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2015年12月 5日 (土)

特異点

しくしくしく…

引っ越してきたばかりのアパートの部屋で寝ていると、女の子の泣き声に目が覚めてしまった。
泣き声は部屋の中から聞こえてくる。
やはり、格安事故物件につきものの「アレ」かな?と思いつつ起き上がった。

部屋の隅にその女の子はいた。
「どうした?」
と声を掛けると「誰?」と女の子が振り向いた。
(けっこう可愛い娘じゃないか♪)
「この部屋の新しい住人。君は?」
「あ、あたしを怖がらないの?」
「格安物件だったからね。こんな事もアリかと思っていた。」
「あ、あたし…死んじゃったんだよね。まだやりたい事いっぱいあったんだ。」
「たぶん、死んでしまった人の多くがそう思ってると思うよ。でも、死んでしまった事実を変える事はできないんだ。だから、大人しく成仏した方が楽だと思うよ。」
「でも…」
彼女は僕から視線を反らせた。

「ぁっ…」
彼女が小さく叫んだ。
そして急に立ち上がり、僕の寝ていたベッドに飛び付いた。
「カラダ…」
すれ違い様、彼女はそう呟いていた。

振り返ると、ベッドの上には「僕」が寝ていた。
その肉体に彼女が吸い込まれてゆく。
一瞬、何が起こったのか理解できないでいた。

「僕」の目が開く。
「あ、ああー」
と声を出していた。
スーハーと大きく深呼吸すると「僕」はむっくりと起き上がった。
「男の人の身体って、こんな感じがするんだ♪」
彼女が僕の肉体を動かしているのは間違いないようだ。
(では、今の僕は?)
と、自分自身を見てみた。
自分の身体が透けて、床が見えている。
(僕の方が幽霊になっちゃったのか?)
慌てて自分の肉体に戻ろうとしたが、既に彼女に占領されているので、跳ね返されてしまった。
「これなら外に出られるかしら?」
今の彼女には僕が見えないかのように、玄関に向かい扉を開けた。
「大丈夫みたいね♪」
サンダルを履いて扉の外に出ると即に戻ってきた。
パジャマを脱ぎ、適当に着替えてゆく。
「ちょっとお金借りるわね。」
と僕の財布の中を確認した。
上着を着てスニーカーを履いてアパートを出て行こうとする。
僕は慌てて後を追った。

 

普段はバスを使って駅に向かうのだが、彼女はバス通りを歩いて駅に向かった。
彼女が僕のお金を節約してくれているのか、単に深夜でバスが動いていないだけなのかは判断が難しい。
歩き続けること一時間あまり。駅に到着すると始発電車の時間になっていた。
駅の灯りは既に煌々と灯っていた。まだ朝も暗いうちから働いている人がいると思うと頭が下がる。
彼女は切符を買い、始発電車に乗り込んでいった。
僕も後を追うが、切符は買っていない。多分だれにも見られてないし、自動改札もすんなりと通してくれた。

電車の中にはほとんど乗客がいない。
そんな中、彼女は一番端の席に腰を降ろしていた。
膝を揃えて足先を少し流して座る姿は女性ならあたりまえなのだろうが、「僕」の身体でやられると少々気持ち悪い。
どこで降りるのかは知らないが、彼女はうとうとし始めていた。

 

終着駅の手前で目を覚ました。
彼女は僕の携帯を操作していた。
(ロックしてた筈だけど…)
と思ったが、生体認証を使ってたのを思い出した。機械は勝手に彼女を僕だと認識してしまったようだ。
画面を覗き込むと時刻表になっていた。
乗り継ぐ電車の時刻を確認しているのだろう。
電車を降りるとホームの売店でパンと牛乳を買って朝御飯にするようだ。
時計を気にしながらホームのベンチで食事を済ませた。
ゴミを捨てると、次に何かを探すような素振り。
動き出した先はトイレだった。
一瞬、どちらに入ろうか迷ったようだが、肉体に合わせて男子トイレに向かった。
それでも立ったまま用を足すのには抵抗があるようで、個室を使っていた。

 
電車を乗り継いで、とある町に辿りついた。
時間は昼近い。
特急とか使えばもっと早く着いたのだろうが、お金を節約してくれているようだ。
見知った町並みなのだろうか、彼女はずんずん進んでいった。
同じような家の立ち並ぶ住宅街に入った。始めての人なら、ちょくちょく番地を確かめなければ迷ってしまうだろう。
彼女はまっすぐに一軒の家の前に立ち、呼び鈴を押した。

