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2015年12月 5日 (土)

記憶の中の彼…

記憶の中に「彼」がいた。
女の子だった僕を優しく抱いてくれた「彼」が思い浮かぶ。
男に戻ってしまった僕は、もう二度と「彼」に抱いてもらえないのだろう…

 
「彼」=もう一人の「僕」

 

その日は空一面に雲が掛かっていた。
どんよりとした「空」に、僕の気分もどんよりしていた。
昼に食べた焼き魚が当たったのか、午後イチに腹痛で医務室のベッドの世話になった。
多少は落ち着いた所で、先に帰宅する事にした。

どんよりとした空の下、雑木林の中の一本道は更に暗さを増して見えた。
曲がりくねった道を進んでゆくと、備え付けの街路灯とは異なる灯りが見えた。
その光の下には「宇宙人」としか言い様のない人影が立っていた。
「君の存在を貸してもらいたい。」
宇宙人はそう言葉にした訳ではないが、そのような内容を直接僕の脳に送り付けてきた。
「存在を貸す?」
「そう。我々はこの世界を知るため、実在する人物に成り代わり潜入調査を行っている。だから、君という存在を貸してもらいたい。」
「べ…別に良いけど…その間、僕はどうしてるの?」
「同一の存在は複数あってはならない。君には別の存在になってもらう。」
「眠らされてる…とかじゃないんだ。」
「君の表面的な記憶は写しとる事ができるが、君には可能な限り我々が君自身のように行動しているか助言してもらいたい。」
「助言…ね。けど、常に一緒というのは無理じゃないかな。一緒に仕事する訳にもいかないし…」
「マスコットなどの人形なら常に傍にいられるのではないか?」
「どこかの魔法少女みたいだな。でも、話している所を見られないとも限らない。それに、僕は人間以外の存在になるのなら、寝て待つ方が良いな。」
「なら、家に居る間だけでも一緒にいて不自然でないようにしよう。」
「は、はあ…」

と、同意した。
その直後、辺りが強烈な光に包まれて僕は目を閉じていた。

「もう目を開けて大丈夫だよ♪」
どこかで聞いたような男の声がした。
(誰だったのだろう?)
と記憶を辿りながら目を開くと、男物のシャツの生地が目の前にあった。
それが男性の胸であり、更に男の腕が僕の背中に廻され、抱かれているような格好になっていた。
(男同士で何をやってるんた?)
と、彼を突き離そうとして「違和感」に襲われた。
彼に抱かれ、抑え付けられている胸の間に異物があった。
弾力のある塊が左右に一つづつ…それが僕の胸に付き、ベルト状の物が胸下部に巻かれ、それに連なるものがその塊を被っている…
胸だけではない。
顔には何か塗られている。それは唇にまで達していて、舐めると変な味がした。
耳には何かがぶら下がっていて、髪の毛が引っ張られるような感じがする。
僕の髪の毛ってこんなに長かったっけ?
髪の毛の一部が目の前に垂れてきていた。
残りのほとんどは後頭部で縛られているようだ。

太ももにも違和感がある。
衣服の端が太ももに当たっている。
ズボンも穿いていないようだが、それ以上に伸縮性のある生地で、脚全体が包まれているようだ。
そして、足…踵は地面に付いていないようだ。
踵の下に何かがあり、爪先は地面に付いているが、踵は下ろすことができない不安定な状況が作り出されている。
「もう良いから離して。」
そう言った僕の声はもう僕のものではなかった。

声…
そう言えば、この男の声には聞き覚えがある。
…録音された「僕」の声だ!!
仰ぎ見ると、そこには鏡で見慣れた「僕」の顔があった。
少し違和感があるのは、見る角度が違うからだろう。
「君は僕と同棲中の女の子という設定だけど、問題ないかな?」
そう言われたが、問題はあり過ぎだ。
何で僕が「女」なんだ?
確かに、同棲という事なら、一方は女には違いない。
彼が「僕」として行動するというのであれば…
だが、男同士の「同居」という手もあったんじゃないか?
同居なら夜一緒にいても問題はない。
しかし、男二人が生活するには僕の部屋は狭過ぎる。そう…
「寝るのはどうするの?貴方の部屋には一つしかベッドがないでしょ。」
「問題ないよ。同棲中という設定だ。君は僕の恋人なんだから、一緒に寝れば良いんだよ♪」

彼と「一緒に寝る」という言葉がキーワードだったのか、不意に身体の奥が高熱を帯びだした。
それは辺りを焼き尽くすものではなく、チーズのように身体の内側を蕩けさせてゆく。
「とにかく、家に戻ろう。」
彼の言葉に、あたしはゆっくりと歩きだしていた。

 
翌朝、彼が仕事に出て行った。
「いってらっしゃい♪」
あたしは彼を見送ると、朝御飯の後の食器を片付けた。
洗濯物を洗濯機に掛け、寝乱れたベッドを直し、床に掃除機を掛けた。
洗濯機が鳴ったので、洗い終わった洗濯物を取り出し、ベランダに干した。
「ふうっ♪」
一段落してため息を吐き、時計を見た。
(休みの日ならまだ寝てることもある時間じゃない♪)
(暇ね…)
(天気も良いから、お散歩でもしようかしら?)
あたしは服を着替えようとして、クローゼットの中には「彼」の服しかないのに気づいた。
(そうよね。着替えはあった方が良いわよね…)
あたしは昨夜持っていたバックの中から化粧ポーチを出して身なりを整えると、彼の蓄えから少々お借りして買い物に出掛けた♪

 

「ただ今…」
と彼が帰ってきた。
「お帰りなさい♪」
あたしは彼に抱きついていった。
「一人で寂しくなかったかい?」
と彼が心配してくれた。
(それより、新しく買った服に気づいて欲しいのに…)
そう思いつつも、
「大丈夫よ。今日は買い物して廻ってたから。」
「そういえば、新しい服を着ているね。似合ってる。可愛いよ♪」
(やった♪可愛いって言ってくれた♪)
「あぁ、晩御飯作ってくれたんだ。冷めないうちに一緒に食べよう♪」
あたしは彼のジャケットを脱がし、ハンガーに掛けた。
彼が料理のつまみ食いをしようとするのが見えた。
「先に手荒いウガイしてよね。」
と洗面台に促した。
(気付いてくれるかな?)
今日はあたし用の歯ブラシも買ってきて、彼の歯ブラシの隣に立て掛けておいたの♪
ちらりと洗面台を見ると、彼の視線の先にはあたしの歯ブラシがあった。

 

 
「僕は僕らしくできてるかな?」
ベッドの上で彼はそう聞いてきた。
「そうね…もう少し強引さがあっても良いんじゃないかしら?」
「強引さ?」
「あたしたち恋人同士なんでしょ?ベッドで一緒に寝ているのに…何もない…なんて…」
「良いのか?」
あたしはコクリと頷いていた。

 
「ああん。ああん♪」
あたしの媚声が部屋の中に渦巻いている。
彼に突かれ、あたしの膣の中を彼のペニスが行き来する。
擦れ合う粘膜…快感に満たされる。
これが「オンナ」の快感…あたしが求めていたもの…
(?)
これは本当にあたしが求めていたものなの?
否…この肉体はあたしのものではない!!
あたしの…僕の妄想が産み出した「存在しない女」だ。
彼と一緒にいても不審がられない存在を僕の僕の表層記憶から読み取って造りあげたものだ。
すべては現実ではない!!

