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2015年9月13日 (日)

素敵♪(前編)

「コレ、素敵ね♪」
美帆が手にしたモノを広げて俺に見せつけた。
それは女性用の下着のひとつ…ブラジャーだった。
しかし、それは美帆自身が着けるにはかなり大きめである。

「ねえ、試着してみようよ♪」
勿論、彼女が着けるのではない。
美帆は俺の手を引くと、そのまま試着室のあるコーナーにやってきた。
当然であるが、この辺りには男性の姿は皆無である。
売り場であれば、彼女の選択にコメントを付与すべく脇に立たされる男の姿が見られない事はない。
が、流石に試着室近辺は男子禁制となる。
しかし、俺は誰に咎められることもなく、試着室に入ることができた。
勿論、美帆と一緒だからと恩赦が与えられた訳ではない。
今の俺は、美帆と同類の「女」になってしまっていたからだ…

 

それは夕べ、美帆とホテルでエッチしていた時だ。
「ほう♪なかなか良いモノを持っておるな?」
男の声にそちらを向くと、いつ現れたか、そこに男が…悪魔が立っていた。
そいつは、見るからに「悪魔」であり、自らも悪魔であると認めていた。
「そいつを私のコレクションに加えさせてもらう。勿論無料とは言わない。君にはソレと同じくらい素晴らしいモノを与えてあげるよ♪」
そして、奴が消えると同時に、俺の股間から自慢の逸物が失われていた。

無くなってしまったものはどうしようもない。
このまま行為を続けることもできないので、俺逹はホテルを出た。
しばらく歩いていると、急に胸が苦しくなった。
強い力で締め付けられる感じがする。
「どうしたの?」
急に立ち止まった俺に美帆が声を掛けてきた。
「胸が…胸が苦しいんだ。」
「な、何?その胸!!」
と美帆が俺の胸を指す。
苦しい筈だ。シャツの胸回りの生地がパンパンに張っていた。
それが「単に胸回りが大きくなった」のでない事は即には解らなかった。

少しでも動けばボタンが弾け飛んでしまいそうだったので、タクシーで家に戻った。
心配そうに美帆も一緒に付いてきていた。
既にボタンは二つ程無くなっていた。
「脱がすね。」
と美帆が触れた途端、またひとつボタンが飛んでいった。
ゴクリと美帆が唾を飲む音が聞こえた。
下着にしているTシャツの上からでもわかる。
俺の胸でふたつの乳首がぷっくりと膨らんでいた。
そして、その土台となっている肉の塊…
どう見ても女の「乳房」である。
「脱がせて良い?」
そう言う美帆に頷くと、彼女は俺のTシャツを剥ぎ取った。

現実が目の前に突きつけられた。
「E…もしかしたらGカップくらいになるかしら?」
形の良い巨乳が、俺の胸に存在していた。
しかし、そちらに気を囚われている間にも、美帆は宣言した作業を完遂させていた。
ズボンが下ろされ、トランクスと一緒に剥ぎ取られた。
「完全に女の体型よね。背があるから、モデルでも通用するんじゃないかしら?」
胸ばかりに気を取られていた俺は、彼女の言葉で、手足が白く、細くなっている事にようやく気づいた。
そして、腰は蜂のように括れ、尻も適度な豊かさを得ていた。
「鏡…見てみる?」
そう言われ、風呂場の洗面台に向かった。
(誰だ、コレは?)
鏡に写っていたのは、見たこともない大柄の美女だった。
彼女は下着をはじめ、何も身に着けていないので、その均整の取れた肉体を確認する事ができた。

 
「これが…俺?」

そう発した俺の声も、姿に相応しく甘く艶やかな音色であった。
鏡の中の女が「俺」であるとは、もう誰も考える事はできないだろう。

「背丈は同じだけど、その身体では着る物がないわね。明日になったら買いに行きましょうね♪」
と美帆はここに泊まり込むのを決めたようだ。
彼女は洗面台に割り込み、化粧を落とした。が、その後で再び顔に何か塗り付けている。
「貴女も乳液くらいは付けておいたら?」
と小さなビンが渡された。
「い、いいよ。」
と断ったが
「中身は男でも、女の身体でいる間は女のたしなみはちゃんとしておくのよ。」
と、強制的に塗り付けられた。
(もしかしたら、明日は化粧もさせられるのでは…)
その予想は外れることはなかったが、それは明日のこと。

「貴女だけ裸にしておくのも不公平よね♪」
ベッドに入る前、美帆は俺の前で下着までも脱ぎ去ってしまった。
「じゃあ、一緒に寝ましょ♪」
「い、いや。俺は床で寝るよ。今日はもう抱いてやる事もできないし…」
「だからって、床で寝る必要は無いんじゃない?それに、今は抱いてもらうより、貴女をあたしの腕の中で啼かせてみたいわ♪」
「な、啼かせる?」
「女になったばかりだから、女の快感はまた知らないでしょ?あたしがじっくりと教えてア・ゲ・ル♪」
俺は背中に冷たいモノが流れ落ちるのを感じていた。

美帆に腕を引かれ、そのまま絡まるようにベッドに転がった。
「あんっ♪」
俺の口から可愛らしい吐息が漏れた。
美帆がその口で俺の乳首を弄ったのだ。多分、それは「快感」と言って良いのだろう。
俺はその刺激に喘がずにはいられなかった。
「そうよ♪素直に快感に喘ぎなさい♪」
彼女の口はもう一方の乳首に移った。
口の離れた方の乳首は彼女の指に摘ままれ、刺激を絶やすことなくいたぶられ続ける。

彼女の口が乳首を離れた。
胸の谷間に彼女の舌先を感じた。
そのまま、舌は下に向かって這い進んでゆく。
胃の上から臍の穴を通り、茂みの中へ…
舌の動きとともに、美帆の体勢も変わる。
俺の身体を跨ぎ、こちらに尻を向けた。
俺の脚をM字に立たせ、股間に頭を突っ込む形になる。
彼女の舌が俺の失われた逸物の跡にできた割れ目の中に入ってきた。
「んああっ!!」
思いもよらぬ刺激に彼女から逃れようとするが、脚を閉じようにも彼女の頭に阻止される。
身を捩っても逃れられることはない。
「大丈夫よ。ちゃんと濡れてるから♪」
股間から舌が抜かれ、代わりに彼女の指が差し込まれる。
新たな刺激が俺を襲う。
指は舌よりも更に奥まで侵入してくる。
「あ、ああん♪ダメッ!!それ以上は…おかしくなっちゃうよ!!」
「良いのよ。それで♪快感に身を任せちゃいなさい。」
「そ、そんな…あっ、ああ~~っ♪」
俺は頭の中が真っ白になって、意識を失っていた。

 

 
「スウェットなら何とか入るでしょ?」
朝、目が覚めると、美帆は既に身支度を整え、俺の着る服を用意していた。
「下着はあたしの予備のを使ってね。ブラは合わないからなしだけどね♪」
と渡されたのがショーツとキャミソールだった。
「着なくちゃダメなのか?」
「何躊躇ってるのよ。これから女物の服を一式買うんだからね。」
「そ、それはそうだけど…」
結局そのまま雪崩るように、きっちりと化粧までさせられてしまった。

そして、開店したばかりの店に入り、ブラジャーを選ぶ事になったのだ。
勿論、ブラだけではない。下着、ボトム、アウター…
服の他にも、靴やバック、アクセサリーもだ。
そして、化粧品を買い揃えてようやく一段落ついた。

「だめよ。常に膝を付けているようにしなくちゃ!!」
と昼食の間中、美帆の叱咤が飛んだ。
「なら、何でスカートなんか穿かせたんだよ?」
「あら?そのスカートを選んだのは貴女じゃなかったかしら?」
確かに選んだのは俺だ。が、太股剥き出しのショッキングピンクのショートパンツと脚が十分に隠れているロングのスカートなら、まだこちらの方が恥ずかしくないと思うだろう?
しかし、選んだ方のスカートは試着の時には、確かに脚が隠れていたが、実際に着替える時にはワンピースみたいに肩紐が掛かって裾が太股まで上がっていた。
「気を付けないと下着が見えちゃうからね♪」
と注意されるが、なかなかその通りにできるものじゃない。
「股間を見せてる隙アリの女は、即、視姦される事になるくらい経験で解ってるでしょう?それとも、もう男を誘おうとしてるの?」
「さ、誘う…って?」
「貴女もオンナなんだから、男に抱かれたいって言っても、あたしは構わないわよ♪」
お…俺が「男」に抱かれる?
俺は考えたくはなかった。
「貴女は十分に素質があるわよ♪」
「素質?」
「ビッチのね。どうやれば男が気持ち良くなるかなんて知り尽くしているでしょ?」
「し、知ってるって事と、実際にできるかって事は別物よ!!それを何?ビッチって!!」
「夕べ、あたしに弄ばれてあんなに乱れてたのは誰だったかしら?」
「そ、それは相手が美帆だったからよ。」
「そんな事ないわよ。夕べのあたしが…たとえばあの男の人だったとしたら、どうだったかしらね?」
彼女が指したのは優しそうな顔、長身だが均整のとれた身体、清潔で上品な身なりの男性だった。
俺の頭の中で昨夜の美帆が全裸の彼に置き換わる…

素敵♪(後編)

「君独りだけ裸にしておくのは不公平だよね♪」
ベッドを前にして、彼は下着までも脱ぎ去ってしまった。
「じゃあ、一緒に寝ようか♪」
「い、いえ。アタシは床で寝るわ。今日はもう…できないし…」
(あれ?何ができないんだったっけ?)
「いくら君の部屋だからといって、君を床に寝かせることはできないよ。それに、一緒に寝ないと僕が君を抱く事ができないじゃないか。今夜は僕の腕の中で君を思いきり啼かせてみたいんだ♪」
「な、啼かせるって?」
「君はまだ、オトコを知らないのだろう?僕がじっくりとオトコの良さを教えてあげるよ♪」
彼の言葉に股間から熱い滴が漏れ落ちるのを感じていた。

彼に腕を引かれ、そのままベッドに転がされた。
「あんっ♪」
アタシの口から可愛らしい吐息が漏れた。
彼がその口で俺の乳首を弄ったのだ。多分、それは「快感」と言って良いのだろう。
アタシはその刺激に喘がずにはいられなかった。
「そうだ♪素直に快感に喘ぐんだ♪」
彼の口はもう一方の乳首に移った。
口の離れた方の乳首は彼の指に摘ままれ、刺激を絶やすことなくいたぶられ続ける。

彼の口が乳首を離れた。
胸の谷間に彼の舌先を感じた。
そのまま、舌は下に向かって這い進んでゆく。
胃の上から臍の穴を通り、茂みの中へ…
舌の動きとともに、彼の体勢も変わる。
アタシの身体を跨いだ。アタシの目の前に彼のペニスがあった。
(コレは咥えた方が良いのかしら?)
アタシが迷っている間にも、彼はアタシの脚をM字に立たせ、股間に頭を突っ込んでいた。
彼の舌が割れ目の中に入ってきた。
「んああっ!!」
思いもよらぬ刺激に彼から逃れようとするが、脚を閉じようにも彼の頭に阻止される。
身を捩っても逃れられることはない。
「充分濡れているね♪大丈夫だよ。優しくシてあげるから♪」
股間から舌が抜かれ、再び彼が位置を変える。開かれた脚の間に割り込み、ゆっくりと伸し掛かるように身体を近づける。
アタシのナカに彼のペニスが差し込まれてきた。
強烈な痛みがアタシを襲う。
彼のペニスはまだ入り口に入りかけただけのようだけど…
「い、痛いわ!!それ以上は…もう、耐えられないよ!!」
「ゆっくりと深呼吸するんだ。大丈夫♪君は受け入れられるよ。」
「そ、そんな…あっ、ああ~~っ♪」
アタシは頭の中が真っ白になって、意識を失っていた。

 

「…やっぱりハジメテは痛いのかしら?」
俺は妄想から復帰したが、イマイチ自分の存在をあやふやに感じていた。
「人によるんじゃないかしら?少なくとも貴女の場合はあたしが慣らしてあげたから大分楽な筈よ♪」
「慣らす…って、アタシが頼んだ訳じゃナイでしょ!!」
俺は今、何の話しをしているのだろうか?
ビッチじゃないと言いつつも、オトコに抱かれる状況を真剣に考えていた?
「でも、考えただけでもうオ○コ濡れ々々なんじゃない?」
「バ、バカ言わないでよ!!」
とは言ったものの、ショーツはぐっしょり湿っていたのは事実…
「ちょっとトイレに行ってくるわね。」
と俺は席を立った。

 

気がつけば無意識のうちに俺は女性用の扉を開けていた。
当然ではあるが、この身体では小用を足すにも便座に座らなければならない。
が、今はショーツを替えるだけなので、便座の蓋も開けなくても大丈夫…
だけど、美帆の言葉責めはまだまだ続きそうだ。つまり、この先もショーツを濡らす可能性があると言うことだ。
(今日だけで、あと何回ショーツを替えることになるのだろう?)

