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2016年7月11日 (月)

ヒロイン

俺の記憶に残っていたのは、手術台の無影灯と俺を取り囲む異形の怪人達だった。
「やめろっ!!」
ドアを突き破り入ってきた男の叫び。
「ギィーッ!!」と応じる警備員。
打たれた麻酔の所為か、俺の意識はそこで失われていた。

 

 

安アパートの天井が見えた。
「気が付いたか?」
男の声がした。
俺は起き上がろうとしたが、身体に力が入らなかった。
「無理するな。新しい肉体に神経がまだ馴染んでない筈だ。」
「新しい肉体?」
何とか声は出たが、どうにも俺自身が発した声には聞こえなかった。
「あんたの肉体は悪の組織に奪われてしまったんだ。俺の戦う相手がまた一体増えてしまったということだがな♪」
「俺の肉体?」
「奴等は改造に耐えられる肉体と精神を組み合わせた上で怪人への改造を行うのだ。また、残された肉体は実験素材として活用され、精神は廃棄される。」
「精神?」
「いわゆる心だな。奴等は特殊な装置で精神を交換し、実験素材に入った精神を手術で廃棄するんだ。」
「手術…」
「そう。あんたはまさにその一歩手前にいたんだ。あんたの肉体は救えなかったが、精神だけはなんとか…な♪」
「あ…ありがとう。助けてくれて。」
「ん…まあ、実を言えば、あんたのその肉体を失いたくなくてな♪あんたの精神が救えたのは、そのついでみたいなものなんだ。」
「それでも、あたしを救い出してくれたことには変わりないわ♪」
まったく力の入らなかった肉体が突然動きだし、彼に抱きついていた。
(それに何だ?今、俺は自分の事を「あたし」って…それに語尾が「わ♪」だったぞ?)
「ち…ちょっと待て。そういうのは服を着てからにしてくれ。」
と彼が俺から離れようとした。
俺の下腹部からは触れている彼の股間が何故か勃起しているのを感じた。
「服?」
そして、俺の意識が自分の肉体の状態に気がつく。
(裸?)
その事を理解した途端…
「キャッ!!」
俺は女の子みたいに叫ぶと、彼から離れ、近くにあった毛布を身体に巻いて、床の上に座り込んでいた。

 

俺はもう一度、自分の肉体を確認してみた。
全裸である事は間違いない。が、それ以前の問題として…
胸には女のような膨らみがあった。
股間にはあるべきモノがなく、彼の勃起を知って以降、ソコの湿度が増しているようだ。
それに、今の俺の座り方…無意識にそうしたのであろう…膝を揃え、足先を開き、その間に尻を落とした所謂…女の子座り…をしていた。
「こ…この身体って…」
「ああ。俺の恋人の静香のものだ…」
(…)
「多分、条件反射のような行動なら、精神に負担を掛けずに肉体を動かすことができるようだな。」
彼は近くにあった紙袋を引き寄せた。
「これは静香がここに置いておいたものだ。着替えも入ってる筈だ。俺は隣の部屋で仕事をしてるから、落ち着いたら声を掛けてくれ。」

 

 

独りになった事で、緊張が少し融けたようだ。少しづつ身体を動かせるようになってきた。
紙袋を引き寄せ、中身を確認した。
確かに、着替えの服が入っていた。その他にポーチがいくつか…
歯磨きなどの洗顔用品。シャンプーとリンスのセット。生理用品。化粧道具。そして下着が詰まったポーチもあった。
パンティを一枚取り出した。
(これを「俺」が穿くのか…)
しかし、これは「女装」ではない。女の肉体に女物の衣服を着せるだけだ。
意を決し、俺は立ち上がるとパンティに足を通した。
引き上げるとピタリと下半身が覆われた。男にある「突起物」を示す膨らみはない。なだらかな恥丘を見せつけてくれる。
本来であれば、童貞歴=年齢の俺は若い女性の裸体や下着姿に興奮しない筈はないのだが、隣にいる彼の存在が冷静さを保たせているのだろう。
つづいてブラジャーを胸に巻いた。
流石に身体は柔らかくて、痛みもなく背中に手が廻った。カップの中に乳房を納める。
パンストは話に聞いているが、片足づつまるめて爪先から通していった。
キャミソールを穿くようにして着け、ワンピースも背中から足を入れ、両腕を遠し、背中のチャックを上げた。
首の後ろにボタンがあったので、これも填めておく。
ネックレスがあったので、これも首の後ろで留め具を填めた。
鏡に映っているのは今の俺…「静香」だった。
ポーチに手が伸びてゆく。中から化粧水と乳液を取りだし、顔に塗っておいた。
(あとクリームかな?)
もともと肌が白いので、あまりお化粧する必要はないのだが、瞼と頬にはちょっと色を付けておく。
唇にはグロスを付け、ぷるぷる感を出しておく。
(ピアスは小さいので良いかな?)
鏡の中の「静香」は申し分なかった。