だけど…

僕はこの快感に押し流されてしまいそうだ。
肉体の芯から込み上げてくる快感に突きあげられる…
「イク?イッちゃうの?」
「君がそう望んだのだろう?だから、ちゃんとイかせてあげるよ♪」
「えっ?ウソ!!」
あたしの膣に熱い塊が放たれた。
あたしは一気に昇り詰める。
あたしは何かを叫んでいたが、あたしの記憶はそこでプツリと途切れていた。

 

同じような日々が続いた。
あたしは家で彼の帰りを待ち、夜は彼に抱かれて至福な時を過ごす。
朝目覚めると食事を作り、彼を送り出す。
そして、家事をしながら彼の帰りを待っていた。

その日、夕食の下拵えを終えて彼を待っていると電話が鳴った。
彼だった。
「あの場所に来て欲しい。」
あの場所とは、初めて「彼」と出会った雑木林の中のことだ。

灯りの中に彼が立っていた。
あたしが彼の腕の中に飛び込むと、ぎゅっと抱き締めてくれた。
「ありがとう。我々の調査は終了した。」
頭の中に宇宙人が言ってきた。
「用は済んだので君に存在を返す。ありがとう。」
「ち、ちょっと待って!! あ、あたしはどうなるの?」
「君は本来の君に戻るだけだ。何の不都合もないだろう?」
見上げると、彼が優しく微笑んでいた。
「行かないで…」
「僕はどこにも行かないよ。本来存在していない君の存在が消えるだけだよ。」
「あ…あたしは…」
突然溢れだした涙が止まらない…
霞んだ目で彼を見る。
腕を伸ばし、彼の顔を引き寄せ…
キスした…

 
そして「彼」は消えた。

 

部屋に戻ると、僕は独りだった。
洗面台の前には「彼」と「あたし」の歯ブラシが並んでいた。
クローゼットに残された「あたし」の服…
元の姿に戻った僕は、もう着る事ができない。

ベッドには「彼」の臭い…
僕は布団にくるまり、泣き続けていた。

電車の中で

満員電車の中、ラッキーにも席に座る事ができた♪
早速、俺は居眠りを決め込んだ。
居眠りとはいっても、俺の場合は少し違う。
俺は居眠りしている間に、精神を肉体から切り離す事ができるのだ。
いわゆる「生き霊」の状態になると、俺は他人に憑依できるのだ。

しかし、憑依と言っても俺が憑依した相手の精神を押し退け、その肉体を自由に動かすようなことまではできない。
精々、そいつと五感を共有するくらいだ。
が、それでも俺が自分では経験できないことを受動的ではあるが経験できるという事には大きな意義がある。

…で、
俺は自分の肉体を抜け出すと、満員電車の中を物色した。
殆どの奴がゲームをしたり音楽を聞いていたりで面白い事はない。
が、ドアの脇には美味しそうな獲物が待っていた。

大人しそうな女子大生の背後に、殆ど特徴のない中年男性がピタリと貼り付いていた。
乗客からは死角となる場所から、女子大生のお尻を悪戯していた。
置換…いや、痴漢だ。

俺の正義感が強ければ、今すぐ肉体に戻り、席を立ち、女子大生を救いに向かうのだが…生憎、俺にはそのような正義感の持ち合わせがなかった。
克てて加えて、俺は臆病なのだ。捕まった時の事を考えるだけで、一切の犯罪から距離を置いていた。
当然、痴漢などできる訳もないのだが、この男に憑依する事で、自分が痴漢をしている気になる事ができるのだ。
掌に伝わる女の尻の弾力。撫で廻していると女も上気してきて、時には甘い吐息をあげる。
スカートを擦り上げ、掌を中に入れる。
外気から遮断され、湿度の高まった股間…パンストの上から掌を這わせ、指先で絶妙な刺激を与えてゆくと、愛液が染み出てくるのを感じる事ができる。
女の側の準備が整うと、パンストの中に指を潜ませてゆく。
指先に愛液が絡み付く。更に奥に進めると、しっとりとした肉壁に挟まれる。
圧力を感じながら、女の膣に指を入れ弄んでゆく。
立っていられなくなった女を支えてやるが、その時には胸に手をやり、バストも揉みしだいてやる。
女は必死に嬌声を堪えている。
膣に入れた指は女が感じる所を執拗に責めたてていた。

ビクリ

と女が身体を震わした。
多分、イッてしまったのだろう。
ここまでできるのは、俺が憑依した痴漢の男のテクニックが素晴らしいのであって、決して俺自身にそのような能力があるのではないのだ。

今、女子大生を痴漢しているこの男がどれだけの技量を持っているかは定かではない。
が、騒ぎになれば憑依を解いて、元の肉体に戻れば良いのだし、痴漢行為は元々この男がやっていたものなので、それなりの刑罰を受けても仕方のないことだ。

俺は憑依すべく男に近づいた…

ガタン

車両が揺れた。
俺の目の前にはドアのガラス窓があった。
そこに写っているのは痴漢されていた女子大生だ。

 
俺は痴漢されている女の方に憑依してしまったのか?!

 

俺は尻を撫で廻されていた…
尻を撫で廻す男の掌は微妙な刺激を与えていた。
それはエッチな快感を伴い、この女もスイッチが入ったようで、小さく甘い吐息をあげていた。
その反応に気を良くしたのか、男はスカートを擦り上げ、掌を中に入れてきた。

(ち…一寸待て!! 俺は男だ。男に犯られる趣味はない!!)
と叫んでも、その声が男に届くことはない…

スカートの中、パンストの上から掌を這わされ、指先で絶妙な刺激を与えてくる。俺は愛液が染み出てくるのを感じていた。
男は指先で女の側の準備が整ったのを知ると、パンストの中に指を潜ませてきた。
直に割れ目に触れ、指に愛液を纏わす。愛液が絡んだ指を、更に奥に進めてくる。
膣の中は男の指に蹂躙されていった。

 
憑依している俺には、何もできない。
女子大生も男にされるが侭、何もできないでいる。
快感に耐えきれなくなったか、足に力が入らなくなった。
崩れ落ちる所を男が支える。が、その時に男の手は胸に廻っていた。
俺のバストが揉みしだかれていた。乳首が摘ままれ、新たな快感に俺は堪えきれず、女のように喘いでいた。

俺の喘ぎ声が聞こえる者はいない。
女も必死に嬌声を堪えている。
が、俺たちは快感の波に良いように弄ばれていた。
膣に挿れられた指は執拗に責めたててくる。
俺も彼女も限界に達し…

「んあんっ!!」
終に彼女は淫声を漏らした。
絶頂に達した彼女がガクリと首を垂れる。
意識を失ったようだ。

彼女の声に、乗客の視線が集まる。
こちらを見た乗客は、男の痴漢行為を目の当たりにした。
ざわめきが広がる。
満員電車の中、男には逃げ場はなかった…

 

 
俺は密かに女の肉体から抜け出していた。
(女の感覚も面白いな♪)
俺は新たな獲物を探して、満員電車の中をうろつくのだった。

 

無題

(鏡に写っているのは誰だろう…?)

左右の上方から降ろされたロープに手首を縛られ、床に座ることはできても、横になることができない。
僕と同じような姿勢で佇んでいるが、鏡の中に写っている彼女は僕ではない。
僕は男で、彼女は女だ。
同じように裸で吊るされているので、よくわかる。
彼女の胸には立派な乳房があり、股間にペニスは見当たらない。
彼女が正真正銘の「女」であることは間違いない。

そして、僕は生まれた時から「男」だ。
幼い頃は、男友達と小便の飛距離を競ったり、冬の日に雪に字や絵を描いたりした。
思春期を過ぎてからは、不意にむくむくと大きくなるこいつに苦労させられた。
勿論、ベッドの中でしごいて、白濁した液体を放出させる事もしている。

僕は「男」だ。

たとえ、飲まされた薬の作用で胸が膨らんでいたとしても、僕は「男」だ。
たとえ、飲まされた薬の作用でペニスが見えなくなるくらい小さくなったとしても、僕は「男」だ。
たとえ、飲まされた薬の作用で股間に縦の溝ができ、その奥に新たな穴が開いたとしても、僕は「男」だ。
たとえ、その穴に他の男のペニスを突っ込まれ、快感にアンアン喘いでしまったとしても、僕は「男」だ。
床に座り込み、股間の溝から、他の男から放出された精液を滴らせていても…

(鏡の中の「女」は僕じゃないっ!!)