 

「ところで、貴女いつから自分の事をアタシって言うようになったの?」
「街中では誰が聞いているかわからないから、努めて女言葉を使うようにって言ったのは美帆でしょ?」
「でも、アタシって言うのは恥ずかしいのか、極力一人称を使わないようにしていたんじゃない?」
確かに俺は自分の事を「アタシ」と言う事に抵抗があった。
多分、オトコに抱かれている妄想に浸っている間に意識が変わってしまったのだろう。
しかし「アタシ」と言ったのは無意識だった。流石に意識してはなかなか「アタシ」と言えるものではない。
「そうね。意識していない時にフッと出てしまう感じみたい。確かに意識している時は一人称を使わないで済まそうとしてたわね。」
「じゃあさ。意識してアタシって言ってみてよ。」
「嫌よ。さっきから恥ずかしいって言ってるじゃない。」
「でも、貴女もっと恥ずかしい事言ってなかった?ハジメテは痛いだとか♪」
「そ、それは…」
俺は急に頬が燃え上がるように熱くなるのを感じた。
「それに比べれば、恥ずかしい事なんて何もないでしょ?」
「そ、それはそうだけど…」
何か良いように美帆に誘導されてるような気がした。
「ほら♪言ってみ。アタシって。アタシがスケベで淫乱なドビッチですって♪」
「そ、そんな事までは言えないわよ!!」
「まあまあ、落ち着いて♪」
「アタシを落ち着かなくさせてるのは美帆でしょうが!!」
「はいはい。気を付けますね♪」
「ホントにもう…」
アタシはカラカラになった喉を潤すべく、目の前のグラスのストローを咥えた。

「で、本題に戻るんだけど♪」
何が「本題」だったか、アタシはもう深く考えるのを諦めていた。
「やっぱりあたし逹女の子同士でいても、何か先が見えてるような気がするの。」
「それで?」
「貴女さえ問題なけれは、セフレを調達しておいた方が良いと思うの♪」
「セフレ?」
「そう。セックス・フレンド。恋愛感情抜きで、快楽としてのセックスを提供してくれる男友達ね♪」
「アタシは何か気乗りしないな。」
「でも、興味はビシバシあるんじゃない?」
「興味がビシバシって…まるでアタシがスケベで淫乱なドビッチみたいじゃない!!」
「あら♪違ったかしら?」
(…)
確かにアタシは処女だけど、美帆に良いように開発されてしまっていて…
実際に「オトコに抱かれる」て事に興味が無い訳じゃないわよ。
でも「ビッチ」な訳じゃない。アタシだって普通の「女の子」だもの…?

アタシ…って?

 

お、俺は「男」だ!!
悪魔に逸物を取られ、身体は女みたいになってしまったが、「俺自身」は男なのだ!!
たまたま合う服がないから女物を着ているだけで、周りから不審に見られないように女言葉ん使っているが…
「美帆は俺…アタシが男…あんたの恋人だってコト、忘れてない?」
「忘れてなんかないわよ。夕べだって、あたしの腕の中でアンアンと可愛く喘いでいたのが貴女だってことよね♪」
「可愛く…って、そう言う意味ではなくて、男と女の関係だと言う事よ。」
「じゃあ、今の貴女はあたしを満足させられるの?テクニックではあたしの方が上なのは判ってるでしょ♪」
「アタシだって本来のモノが戻ってくれば…」
「返してもらえると思う?」
(…)
それが希望的観測であったとしても、あり得ない事に違いないのだろう。
俺はこの先、一生を「女」として過ごさなければならないのだ。
「でも、アレより立派なのを見つけてあげれば、悪魔も返してくれるかもよ♪」
「見つけるって、どうやって?」
「そのためのセ・フ・レよ♪いろいろ試してみて、良いのが見つかったら悪魔に教えてやるの。そうすれば要らなくなったのを返してもらえば良いわ♪」
「そう簡単にいくかしら?」
「じゃあ、貴女も問題ないということで、早速セフレを調達してくるわね♪」

 

 
「あん♪ああ~ん♪」
美帆が集めてきた男逹は皆、女の扱いを十分に心得ているみたいだった。
俺は即に快感の波に囚われて、良いように啼かされてしまう。
「だめ、それ以上は♪イッちゃう~!!」
今日、何度目かの絶頂に達して俺は果ててしまっていた。
男が優しく頭を撫でてくれている。
俺は女として安らぎを感じていた。
(このまま「女」として生きていくのも悪くないかも…)
今の俺は、女として愛される事に何の躊躇いもなかった。
彼の指に自分の指を絡める。彼と触れ合っていることが、より一層触れ合うことが、今のアタシには大切な事だった。
「もう一度良いかな?」
と彼に聞かれ、アタシは小さく頷いていた。
アタシは再び、彼の逸物に満たされていった…

 

 
「どお?」
と美帆が聞いてきた。
男逹は帰ってゆき、今は美帆と二人だけだ。
「彼のって、結構立派だったんじゃない?」
「立派って…アタシは凄く良かったわよ♪美帆も彼に抱かれたのよね?」
「確かに、大きさではちょっと勝てないかも知れないけど、形は良いのよね♪」
彼のを思い出しただけで、もう、股間が濡れ始めている。
「聞いてみるね?」

美帆が何を…誰に聞こうとしているのか、瞬間、判らなくなっていた。
(誰に?)
あの悪魔にね…
(何を?)
交換してもらえるかだったわね…
(何と?)
悪魔に取られた逸物と…

逸物って…彼のと交換するの?
交換したら彼のが無くなっちゃうよね。
無くなったら、もう愛してもらえないんじゃないの?
「だ、駄目よ!!アタシ…彼のが良いんだから♪」

えっ?

と美帆が不思議そうな顔をする。
「アタシ…彼のが良い♪彼のを取らないで。お願い!!」
「それって、もう元に戻りたくないって事?」
「…たぶん…そう。アタシはもう、このままで良いの。この先もずっと、彼に愛されていたい…」
美帆は蔑むようにアタシを一瞥した。
「貴女との関係もこれまでという事ね。あたしもこれでスッキリするわ。」
美帆は「じゃあね♪」とアタシの前から消えていった。

 

 

「コレ、素敵ね♪」
アタシは手にしたスケスケのブラ掲げ見た。
隣では彼が居心地悪そうに立っている。
「ちょっと試着してくるね♪」
と彼を置いて試着室に向かう。
彼は慌てて店の外に出たみたいだ。
ストラップを調整すると、イイ感じにバストが収まった。
レースの隙間から乳首が見えそうで見えない絶妙なバランスを保っている。
思った以上に気に入ったので、そのまま会計してもらった。
彼はいつ気づくだろうか?
アタシは店の外で待っていた彼に声を掛け、そのまま腕を組んでホテルに向かった。

 
「おや?貴女でしたか♪」
アタシの前に現れたのは、あの悪魔だった。
(まさか?)
と思ったが、悪魔は涼しい顔で
「この男も良いモノを持ってますね。コレクションに加えさせてもらいます♪」
そう言って悪魔は消えた。

「な、何だったんだ?今のは!!」
そう言っている端から、彼の声のトーンが上がってゆく。
逞しい筋肉が失われてゆく。
アタシの目の前で、彼は可愛らしい「女の子」に変わっていった。
彼=彼女は呆然と自分の肉体が変わってゆく様を見続けていた。
脚を広げ、股間に溝が刻まれてゆくのを見ていた。
むくむくと胸が膨らんでゆくのを見ていた。
アタシの時とは違い、背丈も50cmくらいも縮んでしまったようだ。
(美帆と同じくらいかしら?)
アタシは美帆に電話した。
「美帆の服、貸してもらえないかしら?」
美帆は全てを見ていたかのように、アタシの頼みに応えてくれた。
そして、最期に一言付け加えてきた。
「今度は貴女が彼女にオンナを教えてあげるのよ♪」

選択

「右に回り込め!!」
俺の指示に部隊が従い、戦場に新たな進路を描いていった。

「敵の陽動部隊が展開しています。」
「構わない。蹴散らせ。」
相手は本隊ではない。陽動部隊程度であれば問題なく突破できる。

俺の判断は正しく、陽動部隊を蹴散らして、俺達は敵本体を側面から急襲した。
勿論、戦力差はあるので一撃離脱を徹底させた。
敵陣内に揺動が走る。
隙かさず遠矢隊に合図を送る。
照準などあったものではないが、敵の乱れは加速する。
俺は部隊を反転させると、もう一度敵本隊に突入させた。

俺の目の端に大将の旗印が見えた。
敵は浮き足立っている。
(今しかない)
と、俺は大将の旗に手綱を向けた。

雑兵を斬り倒して進んでゆく。
有力な兵士逹は部隊の混乱を収集することに掛かりきりになっているのだろう。
俺は一気に大将の前に飛び出していた。

突然の事態に近衛も動くことができないでいた。
「まいる!!」
俺はそのままの勢いで大将に斬り掛かった。
キンッ!!
と初撃は弾かれた。
2打3打と浴びせるが、ことごとく跳ね返された。
(これ以上は時をかけられない)
俺は大将に剣を投げつけると、勢いよく拍車を掛けた。
今は雑兵に拘わる余裕もない。加速に加速を加えて敵本隊を振りきって駆った…

 

 
結局、俺の隊は成果を残してきたが、戦局を変える事などは到底できず、味方の本隊は呆気なく壊滅されてしまっていた。
程なく城も落とされ、街中は敵兵に制圧されていた。
俺はこれ以上の拘束は不要と、兵士逹を解散させた。
地元に戻るもよし、浪人するもよし。
ただ、城下に戻る際は一切の武器・兵装を外して市民に紛れるように言い渡した。
俺も剣を捨て身軽になり、城下に紛れ込んでいた。

敵兵は単に治安活動としてだけで城下を徘徊している訳ではなかった。
彼らの手には人相書があり、その人物を見つけだそうとしているようだった。

その人物とは「俺」であった。
人相書は俺の特徴をよく掴んでおり、懸賞金も付いているので捕まるのも時間の問題だった。

 
程なく、俺は城に連行された。
飯を食っている所を大人数で囲まれては如何ともし難かった。幸いにも大将直属の正規兵のようで、統率がとれていた。
俺が無駄な抵抗をしないと見ると、扱いが変わり、何の危害も加えられることはなかった。

 

「貴様が指揮官か?」
玉座から大将が誰何した。
「元だがね。部隊は消滅している。」
見上げると、俺と剣を交えた大将は、負傷した右腕を痛々しく吊るしていた。
「貴様には、この腕の償いをしてもらう。やり方は二つある。」
「ほう。選ぶ余裕があるのか。」
「一つはワシの右腕として旗下に加わる。もう一つは貴様の腕そのものをワシに献上する。だ。」
「つまり、寝返って生き延びるが、ここで死ぬかという事か。」
「殺すには貴様の機知は惜しい。旗下になけれは、終生ワシの元に囚われる事になる。」
「生きていられるのであれば、敢えて寝返りの汚名を被ることもない。腕の一本や二本、くれてやる。」
「そうか。気が向いたらワシにも良い知恵を授けてもらいたいものだ。」