「お待たせ。入るわよ♪」
とドアをノックして隣の部屋に入った。
「静香?」
何か不思議そうにあたしを見ていた。
「どうしたの、明良?あたし、何か変?」
「いや、変…ていうより、今のあんたが静香そのものなんで驚いている。」
「あたしが静香そのものってどういう事よ。まるであたしがあたしじゃない…」
そうだ。
俺は「静香」ではない。静香と精神を入れ替えられてたんだ。肉体は「静香」であっても、精神は俺自身なのだ!!
なのに俺は「静香」そのもののように振る舞っていた。
恥ずかしげもなく、女の服を着、化粧までしてしまっていた。
これを全て「条件反射」の行動だと言ってしまって良いのだろうか…

「どうかしたか?急に黙ってしまって。」
「お…」
「俺」と言おうとして言葉が詰まった。
「あたし…自分の事をあたしと言えば、喋れるみたい…ね。」
実際に声に出そうとしても、「静香」らしくない言葉は制限されてしまうようだ。
「…明良は、あたしを見てどう思う?」
「殊におかしな所はないよ。あんたは静香そのものだ。」
「静香として動こうとしないと何もできないみたい。ちょっとぎこちないけど我慢してね。」
「ああ、大丈夫だ。あんたもあまり無理はしないでくれ♪」
明良は立ち上がると、軽く俺を抱き締めた。
同性に抱き締められている…という認識より先に、彼の優しさに包まれて安らいでいる自分がいた。
自然と彼の胸に頭を凭れている。彼の大きな手で頭を撫でられ、うっとりとしてしまっていた。

 

「食事に出ないか?」
明良の提案に即座に
「うん♪」
と応えてしまったのは俺の意思ではなかった。
俺としては女の服を着て化粧をした姿を他人に晒す勇気はなかった。
が、条件反射のように彼の提案に乗っていた。

実際、腹が空いているのは確かではある。
静香のパンプスを履いて外を歩く。
彼の腕に自分の腕を絡めているが、これは俺の意思である。
別に、静香と明良が恋人同士だからという訳ではない。
切実な問題として、俺が「踵の高い靴を履いて歩いている」と意識してしまうと、その途端にバランスを崩してしまうのだ。
倒れ掛かる度に彼の腕を掴みにいっていたが、掴み損ねてしまいそうになったので、予め彼の腕を抱えている事にしたのだ♪

 

商店街に近づいてきた時
「きゃーーっ!!」
という女の叫び声がした。
一呼吸遅れて、商店街のアーケードから人々が走り出てきた。
「何が起きたんだ?」
脇を駆け抜けようとした若い男の腕を掴んで停め、明良が問い質した。
「怪物や怪人達が中で暴れてるんだ。」
それだけ言うと、若い男は明良の手を振りほどき駆け逃げていった。
「怪人か。静香はここで待っていてくれ。」
そう言うと、明良は腰に付けたベルトを操作した。

