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2016年4月24日 (日)

欺装(1)

そこが「病室」である事は即にわかった。
直前の記憶にあった全身が引き裂かれるような激しい痛みは、それが夢であったかのように何も感じられなかった。
そう…僕は実家に帰る夜行バスに乗っていた。
定刻通りに出発し、都内を出る前に僕は眠りに就いていた。

突然の衝撃と断末魔の悲鳴。
クラクションが鳴り続けている。
目を開けた僕の目の前で天井が裂け、黒々とした木々の連なりが垣間見えた。
そのまま、天井の断面が僕に近づいてくる。
スローモーションのように、僕をお腹から真っ二つにしてゆく。
痛みはその後からやってきたが、それも一瞬の事。
僕は意識を失っていた…

 

 

どうやら、僕はまだ「生きている」ようだ。
ホッとすると同時に様々な事が気になりだしてくる。

ここが「病院」である事はわかる。が、どこ…所在地はどこなのだろうか?
それ以上に、僕が意識を回復するまでにどれだけの日数が掛かっているのだろう?
あれだけの事故である。既に家には連絡が行っているとは思う。が、この部屋はあまりにも殺風景だ。
誰かが見舞いにきたような痕跡は見当たらなかった。

 

「気が付いたみたいだね。」
主治医とおぼしき男が部屋に入ってきた。
「ああ、そのまま。まだ、動いたり喋ったりはできないからね♪」
そう言って、男がリモコンを操作すると、ベッドの上半身部分が持ち上がった。
マットを背もたれのようにして起き上がった僕の前に、キャスターの付いた衝立を引っ張ってきた。
「君にはショックな事になるが、何れ知らなければならない事なので、ここで言っておく。」
僕は緊張っ唾を飲み込もうとするが、上手くいかなかった。

「世間的には、君は死んだ事になっている。今ここにいる君は、君であって君ではないのだ。」
と、衝立…鏡が引き寄せられた。

 

たぶん、そこに写っているのは「僕」なのだろう。
無機質な肌色の素材に覆われた腕
のっぺりとした顔
頭には髪の毛の一本もない
「ロボット」と表現するのが相応しい身体だ…

 
「それは義体と呼ばれるものだ。手や足を失った人が身に付ける義手や義足の延長線にある。ただ、全身義体はまだ研究中なのだがね。」
研究中とはいえ、ここまで完成度の高いものが存在しているのは信じられなかった。
「勿論、我々は非合法の組織であり、裏からの潤沢な資金があってこそ、ここまで到達できたのだ。」
彼がスイッチを切り替えるて、鏡はモニタとなって映像を写し始めた。
「これがクライアントに提示しているプレゼンCGだ。」
まるで映画やテレビの変身ヒーローを見ているようだった。
「義体は欺装により、様々な人物に成り代わる事ができる。生身の人間ではないので、単なる変装より幅広く対応できるのだよ。」
そこにはテレビで良く見る政治家が、普段では考えられないような演説をしていた。
人気絶頂のアイドルが舞台の上で次々と服を脱ぎ、全裸になるとオナニーとしか思えない行為を始めていた。
サッカー選手が突然味方ゴールにボールを蹴り込んだ。
横綱が相手の髷を掴み、腹に膝蹴りを繰り返す。
赤ん坊がむくりと起き上がり、滑舌良く「天上天下唯我独尊」とのたまわっていた。
「映像は特殊効果を使ったものだが、今の君であれば、同じ事ができるのだよ♪」
つまり、僕が人前で「別人」として行動することになる?
「とはいえ、ド素人が役者みたいに他人を演じられるとは思えない。それに、義体もまた完成したとはいい難い段階だ。」
彼はモニタを片付けた。
「君にはこの研究所で様々な欺装の確認に付き合ってもらうことになるからね♪」
と男が出ていくと同時に、僕はスーッと意識が飛んでいくのを感じた…

 

 

人の声がした。
何人かが僕のまわりにいるらしい。
「意識。回復してきました。」
ゆっくりと目を開け、声のした方を見た。
目の前には何かの機械が置かれていた。
「上を見て。」
あの男の声だ。
僕は首を戻し、天井を見た。
「声。出せる?」
僕は言われるがままに喉に力を入れ、息を吐いた…
「あー、あー…」
僕の耳に聞こえたのは、僕本来の声とはかけ離れたものだった。
「今は欺装してるからね。外見に合うような声が出るようになっている。」
外見?
確か「欺装」とか言っていた。つまり、今の僕は本来の僕とは全然違った姿をしているのだろう。
「今、機器を退けるからね♪」
がちゃがちゃと音をたてて僕のまわりを取り囲んでいた機器が取り払われた。
「独りで起きれるかい?」
そう言われて、上体を捻り、腕を使って身体を起こした。
パサリと何かが顔の前に掛かった。
(髪の毛?)
その先端は胸元にまで達する程長かった。
(?!)
そして、僕は胸が大きく膨らんでいるのに気付いた。
それは女の子のおっぱい以外の何物でもない…