そして魔術の儀式が始まった。
奴の体から傷ついた腕が外された。
そして、俺の腕が抜かれ、奴の体に填められる。
奴は二度三度と掌を握り締めると、腕を回し、力瘤を作った。
「なかなか鍛えられているではないか。そう言えば、腕の一本や二本とか言っていたな?」
と奴は術者に合図した。
「片腕だけではバランスが悪いようだ。左腕も貰うが文句はないよな♪」
と俺の左腕も抜かれ、奴の物となった。
「中々、良い物を貰った。だが、貴様も腕なしでは不便であろう。おい、何とかしてやれないか?」
と奴が言うと、従者のひとりが歩み寄って奴に耳打ちした。
奴はにやりと笑みを浮かべる。
「ワシは奴の叡知に期待している。頭さえ生かしてられるのであれば、それも良かろう♪」
そして、術者が俺に近づくと、俺の頭が胴体から抜き取られた。
俺はその瞬間を目にした直後、意識を失っていた。

 

 

 

意識が戻った。
五感が復活する。
手足の存在が確認できた。
が、この肉体には違和感があった。
そう…
胸の上に重く伸し掛かるものがある。
退けようと手を伸ばすと、それに触れた。
(?)
触れたと同時に触れられる感覚が胸から伝わってきた。
指を広げ…掴んだ。指先が肉塊に食い込む。
指先はそれが女の乳房と同じものであると伝えてくる。
で、あれば…
「んぁ…」
俺の口から、か細いが、確かに女の喘ぎ声が漏れていた。
俺は胸を揉まれていた。
知る筈のない感覚…それは得体の知れない快感として俺の脳に伝えられる。
肉体は条件反射のように、俺の喉を鳴らしていた。
(そもそも、コレは俺の声なのか?)
聞き間違いではない。俺の発した喘ぎ声は、どう聞いても「女」の声にしか聞こえなかった。

胸上の存在の探求は一時中断する。
もう一度、喉を震わす…
「あー、あっあ…」
それはキーの高い「女」の声に違いなかった。
(これは女の肉体なのか?)
俺は股間に手を伸ばした。
指先に熱い滴が絡み付いた…

 

体に掛かっていた毛布を剥いで上半身を起こした。
両の乳房が重力に引かれるが、なるべく意識しないようにする。
辺りを見廻し、この姿を映せる鏡になるものを探し…
それよりも先に奴の姿が目に入った。
「姫さま♪お目覚めですか?」
そう声を掛けてきた奴の背後には姿見の鏡があった。
「どうなったのだ?」
「聡いあんたの事だ。だいたいは見当が付いているのだろう?」
「今はこの体が女の肉体であるとしか解っていない。とにかく、その姿見を使わしてくれないか?」
「愛しい姫さまの頼みとあれば♪」
と、奴が姿見の前から退いた。

写っていたのは若い女の首から上が「俺」というグロテスクな姿だった。
「2~3日で同化するそうだ。」
「同化?」
「そう、違和感が無くなってゆく。見てみろ。この腕はもう、生まれた時からのワシの腕のようだろ?」
それは奴が俺から奪ったものであった。が、皮膚の色や体毛の生え具合が奴の肉体の他の部分と変わらなくなっていた。
肘の特徴的なアザが、この腕が俺のものであった事を伝えているだけだった。
「同化が進めば、その顔も、その肉体が元から持っていた顔のようになる♪愛くるしい姫さまの顔に…な。」

俺はようやく奴の「姫さま」という言い回しの正体に思い至った。
「き、貴様!!王女様の肉体を勝手にっ!!」
「別に良いであろう?その女は囚われの身になるより、死を選んだのだ。捨てられた肉体をどうしようとワシの勝手というものだ。」
「…死を選んだ?」
俺は謁見の間で王と王妃に並んで立っていた、可憐な王女の姿を思い出していた。
確かに、背格好は同じである。が、それだけでこの肉体が王女のものであるとは断定はできない。
「まあ、時間はある。ゆっくりと、その身体に慣れていけばよい。…だが、ワシ以外の者がこの部屋を訪れることもある。服くらいは着ておいた方が良いぞ♪」

俺は奴の言葉で全裸である事を思い出した。
奴の…男の面前に「女」の裸体を晒してしまっていた…そう思うと急に羞恥心が湧いてきた。
無意識のうちに手が動き、姿見の中の女は自然な動きで股間と胸を隠していた。

 

 

この部屋は元々王女の居室だったらしく、衣服は簡単に見つかった。
勿論、それらは全て王女のものであり、その全ては女が…若い女が着るような愛らしいものばかりであった。
(これを「俺」が着るのか?)
躊躇はするが、この肉体は女であるので女の服を着る事は、ごく自然な事であると頭では理解している。…が…

それは、この肉体に刻み込まれた記憶が成した事なのだろう。
俺が呆然としている間にも、これから着るドレスを選び、下着を身に付け、選んだドレスを着ていった。
更にはドレッサーの前で化粧を始める。髪の短さが気になり、カツラを取りだし頭に被せることまでしていた。
鏡に写しだされた女はカツラと化粧で誤魔化され、その着ているドレスの可憐さから、王女自身に見えないこともなかった。

ドアがノックされた。
「支度はできたようだね。お腹が空いているだろう?食事にしよう。」
奴が入ってきて俺の手を取った。
俺は条件反射のように立ち上がり、奴に従っていた。
実際の所、空腹感はまったくなかった。
しかし、今ここで奴に抗っても何も得るものはない。
こうやって、少しでも城内を歩ければ、何らかの情報が得られるに違いなかった。

食堂の扉が開かれた。
中に居た者逹の視線が俺に集まる。
「姫さまは病み上がりだ。あまり気を煩わせる事のないように。」
と、奴が一同に声を掛けた。
そして、食卓に俺を座らせ、奴はその隣の席に着いた。
給仕が奴のグラスに酒を注いだ。
参列者のグラスは既に酒で満たされていた。彼等はそのグラスを手に一斉に立ち上がった。
「本日は喜ばしい事が二つあった。かねてから追い求めていた敵の知将を捕らえられた事。そして、このように姫さまが回復された事。」
そして奴はグラスを掲げた。
「乾杯!!」
そして参列者が和した。

参列者は皆、奴の配下の者ばかりであった。それは当然だが、給仕の者はその殆どが元から城に居た者逹のようだった。
「姫さま?」
と給仕の女が俺に声を掛けてきた。
「お食事に手を付けてらっしゃらないようですが、病み上がりとの事、何か柔らかいものをお出ししましょうか?」
まじまじと顔を近付けて来る。
このままでは俺が本来の「王女」でない事がバレてしまう。
「大丈夫よ。今は何も食べれないの。心配掛けてごめんなさいね。」
と返事をする。
給仕が下がると、奴のニヤニヤ顔が目に入った。
「これは心優しいお姫さまだなぁ♪クククッ…」
と笑いを堪えている。俺が女言葉を喋るのを面白がっているらしい。
俺自身、すんなりと女言葉が出てきた事に驚いていた。
これもまた、肉体の記憶なのだろうか?

 

そして、三日も経つと奴の言った通りに同化が進み、俺の顔は生前の王女のものと寸分違わないものになっていた。
と同時に、奴は頻繁に俺を連れまわした。
それは「王女が健在である」ことを周知させるだけでなく、奴と王女が「親密な関係である」とアピールされる事になっていた。
王家の血は絶えることなく王女に継がれている。
その事だけでも民衆は奴を受け入れてしまうのだろう。
更に奴はこの国を侵略したにもかかわらず、その統治に残忍性の欠片も見せなかった。

俺の知らぬ間に、婚礼の準備が進められていた。
俺と奴の婚礼である。勿論、異議を唱える者などいない。
俺ひとりが抵抗しているだけだ。

なにゆえ「男」の俺が奴と結婚しなければならないのか?
そんな考えは頭から否定される。
「どこから見ても姫さまは女性さ。その肉体がまだ乙女である事はワシが保証してやるよ♪」

何でそんな事を奴に保証されなければならない?

 

そして、民衆もまた俺の結婚に期待を寄せていた。
「早く王家の血を引く王子を」
民衆の願いは王家の存続であった。
奴もまた無理に王位は要求せず、王女に自分の子を産ませ、摂政となることでこの国を手に入れようとしていた。
そして、次期国王となる奴の子を産むのが「俺」という事になる。

主治医の説明でも、俺の肉体は「女」として正常に機能していた。
当然ではあるが生理も幾度となく経験している。
だが…「男」である俺に本当に妊娠し出産させようというのか?
そして「妊娠」するためには、俺は奴と性交する必要があるのだ。

「正当に姫さまにワシの子を孕んでもらうためにも、婚礼という儀式が必要なのだよ♪」
と奴は言う。
「案ずるな。優しく抱いてやるから♪」
奴に抱かれるという事に狼狽える俺を奴は楽しそうに見ていた。

 

 

 

俺が純白のウェディングドレスを着ることになるとは思ってもいなかった。
国民の手前、俺は笑顔を造り馬車から手を振っていた。

婚礼の儀式は終わり、俺は奴の妻となった。
「王女」の婚礼を祝うため、国内外から大勢の人々が城下に集まっていた。
彼等に披露目するために、俺逹は馬車で城下を巡っていった。

 
そして「夜」が来る…

 
俺は敗残者である。
敵の大将の腕に傷を負わせた代償として、捕らえられ、不可思議な術で俺の「腕」を差し出すことになった。
その後、腕ばかりではなく、首から下の肉体も奪われ、替わりに自害した王女の肉体を与えられた。

敗残者が何を言っても始まらない。
だが…
この状態にはなりたくなかった。
俺は今、敵の大将に組み敷かれていた。
奴も俺も全裸である。
そして、奴の股間はギンギンに勃起していた。

俺はといえば、俺の股間は俺の意思には従わず、愛液を滲ませ、濡れていた。
「姫さまの肉体は正直ですな♪」
「俺はまだ、心までは売り渡してはいないぞ。」
「問題ない♪姫さまは黙ってワシの子を…次期国王を孕み、産んでくれれば良い。そのうち、愛情も湧いてくるだろう♪」

「ああっ…」
奴のペニスが俺のナカに挿入された。
肉体が勝手に媚声をあげる。
気を良くして、奴が腰を振ると、それに合わせるように艶声を漏らしてしまう。
そして、拒もうとしても、押し寄せてくるオンナの快感に、俺は翻弄され続けた。

 

 
…大后エクスアウラは蛮族の雄・ゲセラオクスの妻となりルカイン朝の始祖ルカイン一世を産み、五百年の平定の世の礎となった。
大后エクスアウラについては様々な逸話がある。
中でも、夫ゲセラオクスの死後のこと、ルカイン一世が遠征の徒にある中、王都に攻め入ろうとする勢力があった。
大后エクスアウラは少数の精鋭を引き連れ、夜陰に乗じて敵方の中枢を壊滅させたという武勇は有名であるが、後世の造り話しであるという説が有力である。
しかし、大后エクスアウラが知才に長けていた事は疑いもなく、その才がゲセラオクスとの出会いと共に一気に開花したという事は劇的な事として記録されている…

治った?