 

 
しかし、否定しようにも否定しきれるものではない。
鏡に写っているのは僕自身なのだ。
僕が手を振れば、鏡の中でも手を振っている。
僕が口を尖らせば、口を尖らせた姿が鏡に写る。
胸を揺らせば、鏡の中の胸も揺れ、揺れた乳房の感覚が僕にフィードバックされてくる。

僕の胸には立派な乳房があり、股間には男に犯され、精液に満たされた膣が存在している。
そこには、始めから無かったかのように、ペニスはその痕跡さえも失われていた。

僕が正真正銘の「女」であることは間違いないのだ…

 

再び男がやってきた。
「コレが欲しいか?」
と彼のペニスを見せつけるようにして聞かれた。
僕はソレによってもたらされた快感を思い出していた。
股間が潤み始めている。
僕は首を縦に振っていた…

 

ウィング

重力に従って俺の肉体は落ちてゆく。
ただ、空気の抵抗がニュートンの法則を妨害し、服に付いた襞が揚力与えて落下速度を軽減する。

10秒、11、12…

カウントする度に地面が近付いてくる。
腕の高度計を見ながらタイミングを計る。
姿勢を直し、足下に噴射ノズルを向ける。
カウントダウン
3、2、1…
ゼロで点火する。
減速の衝撃が背筋を伝う。
落下速度は急激に相殺されてゆく。
ウイングを展開し、ロケットを減速仕様から推進仕様に切り替える。
地面から数メートルの高さで巡航形態への移行を完了させた。
あとは、一定の高度を維持したまま、ターゲットに向かう。
コースは事前に確認している。あとは想定外の障害物をタイミング良く回避するだけだ。

ターゲットを視認した。
マーカーをセットする。
外すとこれまでの努力が無駄になる。
3、2、1…
シュート!!

マーカーはターゲットを捉えたか?
一呼吸の後…
「ピーンッ」
と乾いた音がインカムに届いた。

成功だ。
思わずガッツポーズがでる。
が、タイムは…

 

一旦、上昇してバラシュートを展開する。
観客の拍手に迎えられてポートに着地した。

これは「フリーフォール」という競技だ。高高度から落下し、落下地点から離れた場所に設置されたターゲットまで障害物を迂回して接近し、マーカーを命中させるまでの時間を競うのだ。
当初はサバイバル要素が強い競技で、パラシュートで着地した後は徒歩でターゲットに向かっていた。
装備品の進化から、降下時の減速にロケット噴射を併用するようになってから、急速に競技の質が変わっていった。
着地時に使うロケットの燃料を余らせ、少しでも歩かずにターゲットに近づこうとした。
横移動の距離を伸ばすために「ウイング」が開発された。
ロケットの性能も向上してゆく。
そして現在では「歩いて」ターゲットに近づくことは無くなっていた。
但し、障害物の回避の項が残されているため、移動時は厳格な高度制限が課せられていた。

「タイムは?」
俺は近付いてきたクルーに声を掛けた。
「結構良いタイムが出ていたよ。そろそろ順位が出るんじゃないか?」
彼の言葉に掲示板に目を向けた。
観客も皆、同じものを見ていた。
「減点なし。暫定三位だ。やったな♪」
ポートの上で俺たちは手を握り合った。
しかし、3位とはいっても、この後に表彰台の常連逹が跳ぶのだ。順当にゆけば入賞さえ危ういであろう。
そんな事はおくびにも出さずに、俺逹は観客に笑顔で手を振りながらポートから降りていった。

 

 
結局の所、総合で8位で競技会が終了した。
一応はクルー逹と祝杯をあげたが、結局の所タイム的には劇的な変化はなく、上位者逹との間に厚い壁を感じていた。
「何腐ってるんだよ♪」
古くからのクルーのヨハンが俺に声を掛けてきた。
「今回はめずらしく減点が無かったじゃないか♪」
「減点なしで8位だ。つまり、俺より早い奴がもっといるという事だろう?」
「まあ、それがプライベイターの限界かもな?最新技術を湯水のように使えるワークスに敵う筈もないさ。」
慰めにもならない慰めには呆れるしかないのだろう。

「ケイさん…」
おずおずと俺を呼ぶ声があった。
新しくクルー参加したクリスだった。
「どうした?」
と声を掛けてやると、
「あまり確かな情報ではないんですけど、新発想のウイングを開発している企業があるそうなんです。それを使えば格段にタイムが縮まるかも知れません。」
「何だよ。良く聞くガセじゃないのか?」
「ガセかどうかは、実際に見てみてから判断しても良いんじゃないですか?」
「まあ、その新発想とやらがどんなものか知らないが、見る分には問題ないんじゃないか?」
俺はヨハンに振ってみた。
「これはお前のチームだ。お前が良いと思う事なら誰も反対はしないよ♪」
「それでもだ。ヨハン。君の意見を聞きたい。」
「新発想とやらはあちこちで聞くけどね。見るだけならどうって事ないだろう♪次の競技会まではまだ時間がある。良い骨休めにもなるかもな。」

翌朝、俺とヨハンはクリスの案内でその新発想のウイングを見に出掛けた。

 

 

「このウイングは飛行中に翼面を変形させる事ができるんです。」
開発者だという白髪の老人がそう言ってウイングを寄越した。
「軽っ!!この重さでそんな機能を組み込めたんですか?強度に問題はないんですか?」
俺が聞くと
「全ては意思の力です。意思が強ければかなりの強度が維持できます。変形の度合いも操縦者の想像力次第です。」
「意思の力に想像力ね。確かに新発想だな。」
ヨハンはもう完全に彼等の相手をすることを放棄したようだ。
「着けてみませんか?」
クリスが涙目で訴えてくる。
「ボク、どうしてもおじいちゃんのウイングを認めてもらえるようにしたいんだ。」
「おじいちゃん…て、本当の血縁関係なのか?」
とヨハン。
俺ももう一度二人の顔を見比べた。言われてみれば、共通の遺伝子の存在は否定できなかった。
そして、俺はこういうシチュエーションに弱いのだ。
「よし♪着けてやろう。」
と一度脱いだジャンパーを羽織ろうとすると、
「済みません。これにはセンサーが付いていて、直接皮膚に触れている必要があるのです。」
「直接…って、脱がないといけないのか?」
「はい。それに、ウイングを通す穴の開いたシャツとジャケットも用意してありますから♪」

俺はクリスの指示に従って服を脱ぎ、ウイングを装着した。
「流石に軽いだけあって装着の違和感はないな。」
鏡に映してみると、背中にウイングがぶら下がっているが、まったく気になる事がなかった。
「で、ウイングを展開するスイッチはどこにあるんだい?ロケットがないから試し翔びはできないけど、広げた時の感じを見てみたいんだ。」
「ケイ。聞いてなかったのか?そいつは意思の力と想像力で動かすんだぜ♪」
とヨハンが茶化す。
が、俺がクリスに問いかけの視線を送ると…
「そうです。想像しつみてください♪たとえば、白い鳩が羽ばたいて大空に飛び上がる姿をイメージできますか?」
と答えが反ってきた。
(白い鳩ね?まっ白な羽が大きく広がって…)
俺がクリスの言葉に従ってみると
「バサッ!!」
と音がした。
鏡を見ると、俺の背中に天使のように白い羽が広がっていた。
羽ばたく姿を想像すると、同じようにが羽ばたく姿が鏡に写る…
そして、俺の身体は宙に浮いていた!?