「はーい♪」
と女性の声がした。
幽体で見た彼女の顔に似た女性がドアを開いた。
「僕は昔、聡子さんのお世話になった者です。聡子さんにどうしても会いたくなり、昔教えてもらった住所に訪ねてきたのです。聡子さんが今どこにいるか教えてもらえないでしょうか?」
彼女はかなり礼儀正しく、その女性に向かって言った。
相手は多分、彼女の母親であろう。彼女の女性を見る目が、今にも涙で曇ってしまいそうだった。
「私もこれから聡子の所に行くところでした。よろしければ一緒に行きませんか?」
「良いんですか?」
「聡子の為になることでしたら、何でもしますよ。戸締まりしますから、ちょっと待っててくださいね。」

しばらくの後、僕らは母親の運転する車に乗っていた。
そして、車はこの近くで一番大きいであろう総合病院の駐車場に入っていった。
「寝たきりになってもうすぐ一年になります。」
案内された病室には「彼女」が眠っていた。
死んでるのではないのだろう。点滴が落ち、モニタには心臓の鼓動を伝える波形が流れていた。
「聡子。お友だちが来てくれたわよ♪」
目覚める事のない娘に語り掛けている。
が、その声に応じるかのように聡子の瞼がピクリと動いた。

「聡子?!」

母親の目が見開かれた。
「聡子!!」
と大声で呼び掛ける。
更に聡子の瞼が開く。
ドスンと背後の音に振り向くと「僕」が崩れるように床に座り込んでいた。
「ママ…もう少し、待ってて…」
弱々しい声が聡子の口から紡がれ…彼女の瞼は再び閉じていった。

「聡子、聡子!!」
母親は呼び掛け続けたが、聡子が再び目を開ける事はなかった。

 
その背後で「僕」がよろよろと立ち上がった。
聡子の「肉体」に叫び続ける母親に背を向け、彼女は病室を出て行った。

 

病室で取り乱す母親に係りの看護士が気付き、母親を落ち着かせようとする。
その際、聡子の意識が一瞬であるが戻ったと聞き、医師が呼ばれた。
病室が慌ただしくなってきた。
僕は病室の片隅で成り行きを見守っていた。

 
医師逹が聡子を再び覚醒させようと、彼女の肉体に刺激を与える。
母親が彼女の名前を呼び続ける。
彼女の肉体は「覚醒」に向かいつつあった。
が、彼女の「意識」は今「僕」の肉体の中にある。
さっきは彼女の意識と肉体が近づいたことで意識が「僕」の肉体から彼女に移り、覚醒したのだろう。
しかし、今は彼女の肉体の中に彼女の「意識」はない。
つまり、彼女が覚醒する事はないのだ…

 
母親の目からは涙が溢れている。
こんな母親を残して彼女は何をしようというのだろうか?
今の僕に何か彼女逹の手助けなる事はできないのだろうか?
だが、肉体のない今の僕には何もできない。
ここにいる誰もが僕の存在さえ気付いていないのだ。

叫び続ける母親に
「大丈夫です。聡子さんは必ず帰ってきますよ。」
と声を掛けてあげたが、僕の声は届く筈もない。
が、その声に反応した人がいた。

「聡子っ?!」
母親が絶句する。
まだ目覚めていない筈の聡子の手が持ち上がっていた。
その手は僕の声に反応し、僕に向かって伸びてきた。
ギュッ…
と彼女の手が僕を掴んだ。
そして僕を引き寄せる。
僕はバランスを崩し、彼女の上に倒れ込んだ…

 

「聡子さん。聡子さん。」
医師の声が聞こえていた。
僕はゆっくりと瞼を開けた。
「聡子っ!!」
耳元に母親の叫びが突き刺さる。
掌が握られていた。
強い力で握り締められている。
僕は母親の顔を見た…
「聡子ぉー…」
母親は目を真っ赤に泣き腫らしていた。
「ぁっ…」
僕の口から声が漏れた。
が、それは「僕」の声ではなかった。

僕は今「聡子」の肉体の中に居た…

 

 