黄吹葵(アオイ)
青山茜(アカネ)
赤城山吹(ブキ)

俺…赤城山吹。
通称はブキだが、姓は赤城で赤城山ではない。間違えないで欲しい。

俺には彼女がいる。
黄吹葵…アオイだ。
活発な女の子で男女を問わず人気がある。
彼女は俺と出会う前は黄吹という姓から「ブキ」と呼ばれていたが、俺も「ブキ」で混同してしまうので「アオイ」という呼称が定着した。
そんな関係もあって、俺とアオイは付き合うようになった。

アオイには青山茜という親友がいる。
アカネはアオイとは違い、大人しく線の細い美少女だ。
彼女には男性恐怖症があるらしく、アオイの彼氏という立場の俺がようやく挨拶を交わせる限界らしい。
(とはいっても、アオイ以外の女の子と一緒にいる事は少なく、アオイといないときはいつも独りみたいだ)

 

「アカネの男性恐怖症をなんとかしたいんだけど、手伝ってくれないかな?」
アオイにそう言われ、
「俺にできる事なら何だってしてやるよ♪」
と安請け合いした結果がコレだった。

 

黄吹葵(ブキ)
青山茜(アオイ)
赤城山吹(アカネ)

アオイが探してきた怪しい黒魔術の本に従って儀式を行ったところ、身体の中身が入れ替わってしまったのだ。
(ご丁寧にも怪しげな本は術後には消えてしまっていた)

 
今の俺は「黄吹葵」だ。
女の子の身体になってしまっている。
慣れない女の子の生活はアオイ(今は青山茜だ)が付ききりで指導してくれている。
問題はアカネだ。
男性恐怖症のアカネが、あろうことか自分自身が「男」になってしまったのだ。
24時間「男」から離れる事ができない。
(せめてもの救いが、多少は免疫のある「俺」の身体だったことだが…)

 
「ブキ~♪あたし、もうこれ以上耐えられない。」
と俺に抱きついてくる。
赤城と黄吹が恋人同士であるのは周知の事なので、抱きつく行為に問題はないのだが…
「そのナヨっとした態度はどうにかならないか?」
とアカネに言うが、
「あんたも男まるだしの言動はつつしんで頂戴ね。」
とアオイに横ヤリを入れられる。
「わ、わかってる…わよ。」
と何とか語尾でカバーする。

最近はこの三人で一緒に行動するパターンが多い。
(勿論、アカネは一緒にトイレに入る事はできないが…)

しかし、抱き付かれて初めて俺も「男」の大きさ・力強さを実感した。
アカネのように、自分の弱さばかりを気にしていると「男が怖い」という意識も理解できなくはない。

「アカネ…赤城君も、もう少し頑張れるんじゃない?今はそれなりにガタイもあるでしょ♪」
アオイは極力名前ではなく名字で呼ぶようにしている。
幸いにも、中の人の名前と身体の名字が似ているので、呼び間違っても多少は誤魔化せるので、他の二人も見習っている。
が、
アカネは昂ってくると、俺の事を「黄吹さん」でなく「ブキ」と呼んでしまう。
彼女にとっては「アオイ」より「ブキ」の方が馴染み深いが、俺の事を「ブキ」と呼ぶときは必ずといって良いくらい黄吹な中身が俺である事を忘れている。
女同士の気安さですり寄ってくる…それが異性間の接触であると気付く事はほとんどなかった。

 

「赤城君」と自分を呼んだのが青木さん…本来の自分の姿をしたアオイ…であることに気付き、アカネはようやく自分の現実を思い出したようだ。
「ご、ごめん。黄吹さん…」
「別に謝らなくても良いわよ。あなたとあたしの関係なんだし♪」
「ち、ちょっと。黄吹?あんた言ってる事、理解してる?」
アオイが言っているのは、本来「男」である俺が「女」として抱かれる事に抵抗はないか?という事だ。
アカネは知っているか判らないが、俺とアオイは恋人同士として、当然ではあるが「男と女の関係」を持っている。
確かに「男」に抱かれる事に恐怖心はない訳ではないが、入れ替わるまでは、アオイは何事もないように俺に抱かれていたのだ。
「問題ないわ。あんたにできていた事だもん。あたしも同じにできる筈よ♪」

と話が進んでいる間、当事者の片割れであるアオイはただ俺とアカネの会話を聞いているしかなかった。
「あのぉ、話が見えないんだけど…」
その声にようやくアオイ=赤城君の存在を思い出した。
「ごめん、ごめん。無視してた訳じゃないのよ。青木があたしと赤城君の関係をちょっとだけ忘れてたみたいだから、リマインドさせてあげたの。」
「それで、あた…ボクは何をすれば良いの?」
「簡単な事よ♪これからでも良いから、あたしを抱い…」
「ちょっと待て黄吹。それ以上は公衆の面前で語って良い範囲を越えてしまうぞ。」

そんなこんなで、俺達は俺の…赤城山吹の部屋に押し掛けた。

「お邪魔します♪」
と俺とアオイが足を踏み入れた部屋は、確かに「俺」の部屋だった。
が、少し見ぬ間に綺麗に整理整頓され、どこか他人の部屋のように感じてしまった。
「どうぞ。」
と赤城君から座布団が差し出された。
「胡座はダメよ。」
とアオイが耳打ちする。
「俺」の部屋に戻った安心感からか、無意識のうちに胡座をかこうとしていたのは確かだった。
俺は隣のアオイを手本に、両膝を付けて足先を広げ、その中にお尻を落とす…いわゆる女の子座り…をやってみた。
身体が覚えているのか、自然に座れていた。
逆に、アカネは同じように座ろうとして、硬い身体に断念するしかないようだった。
「ここなら大丈夫よね♪」
アオイが口火を切る。
「アカネの男性恐怖症を直す為に黄吹が赤城君に男とは何たるかを教えるということだったわよね?」
「そ、そこまで積極的な話じゃなかったけど、アオイが構わなければ何だってするよ。」
「と、黄吹は言っております。赤城君、お覚悟はよろしくて?」
「覚悟…って、何をするつもりなの?」
「それはもうナニまでイっちゃいましょう♪」
俺はズイと「俺」に近付いた。気圧されしてアカネは仰け反り、そのまま床の上に倒れた。
俺はズボンのチャックを下ろし、中から息子を取り出そうとする。
「あん♪ダメっ…」
男の声で女の子のように拒絶する。
少し興ざめだが…
「相手が女の子なら怖くはないでしょう?それに、いつものようにシてあげれば悦ぶわよ♪」
(いつものように?)
アオイのその言葉に一瞬躊躇してしまった。
その隙を逃さず、アカネが攻勢に転じる。
今度はこちらが拒絶しようとするが、男女の体力差には抗いようもない。
あっという間に服を脱がされてしまっていた。
「あぁん♪」
乳首を弄られ、聞きなれていたアオイの恥声を、俺は自分の口から漏らしていた。

女はオンナの感じる所を知っている…という事なのだろうか?
俺はアオイに「男」を教えてやる筈が、一方的に責めたてられ、オンナの快感に翻弄され続けていた。
「もう良い頃じゃない?黄吹も赤城君も出来あがってるよね♪」
アオイの言う意味が一瞬理解できなかった。
(この先に何があるの?)…って、決まっている!!アカネの股間が全てを物語っていた。
「さあ、挿れちゃいな♪」
アオイの言葉に導かれるように「俺」が伸し掛かってきた。
(………)
俺の胎の中に侵入してくるモノがあった。
「異物感」が半端ないが、一方で「満たされる」幸せ感が吹き出してきた。
「どお♪アオイ?」
「何か凄く気持ちイイ♪」
「それが男よ。そして黄吹もイイ顔してるでしょ?これがオンナよ♪」
「っあ。何か来る。出てきちゃう。」
「問題ないわ。彼女のナカに射してあげちゃって♪」

俺は彼女逹の会話を遠くのように聞いていた。
今は自分のコトに精一杯。オンナの快感に打ちのめされ、翻弄され、また更なる高みに放り投げられようとしていた。
「イクの?イッちゃうの?ああ、ああ、ああ~~~ん!!」
アカネが射すと同時に、俺は快感の中に意識を失っていた…

 

 
気がつくと、二人はベッドの上で絡まっていた。
「そうよ。上手になったわ♪…まだ射しちゃダメよ。我慢して、意識を逸らすの。イイわ。そこ、そこ♪一気に来て!!」
アオイがアカネを誘ったのだろう。アオイのさっきの言い種からすると、これまでも二人で女同士の危ない関係を持っていたに違いない。
が、今は「男と女」として抱き合っている。
「アカネの男性恐怖症を治すため」とは知りつつも、軽い嫉妬心に苛まれる。
(嫉妬心?)
俺は何に嫉妬しているのだろう?
アオイが他の男に抱かれているからか?
否。抱かれているのは青山茜だ。それに抱いているのは「俺」なのだ。
なら、何に嫉妬している?
いや。この命題を掲げた時点で答えははっきりしていた。

(アタシの彼を盗らないで!!)

 
「こっちにオイデよ。一緒にヤろう♪」
あたしに気付いた彼が声を掛けてくれた。
彼があの快感をもう一度与えてくれる♪
それに、一緒にいるのは他でもない。あたしの親友の茜なのだ。
あたしは立ち上がると二人の待つベッドに上がった。
「葵も茜も可愛いよ♪」
彼にそう言われ、あたしは自分の名前が「葵」だった事を思い出した。
「茜は大丈夫なの?」
あたしが聞くと
「何も問題ないわよ。この先もずっとこの三人で楽しみましょ♪」

何か重大な事を忘れているような気がしたが、あたしは彼の与えてくれる快感を逃さずにしようと、我を忘れてしまっていた…

 

 

「青山さん、大丈夫なの?」
男子と話をしている茜を指して女子があたしに聞いてきた。
「もう大丈夫よ。免疫ができたようで、人が替わったみたいでしょ♪」
あたしはにっこりと笑って隣に立つ「彼」を見上げる。
彼もあたしに微笑み返す。
「あんた逹は変わらず仲良過ぎね。あ~っ、あたしも早く彼氏が欲しい♪たまには彼を貸してよ。」
「ダメッ♪」と言うとその子はあたし逹から離れていった。
彼がプッと笑いを吹き出す。
「あんたも女の子が様になってるね♪」
と彼
「何よ、もう♪」
とあたしは彼の腕に絡めた腕に力を入れ、密着度をあげた。
彼の腕に絡まるあたしの指には、キラキラと指輪が輝いていた。

〈登場人物〉
青山茜(親友)
赤城山吹(彼)
黄吹葵(あたし)

 

無題

「俺は無敵のスーパー☆ヒーローだぁ!!」
とポーズを決めた。
どういう仕掛けか、奴の背後が七色に輝きを放つ。

 

それは今年の映画に出てきたヒーローを彷彿とさせた。

奴は流行に流され易い。
殊に流行した映画の影響をモロに受けてしまうのだ。
確か去年は夏だというのに、裏山に巨大な氷の城を作っていた。
その前は大型の飛行艇だったか…
確かに奴は頭が良い。天才だ。
だから、いとも簡単にそれらを実現してしまう。
今回は裸の巨人と思いきや、人間の大きさのままの「ヒーロー」だった。
奴は、いとも簡単に「装甲強化服」などを作ってしまっていた。

 
そして…

 
「ヒーローは弱き者の味方。弱き者…汝は女なり!!」
などと御託を並べる。
奴の頭の中では彼とセットとなる「ヒーローに恋する可憐な乙女」が出来あがっていたのだ。
しかし、頭は良いが「変人」である奴の周りには女っ気どころか、俺以外に友人はいない。
当然の事ながら「ヒロイン」役をやってもらえるような女性の知人などいる筈もない。
だが、奴の凄いところは、自らがヒーローに成ったと同じように、誰をも「ヒロイン」にしてしまう事ができるということだ。
そして、その「誰か」は当然のように「俺」に決まっていた。

 

勿論、同意などを確認するような奴ではない。
「これを着て、俺の相方になれ。」
と俺にボディスーツが渡された。
その時点では奴の意図を正確に把握していなかった。俺は、単なる「ヒーローの助手」程度に思っていたのだ。
が…
ボディスーツに締め付けられた贅肉が胸の上に集められ、乳房を造っていた。
腕も脚も細くなり、その皮膚も白く滑らかになると、女の手足と見紛うばかりだ。
更に腰周りが絞られ、逆にお尻に肉が付いていた。
そこには理想的な女性のプロポーションが出来上がっていた。
奴は「俺」を「ヒロイン」にしてしまった。

 
女物の衣服が渡された。少し少女趣味の入ったワンピースだ。
勿論「女装」するなど恥ずかしいに決まっている。だが、ヒーローと一緒になって露出度の高いコスチュームを着るよりはまだまし…
と、フリルの付いたブラを素直に着けていった。
この時点では、俺も彼の意図とその能力を正確に把握しきれていなかった。
例え見るも恥ずかしいコスチュームと比較してたとしても、「男」の俺が「素直」にブラを着けられる筈はないのだ。

奴には俺の肉体だけでなく、精神さえもねじ曲げてしまう能力があったようだ。
その事に気が付いた時には、あたしはすっかり「ヒーローに恋する可憐な乙女」に成りきっていた。
そしてヒロインの宿命として、あたしはいつか悪人逹の人質にされるの。
あんなコトやそんなコトをされそうになるぎりぎりのところで彼が助けに来てくれるの。
彼は格好良く悪人逹と戦い、叩きのめしてあたしを救いだしてくれるの♪
そして、二人が落ち着きを取り戻した後…あたし逹は「結ばれる」のよ♪

「んあぁん♪」
あたしは甘い淫声で彼を誘う。
彼の股間はあたしに応えて硬く屹立している。
あたしは跪くと、彼のズボンの中からソレを引き出し、口づけする。
裏側の筋を舌先で舐め、ゆっくりと口の中に挿れてゆく。
先端が喉の奥にあたる。
あたしは口全体で彼を刺激してあげた。
「あぁ、イイよ♪」
そう言って呻きをあげると、あたしの口の中に彼の精液が送り込まれてくる。
あたしは喉を鳴らして、その全てを飲み込んでいった。

彼はヒーロー♪
それだけの事で萎える事などない。
いまだ力強さを保っているの。
「今度はこっちにシてくれる?」
あたしはスカートをたくし上げた。
既にあたしの股間はぐしょぐしょに濡れていた。

「あん♪ああん!!…そ、そこ…イイわぁ♪」
あたしは快感に喘ぎまくる。
ハジメテなのに、あたしの股間はすんなりと彼のペニスを咥え込み、甘美な快感を伝えてきた。

 
(ハジメテ?!)