「凄いっ!!まるで天使みたい♪」
とクリス
「エンジェル・ウイングの名の通りじゃな。」
と開発者の老人が言った。

イメージするのを止めるとウイングは力を失い、俺は空中から地面に落とされた。
それ程の高さでなかったので問題はなかったが…
「かなりの集中力がいるな。いつものスピードでコントロールを失ったら、只では済まないぞ。」
ウイングは力なく俺の背中に垂れ下がっていた。
「それは羽ばたくといった動きを伴っていたからじゃよ。飛行機のように固定翼にイメージすれば、それほどの苦はない筈じゃよ。」

 
場所を変える。
外に出た。
屋敷の外にはなだらかな下り坂が続いていた。
「試験飛行には丁度良いじゃろう。」
「ロケットは?」
「済まんが、羽ばたいて上昇してくれんか?あんたなら滑空するだけでウイングの特性を理解できるじゃろう?」
ウイングの強度は意思の力次第と言われては、ロケットで負荷を掛けるような事はしなくても良いだろう。
確かに滑空するだけでかなりの事は判る。
俺は再び羽を広げて上昇した。
木々の高さを十分に越えたところで滑空に移る。
確かに、羽ばたきがなければ維持するのも楽だ。
空気抵抗を減らすよう、通常のウイングの形に変形させた。
ウイングの角度の調整が阿吽のタイミングで為される。
確かに、これならウイングの操作に関わるロスが殆どない。
微かな上昇気流を感じた。
少し翼面を拡げ、風を捉えた。

ぐいっ

と身体が持ち上げられる。
放り上げられるように、俺は高々と舞っていた。
ウイングは俺の意思に忠実に従い、複雑な軌跡をも簡単に描いてしまう。

「おーい!!」
ヨハンの呼ぶ声が聞こえた。
ロケットの推力を必要としないので、俺の周りには風の音しかしない。
ヨハンの声が簡単に届いてくる。

俺はウイングを狭ぼめて急降下し、じいさんの言う「天使の羽」をいっぱいに拡げて彼等の前に着地した。
「どうだ?と聞くまでもないか。お前のその顔。相当に満足しているみたいだな♪」
「ああ。言葉ではなかなか表現できないよ。良い経験ができた。」
「これでレギュレーションが通れば、採用か?」
「レギュレーション?」
クリスが不安な表情を浮かべる。
「これで次の競技会に出る事はできないの?」
「ああ。特に新規参入のメーカーの部品は、耐久性やらなんやらと、一年近くの審査を経て正式に採用できるようになるんだ。」
ヨハンがクリスに説明していた。
俺はウイングを外して元の服に戻ろうと、屋敷に入っていった。

 

 

「まだ一年は金にならないんだってな…」
「しかし、このウイングの出来は素晴らしい。いくらで出すか知らないが、どんな値段をつけても欲しがるやつは放っておかないよ♪」
「無理だね。次の競技会であんたがこのウイングで優勝してもらわない限り、先はないんだ。」
「そんな事は…」
「そいつにはいくつか欠点がある。一年も念入りに調べられれば、お蔵入りは間違いない。」
「その間に改良すれば済む話しじゃないのか?今飛んだ限りじゃ不具合はなかったぜ♪」
「いや。即に判る。そのウイングは呪われているからな。」
老人は懐から薬瓶を取りだし、蓋を開けた。
「なかなか素敵な夢を見せてもらったよ…」
「おい、じいさん!!止めるんだ!!」
俺の制止も間に合わず、老人は瓶の中の薬を飲み干していた。
そのまま崩れるように横たわる。

「ヨハンっ!!」
俺はヨハンを呼んだが、彼が来てもどうにもなるものでもない。
「じいちゃん!!」
ヨハンと一緒に入ってきたクリスが老人に駆け寄ったが、既に事切れていた。

 
ヨハン、クリスと共に老人の遺体をベッドに運んだ。
「何故なんだよ?」
そう問い掛けても、老人はもう答える事ができない…
ヨハンは俺を老人の脇に残すと、クリスを教会に向かわせた。
そして、彼自身は厨房に入っていた。食事の支度でもしているのだろうか…

クリスが牧師達を連れてきた。
牧師は先ず老人を診た。即に薬物による死であると断定する。
老人の死の状況、死に至る状況を俺に確認した。
「その、背中にぶら下がっているのが彼の開発したウイングなのだね?」
牧師がウイングに触れる。
まだ、飛んでいた時の一体感が残っていたのか「触れられた」感覚が伝わってきた。
「あっ…動いた?」と牧師が慌てて手を放した。
俺の緊張が無意識にウイングを動かしていたのだろう。
「済みません。スイッチの切り方をまだ聞いていなかったので…」
「もう少しよく見てみたい。外してもらえないか?」
そう言われ、俺はクリスを呼んだ。

が…

「外せません。これは一度装着すると外せないんです。」
その言葉に、俺は頭が真っ白になってしまった…

 
牧師はその後、一緒に来た人達に葬儀の準備を指示した。
殆どの手続きはヨハンがしてくれた。
明日の朝、老人を迎えに車を寄越すと言って、慌ただしく牧師達は教会に戻っていった。

 

落ちついたところでヨハンが暖かなスープを持ってきてくれた。
三人で食卓を囲む。
「美味しい♪」
とクリスが一気に飲み干してしまった。
いつもの事だが、ヨハンの作るスープは、体の芯ばかりでなく、心にも染み渡ってゆく。

「ケイ。疲れただろう?」
とヨハンが声を掛けてきた。
「特に、精神的にな…」
俺の頭の中では、今もクリスの言葉が繰り返されていた。
(外せません。これは一度装着すると外せないんです。)

このウイングは認証されていない。則ち、このウイングでは競技会に出場できないという事になる。
「俺はもう翔べないんだな。」
俺は天を仰いだ…

「大丈夫じゃないかな♪」
「どういう事だ?」
「別のウイングを着けられれば良いのでしょう?想像力を働かせれば良いんですよ♪」
「これだけのモノを無かった事に出来るのか?」
「ケイさんの想像力次第ですけどね♪」
俺は背中に垂れているウイングに触れてみた。
(どうする?見えなくできるか?)
「ほうっ」と感嘆の声が上がった。
俺の手の中で、ウイングが透明になった。
が、
その存在までもを消す事はできない。
俺が透明化を諦めると同時に元の色に戻った。
このままでも良いが、小さくできないか?
俺のイメージが反映され、ウイングが縮んでいった。
が、
「醜い瘤になっただけだよ。」
と評価された。
「全体的な容量は変えられないようだな。長さを縮めれば、その分厚みが増すんだ。」
「なら、極端に薄くして体に巻き付けてみたら?」

(薄くするのか…)
俺はウイングを布のように薄く、柔らかくしてみた。
ウイングは俺の背中から数メートルに渡って広がっていった。
「何か、花嫁のベールみたいだね♪」
クリスの一言が、俺のイメージに変な影響を与えた。
広げたウイングの色が純白に染めあげられ、レース模様が浮き上がった。
そればかりではない。
布状に広がったウイングが、俺の体に巻き付いてきた。
「な、何なんだ?」
否、それが何であるかは即に理解していた。
それは花嫁の着るウェディングドレス以外の何物でもなかった。
ご丁寧にも、大きく開いた胸元からは豊かな乳房とそれに挟まれた深い谷間が見えた。
見た目と同様に、露出した胸元が外気に触れている感覚が伝わってきた。
と同時に、俺はまたジャケットを着たままであり、そこから得られる温もりも感じていた。
「凄い!!綺麗だよケイさん♪」

