« 治った? | トップページ | 素敵♪(後編) »

2015年9月13日 (日)

選択

「右に回り込め!!」
俺の指示に部隊が従い、戦場に新たな進路を描いていった。

「敵の陽動部隊が展開しています。」
「構わない。蹴散らせ。」
相手は本隊ではない。陽動部隊程度であれば問題なく突破できる。

俺の判断は正しく、陽動部隊を蹴散らして、俺達は敵本体を側面から急襲した。
勿論、戦力差はあるので一撃離脱を徹底させた。
敵陣内に揺動が走る。
隙かさず遠矢隊に合図を送る。
照準などあったものではないが、敵の乱れは加速する。
俺は部隊を反転させると、もう一度敵本隊に突入させた。

俺の目の端に大将の旗印が見えた。
敵は浮き足立っている。
(今しかない)
と、俺は大将の旗に手綱を向けた。

雑兵を斬り倒して進んでゆく。
有力な兵士逹は部隊の混乱を収集することに掛かりきりになっているのだろう。
俺は一気に大将の前に飛び出していた。

突然の事態に近衛も動くことができないでいた。
「まいる!!」
俺はそのままの勢いで大将に斬り掛かった。
キンッ!!
と初撃は弾かれた。
2打3打と浴びせるが、ことごとく跳ね返された。
(これ以上は時をかけられない)
俺は大将に剣を投げつけると、勢いよく拍車を掛けた。
今は雑兵に拘わる余裕もない。加速に加速を加えて敵本隊を振りきって駆った…

 

 
結局、俺の隊は成果を残してきたが、戦局を変える事などは到底できず、味方の本隊は呆気なく壊滅されてしまっていた。
程なく城も落とされ、街中は敵兵に制圧されていた。
俺はこれ以上の拘束は不要と、兵士逹を解散させた。
地元に戻るもよし、浪人するもよし。
ただ、城下に戻る際は一切の武器・兵装を外して市民に紛れるように言い渡した。
俺も剣を捨て身軽になり、城下に紛れ込んでいた。

敵兵は単に治安活動としてだけで城下を徘徊している訳ではなかった。
彼らの手には人相書があり、その人物を見つけだそうとしているようだった。

その人物とは「俺」であった。
人相書は俺の特徴をよく掴んでおり、懸賞金も付いているので捕まるのも時間の問題だった。

 
程なく、俺は城に連行された。
飯を食っている所を大人数で囲まれては如何ともし難かった。幸いにも大将直属の正規兵のようで、統率がとれていた。
俺が無駄な抵抗をしないと見ると、扱いが変わり、何の危害も加えられることはなかった。

 

「貴様が指揮官か?」
玉座から大将が誰何した。
「元だがね。部隊は消滅している。」
見上げると、俺と剣を交えた大将は、負傷した右腕を痛々しく吊るしていた。
「貴様には、この腕の償いをしてもらう。やり方は二つある。」
「ほう。選ぶ余裕があるのか。」
「一つはワシの右腕として旗下に加わる。もう一つは貴様の腕そのものをワシに献上する。だ。」
「つまり、寝返って生き延びるが、ここで死ぬかという事か。」
「殺すには貴様の機知は惜しい。旗下になけれは、終生ワシの元に囚われる事になる。」
「生きていられるのであれば、敢えて寝返りの汚名を被ることもない。腕の一本や二本、くれてやる。」
「そうか。気が向いたらワシにも良い知恵を授けてもらいたいものだ。」

そして魔術の儀式が始まった。
奴の体から傷ついた腕が外された。
そして、俺の腕が抜かれ、奴の体に填められる。
奴は二度三度と掌を握り締めると、腕を回し、力瘤を作った。
「なかなか鍛えられているではないか。そう言えば、腕の一本や二本とか言っていたな?」
と奴は術者に合図した。
「片腕だけではバランスが悪いようだ。左腕も貰うが文句はないよな♪」
と俺の左腕も抜かれ、奴の物となった。
「中々、良い物を貰った。だが、貴様も腕なしでは不便であろう。おい、何とかしてやれないか?」
と奴が言うと、従者のひとりが歩み寄って奴に耳打ちした。
奴はにやりと笑みを浮かべる。
「ワシは奴の叡知に期待している。頭さえ生かしてられるのであれば、それも良かろう♪」
そして、術者が俺に近づくと、俺の頭が胴体から抜き取られた。
俺はその瞬間を目にした直後、意識を失っていた。

 

 

 

意識が戻った。
五感が復活する。
手足の存在が確認できた。
が、この肉体には違和感があった。
そう…
胸の上に重く伸し掛かるものがある。
退けようと手を伸ばすと、それに触れた。
(?)
触れたと同時に触れられる感覚が胸から伝わってきた。
指を広げ…掴んだ。指先が肉塊に食い込む。
指先はそれが女の乳房と同じものであると伝えてくる。
で、あれば…
「んぁ…」
俺の口から、か細いが、確かに女の喘ぎ声が漏れていた。
俺は胸を揉まれていた。
知る筈のない感覚…それは得体の知れない快感として俺の脳に伝えられる。
肉体は条件反射のように、俺の喉を鳴らしていた。
(そもそも、コレは俺の声なのか?)
聞き間違いではない。俺の発した喘ぎ声は、どう聞いても「女」の声にしか聞こえなかった。