 
あたしは「乙女」だから…
違うっ!!
俺は「男」だ。
奴のボディスーツで女の姿になっているだけで、中身は「男」なのだ。
受身のSEXの経験などある筈もなく、受け入れる器官だって存在しない!!

だが、何でこんなに股間が濡れているんだ?
俺はスカートの中に手を入れた。
濡れたショーツを脱ぎ捨てる。
ボディスーツに被われ突起物を抑え込まれた、のっぺりとした股間…
そこに刻まれた溝から滲み出てきている。
溝は深く刻まれており、まるで女性器のような襞が刻まれていた。
指を這わすと、指先には愛液が絡み付く。
「あんっ!!」
指先が触れた突起から生まれた刺激に、思わず喘ぎ声が漏れる。

下腹部の奥に熱い塊が生まれたようで疼きを伝えてくる。
乳首の先からもチリチリとした感覚が伝わってきている。
俺の肉体が刺激を欲していた。

(挿れて♪ぐちゃぐちゃに掻き回して♪)
そんな言葉が俺の頭の中を駆け巡っている。
(俺は何を望んでいるんだ?!)
答えは明らかである。ただ、俺が「男」としてそれを認めたくないだけなのだ。

(今のお前は「男」だと言えるのか?)
否定ができない。股間を濡らし、女陰に男を咥えこみたくて仕方なくなって悶えている…
あたしは「女」でしかない?
快感を求めて、あたし…俺はソコに指を送り込んでいった。
濡れた肉洞が指を圧し包む。股間からは胎内に侵入してくる異物を感じる。
実際に尻の穴に指を突っ込んだ事はないが、これはそれとは別次元の感覚に違いなかった。

一本では物足りない。
もう一本な指を差し込んで洞の内を掻き回す。
「んあん…あふぁん…」
快感に淫声が漏れてゆく。
くちょくちょと卑猥な音をたてて、指が出入りを繰り返す。

ヒーロー様に抱かれ、ヒーロー様のペニスが音をたてていると思いながら…
あたしは「ヒーローに恋する可憐な乙女」なのだから♪

 

 

「…お~い。聞こえてるか?」
あたしを呼ぶ声に、現実に引き戻される。
「見た目は結構エロいんだが、中身を知ってると無茶キモいぞ。」
あたし…俺はスカートを捲りあげ、晒した股間に指を突っ込んで喘いでいる自分に気がついた。

頭から冷水を浴びたかのように、一気に全身が震えあがる。
「え、え…と。これは…」
と、どうやっても取り繕いようもない。
既に奴は「装甲強化服」を脱いで、いつもの白衣をまとっていた。
「なかなか興味深い反応だったな♪続けるなら寝室を貸してやるから、俺の目の前では止めてくれないか?」
だ…だれの所為でこんなになったと思ってるんだ!!
喉まで出かかったが、この恥態の前にはその言葉は飲み込むしかなかった。

立ち上がり、スカートの乱れを直した。
「それよりも、コレはどうやったら脱げるんだ?」
と俺が聞くと
「困ったお嬢さんだね。裸になるのも良いが、寝室でと言っているだろう?」
奴は故意に質問の意図を曲解しているのだろうか?
「い、今着ているこの服じゃない。その下のボディスーツのことよ!!」
「ボディスーツ?」
「だから、あたしはこのボディスーツで女になっちゃったの。早く脱いで元にもどらないと変になっちゃうわ。」
「女であることを知ってしまうと、もう少女には戻れないんだよ。知っていた?」
「だから、女って意味が違うの。あたしはまだ処女のままよ!!」
「本当か?よかったら確認させてもらえないだろうか?」
「な、何言ってるのよ。そうじゃなくて、あたしはコレを脱がないと…」
「だから、脱ぐなら寝室に行こうね♪その後は俺が良いようにしてやるよ。」

 

 
…って、あたしは彼に抱かれて、何度もイってしまった。
(何でこうなっちゃうのかしら?)
結局は、あたしは彼のよいように使われてしまう運命なんだわ。
(これも、彼に恋してしまった乙女の宿命なのかしらね♪)

あたしは「大事な事」を忘れているような気がしつつも、起き上がると、彼のために朝食を作り始めていた。

狩士(1)

カロルネから西に向かう街道を歩いていた。
別に馬の調達が必要な程の急ぎ旅でもない。
左右に広がる田園風景を見ながら、足を進めていた。

「よう♪旦那さん。景気はどうだい?」
突然の声に振り向くが、辺りには誰もいない。
「ジン(精霊)か?」
「そうという人もいれば、そうでないという人もいる。」
そんな事を言うのはジンである証拠だ。
「景気か?まあ、ぼちぼちだなあ。」
「旦那さんはどこに向かってるんだい?」
「一応、狩士を生業としている。この先の山の中に獲物が居ると聞いてきたんでな。」
「旦那さんは強いのかい?」
「とりあえず、生業にできる位はな♪」
「ならば西の山に警告してやらねばならぬのかも知れないな♪」
「それも良かろう。人に悪さをしなくなればそれで良いさ。」
「う~ん。そうなると旦那さんの強さを確かめる事ができなくなるな。」
悩んでいるジンを置いて、西に向かう足を早めた。

既に陽が傾き始めていた。暗くなる前に次の宿場には着いていたかった。
夕陽が獲物の棲む山に掛かろうとする頃には、宿場の大木戸が見えていた。

松明に火が付き、明かりを生み出している。
特に、宿屋のまわりは明るく照らされていた。
「部屋はあるかい?」
宿屋の主人に尋ねる。
「30クレジットだ。」
とぶっきらぼうな回答を得た。
空きはあるという事だろう。
前金で支払いを済ませると、渡された鍵を懐に入れたまま、部屋には入らずに隣の居酒屋に足を入れた。
「いらっしゃい。」
宿屋の主人と似たような顔が迎えてくれた。
カウンターの空いている席に腰を降ろした。
「ビールと、飯になるものを見繕ってくれ。」
そう言うと、なみなみとビールが注がれたジョッキが目の前に置かれた。

テーブル席ではいくつかのグループが宴を開いていた。
多分皆、隣の宿の客であろう旅人ばかりであった。
商人や芸人達である。特に芸人達は陽気に騒ぎまわっていた。

「旦那♪こっち来て一緒に騒ぎませんか?」
とお節介な輩が声を掛けてくる。
「明日も早い。静かに飲んで食ったら寝ているよ。」
と追い払う。
あまり執こいようなら腕づくでも…とは思ったが、そいつはあっさりと引き下がっていった。
席に戻ると踊り子の若い娘と騒ぎ始めていた。

「旦那さん?」
不意に耳元に女の声がした。
黒いベールを被った占いの女のようだ。
「良くない卦が出ている。お守り代わりにこのカードを身に付けていると良い。」
と渦巻き状に歪んだ男女の姿が描かれたカードが渡された。
「『渦中の王と女王』よ。巧くいけば、災いを別のものに転嫁できるわ。」
カードを押し返そうとしたが
「お代はいらないわ。もし、縁があって無事に再会できたら、一杯奢ってくれれば良いわ。」
と懐の中にまでカードを押し込んでしまった。

その一瞬後には、彼女の姿は芸人達の集団の中に埋もれていた。
本当に今までそこに彼女がいたのかと思う程であった。
しかし、懐にはカードが存在し、現実であったことを物語っていた。

 

 

まだ陽は東の地の下にあった。
白み始めた空の下に宿場を出た。この先はもう、まともな睡眠はとれないに違いなかった。
街道をしばらく進むと分岐路があった。
街道は大きく南に曲がってゆくが、分岐した路は西の山々に向かっていた。

迷わずに山に向かう。山に入り、可能な限り奥に進む。
山の中は平地よりも暗くなるのが早い。足元が見えなくなるので簡単には進めなくなる。
明るいうちに距離を稼いでおかなければならない。
そして、安全な場所を確保して一夜を明かすのだ。
勿論、熟睡などはできない。山の中にはどのような危険があるか判ったものではないのだ。

辺りが見えるようになると、行動を開始する。
十分に奥まってくると、そこに獲物の痕跡が見つかり始める。
最近になって残された痕跡が見つかるようになると、獲物の住処は間近である。
どうやらジンは獲物には警告しなかったようだ。

地形を確認し、獲物の住処にあたりを付ける。
突入に際して動き易いよう、余計な荷物は一まとめにして岩陰に隠しておく。
装備を確認し、獲物の住処へと向かう。
「そいつが旦那さんの獲物だと確信があるんですかい?」
ジンがやってきて耳元に囁く。
「痕跡を見つけたのはこいつだけだ。この山に別の獲物がいるとは思えないが?」
「旦那さんの判断に誤りがないことを信じてるよ♪」
そう言い残しジンは去っていった。

獲物の住処と思われる岩穴に辿り着く。
呪いで岩穴の口に結界を張った。
少し時間を掛けて、岩穴の闇に目を慣らす。
既に獲物もこちらの気配に気付いている筈である。が、結界が張られているので逃げる訳にはいかない。
向こうも闘う準備をしているだろう。

闇とはいっても日中である。入り口から入った光は岩肌に反射して完全な闇を作るには至っていない。
が、岩穴は思っていた以上に内側に広がっていた。
獲物の気配を追って奥に進む。
と、そこに獲物がいた。

思っていた程大きくはなかった。まだ若いのだろう。
(本当にこいつで良いのか?)
ジンの問いかけが頭を過る…が、それも一瞬の事。
襲い掛かってくるのを避わし背後に回り込む。
尻尾を掴み動きを封じる。
「カゥン…」
奴が可愛い声で鳴く。
(本当にこいつで良いのか?)
手が剣の柄を離れ、捕獲網を掴んでいた。
網が奴の肢体に絡み付き、動きを封じる。
大人しくなってくれれば、この山から連れ出し、更に奥の人里離れた場所に放してやる手もある。
「ォオン…」
覚悟を決めたか?
と思った次の瞬間、氷点下の殺気が爆発したように降り注いできた。
(上か?)
目の前の奴より遥かに巨漢の奴が天井から落ちてきた。
寸でのところで避わした。が、無傷という訳にはいかなかった。
脇腹が切り裂かれ、激痛が走る。
剣の柄を握り直し、奴の急所に全体重を掛け突き立てる。
奴もまた手負いだった。
あの一撃が全てだったのだろう。切っ先を避ける素振りも見せず、待ち構えていた。
剣が奴の急所を貫くと同時に、奴の最期の一撃が私の首をへし折っていた。

 
相討ちだった。
が、それで終わった訳ではなかった。
私の懐から光が放たれた。光の元は、あのカードだった。
岩穴が光で満たされる。
光の渦が一切をかき混ぜていった…

 

狩士(2)

 
私は闇の中で目を開いた。
手足に絡み付くものがあり、身動きが取れない。

私の目の前には大きな塊があった。
それが私の倒した獲物であることは間違いない。
そして、その巨躯に潰されるようにして転がっていたのは、私の死体だった。
つまり、今の私は網に捕らえた若い方の獲物の内に在るという事た。
「旦那…だよな?またえらく可愛くなっちまったな♪」
ジンがやってきて言った。