クリスの言葉に我に還った。
慌ててイメージを掻き消した。
ウイングは元に戻り、俺の背中に垂れ下がった。

「ケイさんの想像力って凄いんですね♪」
クリスが感嘆する。
「こいつのは、想像力というより、妄想力と言った方が良いかもな♪」
とヨハンが茶化す。
「今ので、ウイングが服を擬態できるのは解ったが、想像力が途切れた時を考えると、やはり服は着ておいた方が良い。できれば、服の下に納められれば想像力もそんなに必要ないだろう。」
「同感だな♪」

 

 
翌朝、服を着る前にウイングを薄く伸ばして体に巻きつけた。
下着の下にもう一枚服を着ているようなものだが、ウイングも皮膚の一部と考えると違和感が和らいだ。

ヨハンの作った朝食を終え、しばらくすると教会から車がやってきた。
遺体とともに俺達三人も教会に向かった。
迎えにきた人は俺を見て不思議な顔をしたが、言われいた人数に間違いがないのでそれ以上詮索する事はなかった。
これと言うのも、朝食の時にクリスが
「三人とも喪服で行きたい。」
と言いだしたからだ。
クリスの喪服はもともとこの館に置いてあった。
あとは俺とヨハンだが、クリスが両親の喪服が入る筈だと言ったのだ。
父親の喪服をヨハンが着る分には何の問題もない。
が、何で俺が母親の喪服…女装しなければならないんだ?
「昨日のウェディングドレス姿のケイさんを見てるからね♪ママの喪服なら、少しブカつくかも知れないよ。」
実際、背丈はともかく、ウエスト回りなどのサイズの誤差はウイングが埋めてくれた。
胸も服に合わせて大きく膨らんでいる。
が、パットなどの詰め物と違い、皮膚感覚と同じものをウイングが俺に伝えて来るのだ。
そう。俺がまるでGカップの巨乳女そのものであるかのように感じさせるのだ。
喪服だけではない。下着から全てをクリスの母親のモノで揃えていた。

教会に着いてからも、その体型からクリスの母親本人に間違えられた。
顔が全くの別人と判ると、その事は瞬く間に広がったようで、その後俺達はじいさんの「客人」として距離を置かれるようになった。

 

葬儀も滞りなく済み、翌日には事後処理の残るクリスを残して俺達は屋敷を辞す事にした。

部屋に戻り、喪服を脱いでゆく。
ふと見ると、ヨハンがこちらを見ていた。
「な、何を見てるのよ?」
「そのウイングの能力と、お前さんの想像力に驚いている。」
俺は下着姿で脱いだワンピースをハンガーに掛けていた所だった。
「まるで本物みたいだ。もっと良く見せてくれないか?」
「い、嫌よ。恥ずかしい…」
「別に、お前自身の裸を見せる訳じゃないだろう?俺はウイングの状態を確かめたいだけだ。」
「純粋に技術者として…と言う事?」
「ま、まあ…そういう事だ。先ずは接合部…背中から確認したい。ベッドに俯せになってくれないか?」
「えっ?…ええ…」
なし崩し的にヨハンの指示に従っていた。
下着姿のまま、ベッドに上がった。

「ひゃん♪」
突然、背中を撫であげられて、変な声を出してしまった。
「接合部を確認したいんだ。フックを外すぞ。」
彼の手が俺のブラジャーを外しにかかった。
背中を撫でられてゆく。
「どう見ても、ウイングを引き伸ばして巻き付けているようには見えないな。」
彼の掌が、背中から腰に降りていった。
その指が黒タイツの端に掛かり、それを外そうとした。
「足の先まで良く見たいんだ。」
彼の提案に応じるべく、少し腰を浮かせてあげた…
「ち…ちょっと、止めてよ!!」
彼の手がタイツと一緒にショーツまで脱がそうとしているのに気づいて止めようとしたが、時既に遅く、一気に下半身を剥き出しにされていた。
「く…くすぐったい!!いつまで触ってる気?」
ヨハンは執拗に尻の回りを確認していた。
「凄いな♪まるで女性の骨盤がこの下にあるように感じるぞ。ウエストの括れからの曲線は女性そのものじゃないか♪」

彼の手の動きにはそのような意図はないのだろうが、尻をまさぐられていると、変な気分になってくる。
「なあ、そろそろ良いんじゃないか?」
耐えきれずに俺が言うと
「まだ前を確認してないだろう?」
その言葉と同時に、ぐるっと仰向けにされた。
今度も抵抗する間も与えられなかった。
「ちゃんと陰毛まで女性仕様…って、お前、濡れてるのか?」
「だって、ヨハンの刺激が絶妙なんだもの♪なんか、変な疼きも感じてるのよ。」
俺がそう言うと、彼は俺の股間に手を伸ばしてきた。
「ダメっ!!」
と延びてきた手を抑えたが、彼の力に抗することができない。
「ああんっ!!」
敏感な所に触れられて、思わず淫声を上げてしまった。
「何考えてるのよ。男同士でしょ?」
「今のお前はオンナそのものじゃないか♪どこまでオンナになってるか確かめさせてくれよ。」
「そ…そんなぁ。いつまで精神力を保ってられるか判らないわよ!!」
「そん時はそん時だ。それまではじっくりと確認させてくれ♪」
そう言うと、ヨハンは股間に当てた手の指を更に押し込んだ。
(な、何だコレは?)
俺は胎の中に侵入するヨハンの指を感じていた。
そこが「膣」であると漠然と意識していたが、それ以上に疼きを鎮めてくれる快感に身を委ねていたくなった。

俺が素直になったとみると、ヨハンは俺の脚を取り、股間を広げさせた。
「ゴクリ」と彼が唾を飲み込む音が聞こえた。
「凄いな♪よくここまで再現するもんだ。これなら問題ないな♪」
彼の指が膣から抜かれると、あたしは指を追うように腰を浮かせていた。
「待ってな。これからが本番だ♪」
彼は体勢を整えると、開かれたあたしの股間にのし掛かってきた。
さっきの指より太いモノがあたしの膣に挿入されてきた。
(これはヨハンのぺニス?)
それ以外に考えられるものはない。
あたしの膣を満たすペニスにあたしの心も満たされる。
そして、彼が腰を動かす。
快感が溢れ出す。
彼のペニスの先端が、子宮口を叩く度に、あたしは嬌声をあげていた。

 

 
(隣で寝息をたてているのはヨハンか?)
窓から朝日が差し込んでいる。
(朝か…)
俺はヨハンを起こさないようにベッドから降りた。
努めて昨夜のコトは思い出さないようにする。
今はもう、ウイングは俺の背中に垂れており、俺本来の肉体を取り戻していた。

服を着て外にでる。
清々しい空気に爽快な気分になった。
上着を脱ぎ、意思の力を込めると、背中のウイングが広がる。

「ばさっ!!」

羽音をたてて、俺は朝空に舞い上がった。

 

特異点

しくしくしく…

引っ越してきたばかりのアパートの部屋で寝ていると、女の子の泣き声に目が覚めてしまった。
泣き声は部屋の中から聞こえてくる。
やはり、格安事故物件につきものの「アレ」かな?と思いつつ起き上がった。

部屋の隅にその女の子はいた。
「どうした?」
と声を掛けると「誰?」と女の子が振り向いた。
(けっこう可愛い娘じゃないか♪)
「この部屋の新しい住人。君は?」
「あ、あたしを怖がらないの?」
「格安物件だったからね。こんな事もアリかと思っていた。」
「あ、あたし…死んじゃったんだよね。まだやりたい事いっぱいあったんだ。」
「たぶん、死んでしまった人の多くがそう思ってると思うよ。でも、死んでしまった事実を変える事はできないんだ。だから、大人しく成仏した方が楽だと思うよ。」
「でも…」
彼女は僕から視線を反らせた。