聡子は再び目覚めたが、顕著な記憶障害が認められたため、退院まではかなりの日数がかかった。
その間「僕」が「聡子」を訪ねて来ることは一度もなかった。
病院の中だけではあったが、自由に動けるようになった僕は何度か「僕」の携帯に電話を掛けてみた。
「聡子さん?」と問いかけたのがいけなかったのか、即に切られてしまった。
それ以降も声から僕からの電話だと判ると切られてしまう事の繰り返しだった。

退院した今、僕は聡子のママに無理を言って一人で外出していた。
今の僕には「聡子」としての記憶がないだけで、それ以外は健康体そのものなのだ。

電車を乗り継いで懐かしい街に戻ってきた。
バスに乗り目的地の停留所で降りる。
目の前にあるのは「僕」の住んでいるアパートだ。
勿論「聡子」も以前住んでいたので、彼女を知っている人もいる筈だ。
僕はあまり姿を晒さないように、急いで階段を上っていった。

鍵を忘れてロックアウトされてしまう事のないように隠していた合い鍵はまだそこに残っていた。
鍵を開け、部屋の中に入っていった。
「僕」は留守をしているようだが、部屋の中の状況を見ると、この部屋で生活している事は確かなようだ。

彼女は僕の私物にはあまり手を付けていないようだった。
雑誌とかは買い足していないようなので、引っ越してきた時のままに積まれていた。
久しぶりに雑誌を手にした所為か、いつの間にか読みふけっていた。

ガチャリ
とドアの開く音で彼女が帰ってきた事に気付いた。
「誰?」
と言ったが、上がり込んでいるのが僕である事は予想できていたようだ。
「あんただったの。いつかは来ると思ってたけどね。」
「ぼ…僕の身体をどうするつもりなんだ?」
「どうもしないわよ。それともどうにかして欲しいの?」
「返せよ…」
「多分、それは無理。お節介にもあたしの後を付いてきたあんたの所為だからね。」
「僕の所為?」
「あたしは病院で、一旦は元の身体に帰れる事が確認できた。けど、それは魂の入っていない肉体だったからよ。」
彼女は僕に近づき、手を握った。
「でも、あたしの肉体にあんたが入ってしまった…もう、こうして触れ合うまでしてもあたしは自分の身体に戻れないの。」
「戻れない?」
「そうよ。だから、あたしはこの肉体で、あんたはあたしの肉体で生き続けなければいけないの!!」
「そ、そんな…」
「言っとくけど、全部あんたの所為なんだからね。」

僕はどうして良いかわからなかった。
自然と目から涙が溢れてゆく。
「泣きたいのはあたしよ!!もう、娘としてママに会う事もできないのよ。」
「す…済まない…」
「そんな言葉だけで済むと思ってるの?こんなガサツな身体じゃない、瑞々しい女の子の身体になって…」
彼女の手が僕の胸元を掴む。
「これ、あたしのお気に入りのワンピースなのよ。あんたは綺麗に着飾るけど、あたしはもうワンピースなんて着れないのよ!!」
彼女の手が、僕の胸に触れ…彼女はそれを掴んだ。
「痛っ!!」
僕は彼女の手を振りほどいた。
痛みの残る乳房をブラの上から擦った。
「そうよ。その肉体はあたしのモノだったのよ…」
異様な目をして彼女=彼が近づいてくる。
僕はじりじりと後ずさったが、ベッドを背に詰め寄られる。
「返して!!こんな肉体、嫌っ!!何よコレ」
僕をベッドの上に突き倒すと、彼女はズボンのベルトを外した。
彼女の股間はみるからに憤り勃っていた。
「勝手に大きく硬くなっちゃうし、なかなか元に戻らない。恥ずかしくて歩けないじゃない!!」
男の生理だからと言っても納得してもらえないだろう。
「何とかしてよっ!!」
とトランクスまで脱いでいた。

状況的には最悪の事態のような気がする。
下半身を剥き出し、股間を勃起させている男の前に、ベッドに押し倒された女がいる。
その「女」が僕で、目の前に立っている男が「僕」だ。

勃起を鎮めるには抜いてあげるのが一番なのだろう。
だが、僕が行動するよりも先に彼女の方がもう1つの解に気付いてしまった。
「そうよね。コレの使い道は立ちションするだけじゃないのよね。本来の使われ方を実践すれば良いだけなのよね♪」
「ち、ちょっと待て!!」
と僕が言っても、主導権は彼女にあった。
僕のスカートを捲り上げ、僕の上に伸し掛かってくる。
ショーツの端に手を掛け、その隙間から硬くなったペニスを突っ込んできた。