確かに、今の私は元の姿とは似ても似つかないものになっていた。
更に、網を外している間に、本来のこの肉体の姿からも変わってしまっているのも確認していた。
本来は獣の手足であり、指を器用に扱うことはできない筈である。が、今の私はかなり人間に近い姿になっていた。
小さく、細いながらも手には五本の指が揃っていた。親指も自由に動き、ものを掴む事ができる。
その手で戒めを着実に解いていった。

既に私の肉体が事切れているのは疑いようもない。首が折れ、あり得ない方向を向いているのだ。
当然、元の肉体に戻る事など考えようもない。
私は岩穴を出ると荷物を隠しておいた場所に戻った。
かなり暗くなっていたが、この肉体は夜目が効くようだ。
隠しから荷物を取り出す。
かなり体躯が小さくなって力も出せなくなっついた。
以前は難なく扱えた重量もこの肉体には耐えられそうもない。
最低限必要なものを選んで持っていく事にした。

 
先ずは服である。
以前は体毛に覆われていたが、人間化に伴い失われている。
が、元の私の服は大き過ぎた。
短コートを羽織り、ベルトで縛ると何とか形になった。
靴は諦めるしかない。
この先狩士を続けられるか分からないが、この体躯でも扱えそうな道具を選び荷物をまとめた。
ふと思いだし岩穴に戻ると、私の剣と懐にあったカードを回収した。

 

 

この肉体は力は無いが、持久力は並外れていた。
夜の内に山を降り、朝日が昇る頃には近くの宿場に辿り着いていた。

私はあのカードをくれた占いの女に会う必要を感じていた。
あの旅芸人達がいつ頃この宿場を通過したかが判れば、今どこら辺にいるかを割り出せる筈である。

宿場の大木戸は閉ざされていた。が、その脇には小さな通用口があった。
扉を押してみる。
鍵は掛かっていなかった。

「お疲れ様♪」

と声が掛けられた。
目の前に占いの女がいた。
「災いは転嫁されたけど…ジンが言ってたように可愛くなってしまったわね♪」
「あ、あんたか…」
会わなければと思っていた人物に、先ず最初に遭遇してしまった。
「と、取りあえず『死』は回避できた。礼は言いたいが、この肉体はひ弱過ぎる。別の頑丈な肉体に換える…なんて、無理な相談かな?」
「それなりの対価とリスクの覚悟があれば、不可能とは言えないわ。けど、あんたはまだその肉体を充分に把握しきれていないんじゃないかしら?」
「鍛えれば、同じになれると言うのか?」
「その肉体は『人間』ではないわよね。更にまだ幼いと言って良いくらいに若いわ。時間はあるわ。あんたならその肉体なりの活用方法を見つけられるわよ♪」
「楽観的だな?」
「あんたが仕事ができるようになるまで、一座で面倒をみてやるわよ。」
「面倒…て?」
「食べるもの。着るもの。寝る場所。…別にあんたを見世物にしたり、芸を仕込んで稼がせたりはしないから安心して♪」
「その間にあたしは鍛練に勤しんでいて良いという事?あんた達の完全な持ち出しじゃない?」
「あのカードを持たせた責任があるからね。それに、あんたの成長を見てみたいのよね♪」
「それはあんたの個人的な趣味でしょ?そんなんで皆を納得させられるの?」
「問題ないわ。だって一座はあたしの所有物だからね♪」
「あんたが座長なのか?」
「あたしは単なるオーナーよ。座長は別に立ててるわ。あとで紹介する。それより、その服をなんとかしないとね♪」
「判った。しばらく厄介になる。」
私は差し出された彼女の手を握っていた。

 

 
「これって女の子が着る服じゃないか!!」
「男だったあんたには抵抗があるとは思うけど、今のその肉体にはこういう服が合ってるのよ。」

私はこの肉体が華奢なのは、単に幼いからだと思っていた。
が、明るい場所でわたしは衝撃的な事実を知る事になった。
「女の肉体だったの?」
私はその事実に驚き狼狽していたが、占いの女はかなり早い時点でその事に気付いていたようだ。
「男と女では、先ず匂いからして違うからね♪微かな違いに気が付けば、あとは裏付けを取ればよいのよ。」
「あたしはこの姿で、この先を生きなければならないの?」
「女も悪くはないわよ。世の中の半分は女をやってるんだからね♪」

そして、服を選らばされていた。
「それなんか良いんじゃない?」
私が何気に手に取った服を誉められた。
「偶然、手にしただけよ。意識して選んだんじゃないわ。」
「それでも、嫌じゃなかったら着てみて♪サイズは問題ないから♪」
私は彼女に手伝ってもらい、そのクリーム色のワンピースを着てみた。
「回ってみて♪」
彼女に言われるがまま、くるりと回ると、スカートが空気を孕みふわりと舞う。
私が止まると、裾が降りてきて私の脚に触れた。
ズボンしか穿かない男では経験することのない、新鮮な感覚だった。
「成長して行けば、もっと違った感覚も経験する事になるわよ♪」
と、彼女は私の手を掴むと、自らの胸に私の掌を触れさせた。
豊かな乳房の感触が伝わってくる。
私は慌てて掌を離そうとしたが、
「女同士のスキンシップよ。何の問題もないでしょ?」
「あ、あたしは男…だったんで、そう簡単に異性の胸など…」
「今はもう女の子でしょ?異性ではなく同性よ♪それに、いずれあんたの胸もこれくらい育ってくる筈よ♪」
「あ、あたしの胸もこんなになるの?」
そう私が言ったとき、私の中に複雑な感情が生まれていた。
(私自身が胸が大きくなる事を望んでいる?)

 

狩士(3)

 
月日が流れる…
あたしは一座の一員として、芸はしないまでも、身の回りの世話の手伝いをしながら、鍛練を続けていた。
その成果は早くも胸に現れ、踊り子のラーナを簡単に追い越し、占い女のミラとは良い勝負に…
違う!!
あたしは「女」を磨いていた訳じゃない。狩士として一日も早く復帰できるよう、体と技とを鍛えていたのよ!!
「あんたの場合、獲物を狩るより男を狩った方が金になるんじゃない?」
ミラは余計な事を言う。
中々力が付かない細い腕、動く度に揺れる胸が鍛練自体の進行を阻害している。ミラの忠告に従うしか…なんて事は絶対にないんだから!!
「女に狩士なんて無理じゃないか?それより、好い男でも捕まえて結婚してしまった方が…」
ジンもちょくちょく余計な事を言う。
あたしとしては「男」だった意識が残っているので、男と結婚するなんて考えられない。
男に抱かれるなんて想像しただけで、背中を虫酸が走ってゆく。
かといって、女を抱くのかといえば、そんな気も起こることはない。

が…

何故かあたしとミラは夜になると同じベッドで寝ている。
あたしは彼女を抱こうとかは思わないが、彼女があたしを抱きたがるのだ。
男が相手ではないので、あたしも気安く応じているが…

今夜もあたしは彼女に「女」の快感を惹き出されてしまった。
あたしは発情したオンナのように、悶え喘ぎまくっていたのだ。
「こんなに立派に育ったオッパイを一人占めしてるなんて、世の男どもに申し訳ないわね♪」
などと言っているが、あたしは彼女の責めに喘ぎまくっているので、あたしの耳には何も届くことはなかった。

 

 

「また1サイズ大きくなったんじゃない?」
翌朝の稽古の後、ミラが言った。
「やっぱり、あんたはこっちを鍛えるべきよ♪」
とあたしの乳首を指で弾いた。
「っあん♪」
思わずあたしは喘ぎ声をあげてしまった。
今やこれも日常となり、だれもあたしの淫声に反応しない。
「あたしは絶対に狩士に復帰するの!!」
これ以上ミラに付き合っていると、とんでもない事になるので、あたしは皆の汚れた衣服の入った篭を抱えて洗濯場に向かった。

 
あたしが狩士への復帰を目指している事は皆も知っている。だから、少しでも鍛練の時間が取れるようにと、新しく入ってきた小間使いの女の子にかなりの分の仕事が振られていた。
今では洗濯くらいしか手伝う事がない。そして、空いた時間に稽古は入れられた。
けれど、昼間は他の人逹も練習の時間に充てている。あたしのように剣を振り回すのは、皆の邪魔になる。
だからといって、隙にしているとミラがちょっかいを出してくる。

…何故かあたしの肉体には呪いのようなものが掛けられていた。
一度あたしの「女」に火が点いてしまうと、イクとこまでいかないとどうにもならなくなってしまう。
だから、ミラがちょっかいを出してくる度にあたしは…
(当然だけど、ミラは最後まできっちりとあたしの相手をしてくれるのよ♪)

 
とはいえ、折角作ってもらった時間なので、ミラに良いようにされてばかりもいられない。
そんな時、座長が
「ラーナから踊りを習ってみては?」
と言われた。
「別に舞台に立ってもらうとか、そういうつもりはない。踊りの動作があんたの稽古に役立てば良いと思っての事だ。」

あたしはラーナに踊りを習う事にした。が、彼女の指導は見掛けによらず厳しかった。
もしや彼女より大きな胸に嫉妬されているか?とも思ったが、彼女は本心からあたしに踊りを教えてくれていた。

実際、少しかじっただけでも踊りを習う事が狩士の技量向上に役立つ事が解った。
踊りで使う筋肉は、剣を振るう際にバランスを取るのに役に立った。
あたしは男の時の感覚のままで肉体を鍛えていた。やはり女の肉体は微妙なところで勝手が違うようでどうしても剣の重さにふらついてしまう。
しかし、これまで使っていなかった筋肉が鍛えられると、どのように剣を振るっても体の芯がぶれなくなってきた。

おまけと言うか、あたしの「踊り」も結構サマになってきた。
試しに舞台で披露してみたところ、男逹のテンションが俄然盛り上がった。
師匠のラーナ程は「踊り」は完成していないものの、肉体の完成度はあたしの方が遥かに高かった。
あたしの胸が揺れる度に男逹の歓声があがる。
お尻を振れば、男逹の視線が突き刺さる。
股間を広げた際どいポーズに男逹は釘付けになっていた。

(だからといって、その快感に酔って「男」に抱かれたいなんては思わないわよ!!)

 

肉体は鍛えあげた。
剣を振るうのには多分問題はないみたい。だけど、細い腕は以前の太さを取り戻せなかった。
「そんな可愛い身体にゴツくて太い腕なんて考えられないわ。」
とミラにも泣かれる。
あたしも物理的に無理なのは理解していた。
となると、この重い剣を四六時中振り回すことは叶わない。
この剣を手放し、女剣士がよく使う細身の剣に鞍替えするしかないの?
「だから、狩士なんかに戻らずに舞台で踊ってれば良いじゃないか♪既に食うには困らないくらい稼げるのだろう?」
ジンが現れて言う。
「あたしはどんな姿になっても狩士なの!!この剣とともに獲物を追い続けてこそ、あたしの存在意義があるのよ。」
「狩士は辞めない、その剣も手放さないってか?」
「剣は…どうにもならないとは判ってるんだけど…」
「鋳直したら良いんじゃないか?この先に腕の良い職人が居るらしいよ♪」

ジンの話しはどうやら本当らしかった。
トーヤという鍛冶が、この先の山のふもとに居る事が確認できた。
あたしは街道を進む皆と別れて鍛冶の住む山に向かっていった。

 

狩士(4)

「これは珍しい。女の…それも人間ではないんじゃな?」
「あ、あたしが人間かなんてどうでも良いでしょう?貴方に仕事を頼みに来たのよ。」
「わしの所に女が来るのは、抱かれたいか、仕事を持ってきたかじゃな♪」
あたしは白髪の老人=トーヤをまじまじと見た。
「その才、その顔で抱かれに来る娘なんて無いでしょうが!!」
「確かに仕事以外で此処に来た女はいないな。それともあんたが一人目になるかえ?」
「な、何考えてんですか!!あたしは仕事を頼みにきたの。お金も用意してきたわ。」
彼の視線が懐から出した巾着を追って…行かずに、あたしの胸元を覗き込んでいた。
(本当にこんな奴に任せて大丈夫なのかなぁ?)
あたしはドシンとテーブルの上に巾着を置き、彼の注意を引き戻してやった。