胸上の存在の探求は一時中断する。
もう一度、喉を震わす…
「あー、あっあ…」
それはキーの高い「女」の声に違いなかった。
(これは女の肉体なのか?)
俺は股間に手を伸ばした。
指先に熱い滴が絡み付いた…

 

体に掛かっていた毛布を剥いで上半身を起こした。
両の乳房が重力に引かれるが、なるべく意識しないようにする。
辺りを見廻し、この姿を映せる鏡になるものを探し…
それよりも先に奴の姿が目に入った。
「姫さま♪お目覚めですか?」
そう声を掛けてきた奴の背後には姿見の鏡があった。
「どうなったのだ?」
「聡いあんたの事だ。だいたいは見当が付いているのだろう?」
「今はこの体が女の肉体であるとしか解っていない。とにかく、その姿見を使わしてくれないか?」
「愛しい姫さまの頼みとあれば♪」
と、奴が姿見の前から退いた。

写っていたのは若い女の首から上が「俺」というグロテスクな姿だった。
「2~3日で同化するそうだ。」
「同化?」
「そう、違和感が無くなってゆく。見てみろ。この腕はもう、生まれた時からのワシの腕のようだろ?」
それは奴が俺から奪ったものであった。が、皮膚の色や体毛の生え具合が奴の肉体の他の部分と変わらなくなっていた。
肘の特徴的なアザが、この腕が俺のものであった事を伝えているだけだった。
「同化が進めば、その顔も、その肉体が元から持っていた顔のようになる♪愛くるしい姫さまの顔に…な。」

俺はようやく奴の「姫さま」という言い回しの正体に思い至った。
「き、貴様!!王女様の肉体を勝手にっ!!」
「別に良いであろう?その女は囚われの身になるより、死を選んだのだ。捨てられた肉体をどうしようとワシの勝手というものだ。」
「…死を選んだ?」
俺は謁見の間で王と王妃に並んで立っていた、可憐な王女の姿を思い出していた。
確かに、背格好は同じである。が、それだけでこの肉体が王女のものであるとは断定はできない。
「まあ、時間はある。ゆっくりと、その身体に慣れていけばよい。…だが、ワシ以外の者がこの部屋を訪れることもある。服くらいは着ておいた方が良いぞ♪」

俺は奴の言葉で全裸である事を思い出した。
奴の…男の面前に「女」の裸体を晒してしまっていた…そう思うと急に羞恥心が湧いてきた。
無意識のうちに手が動き、姿見の中の女は自然な動きで股間と胸を隠していた。

 

 

この部屋は元々王女の居室だったらしく、衣服は簡単に見つかった。
勿論、それらは全て王女のものであり、その全ては女が…若い女が着るような愛らしいものばかりであった。
(これを「俺」が着るのか?)
躊躇はするが、この肉体は女であるので女の服を着る事は、ごく自然な事であると頭では理解している。…が…

それは、この肉体に刻み込まれた記憶が成した事なのだろう。
俺が呆然としている間にも、これから着るドレスを選び、下着を身に付け、選んだドレスを着ていった。
更にはドレッサーの前で化粧を始める。髪の短さが気になり、カツラを取りだし頭に被せることまでしていた。
鏡に写しだされた女はカツラと化粧で誤魔化され、その着ているドレスの可憐さから、王女自身に見えないこともなかった。

ドアがノックされた。
「支度はできたようだね。お腹が空いているだろう?食事にしよう。」
奴が入ってきて俺の手を取った。
俺は条件反射のように立ち上がり、奴に従っていた。
実際の所、空腹感はまったくなかった。
しかし、今ここで奴に抗っても何も得るものはない。
こうやって、少しでも城内を歩ければ、何らかの情報が得られるに違いなかった。

食堂の扉が開かれた。
中に居た者逹の視線が俺に集まる。
「姫さまは病み上がりだ。あまり気を煩わせる事のないように。」
と、奴が一同に声を掛けた。
そして、食卓に俺を座らせ、奴はその隣の席に着いた。
給仕が奴のグラスに酒を注いだ。
参列者のグラスは既に酒で満たされていた。彼等はそのグラスを手に一斉に立ち上がった。
「本日は喜ばしい事が二つあった。かねてから追い求めていた敵の知将を捕らえられた事。そして、このように姫さまが回復された事。」
そして奴はグラスを掲げた。
「乾杯!!」
そして参列者が和した。

参列者は皆、奴の配下の者ばかりであった。それは当然だが、給仕の者はその殆どが元から城に居た者逹のようだった。
「姫さま?」
と給仕の女が俺に声を掛けてきた。
「お食事に手を付けてらっしゃらないようですが、病み上がりとの事、何か柔らかいものをお出ししましょうか?」
まじまじと顔を近付けて来る。
このままでは俺が本来の「王女」でない事がバレてしまう。
「大丈夫よ。今は何も食べれないの。心配掛けてごめんなさいね。」
と返事をする。
給仕が下がると、奴のニヤニヤ顔が目に入った。
「これは心優しいお姫さまだなぁ♪クククッ…」
と笑いを堪えている。俺が女言葉を喋るのを面白がっているらしい。
俺自身、すんなりと女言葉が出てきた事に驚いていた。
これもまた、肉体の記憶なのだろうか?

