「指導なんていらないわ。貴女の経験を聞かせて欲しいの。とくに、男と女の違いをね♪」

 

 

「痛っ!!」
俺はベッドの上で叫んでいた。
「本当。この歳まで処女だったなんて信じられないわ♪」
「だから、早く済ませてくれよ。我慢にも限界がある!!」

(何でこんな事になった?)
俺は今、ホテルのベッドの上で裸になり、裕に抱かれていた。
「女の快感っていうのを教えてもらいたいの。アナルとは違う快感なのよね。純女じゃその快感がどんなものかを男に説明できないでしょ?」
彼に抱かれていると、痛みの向こうに快感らしきものが見え隠れしてくる。
「貴女は何も心配しなくて良いのよ♪あたし…僕が全部責任を負うから。」

キュン♪

俺…あたしの心の奥で何かが共鳴した。
「愛してるよ♪ひかり…」
耳元で囁かれる。
あたしの胸の中に幸せが満ちてきた。
「ん…あ、ああん♪」
あたしの中のオンナが目覚めてゆく。
泉が湧くように、あたしの中に快感が溢れてゆく。
「どお♪感じてきた?」
あたしの口は喘ぎ声をあげるので精一杯…あたしはぎゅっと裕を抱き締めた。

 

見た目は二人の女のレズプレイ。
実際は女装男と元男の絡み合い。
だけど、今あたしは本物の「女」になれたのだと思う。
だから、だれが何と言おうと、これは単なるありふれた男と女の営みでしかない…

そして、そう遠くない未来。今日の同窓会のメンバが再び集うことになる。
だれもが驚くに違いない。
それは、あたしが花嫁となって裕のもとに嫁ぐ日になるの♪

« 棒 | トップページ | ライセンス »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 同窓会:

« 棒 | トップページ | ライセンス »

無料ブログはココログ