女の子のように高い声…外見に合わせたと言っていた。
そして目の前を覆う髪の毛…
(「欺装」とは、つまりそういう事か…)
「鏡…ありますか?」
そう言うと、衝立状の鏡が引き寄せられた。

そこには裸の女の子が写っていた。
無機質ではない、健康的でピチピチした肌に覆われた腕
のっぺりではなく、パッチリと大きな瞳、ふっくらとした紅い唇が可愛らしい表情を浮かべている
長くサラサラの髪の毛が背中にまで延びている…
欺装した義体は、どこから見ても普通の女の子と変わりがなかった。

「これが…僕?」

「君にはしばらく、この欺装のままで生活してもらう。いや、無理に女の子を演じようとはしなくて良い。が服は極力スカートにしてもらいたいな。」
と、女性スタッフから服が渡された。
「一応、男性方は席を外してください。」
と彼女は人払いをしてくれた。
彼女に着方を教わりながら、女の子の服を着てしまった。
「明日からは部屋にある服を選んで、自分で着てちょうだいね。」
そう言って案内された部屋は「女の子の部屋」だった。
ピンク色を基調とした内装。花柄のカーテンにはレースのカーテンが添えられていた。
床にはクッションやぬいぐるみ、ファッション誌が置かれている。
化粧をするためのドレッサーには化粧品や様々なアクセサリーが置かれていた。

勿論、クローゼットには女の子の服が並び、引き出しには女の子の下着が詰められていた。
「お風呂も自由に使って良いからね♪」
とユニットバスの使い方を教えてくれた。
「義体は食事をする必要がないんだけど、何か欲しくなったら遠慮なく言ってね。取り寄せしておくから♪」
彼女がそう言って部屋を出た後、カチャリと鍵の掛かる音がした。
ドアのところに行ってみると、ドアノブに鍵穴が開いていた。
つまり、このドアは表裏が逆さに付いている…
鍵がなければ部屋の外に出る事はできないのだ。

(窓は?)
と窓に近づき、カーテンを開けた。
まだ夜だったようで、外はまだ暗い。が、窓は填め殺しになっていて、ガラスを割らない限り外に出る事はできないのだろう。

 

 

部屋の中にはテレビもパソコンもない。暇潰しできるのは「本」しかないが、見つかるのはファッション誌くらいしかない。
(今は夜らしいし、とりあえず寝るか…)
とベッドに向かったが、洋服を着たまま寝る訳にもいかないだろう…
パジャマの類いはおいおい探すとして、今日は下着だけで寝てしまおう。
と、服を脱いで下着姿になった。
(ブラジャーも下着だよな?)
僕は女性がブラジャーを着けたまま寝るものか知らなかったが、やはり慣れないモノは着けずにおいた方が良いだろう。
僕はパンツ(ショーツ)一枚でベッドに潜り込んだ。

 

 

ベッドに入ったからといって、即に眠れるものではない。
それに、僕が意識を回復してからも、そんなに時間は経過していない筈だ。
となると「義体」と本来の僕自身の肉体との違いが気になってくる。
殊に、今は「女の子」に欺装しているのだ。
ブラジャーから解放された胸は、男にはない膨らみがある。
僕の手は自然とその「違い」を確認しようと動いてゆく。
(これが女の子のおっぱい?)
これまで、事故で…それでも軽くでしか触れたことのないモノに、じっくりと時間を掛けて触れてみた。
(柔らかい♪)
指先から女の子の胸に触れた感触が伝わってくる…
(?!)
と同時に、自分の胸に触れる指先を感じていた。
「ぁあ…」
ゆっくりと乳房を揉みあげると、快感のようなものが沸き上がってくる。
「あんっ♪」
指を延ばし、乳首を摘まんでみると…感じてしまった♪

何かのスイッチが入ったかのように、身体の奥に熱い塊が生まれていた。
(物足りない…もっと快感が欲しい♪)

僕の手は股間に向かっていた。
ショーツの上から股間に触れる。
着替えた時にも確認したが、そこには突起物はなく、縦に割れ目が出来上がっていた。
(濡れてる?)
指先は湿り気を帯びた布地の感触を伝えてきた。
(僕の肉体が「女の子」として感じてるの?)
好奇心を抑えることはできなかった。
僕の手はお腹の隙間からショーツの中に入り込んでいた。
指先が割れ目に到達する。
割れ目の中は熱をもっているようだ。
少し力を入れて潜り込んでゆく。
指先に愛液が絡み付いた…

奥へと続く穴の入り口があった。
勿論、肛門などではない。
熱く濡れた膣口に、僕は指先を押し込んでいた。
何かが侵入してくるのがわかった。
それが自分の指だと認識していた。
力を入れると指の周りの肉壁に圧し包まれる。
力に抗うように、更に奥へと指を進める。
「んぁん…ぁあっ!!」
刺激が快感となって伝わり、僕の口から女の子の喘ぎ声のようなものが溢れていった。
(っあ、ソコ♪)
快感を生み出すポイントに指が触れた。
もう、何も考えられなくなる。
僕は快感だけを求めて指を動かしていた…

 

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