「変身っ!!」
明良がそう叫ぶと、ベルトが光り、その輝きが彼を包み込んだ。
「とーっ!!」
掛け声と共に飛び上がった明良は、異様な身形に変わっていた。

一気にアーケードの入り口に達する。
そのまま奥に突入すると、その奥から閃光が走った。

しばらくして、
「ぎぃ、ぎぃーっ!!」
と声を上げる怪人達がアーケードから飛び出てきた。
追いかけるように出てきた明良は手にした刀のようなもので怪人に斬りつけた。
斬りつけられた怪人は、倒れるなり煙のように消えてしまった。
怪人達を片付け、明良がアーケード内に向き直ると、奥から怪物の声が轟いてきた。
「お前が我らに仇なすという〈ヒーロー〉か?」
ゆっくりと怪物はアーケードの中から現れた。
「俺は自分からそんな称号を名乗った記憶はないがな♪」
「そうだな。名前などどうでも良い。今は我らを邪魔するお前を倒すだけだ。」
怪物と対峙する明良が俺の存在に気づいた。
「静香。お前ももう少し離れていろ。」
その声につられ、怪物も俺を見た。
「静香?」
怪物の動きが止まった。
そして怪物の輪郭がぼやけだす。
「静香は…あたし…よ…」
怪物の姿が「人間」に変わり、一歩…また一歩と俺の方に向かってきた。

その姿は「俺」だった。
改造に耐えられる肉体の「俺」と、改造に耐えられる精神の「静香」の合体したものだった。

俺は身動きもできずにその場に立ち尽くしていた。

もう少しで「俺」の手が俺に触れる所まできた。
明良は再び現れた怪人達に手を焼いている。

不意にパラパラと音がした。
上空から光が降りてきて「俺」を包んだ。
そして光の中で「俺」が消えていった…

「静香、大丈夫だったか?」
明良が駆け寄ってきた。
いつの間にか怪人達も消えてしまっていた。
「な、何だったの?」
「あれが改造された姿だ。本来なら、洗脳時に改造前の記憶など完全に抹消されてるのだが…」
「静香さんの記憶が残ってたって事?」
「ああ。だが、基地に戻って再洗脳されてくる可能性は十分考えられる。」
「あっちの事はわかったわ。次は明良の事を教えて。何なのあの姿は!?」
彼は一旦、天を仰いだ。
「俺もまた、奴等に改造された怪物の一体には違いない。まだ、試作段階だったらしいが、奴等のお抱えの科学者の一人に洗脳直前に救い出されたんだ。」
「その人から奴等の事や怪物の事を聞いてたんだ。」
「彼は脱出する時に俺を庇って死んでしまった。彼は様々な事を記録したメモリチップを俺に託してくれた。情報はそこからだ。」
「つまり、今の貴方の肉体は本来の貴方のものではなく、別人って事よね?」
「ああ。」
「つまり、肉体的には貴方は静香さんの恋人ではないって事よね?貴方が静香さんを救いたいのであれば、あたしより静香さんの心を取り戻すべきなのでは?」
「それは、洗脳されて静香ね記憶が失われてしまったから…」
「でも、さっきはまだ消えきれてなかったのでしょ?なら、貴方はあたしに構うより、静香さんの心を追いかけるべきではなくて?」
「そ…それは…」
「つまり、貴方と静香さんが恋人だったて言う事が嘘だったと言うこと。」
「ちがうっ!!」
「何が違うの?あたしの推理では、肉体は明良さんのまま。心は明良さんを救ったという科学者じゃなくて?」
「な、何を根拠に!!」
「女の感…かしらね♪」
「出鱈目を言うな。」
「あたしの推理はこう…

 
貴方は静香さんに一目惚れした。
しかし、静香さんには既に明良という恋人がいた。
貴方は肉体と心を入れ換えられる装置を開発した。
その装置で自分と明良を入れ替えたのね。
明良には巧い事を言って洗脳前に自分を救い出してもらい、口封じの為に明良を殺した。
明良に成り代わり静香さんに近づいたが、彼女は貴方が明良でない事に気づいてしまった。
そこで、貴方は静香さんの心を別人のものにして、静香さんの肉体を自分のものにしようとした。

「多分、あの肉体の洗脳がちゃんとできていたら、あたしも気付かずにいたかも知れないわ。」
「お…俺は、静香の恋人であり、正義のヒーローだ!!」
「とんだ茶番よね。貴方は今も組織と繋がっている。怪物の素材を集め、裏から組織に送り込んでるのでしょ?」
「…」
「だから、いつ・どこで怪物を暴れさせるかは、正義のヒーローの台本どうりなのよね♪」
「っく!!言わせておけば!!」
「どうするつもり?」
「お前を洗脳に掛けてやる。こうなったら人形でも良い…いや、なまじ精神を残しておくとロクな事がない!!」