「ぁっ…」
彼女が小さく叫んだ。
そして急に立ち上がり、僕の寝ていたベッドに飛び付いた。
「カラダ…」
すれ違い様、彼女はそう呟いていた。

振り返ると、ベッドの上には「僕」が寝ていた。
その肉体に彼女が吸い込まれてゆく。
一瞬、何が起こったのか理解できないでいた。

「僕」の目が開く。
「あ、ああー」
と声を出していた。
スーハーと大きく深呼吸すると「僕」はむっくりと起き上がった。
「男の人の身体って、こんな感じがするんだ♪」
彼女が僕の肉体を動かしているのは間違いないようだ。
(では、今の僕は?)
と、自分自身を見てみた。
自分の身体が透けて、床が見えている。
(僕の方が幽霊になっちゃったのか?)
慌てて自分の肉体に戻ろうとしたが、既に彼女に占領されているので、跳ね返されてしまった。
「これなら外に出られるかしら?」
今の彼女には僕が見えないかのように、玄関に向かい扉を開けた。
「大丈夫みたいね♪」
サンダルを履いて扉の外に出ると即に戻ってきた。
パジャマを脱ぎ、適当に着替えてゆく。
「ちょっとお金借りるわね。」
と僕の財布の中を確認した。
上着を着てスニーカーを履いてアパートを出て行こうとする。
僕は慌てて後を追った。

 

普段はバスを使って駅に向かうのだが、彼女はバス通りを歩いて駅に向かった。
彼女が僕のお金を節約してくれているのか、単に深夜でバスが動いていないだけなのかは判断が難しい。
歩き続けること一時間あまり。駅に到着すると始発電車の時間になっていた。
駅の灯りは既に煌々と灯っていた。まだ朝も暗いうちから働いている人がいると思うと頭が下がる。
彼女は切符を買い、始発電車に乗り込んでいった。
僕も後を追うが、切符は買っていない。多分だれにも見られてないし、自動改札もすんなりと通してくれた。

電車の中にはほとんど乗客がいない。
そんな中、彼女は一番端の席に腰を降ろしていた。
膝を揃えて足先を少し流して座る姿は女性ならあたりまえなのだろうが、「僕」の身体でやられると少々気持ち悪い。
どこで降りるのかは知らないが、彼女はうとうとし始めていた。

 

終着駅の手前で目を覚ました。
彼女は僕の携帯を操作していた。
(ロックしてた筈だけど…)
と思ったが、生体認証を使ってたのを思い出した。機械は勝手に彼女を僕だと認識してしまったようだ。
画面を覗き込むと時刻表になっていた。
乗り継ぐ電車の時刻を確認しているのだろう。
電車を降りるとホームの売店でパンと牛乳を買って朝御飯にするようだ。
時計を気にしながらホームのベンチで食事を済ませた。
ゴミを捨てると、次に何かを探すような素振り。
動き出した先はトイレだった。
一瞬、どちらに入ろうか迷ったようだが、肉体に合わせて男子トイレに向かった。
それでも立ったまま用を足すのには抵抗があるようで、個室を使っていた。

 
電車を乗り継いで、とある町に辿りついた。
時間は昼近い。
特急とか使えばもっと早く着いたのだろうが、お金を節約してくれているようだ。
見知った町並みなのだろうか、彼女はずんずん進んでいった。
同じような家の立ち並ぶ住宅街に入った。始めての人なら、ちょくちょく番地を確かめなければ迷ってしまうだろう。
彼女はまっすぐに一軒の家の前に立ち、呼び鈴を押した。

「はーい♪」
と女性の声がした。
幽体で見た彼女の顔に似た女性がドアを開いた。
「僕は昔、聡子さんのお世話になった者です。聡子さんにどうしても会いたくなり、昔教えてもらった住所に訪ねてきたのです。聡子さんが今どこにいるか教えてもらえないでしょうか?」
彼女はかなり礼儀正しく、その女性に向かって言った。
相手は多分、彼女の母親であろう。彼女の女性を見る目が、今にも涙で曇ってしまいそうだった。
「私もこれから聡子の所に行くところでした。よろしければ一緒に行きませんか?」
「良いんですか?」
「聡子の為になることでしたら、何でもしますよ。戸締まりしますから、ちょっと待っててくださいね。」

しばらくの後、僕らは母親の運転する車に乗っていた。
そして、車はこの近くで一番大きいであろう総合病院の駐車場に入っていった。
「寝たきりになってもうすぐ一年になります。」
案内された病室には「彼女」が眠っていた。
死んでるのではないのだろう。点滴が落ち、モニタには心臓の鼓動を伝える波形が流れていた。
「聡子。お友だちが来てくれたわよ♪」
目覚める事のない娘に語り掛けている。
が、その声に応じるかのように聡子の瞼がピクリと動いた。

「聡子?!」

母親の目が見開かれた。
「聡子!!」
と大声で呼び掛ける。
更に聡子の瞼が開く。
ドスンと背後の音に振り向くと「僕」が崩れるように床に座り込んでいた。
「ママ…もう少し、待ってて…」
弱々しい声が聡子の口から紡がれ…彼女の瞼は再び閉じていった。

「聡子、聡子!!」
母親は呼び掛け続けたが、聡子が再び目を開ける事はなかった。

 
その背後で「僕」がよろよろと立ち上がった。
聡子の「肉体」に叫び続ける母親に背を向け、彼女は病室を出て行った。

 

病室で取り乱す母親に係りの看護士が気付き、母親を落ち着かせようとする。
その際、聡子の意識が一瞬であるが戻ったと聞き、医師が呼ばれた。
病室が慌ただしくなってきた。
僕は病室の片隅で成り行きを見守っていた。

 
医師逹が聡子を再び覚醒させようと、彼女の肉体に刺激を与える。
母親が彼女の名前を呼び続ける。
彼女の肉体は「覚醒」に向かいつつあった。
が、彼女の「意識」は今「僕」の肉体の中にある。
さっきは彼女の意識と肉体が近づいたことで意識が「僕」の肉体から彼女に移り、覚醒したのだろう。
しかし、今は彼女の肉体の中に彼女の「意識」はない。
つまり、彼女が覚醒する事はないのだ…

 
母親の目からは涙が溢れている。
こんな母親を残して彼女は何をしようというのだろうか?
今の僕に何か彼女逹の手助けなる事はできないのだろうか?
だが、肉体のない今の僕には何もできない。
ここにいる誰もが僕の存在さえ気付いていないのだ。

叫び続ける母親に
「大丈夫です。聡子さんは必ず帰ってきますよ。」
と声を掛けてあげたが、僕の声は届く筈もない。
が、その声に反応した人がいた。

「聡子っ?!」
母親が絶句する。
まだ目覚めていない筈の聡子の手が持ち上がっていた。
その手は僕の声に反応し、僕に向かって伸びてきた。
ギュッ…
と彼女の手が僕を掴んだ。
そして僕を引き寄せる。
僕はバランスを崩し、彼女の上に倒れ込んだ…

 

「聡子さん。聡子さん。」
医師の声が聞こえていた。
僕はゆっくりと瞼を開けた。
「聡子っ!!」
耳元に母親の叫びが突き刺さる。
掌が握られていた。
強い力で握り締められている。
僕は母親の顔を見た…
「聡子ぉー…」
母親は目を真っ赤に泣き腫らしていた。
「ぁっ…」
僕の口から声が漏れた。
が、それは「僕」の声ではなかった。

僕は今「聡子」の肉体の中に居た…

 

 

