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2015年10月12日 (月)

この皮は…

「この皮は私です。
 やっと綺麗に剥がれました。
 受け取ってもらえますか?」

 
D級のSF映画に出てくるようなのっぺりとした顔の宇宙人が俺に紙袋を手渡すと、そう言って逃げるように駆け去っていった。
一瞬の事で、何が起こったのか理解できていないが、今、俺の手には紙袋がぶら下げられていた。
中を覗くと「皮」なのだろうか、半透明の白っぽいビニールのようなものが畳まれていた。そして、その下にも何かが納められているようだ…

 

自分の部屋に戻り、改めて中身を確認してみた。
「皮」の下には髪の毛の塊があった。どうやらかつらのようだ。
その下にはタータンチェック柄の布。出してみるとスカートだった。
その下からはブラウスとジャケット…いずれも女性用のものだ。
透明なビニール袋の中には女性用の下着が入っているのだろう。
紙袋の底には、女子高生が履くようなローファーがあった。
「皮」以外はコスプレ女子高生の1セットみたいな感じだ。
が、如何せんサイズが本物の女子高生サイズであり、平均的な成人男性サイズの俺が着れるものではない。
(いや!!俺には女装コスプレをする趣味はない)
体型的には紙袋を渡していった宇宙人が合致する。
(つまり、皮を剥ぐ前に彼女が着ていた服、そのままなのかも知れない?)

俺は「皮」を手に取り、広げてみた。
本当に鞣したような実寸大の「人」の皮だった。
ふと見ると、背中側にセミの脱け殻のような開口部があった。
(ここから抜け出てきたのか?)
開口部を開き、中を覗き込んだ。が、何の変徹もない。
白い半透明の「皮」を通して、向こう側が見えるだけである。
ただ「皮」に意外と伸縮性があるのが判った。

それこそ「悪魔の囁き」だったのだろう。
俺は不意に「着てみたい」と思ってしまった。
服を着たままであったが、背中の開口部から手足を入れてみた。
靴下を履いていたので、足の指は爪先の先にプラプラと余った「皮」が揺れていた。
手の指は手袋をするようにピタリと収まった。
腕、脚、腹は半透明の皮の向こうに着ている服の色が淡く透けている。

目、鼻、口の位置を合わせて頭部を被った。
(鏡に映してみるか♪)
と洗面台に行こうとした途端、ゾクゾクとした寒気が俺を襲った。
苦しくなり、その場に踞る。
猛烈な吐き気を堪える事ができない。
「ぐがっ!!」
こみ上げてきたモノが口から吐きだされた。
(????)
それは汚物ではなく、靴下だった。
続いてもう片方。
さっきまで俺が履いていたやつだ。
続いてパンツ、ティーシャツ、ジーパンと口の中から吐き出されてきた。
不思議にも、唾液とかにも濡れてなく、乾いた状態で床の上に撒き散らされる。
次に出てきたのは髪の毛の塊。
そして最後に「皮」が吐き出された。

 

「ちゃんと着てくれましたね♪」
いつの間にか俺の前に宇宙人が立っていた。
宇宙人は俺が吐き出した「皮」を広げると、一気に着込んでいった。
ぶかぶかな「皮」に包まれた宇宙人は髪の毛の塊…どうやらこれもかつらのようだ…を被った。
その直後、「皮」の内側がむくむくと膨れだし、ぶかぶかだった「皮」がピンと張ってゆく。
宇宙人の身長も延びてゆき、ほぼ俺と同じくらいになった…
いや、そこにいたのは「俺」自身だった。
俺が吐き出した「皮」は俺自身の「皮」だったようだ。