「!!!!ッ」

引き裂かれるような痛みに声も出ない。
何もできぬ内にずぶずぶと根本まで挿入された。
「きついけど、暖かくて気持ち良いわ♪これで腰を動かせば良いのよね?」
僕は彼女の為すが侭だった。

 

これが女の生理現象なのだろうか?膣の中でペニスが動きだすと、ぢくぢくと愛液が染み出てきた。
快感が生まれ、どんどん大きくなってゆく。
「ああん、あ~ん♪」と僕は女のように喘ぎ始めていた。

(?)
男の僕が知る筈がないのに、この快感を以前に感じた記憶が蘇ってきた。
相手は「僕」ではない。
見知らぬ男に僕は貫かれ、あんあんと快感に喘いでいた。
いえ、その男は仁科先輩…あたしの初恋の人…
(これは聡子の記憶なのか?)
高まってゆく快感の中、僕は聡子の記憶を思い出していた。
(あたしのハジメテを先輩にあげるの♪)
そう決心してあたしの部屋に仁科先輩を誘ったの。
先輩はあたしを優しく抱いてくれて…いっぱいキスして…色んな所に触れられて…
気が付くと服が脱がされていた。下着だけの姿になっていた。
お汁がショーツから染み出してないかしら?
そんな心配をしてる間にも、先輩の手がブラの中に入り込み、優しく揉みあげていた。
「んあん♪」
勃起した乳首が摘ままれ、思わず喘ぎ声をあげてしまった。
「可愛い声だね。もっと聞かせてよ♪」
と先輩。
もう片方の乳首も摘ままれて、あたしは同じように喘ぎ声をあげていた。
「じゃあ、こっちはどうかな?」
先輩の手がショーツの中に入ってきた。
割れ目の上に指が這わされる。
「濡れてるんだね♪でも、まだ緊張している…」
先輩の指が割れ目に押し入ってきた。
やはりハジメテは怖い。自分でも弄っていない所に先輩の指が入り込んでくる。
「ああっ!!」
強烈な快感が全身を貫いていった。
「クリトリスだね♪次はどんな媚声を聞かせてくれるのかな?」
先輩の指があたしの膣中を動いていた。
襲ってくる快感に、あたしは身を捩り、媚声を上げて応えていた。

「じゃあ挿れるね♪」
いつの間にかショーツも抜き取られていた。
あたしは全裸で、その股間を仁科先輩に晒していた。
先輩が体を重ねて来ると、あたしの膣の中に指ではないモノが入ってきた。
(あたし…先輩とヒトツになれた♪)
それだけで幸せなのに、先輩が動くとまた違った快感がやってきた。
子宮口が突つかれる度に快感が増してゆく。
あたしは自分でも何を叫んでいるのかわからなかった。
快感の竜巻に乗って、天国にもいっちゃいそうな気がした♪

 
「あん♪ああ~~ん!!」
僕は悶え、嬌声をあげ続けていた。
聡子が仁科先輩に抱かれていた時が再現されているみたいだ。
「ああん♪イクゥ…イッちゃう~~!!」
僕は快感の高みに押し上げられていった。
聡子の記憶はそこで途絶えていた。
僕もそれ以上の記憶を引き出す事は出来なかった…

僕は聡子の肉体から離れ、宙に浮かんでいた…

 

 

この部屋は特異点にあったのかも知れない。
この部屋で女性がイくと、魂が抜け出してしまうみたいだ。
聡子もイッた拍子に肉体から切り離され、慌てた仁科先輩に魂が戻る前の肉体だけを病院に運ばれてしまったようだ。
彼女の魂はこの部屋を出るに出れず、途方に暮れていたようだ。
僕自身はもともと幽体離脱し易い質だったようで、何かの拍子にフと抜け出してしまうのだ。

 
「ああん♪あ~~ん♪」
今夜も僕は「僕」に貫かれ、淫らに喘いでいた。
今の僕は聡子ではない。
僕の話に興味をもった女の子に肉体交換を実践してあげているのだ。
「女の快感」は一度味わうと病み付きになってしまう。

「ねぇ、もう一度良い?」
一度イッて魂が切り離された後、僕はもう一度彼女の肉体に戻り、「僕」におねだりした♪

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