聡子は再び目覚めたが、顕著な記憶障害が認められたため、退院まではかなりの日数がかかった。
その間「僕」が「聡子」を訪ねて来ることは一度もなかった。
病院の中だけではあったが、自由に動けるようになった僕は何度か「僕」の携帯に電話を掛けてみた。
「聡子さん?」と問いかけたのがいけなかったのか、即に切られてしまった。
それ以降も声から僕からの電話だと判ると切られてしまう事の繰り返しだった。

退院した今、僕は聡子のママに無理を言って一人で外出していた。
今の僕には「聡子」としての記憶がないだけで、それ以外は健康体そのものなのだ。

電車を乗り継いで懐かしい街に戻ってきた。
バスに乗り目的地の停留所で降りる。
目の前にあるのは「僕」の住んでいるアパートだ。
勿論「聡子」も以前住んでいたので、彼女を知っている人もいる筈だ。
僕はあまり姿を晒さないように、急いで階段を上っていった。

鍵を忘れてロックアウトされてしまう事のないように隠していた合い鍵はまだそこに残っていた。
鍵を開け、部屋の中に入っていった。
「僕」は留守をしているようだが、部屋の中の状況を見ると、この部屋で生活している事は確かなようだ。

彼女は僕の私物にはあまり手を付けていないようだった。
雑誌とかは買い足していないようなので、引っ越してきた時のままに積まれていた。
久しぶりに雑誌を手にした所為か、いつの間にか読みふけっていた。

ガチャリ
とドアの開く音で彼女が帰ってきた事に気付いた。
「誰?」
と言ったが、上がり込んでいるのが僕である事は予想できていたようだ。
「あんただったの。いつかは来ると思ってたけどね。」
「ぼ…僕の身体をどうするつもりなんだ?」
「どうもしないわよ。それともどうにかして欲しいの?」
「返せよ…」
「多分、それは無理。お節介にもあたしの後を付いてきたあんたの所為だからね。」
「僕の所為?」
「あたしは病院で、一旦は元の身体に帰れる事が確認できた。けど、それは魂の入っていない肉体だったからよ。」
彼女は僕に近づき、手を握った。
「でも、あたしの肉体にあんたが入ってしまった…もう、こうして触れ合うまでしてもあたしは自分の身体に戻れないの。」
「戻れない?」
「そうよ。だから、あたしはこの肉体で、あんたはあたしの肉体で生き続けなければいけないの!!」
「そ、そんな…」
「言っとくけど、全部あんたの所為なんだからね。」

僕はどうして良いかわからなかった。
自然と目から涙が溢れてゆく。
「泣きたいのはあたしよ!!もう、娘としてママに会う事もできないのよ。」
「す…済まない…」
「そんな言葉だけで済むと思ってるの?こんなガサツな身体じゃない、瑞々しい女の子の身体になって…」
彼女の手が僕の胸元を掴む。
「これ、あたしのお気に入りのワンピースなのよ。あんたは綺麗に着飾るけど、あたしはもうワンピースなんて着れないのよ!!」
彼女の手が、僕の胸に触れ…彼女はそれを掴んだ。
「痛っ!!」
僕は彼女の手を振りほどいた。
痛みの残る乳房をブラの上から擦った。
「そうよ。その肉体はあたしのモノだったのよ…」
異様な目をして彼女=彼が近づいてくる。
僕はじりじりと後ずさったが、ベッドを背に詰め寄られる。
「返して!!こんな肉体、嫌っ!!何よコレ」
僕をベッドの上に突き倒すと、彼女はズボンのベルトを外した。
彼女の股間はみるからに憤り勃っていた。
「勝手に大きく硬くなっちゃうし、なかなか元に戻らない。恥ずかしくて歩けないじゃない!!」
男の生理だからと言っても納得してもらえないだろう。
「何とかしてよっ!!」
とトランクスまで脱いでいた。

状況的には最悪の事態のような気がする。
下半身を剥き出し、股間を勃起させている男の前に、ベッドに押し倒された女がいる。
その「女」が僕で、目の前に立っている男が「僕」だ。

勃起を鎮めるには抜いてあげるのが一番なのだろう。
だが、僕が行動するよりも先に彼女の方がもう1つの解に気付いてしまった。
「そうよね。コレの使い道は立ちションするだけじゃないのよね。本来の使われ方を実践すれば良いだけなのよね♪」
「ち、ちょっと待て!!」
と僕が言っても、主導権は彼女にあった。
僕のスカートを捲り上げ、僕の上に伸し掛かってくる。
ショーツの端に手を掛け、その隙間から硬くなったペニスを突っ込んできた。

「!!!!ッ」

引き裂かれるような痛みに声も出ない。
何もできぬ内にずぶずぶと根本まで挿入された。
「きついけど、暖かくて気持ち良いわ♪これで腰を動かせば良いのよね?」
僕は彼女の為すが侭だった。

 

これが女の生理現象なのだろうか?膣の中でペニスが動きだすと、ぢくぢくと愛液が染み出てきた。
快感が生まれ、どんどん大きくなってゆく。
「ああん、あ~ん♪」と僕は女のように喘ぎ始めていた。

(?)
男の僕が知る筈がないのに、この快感を以前に感じた記憶が蘇ってきた。
相手は「僕」ではない。
見知らぬ男に僕は貫かれ、あんあんと快感に喘いでいた。
いえ、その男は仁科先輩…あたしの初恋の人…
(これは聡子の記憶なのか?)
高まってゆく快感の中、僕は聡子の記憶を思い出していた。
(あたしのハジメテを先輩にあげるの♪)
そう決心してあたしの部屋に仁科先輩を誘ったの。
先輩はあたしを優しく抱いてくれて…いっぱいキスして…色んな所に触れられて…
気が付くと服が脱がされていた。下着だけの姿になっていた。
お汁がショーツから染み出してないかしら?
そんな心配をしてる間にも、先輩の手がブラの中に入り込み、優しく揉みあげていた。
「んあん♪」
勃起した乳首が摘ままれ、思わず喘ぎ声をあげてしまった。
「可愛い声だね。もっと聞かせてよ♪」
と先輩。
もう片方の乳首も摘ままれて、あたしは同じように喘ぎ声をあげていた。
「じゃあ、こっちはどうかな?」
先輩の手がショーツの中に入ってきた。
割れ目の上に指が這わされる。
「濡れてるんだね♪でも、まだ緊張している…」
先輩の指が割れ目に押し入ってきた。
やはりハジメテは怖い。自分でも弄っていない所に先輩の指が入り込んでくる。
「ああっ!!」
強烈な快感が全身を貫いていった。
「クリトリスだね♪次はどんな媚声を聞かせてくれるのかな?」
先輩の指があたしの膣中を動いていた。
襲ってくる快感に、あたしは身を捩り、媚声を上げて応えていた。

「じゃあ挿れるね♪」
いつの間にかショーツも抜き取られていた。
あたしは全裸で、その股間を仁科先輩に晒していた。
先輩が体を重ねて来ると、あたしの膣の中に指ではないモノが入ってきた。
(あたし…先輩とヒトツになれた♪)
それだけで幸せなのに、先輩が動くとまた違った快感がやってきた。
子宮口が突つかれる度に快感が増してゆく。
あたしは自分でも何を叫んでいるのかわからなかった。
快感の竜巻に乗って、天国にもいっちゃいそうな気がした♪

 
「あん♪ああ~~ん!!」
僕は悶え、嬌声をあげ続けていた。
聡子が仁科先輩に抱かれていた時が再現されているみたいだ。
「ああん♪イクゥ…イッちゃう~~!!」
僕は快感の高みに押し上げられていった。
聡子の記憶はそこで途絶えていた。
僕もそれ以上の記憶を引き出す事は出来なかった…

僕は聡子の肉体から離れ、宙に浮かんでいた…

 

 