 

そして、三日も経つと奴の言った通りに同化が進み、俺の顔は生前の王女のものと寸分違わないものになっていた。
と同時に、奴は頻繁に俺を連れまわした。
それは「王女が健在である」ことを周知させるだけでなく、奴と王女が「親密な関係である」とアピールされる事になっていた。
王家の血は絶えることなく王女に継がれている。
その事だけでも民衆は奴を受け入れてしまうのだろう。
更に奴はこの国を侵略したにもかかわらず、その統治に残忍性の欠片も見せなかった。

俺の知らぬ間に、婚礼の準備が進められていた。
俺と奴の婚礼である。勿論、異議を唱える者などいない。
俺ひとりが抵抗しているだけだ。

なにゆえ「男」の俺が奴と結婚しなければならないのか?
そんな考えは頭から否定される。
「どこから見ても姫さまは女性さ。その肉体がまだ乙女である事はワシが保証してやるよ♪」

何でそんな事を奴に保証されなければならない?

 

そして、民衆もまた俺の結婚に期待を寄せていた。
「早く王家の血を引く王子を」
民衆の願いは王家の存続であった。
奴もまた無理に王位は要求せず、王女に自分の子を産ませ、摂政となることでこの国を手に入れようとしていた。
そして、次期国王となる奴の子を産むのが「俺」という事になる。

主治医の説明でも、俺の肉体は「女」として正常に機能していた。
当然ではあるが生理も幾度となく経験している。
だが…「男」である俺に本当に妊娠し出産させようというのか?
そして「妊娠」するためには、俺は奴と性交する必要があるのだ。

「正当に姫さまにワシの子を孕んでもらうためにも、婚礼という儀式が必要なのだよ♪」
と奴は言う。
「案ずるな。優しく抱いてやるから♪」
奴に抱かれるという事に狼狽える俺を奴は楽しそうに見ていた。

 

 

 

俺が純白のウェディングドレスを着ることになるとは思ってもいなかった。
国民の手前、俺は笑顔を造り馬車から手を振っていた。

婚礼の儀式は終わり、俺は奴の妻となった。
「王女」の婚礼を祝うため、国内外から大勢の人々が城下に集まっていた。
彼等に披露目するために、俺逹は馬車で城下を巡っていった。

 
そして「夜」が来る…

 
俺は敗残者である。
敵の大将の腕に傷を負わせた代償として、捕らえられ、不可思議な術で俺の「腕」を差し出すことになった。
その後、腕ばかりではなく、首から下の肉体も奪われ、替わりに自害した王女の肉体を与えられた。

敗残者が何を言っても始まらない。
だが…
この状態にはなりたくなかった。
俺は今、敵の大将に組み敷かれていた。
奴も俺も全裸である。
そして、奴の股間はギンギンに勃起していた。

俺はといえば、俺の股間は俺の意思には従わず、愛液を滲ませ、濡れていた。
「姫さまの肉体は正直ですな♪」
「俺はまだ、心までは売り渡してはいないぞ。」
「問題ない♪姫さまは黙ってワシの子を…次期国王を孕み、産んでくれれば良い。そのうち、愛情も湧いてくるだろう♪」

「ああっ…」
奴のペニスが俺のナカに挿入された。
肉体が勝手に媚声をあげる。
気を良くして、奴が腰を振ると、それに合わせるように艶声を漏らしてしまう。
そして、拒もうとしても、押し寄せてくるオンナの快感に、俺は翻弄され続けた。

 

 
…大后エクスアウラは蛮族の雄・ゲセラオクスの妻となりルカイン朝の始祖ルカイン一世を産み、五百年の平定の世の礎となった。
大后エクスアウラについては様々な逸話がある。
中でも、夫ゲセラオクスの死後のこと、ルカイン一世が遠征の徒にある中、王都に攻め入ろうとする勢力があった。
大后エクスアウラは少数の精鋭を引き連れ、夜陰に乗じて敵方の中枢を壊滅させたという武勇は有名であるが、後世の造り話しであるという説が有力である。
しかし、大后エクスアウラが知才に長けていた事は疑いもなく、その才がゲセラオクスとの出会いと共に一気に開花したという事は劇的な事として記録されている…

« 治った? | トップページ | 素敵♪(後編) »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 選択:

« 治った? | トップページ | 素敵♪(後編) »

無料ブログはココログ