「で、あんたは何を頼みに来たんだい?」
ようやく本題に移り、あたしは背負っていた剣を降ろした。
「見ても判る通り、この剣はあたしには重すぎるの。能力はそのままに、できるだけ軽くしてもらえないかしら?」
剣を受け取ったトーヤの目がキラリと光った。
「あんたなら、こいつを振り回すだけなら問題ないじゃろうが?」
とあたしの細い腕に付いた筋肉を正確に読み取っていた。
「でも、コレでは戦えないわ。」
「お嬢ちゃんが?誰と戦うんじゃ?」
トーヤの目は先程までのスケベ爺の目ではなかった。
あたしの心の奥まで見透かすように冷たく、鋭くなっていた。
「この肉体になるまでは、狩士として何体もの獲物を狩あげて来たのよ。」
「狩士ね。戦う相手は判った。その事は剣からも見て取れる。しかし、何でこの剣に拘る?わしが鍛え直すより、遥かに安く頃合いの剣が手に入るじゃろうが?」

「その剣だけが…あたしがあたしであった証しなのよ。どんなに姿が変わっても、あたしはこの剣と共に戦いたいの。」
「まあ、仕事じゃからな♪悪いようにはせんて…」
と確かめ終わったのか、トーヤは剣を脇に置いた。
「剣の方は大体検討がついた。次はあんたの方じゃな。」
「あたし?」
「どうせなら、あんたの肉体に最適なバランスに仕上げたいからな。動きを見てみたい。できるだけ動きが見やすい服に着替えてもらえるかな?」
あたしは単に剣を削って軽くするだけで終わるのかと思っていた。
しかし、一流の鍛冶職人=トーヤの言う事も確かだ。
あたしは衝立の裏側に廻ると、躍りの稽古で使っていた衣装に着替えた。
「おお、素晴らしい肉体じゃ♪」
とスケベ爺が戻ってきた。
旅の格好では目立たなかった体の線が、この衣装はクッキリと、更に強調するように見せ付ける。
(初対面でコレはやり過ぎだったかしら?)
とは思っても、もう他の服に着替える事など許されないだろう。
彼の目はあたしの大きな胸に注がれていた。
「軽く飛んでみなさいな。」
もう、彼の言う事に従うしかないのだろう。
トントントンと飛び上がる。
「良く鍛えているようだね。バストの揺れも少ない。何か踊れるかな?」
そう言われ、あたしは舞台で披露したのを踊ってみせた。

即に、あたしは踊る演目の選択を誤った事に気付いた。

あたしを見るトーヤの目が、舞台の下から歓声をあげていた男逹と何ら変わらないものになっていた。
お尻を振れば、トーヤの視線が突き刺さってくる。
だからといって、躍りを中断する訳にはいかない。
股間を広げた際どいポーズにトーヤは満足な笑みを浮かべていた。

 

「狩士に戻らずとも、その躍りだけでも食っていけるんじゃないか?」
「この躍りは剣のためだけに習ったものよ。何であたしが男を歓ばせるような事を仕事にしなくちゃなんないの?」
「ふーん。それにしてはわしに見られて興奮してたのではないか?」
「た、単なる汗よ。もう良いでしょ?着替えてくるわ!!」
「一寸待て。あんたの筋肉の状態も確かめたい。こっちに来んしゃい。」

そ、それは不味いわよ!!
彼には否定したけど、踊っている間にあたしの肉体が興奮してきていたのは確かだった。
筋肉だけなら良いけど、ミラのように胸を弄られたりしたらどうなっちゃうか…
老人とはいえ、トーヤも「男」。痴態を見せる「女」を前に理性なんて…
彼に理性なんか期待できないじゃない!!

(…って、どこ触ってんのよ!!)
あたしはふらふらとトーヤの前に近づいてしまっていた。
トーヤがあたしの腕の筋肉を確認する。
腕から肩に、そして背筋、腹筋と…
「あんっ♪」
思わず変な声が出てしまった。
彼の手がお尻を揉みあげたのだ。
彼としてはお尻から脚にかけての筋肉を確認しようとしただけなのだろうが…
「あんた、感じ易いんだな♪」
スケベ爺が舞い戻ってきた?
今は、どこだろうとあたしの肉体に触れられる距離にいる。
腕を掴まれ、離れる事ができない。
「いやん。んあん♪」
トーヤの手は、あたしの筋肉を確かめる手から、あたしの肉体に快感を与える手に変わっていた。
あたしの声も、快感に悶える「オンナ」の声に…
彼の手が太股の内側を這い上がってくる。
あたしの股間はもう、激しく濡れていた。
「ああ~っ」
あたしは脚から力が抜け、彼の腕の中に倒れ込んでいた。
「…シて♪イかせて♪」
あたしはミラとヤッてる時と同じに喘いでいた。
乳首を弄られ、股間が撫であげられる。
あたしはあたしを玩ぶ相手が誰かなど、意識する事ができなくなっていた。

仰向けに寝かされる。
片足を抱えられ、股間を広げさせられた。
ミラとは様々な体位で絡みあったが、それとは全く違う。
あたしの股間に硬いモノが圧し当てられていた。
いつもなら、ミラの指が際限のない快感をもたらしてくれていた。
が、あたしの期待は大きく裏切られる。
引き裂かれるような痛みに教われる。
あそこに押し込まれてきたものは、許容量を遥かに越えている。
いつもなら、そこから快感が広がってゆくのに、引き裂かれる痛みが爆発したように全身に広がる。

あたしの意識は、そこで途絶えた。

 

 

「ハジメテだったようじゃな?」
それだけ言ってトーヤは何も言わず、剣を火に掛けてはハンマーで叩きあげていた。
あたしの股間には、まだ痛みと異物の感覚が残っていた。

あたしは自分が「女」である事を思い知らされた。
たとえ、この肉体が人外のものであっても、その内側には「女」として子を産むための機能が備わっているのだ。
そして「人間」が相手であったとしても妊娠しないという保証はないのだ…それがトーヤのような老人であっても…

「この小屋には近くの泉から水を引いている。水路を辿れば泉に着く。そこで浄めてくるといい。」
トーヤがぼそりと言う。
あたしは簡単に身支度を整えると泉に向かった。

 

 
小屋に戻るとトーヤの姿はなく、仕上がった剣が置かれていた。
(どういう事?)
あたしはトーヤに対価を払っていない。いくらかも決めていない。
あたしはトーヤが戻って来るのを待って、小屋で3夜を明かした。

 
「鍛冶屋は現れないよ。」
久しぶりにジンの声を聞いた。
「どういう事?」
「あんたは彼に気に入られたって事さ。対価も要求せずにいなくなるなんて珍しい事なんだな♪」
「もう、ここには現れないの?」
「結界が消えている。この小屋はもう使わないという事だよ。」
(それでも…)と、あたしはお金の入った巾着を小屋に残してきた。

 

狩士(5)

 
剣は予想以上にあたしの身体に馴染んでいた。
あたしの身体の一部のように振るうことができた。
躍りで鍛えたバランスと柔軟性。剣が軽くなった事で変化に飛んだ技を繰り出す。
剣の切れ味は衰えることなく、あたしは狩士として十分な成果をあげていった。

 
「ケイ。右をお願い♪」
あたしは左に飛んで獲物を牽制した。
(格下の相手でも侮らない)(周囲に気を張り不意打ちに備える)
あたしがこれまでに学んできた事を復唱する。
「いたっ!!」
岩陰にもう一体が隠れているのが見えた。
ケイにも意識するよう、隠れている岩の上にマーキング用の液玉を投げ付けた。
玉は岩に当たると弾けて、中身の着色液をぶちまける。
ケイからも了解したとの合図をもらった。
あたしは岩陰の奴の動きに注意しつつ、もう一体を牽制し続ける。
「はあーーっ!!」
ケイが気合いとともに獲物に迫った。
もう一体もそちらに注意が向く。
あたしはスッと死角に回り込み、捕縛網を投げつけた。
網は獲物の四肢に絡み付いて動きを封じる。
あたしは岩陰に隠れている奴に注意を向けた。
そいつはまた動こうとはしていない。
背後ではケイが獲物を仕留めようとしていた。

岩陰のやつは動こうとしない。
ぶるぶると震え、身を縮めていた。
あたしは捕縛網をもうひとつ取り出した。
できれば無駄な殺生はしたくはない。
「そのまま、じっとしてなさいよ…」
そう声を掛けながら網を被せた。
「ぐふぉおん…」
ケイの相対していた獲物が最期の吠声をあげていた。
あたしの前のやつはびくりとして動かなくなった。
あたし逹は、一体を仕留め、二体を捕獲した。

 

 
狩を終え、宿に戻った。
ケイとはコンビを組んではいるが、狩士仲間として以上の関係にはなかった。
ある街で出会い、意気投合してコンビを組んでみたが、なかなか相性が好く、その後もコンビを組み続けている。
ケイはそれ以上の関係になりたいようだが、あたしは今だに自分が「男」であった事に拘っていた。
だから、宿をとっても必ず部屋は別々にしている。
勿論、ケイに肉体を許した事はない。

「乾杯♪」
祝杯をあげた。
獲物3体は久々の事だった。
うち2体は生け捕りだったので、かなり高額で引き取ってもらえた。
酒場での祝杯も、いつもより遥かに上等な酒となっていた。
料理も美味しく、酒がすすんだ。

(…)

記憶が飛んでいた。
あたしは宿のベッドの中にいた。
何故か全裸だった。

何故かと問う必要はないだろう。
酒の所為にはしたくないが、久しぶりにあたしは「発情」してしまったに違いない。
股間に残る感覚は「男」とシた事を如実に物語っていた。
(相手はケイだったのだろうか?)

あたしは確かめる勇気もなく、ケイと別れた。
再び独り身の狩士に戻るだけだった。

しかし、しばらくすると身体に変調を感じてきた。
それが「妊娠」である事に気づくまで、かなり時間が経っていた。

妊娠と気づく前、あたしは休養が必要になると無意識に感じていた。
(休める処って…)
あたしの足はトーヤの小屋に向かっていた。
当然のように、小屋にトーヤはいなかったが、あたしの残してきた巾着も、そのままに残されていた。

そして、肉体の変調が妊娠であると判った。
「男」であった自分が「女」として妊娠している。
自らの内に新しい命が宿っている。
あたしは「女」で「母」なのだ。
既に、あたしは出産する事を当然のように考えていた。

 

 

 
赤ん坊の泣き声が聞こえた。
「男の子だよ」
ジンが言った。
続いて出産を手伝ってくれた近くの村の女性に抱えられて、あたしの「息子」がやってきた。
(君はパパみたいな狩士になるの?お祖父ちゃんの跡を継いで鍛冶屋になるの?)
いまだ何にも染まっていない赤ん坊は、ただ泣き叫んでいた。

変身(1/3)

ブーーン…

虫の羽音が耳元を横切っていった。
そして、一呼吸した後 チクリ と手の甲に痛みがあった。

そこには悠々と血を吸っている「蚊」がいた。
叩き潰そうと、もう一方の掌で甲を叩く…
ゆっくりと重ねた手を開いてみたが、そこには潰れた蚊の死骸は見当たらなかった。
(逃げられた…)
残ったのは、叩かれた手の甲の痛みと、これから始まる痒みに対する憂鬱な想いだった。

 

それが三日前の事。
幸いにも蚊に刺された跡には何もなく、痒みにも苛まれずに済んでいた。
その事を友人に言うと
「蚊なんか出る季節か?別の虫を蚊と勘違いしただけじゃないのか?」
と言われた。
実際、そろそろセーターでも着ないと凍えてしまいそうな気候である。
こんな時期に蚊が飛んでいたのもおかしな話だ。が、蚊ではないとしたら、あれは何だったのだろう?
「遺伝子改造された奴だったりしてな♪」
SF好きな彼の発想は、かなり自由である。
「お前の体内に何らかのナノマシンを投入していったのかも知れないぜ。もしそうなら、明日のお前はアメコミ☆ヒーローだな♪」

勿論、彼の言うアメコミ☆ヒーローは緑色の巨漢になったり、糸を出してビルの谷間を飛んでいったり…といったやつだ。
「はいはい♪お前が危機に陥ったら、変身して助けにいってやるよ。」
と軽く受け答えした筈だったが…
(ドクリッ!!)
心臓が高鳴った。
体中のチカラがみなぎってゆく。
身体が宙に浮き、光に包まれる。
その光の中で、着ていた服が消失した。
更に光が輝きを増す。
手先や足先に光が集まると、それは手袋やブーツの形に変わっていった。
首の回りに集まった光はマフラーに形を変える
身体を覆う光が服に代わり…
腰の回りに集まっていた光が変わったのは…スカート?