この部屋は特異点にあったのかも知れない。
この部屋で女性がイくと、魂が抜け出してしまうみたいだ。
聡子もイッた拍子に肉体から切り離され、慌てた仁科先輩に魂が戻る前の肉体だけを病院に運ばれてしまったようだ。
彼女の魂はこの部屋を出るに出れず、途方に暮れていたようだ。
僕自身はもともと幽体離脱し易い質だったようで、何かの拍子にフと抜け出してしまうのだ。

 
「ああん♪あ~~ん♪」
今夜も僕は「僕」に貫かれ、淫らに喘いでいた。
今の僕は聡子ではない。
僕の話に興味をもった女の子に肉体交換を実践してあげているのだ。
「女の快感」は一度味わうと病み付きになってしまう。

「ねぇ、もう一度良い?」
一度イッて魂が切り離された後、僕はもう一度彼女の肉体に戻り、「僕」におねだりした♪

霊根棒

「何ですか、コレは?」
とりあえず、いつものように所長に聞いてみた。

僕が懲りもせずに、この研究所の助手のアルバイトを続けているのは、一つに仕事の内容に比べ給料が高いという事。
もう一つが所長の秘書のサクラさんを見ていられるという事だ。

何でサクラさんのような美女がこんな研究所の所長の秘書をしているか不思議だったが、この間彼女に聞いたら「産業スパイ」として某大企業から派遣されているとの事だった。
金になりそうな発明があると、彼女を通して某企業にかなりの高額で売り渡されるのだ。
所長は発明品が売れた事で単純に喜び、某企業はその応用で更なる利益をあげるWIN=WINの関係が成り立っているという。

 
研究所と言っても所長の他に研究員はいない。
だから、僕のような助手をアルバイトで雇っているのだが、実際の研究自体は所長一人で行う事が多く、僕は発明品に対する評価を述べるのが唯一の仕事と言ってよい。

で、出来上がった発明品にはいつも
「何ですか、コレは?」
と、とりあえず聞くのである。

 

…今回の発明品は
「霊根棒」だそうだ。
「霊」のように実体は無いが、この棒は存在しているらしい。
「何も見えないので解らないのですが…」
と言うと所長はスイッチを付けてくれた。
スイッチとは言っても、近くにあったノック式のボールペンに憑依させたとの事。
普段はボールペンだが、ノックするとスイッチが入り、本来の棒状の姿が半実体化する…

 

「何なんですかコレは!?」
半実体化した霊根棒の姿は、勃起した男性性器の形状をしていた。
「実体が無いから、服の上からでも挿入できる…って、何を考えてるんですか!!」
「えっ?僕がコレを使ってみるんですか?…その為の助手って、確かに最初の被験者として僕が使われるのは契約の内ですが…」
「男がコレを使う…って、やはりお尻の穴なんですよね?僕、まだ浣腸もした事無いんですよ…」
「って、所長。ソコはお尻の穴じゃないですよ。僕は男だから、そんな所に穴はないです!!…っあん♪何か入って来る…」

 

「ハア、ハア、ハア…。実体が無いからそんなコトが出来ると言われても…僕、イッちゃったんですよね?」

「どぴゅって、精液みたいなのが出てたみたいですけど…やはり、スキンなんか着けても意味ないんですよね?」
「忘れてたってどういう事ですか?もし僕が女性で、妊娠なんかしたら洒落にもなりませんよ。」
「その事だが…って?あっサクラさん。お疲れ様です♪」
丁度その時に部屋にサクラさんが入ってきた。「はい♪」と僕に紙袋が手渡された。
「所長に頼まれて買ってきたんですか?僕が使う物?…って、コレは女性用の下着じゃないですか!!」
「すまない…って?胸ですか?僕の?」
「ふ…膨らんでる?!あの霊根棒の所為ですか?…股間も?」
僕の股間は霊根棒に犯された時に溢れてきた液体で濡れていた。
言われてみれば、確かにその場所にあるべき存在を感じられない。
所長とサクラさんが席を外してくれた。
部屋の中には誰もいない。
僕は服を脱ぎ、パンツまで脱いで全裸になった。
そこにあったのは「女」の肉体だった。
膨らんだ胸の先端には乳首が飛び出ている。
男の証のなくなった股間には縦の筋ができていて、その奥には霊根棒を受け入れた場所が実体化していた。
これは完全に「女」の身体だよな…と割れ目に指を這わせていると、
「あうんっ!!」
と、今まで経験した事のない刺激に、女の子のように喘いでしまった。

…いつまでも裸でいる訳にもいかない。
とはいえ、今となれば愛液としか言い様がないもので濡れたパンツやズボンを穿き直す気にはなれない。
僕は仕方なく、サクラさんが買ってきてくれた下着を身に着けた。
下着ばかりではない。紙袋には女性の衣服の一式が詰まっていた。
(それも、上から順に着ていけば良いようになっていた♪)

 

「仮装していると思えば良い…って、化粧までするんですか?」
僕はサクラさんの前に座らされ、顔にいろいろと塗りたくられていった。
そして、
「外に出るんですか?僕を晒し者にして楽しむんじゃないでしょうね!!」
「医者?サクラさんの知り合いの?産婦人科なんて男の僕を連れていくような場所ではないでしょ?」
「確かに、この身体は男ではなくなってますが…どこまで女性化してるかを調べるんですね。」

僕逹は身支度を整え、研究所を後にしようと…
机の上には僕を犯したディルドゥのごとき「霊根棒」が置かれていた。
「スイッチを切りますよ。」
と僕はスイッチとなっているボールペンの尻をノックした。

(?)

その途端、猛烈な違和感…というか、懐かしい感覚が股間に戻っていた。
「おっ、オカマだ♪じゃないですよ。所長!!」
股間だけではない。胸も平らに戻っていた。
「で、もう一度スイッチを入れるんですか?って、また女になっちゃいました…って事にはなりませんね。僕は男のままです♪」
「ちっ。て何を期待してたんですか?これで病院に行く必要はなくなったのでしょう?化粧は落とさせてください。」
僕はがっかりしている所長を置いて、洗面台で顔を洗った。

「あれ?サクラさん。どうしたんですか?」
僕の背後に立つサクラさんが鏡に写った。
何かいつもと雰囲気が違う。
「協力して♪って、僕はいつでも協力は惜しみませんよ♪」
と言った途端、僕のスカートが捲られた。
「えっ、何するの?」
訳も解らないうちにパンティがずらされ、何かが再び僕のナカに入ってきた。

それが霊根棒であることは確認するまでもなかった。
オンナの肉体は女であるサクラさんには熟知されている。
僕はアッと言う間に昇り詰めていた。
「んあん♪イク~。イッちゃう~~!!」
僕が喘ぐと同時に、霊根棒の先端からどぴゅっと精液のようなものが放出され、僕は意識が遠くなった。

「面白いわね♪って、他人の身体で遊ばないで下さい!!」
僕はサクラさんの手から霊根棒を取り上げた。
スイッチを切ると僕は再び男の姿に戻った。
どうやら霊根棒でイかされる度に、僕の肉体が女性化するようだ。
僕は霊根棒が再び使われることがないように、しっかりと握り締めていた。

 
再び濡れた股間を拭き取り、パンティを上げた。
僕のズボンとパンツが乾くまではこれしか穿くものがないのだ。
「形が良くないからって、胸にパットなんか入れませんよ。乾いたら即に元の服に着替えますからね。」
と僕は霊根棒を手にソファに腰を降ろした。
その向かい側で所長とサクラさんが怪しげに相談していた。

 
そして…
 

「は、放してくださいよ。所長!!どんな事をされても霊根棒は渡しませんからね。」
ソファの隣に座った所長が、突然僕を抱き締めて身動きができないようにした。
そして、近付いてくるサクラさんの手には…
「作った霊根棒は一本だけじゃない…って?そんな事、今更言わないでくださいよ♪」

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