宇宙人はにやりと笑い、俺を見下ろした。
「裸でいるのは好き好きだが、髪の毛くらいはちゃんとしておいた方が良いよ♪」
「俺」の声でそう言うと、置いてあったかつらを俺の頭に被せた。
「な、何なんだよ?お前は!!」
と、俺が発した声は「俺」の声ではなかった。
甲高い女の声が俺の耳に届いていた。
「ど、どうなってるんだ?」
と自分の身体を見た。
「皮」の下からは着ていた服も、俺の「皮」も失われている。
さっきまでは「皮」に「包まれている」という感じだったが、今では「皮」が俺の皮膚そのものになっつしまった感じだ。
「どうだい♪その皮の着心地は?俺は十分に満足しているぞ♪」
女の子の「皮」を着た俺は、どうやら「女の子」そのものになっているようだ。
「目の前にあるのが元の自分で、その中身が男だっていうのに、女の裸を見ていると、ちゃんと勃起するんだな♪」
「俺」は憤り勃ったペニスを俺に見せつけるように腰を近付けてきた。
尖端が俺の鼻に近付くと、プンと牡の臭いに包まれる。
「ほら、フェラチオしてみろよ。噛みつくんじゃないぞ。お前のチンチンが無くなっちゃうからな♪」
と俺の口の中にソレを割り込ませた。

俺は自らは何もしなかったが、奴は俺の頭を掴み性具か何かのように前後に揺すっていた。
溜まっていたのだろう。奴は即に達して、俺の口の中に精液をぶちまけた。

快感で気が緩んだ隙に俺は奴から逃れた。
ベッドの上からティッシュを取り、口の中のモノを吐き出した。
まだ、舌の上に変な感覚は残っていたが、俺はようやく解放された。
が、それも長くは続かない。
「自分から男をベッドに誘うなんて、なんと淫乱な娘だろう♪」
と奴が追うようにしてやってきた。
(誘った訳じゃない。たまたまティッシュを置いてた所がベッドだっただけだ)
とは言え、俺は簡単にベッドの上に組み伏せられていた。
奴が「皮」の中で膨らんだように、俺は「皮」の元の大きさに圧し縮められていた。
成人男性と女子高生とでは体格差は周知のことだ。
俺もできるだけ抵抗したが、どうにかなるものでもない。
唯一、女みたいに喚き散らさずに耐えたのが、俺の「男」としての矜持だった。

「淫声を出すと快感が増すよ♪」
奴はそう言いながら、俺の股間に指を潜り込ませていった。
この身体のどこが感じるかを熟知しているのだろう。的確に責めたてられ、俺は意識が朦朧としだしてきた。
「これはどうかな?」
と別の場所が責められる。
「くっ…」
俺は喘ぎ声を噛み殺す。
「では、ここかな?」
「うあっ…」
もう限界だった。
「そら♪」
続けざまに責められると、俺の意志の砦は一気に瓦解した。
「んあん!!ああ~ん♪」
オンナの淫声が俺の耳に届く。
その淫声がオンナの快感を更に加速する。
俺は喚き嬌声をあげていた。
「それでは、俺も愉しませてもらおうか?」
奴は体勢を整えると、一気にペニスを押し込んできた…

 

 

融合してしまった「皮」を再び綺麗に剥がすことができるまで、俺は「女子高生」として街を徘徊するしかなかった。
「俺」の皮を手に入れた奴は、もうその肉体を手放す事はないと宣言した。
ヤる事だけヤると、粗大ゴミのように俺を追い出し、奴は「俺」として俺の部屋に住み着いてしまった。
俺の行き場所はもうどこにもなかった。
奴のように誰かに「皮」を着せ、そいつに成り代わるまでは…

 

 

寝る所と生活費は援助交際で何とかなった。
若い女の肉体は良いように声が掛かる。
その為には、恥を忍んで「女」を演じる必要はあった
…いえ、即に「演じる」必要も無くなっていた。
身も心も「女」に染まるのに大して時間は掛からなかった。
あたしは綺麗に「皮」を剥ぐ事だけを目標に生き続けた。
その間はあたしは年を取る事はない。あたしは永遠の女子高生なのだ…

 
そして「皮」が綺麗に剥がれると、あたしは着ていたものと「皮」を紙袋に入れ、若い男に声を掛ける…

 
「この皮は私です。
 やっと綺麗に剥がれました。
 受け取ってもらえますか?」

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