彼は再びベルトに手を掛け、変身しようとした。
「静香さんは黙ってないでしょうね♪」
「あんな出来損ないの怪物に、何が出来る?」
「今は従わなければならない台本はないんだもの♪さあ、やっておしまいなさい!!」
明良の背後に先程の怪物が現れた。
腕を取られベルトに触れる事さえできない。
「さあ、静香さん。今ここで恋人の仇を!!」
明良の背後で怪物が大きく頷いた。
ガバッと口を開き、明良の頭に噛み付いた。
ゴキッ!!
首がもげ、怪物の頭のの中で明良の首が砕けていった。

 

 

「これからどうするの?」
「もう…生きていけない。貴女に静香として〈あたし〉を続けてもらえば嬉しいわ。」
「そ…そんな…」
「でも、その前にお願いがあるの。」
「何?」
「…ここでは…」

 

 
俺達は静香のマンションにやってきていた。
静香の部屋…俺は「俺」に「静香」の裸体を見せていた。
「あたしの見納め…ってことね。本当なら改造された時点でこんな事できる筈なかったのにね♪」
そして自らも脱ぎ始める。
「貴女だけっていうのも恥ずかしいでしょ?」
俺的には、目の前に男の…それも「俺」自身の裸体を晒された方が恥ずかしいのだが…
それは静香さんの「口実」でしかないのだろう。「俺」の股間がこれ以上ないくらい勃起していた。
「その肉体は貴女のものではないのよね?そう、その肉体はあたしのもの…だから、あたしが何しようと問題ないでしょ♪」
このような状況で、俺が何を言っても聞き入れられない事はわかっている。
俺は素直に静香さんの手でベッドに倒された。
「これが…あたしの肉体…」
静香さんの手が俺の股間を撫であげた。
「んあんっ♪」
思わず喘ぎ声が上がってしまった。
撫であげた際、静香さんの指が敏感な所に触れたのだ。
「ちゃんと感じるのね♪」

「っあ…」
今度は乳首を弄られた。
「もしかして、あたし以上に感じてない?」
俺の股間は一気に湿り気を増していた。
「貴女、処女だったかしら?でも、その肉体は明良と何度もやってるから、痛くなる心配はないわよ♪」
静香さんは、こね肉体の中身が今の静香さんの肉体の所有者であったて気付いていないのだろうか?

「もう大丈夫ね♪」
静香さんは体勢を変えて、俺の股間に陣取ると、俺の脚をM字に開かさせた。
静香さんが肉体を重ねる。
俺のナカに「俺」のモノが挿入されてきた。
今は何も言うまい…
この肉体が感じるままに素直になっていよう…
「んあん♪イイ… もっと奥に…」
「ああ…あたしのナカ。気持ちイイ♪」
静香さんも満足しているようだ…
(違う…)
今の「静香」はあたしなのだ。
あたしはただ、あたしの愛する男を満足させてあげたいだけ♪
「キテ♪もっと奥にっ!!」
彼の先端が子宮口に届いた。
「ああっ♪ソコッ!!イイッ♪もっと突いてっ!!」
彼が腰を動かす。
あたしの愛液がポンプで汲み出されたかのように股間に溢れてくる。
二人の間でくちゅくちゅと卑猥な音をたてる。
「ああ…いく…」
ペニスの中を精液が駆け昇ってこようとしていた。
あたしもイキそうになっている。
「イこう♪一緒に!!」
「あ、ああ♪」

あたしの奥に熱い塊が打ち付けられると同時に、あたしもオンナの快感の絶頂に達していた。
…あたしの記憶はそこでプツリと途絶えていた。

 

 

 

街からは怪人・怪物もヒーローも姿を消した。
俺は「静香」として毎日を暮らしている。
一度「俺」の家を訪ねたが、そこは既に空き家となっていた。
俺はこの先も「静香」として暮らすしかないのだ。
…お腹の中にいる「俺」の子とともに♪

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