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2016年7月11日 (月)

GREEN

樹化…

密林に生息する植物には、いまだ生態の不明な種が多数存在する。
他の木々に寄生する植物の中には、宿り木の種が特定されているものもいる。
その中には宿り木となる種がいない場合、近くにいる他の種の木を宿り木となる種に近づける能力をもったものもいた。
そして、近くに適当な木が存在しない場合…

 

「これがその寄生種か?」
「そうだ。この根の中に特殊な細菌を飼っているようだ。寄生した宿り木が本来寄生すべき種でないと判断した場合、この細菌が活動を始めるのだ。」
「よくそこまで突き止めたな。国に戻って学会で発表すれば、センセーションを巻き起こすぜ♪」
「確かにな。だが、俺は国には戻れない。」
「なぜ?」
「これを見てくれ…」
と捲り上げた腕はかさかさに角質化していた。
「樹化だよ。細菌は人体にも影響を与えてるんだ。」
「…」
「俺は宿り木となり、この地に根を張り、こいつを寄生させる事になる。」
「そ、そんな…」
「それが種を保存するという事だ。自然界の覆せぬ掟だな。」
「は、早くこの場所を離れなければ!!」
「それはだめだ。」
「何故?」
「ひとつに、俺はもうこの場所を動けなくなっている。」
とズボンの裾を捲ると、角質化…否、樹化した足が床を突き破っていた。
「気が付かなかったか?俺はこの数日、飲食をしていないのだよ。大地から水分と養分を摂っているんだ。」
僕は二の句が継げなかった。
「そしてお前だ。お前も細菌に感染している可能性がある。この細菌を国に持ち帰るなど許される筈もない。お前が保菌者でないと判明するまでは、ここを離れる事は許されないのだ。」

 

数日後には彼は巨木と化し、寄生植物と合体した。
彼の残したメモによると、僕はあと半年はこの場所に留まらなくてはならない。

問題は食料だった。
彼の分がまるまる残っているが、それで切り詰めても三ヶ月が良いところだ。
残り三ヶ月をどうやって過ごすか…
(どこかに食い物が落ちていれば…)
探しに出歩いてはみたが、当然の事ながら食べれるものなどない。
そんな日々がひと月程過ぎた頃、朝目覚めると、枕元に果実が転がっていた。
(夢を見ているのだろうか?)
手に取り、臭いを嗅いでみた。
美味しそうな臭いがした。
以前の僕なら躊躇わずに噛みついていたが、細菌で巨木と化した彼を前にしては軽率な行動が躊躇われた。
ある限りの機材を総動員して、その果実の安全性を確認した。
ほぼ一日かけて検査した結果は…問題なしと出た。
そして残ったのは、半分になった実が二切れだけだった。
それを口に含むと、果汁が口の中に広がった…頬が溶け落ちそうとはこう言う事なのだろうか?

翌朝もまた、枕元に果実が置かれていた。
備蓄食料の事を思う以前に、昨夜の美味が脳裏を支配していた。
僕は一片も損なうことなく、全ての果実を胃の中に納めていた。
美味しさと満腹感に即にも眠気に教われ、まだ朝のうちだというのに昼寝に突入していた…

 

かなりの汗をかいていた。
特に暑かった記憶はないが、着ていた服はぐっしょりと濡れていた。
シャワーを浴び、新しい服に着替えると、気分も一新していた。
まだ陽は高いので、ボクは何か食べられるものがないか、いつものように近くを歩きまわった。

勿論、何か見つかるでもない。
毎日の日課のように陽が傾くまで歩きまわり、帰るなり、疲れてベッドに倒れ込んだ。

朝になると枕元の果実の存在に気づく。
食べては昼寝し、起きたらシャワーを浴びて陽が落ちるまで歩きまわる。
同じ事の繰り返しだけど、わたしはその中ではっきりとした変化を感じていた。
ひとつに肌が綺麗になっていた。
余計な体毛は失われ、肌は白くきめ細やかになっていた。
手足は細くなったが、皮膚の下には弾力のある脂肪が存在した。
更に、腰のまわりは大きく削られ、括れたようになったかと思うと、骨盤が広がったのか臀部が大きくなったようだ。
(これで胸があれば、シルエットはまるで女ね♪)
伸び放題の髪の毛は女の髪のように艶やかであり、髭はまったく生えることがなくなっていた。

 

その日、果実とは別の良い香りが漂ってきた。
巨木となった彼の方からきていた。
わたしはふらふらと彼の下に近づいていった。
その根本に奇妙な突起があり、香りはそこに発しているようだ。
(きのこ?)
松茸のような棒状の突起だった。
しかし、きのこのように別種のものが寄生しているのではなく、枝のように幹本体から直接生じたもののようだった。
突起の先端には小さな穴があり、透明な樹液がポタリと滴っていた。
(良い香りはこの樹液だったのね♪)
わたしは這いつくばるように身を屈めると、舌先で樹液を舐め取っていた。
…美味しかった…
わたしは無我夢中で樹液を吸い取った。
そして、しばらくすると樹液が一旦止まった。
それでも次が欲しくて吸い続けた。
すると…ドクリ…と塊のような樹液が口の中に広がった。
少し粘り気のあるような樹液はまるで男性の精液のよう…
わたしはお腹の奥に熱い塊が生まれたのを感じた。

樹液はあたしに更なる変化をもたらしていた。
透明な樹液を吸っていると次第に股間が熱くなってくる。
ソコが疼いて我慢できなくなると、あたしは体の向きを入れ換えて、疼いている所に突起を押し当てる。
突起はあたしのナカに入り込む。
あたしが腰を揺らして突起に刺激を与え続けると、突起は濃い方の樹液を放出してあたしの疼きを鎮めてくれる…

 

 

お腹が脹れてきた。
それが「妊娠」であるとあたしが気付くまでには数日の間があった。
男のあたしが…と意識の上であたしは「男」だったけど、その姿は誰が見てももう男には見えなかった。
自分が「女」であると認めると全てが合理的に見えた。
あたしが保菌者でないと確認できるまで、あたしはこの場所を離れられなかった。
彼は半年とあたしに告げたが、あたしがここを離れられなくなる事も考えていたのだろう。

「種を保存する…それが自然界の覆せぬ掟だ。」
彼の口癖だった。
この地にヒトという種を残す…
普通なら考える事さえできない事であるが、樹化した彼にはそれを可能とする能力があった。
彼はあたしに彼の果実を与えた。
それはあたしの肉体を急速に女に変えていった。
彼の樹液があたしの中の「オンナ」を引き出す。
そして、彼の精子をあたしのナカに送り込む。
あたしの内性器が成熟し、卵子が作られ、彼の精子と合体してあたしは妊娠した。

「種の保存」
それが彼の望みなら、あたしはそれに従う。
(何人でも産んであげるわ♪)
愛しい貴方の望みなのだから…

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