光が収まるとともに、あたしはゆっくりと地上に降ろされた。
(えっ、あたし?)

あたしの前で彼が驚いていた。
「そ、それはアメコミ☆ヒーローではなく、日本伝統の魔法少女ではないか♪」
ご丁寧にも、あたしは手に魔法のステッキのようなものを握っていた。
確かに、このヒラヒラの衣装はアイドル歌手ステージ衣装より派手な…魔法少女しか着ないような服だった。

どうやら、あたしの言った「変身」というキーワードに反応したみたいだ。
頭の中にはこれまで知らなかった様々な情報が詰め込まれていた。
その中には魔法の呪文があり、空を飛んだり、必殺技を放ったりする事ができるようだ。
そして、今必要なのは変身を解くこと!!

あたしは頭に浮かんだ呪文を唱えた。

「うん。それはそれで萌えるね♪」
「な、何言ってるのよ!!」

…のよ?って、まるで女の子の台詞じゃない。
それに、この声の高さ…あたしって「魔法少女」が変身を解いた「女の子」になってる訳?

「いやぁ、こんなに可愛ければ元が男だなんて関係ないね。できればお兄ちゃんって言ってくれないか?」
「アホか?あんたはそこで独り悶えてなさいっ!!」

 

つまり、今のあたしが「小さな女の子」ってことは解ったわ。確かに服もジュニアの女の子のものだし、スカートの下にはくまさんのプリントされたパンツでも穿いていそうね。
(って、簡単には見せてあげないからね!!)
あたしは背中に…いやスカートの中のお尻に突き刺さるくらいの彼の視線を感じていた。

(どうやったら元に戻れるか?)
変身を解いてしまった所為か、さっきまでのように「何でも知っている」状態にはなれなかった。
あの状態になれば、何か解るのだろうが、彼の前で「変身」はしたくなかった。
(何故か変身の途中で裸姿を見られるのよっ!!)
取りあえずはあたしん家に戻って対策を考えましょう。…って、この姿であたしん家に戻っても入れてもらえるのかしら?
あたしがあたしであるとパパやママが判ってくれない可能性もあるのよね。
(けど、行くしかないか…)

 

 

「まあ、ようやく羽化したのね。お帰りなさい♪驚いたでしょ?」
あたしの姿を見るなり、ママが小躍りしていた。
「もしかして、コレってママ逹の仕業?」
「仕業なんて人聞きの悪い。人体実験と言って欲しいわ♪」

パパとママは「科学者」らしい。これまでどんな研究をしているかなんて聞いた事なかったけど、娘を人体実験に使うなんて…

「パパは変身させるなら巨大ヒーローが良いって言ってたのよ。でもね、変身させるなら魔女っ子よね♪」
きょ、巨大ヒーローって…パパなら本当にやり兼ねない。
街中に突然そんなのが現れたら何と思われるだろう。
「だからね。パパが出張している間にナノマシンのプログラムをこっそり入れ換えておいたの♪」
と、ママはいそいそと出掛ける準備を始めていた。
「どこか出掛けるの?」
「あんたの服とか買わないとね。その身体じゃ今までの服は着られないでしょ?」

「身体にあった服を新たに買うよりは、この身体を元に戻す方法を教えてもらいたいんですけど?」
ママなあたしの提案には一切触れたくないようだった。
「ママね、娘と一緒に服を選ぶのが夢だったのよ。男の子の服て地味だし、即に汚すからあまり良いモノも買えなかったしね♪」
「でかけるなら独りで出てって頂戴。あたしは部屋でマッドサイエンティストの両親を持った不幸に嘆き悲しんでるから。」
「一緒に行くに決まってるでしょ?服は本人に合わせないと良い物は選べないわ。」

 
と、結局あたしも連れ出されていた。
今の背丈では、やはりジュニア物になる他ない。
とは言え、何で女の子の服ってこんなヒラヒラした可愛いのしかないのよ!!
何着も着せ替えさせられる。そのどれもが、丈の短いスカートで殆どお尻を隠す事ができない。
「こんなので彼を悩殺しちゃうなんてどう?」
「の、悩殺…なんてあたしに彼なんている訳ないでしょ!!」
と言いつつも、何でそこにあいつの顔が浮かんで来るの?
彼はアメコミ☆ヒーローと幼女にしか興味がない変態で…
って、今のあたしって「幼女」に分類されるの?
ママが選んでくる服を着たあたしを鏡に写すと、それを否定する事は難しい。
(確かにこの身体は奴にはどストライクよね)
あたしが悩殺ポーズを取ってみると、奴が感激に悶え狂う姿が目に浮かんだ。
(いや、奴なら三つ前に着たやつの方が過剰反応するんじゃないの?)
あたしは試着室に貯まっていった服の中から、それを取りだし着替えてみた。
(お・に・い・ちゃん♪)
と口に出さずに言ってウィンクを加えてあげる。
奴の悶え苦しむ姿が目に浮かんだ。
「あら、あたしもそれが良いかなって思ってたのよ。あんたも気に入ったのならちょうど良いわ♪」
結局、この服を着たまま店を出る事になった。
でも、買い物はそれだけじゃなかった…
靴屋でシューズとサンダル、ブーツを買った。
雑貨屋でミニリュックとポシェット、ショルダーバックを買い、幾つかのヘアアクセサリーを選ぶ事になった。

へとへとになったあたしが最後に連れて来られたのはランジェリーショップだった。
「胸は無くてもブラは必須アイテムよ。今はこんなものしかないけど、数年したらよりどりみどり選べるようになるわよ♪」
(数年…って、あたしは即にでも元に戻りたいし、絶対に戻ってやるわ!!)
あたしは既に気力を失い、殆どママの言う通りにブラを選んでいた。

 

 
「昼間は大変だったな。」
夜、彼から電話があった。
「結局まだ戻れてないのか?家の人、信じてくれたか?」
多分、あたしの声が女の子の声のままなんで、元に戻ってない事が解ったのだろう。
「ん…まあ、色々あってね。」
彼にはどこまで話して良いか躊躇していると、
「一晩寝れば元に戻るかも知れないんじゃないか?」
という彼の言葉にあたしの頭の中で、プツンとどこかの糸が切れた。
「いい加減なコト言わないでよ。あたしは当分このままよ!!簡単に戻れない事は確認済みなの!!!!」
「ど、どうしたんだよ急に?」
受話器の向こう側で彼がオロオロしていた。
「つまり、あたしがこうなったのは、パパとママの所為だったのよ。特に、女の子にしたかったのはママね。多分、ママが飽きないと元に戻れないと思うわ。」
「おばさんが?…そうか。それは大変そうだな。俺もできるだけバックアップしてやるよ。」
彼の優しさにあたしの怒気も少し納まってきたようだ。
「まあ、不幸中の幸いというか、パパの設定のままだったら、あたしは巨大ヒーローにされてたわ。」
「ありゃ。おじさんらしいと言えばそれまでだけど、それはあんまりな仕打ちだね。」
「だからと言って、あたしはこの状況を受け入れた訳じゃないわ。何とかママを説得して元に戻るの。」
「俺もこの後、説得できそうな資料を集めておくよ。明日の昼前にはそっちに着けると思うよ♪」
「期待しないで待ってるわ。お休み♪」
と、あたしは電話を切った。
何れにせよ、彼が来てから集めた資料でママを攻略する手立てを考える事から始めないと…

 

変身(2/3)

「おはよう…」
朝ご飯が出来たと言われ、居間に行くとママの焼きたてのトーストがテーブルに並んでいた。
「今日はどうする。昨日は本当に基本的なものしか買って来なかったから…」
「昨夜、彼から電話があって昼前くらいにうちに来るって。」
「あら♪じゃあ、お昼は一緒に戴きましょうか?」
「大丈夫だよ。いつもみたいに近くのラーメン屋で済ませるから。」
「折角なんだから、手料理を御馳走してあげましょうよ。もちろんあんたも手伝うのよ♪」
「な、何であたしまで?」
「娘と一緒に台所に立てるなんて、夢のようだわ♪彼に美味しいって言わせてあげましょ。」

あたしが作ったものを彼に食べてもらうなんて、これまで考えた事もなかった。
もし、本当に美味しいって言ってくれたら…何故かあたしの顔に笑みが浮かび、幸せな感覚に包まれていた。

ママが用意してくれたエプロンを着けて調理台の前に立った。
やはり、背が低くなってしまったので動き辛い。
ママが持ってきてくれた踏み台の上に立つと、どうにか格好がついた。
「まだ包丁とかは無理よね♪」
「昔、家庭科でやった記憶はあるけど、もうほとんど覚えてないわ。」
「じゃあ、卵を割ってかき混ぜて頂戴♪」
「ハ~イ♪」
あたしは目の前に出されたボウルに卵を割って入れ、勢い良くかき混ぜた。
途中でだし汁を入れ、更にかき混ぜる。
卵焼き器に油を敷き、数回に分けてかき混ぜた卵を入れ焼きあげてゆく…
「だし巻き卵の完成でーす♪」
お皿に移し、大根おろしを添えてできあがった。
パチパチパチとママも拍手してくれた。

ピンポ~ンとチャイムが鳴った。
時計を見た。
「もうこんな時間?」
多分、彼が来たんだ。あたしは慌てて玄関に向かった。

「よ、よう。元気そうだな。」
彼はあたしを見て、拍子抜けしたような顔をした。

そのままあたしの部屋に行った。
「この部屋はあまり変わってないな。」
と彼が部屋の中をキョロキョロと見た。
昨日買ってきた服は既にタンスの中に仕舞ってあるから、あたしの部屋はどう見ても「男の子の部屋」…
「あっ、そのヌイグルミ。それもおばさんと買ってきたの?」
彼がベッドの上のイヌのヌイグルミを見て言った。
「昨日は荷物が多かったから、コレひとつだけだって。そのうち、部屋がヌイグルミで一杯になっちゃうかも♪」

そして、彼の視線があたしに注がれる。
「そのエプロンも可愛いね。料理してたのか?」
「っあ、そう。もうお昼になるから、一緒に食事しないかって。あたしもママと一緒に料理を作ってたの。」
「それじゃあ、ママとの関係も大分和らいできたのかな?」

彼の言葉に、ようやく彼にここに来てもらった要因を思い出した。
(そう。あたしは元に戻らなくちゃいけないんだ!!)
けど、折角だし巻き卵作ったんだし、別にお昼を一緒に食べるのを諦める必要もないじゃん♪

「どうした?」
と彼。
「お前の百面相、結構面白いぞ♪」
「な、何言ってるのよ。変な事言うとあたしの作っただし巻き卵、食べさせてあげないからね。」
「それはまずいな。って、美味しいかどうかではなく…」
「わかった、わかった♪食べさせてあげるわよ。そのかわり、ちゃんと感想を聞かせてね♪」
「了解。じゃあ、本題は昼飯の後にで良いかな?」
「うん。じゃあ支度してくるから、ここで待っててね♪」

あたしは居間に戻っていった。
テーブルに箸や器を並べてゆく。
昨日まであたしが使っていたお箸は、今のあたしには大きいので彼に使ってもらう。
あたしはママが用意していたあたしが小学生の時に使っていたのを並べておいた。
あたしの食器には、昔懐かしい変身ヒーローがプリントされていた。

 
「そういえば、昔からお前の持ち物にはヒーローもののプリントが多かったよな。」
「パパが大好きで、いつか息子には地球防衛軍に入隊させるんだってのが口癖なのよ♪」
(そう言うママは娘なら魔女っ子にさせたかったのよね)
あたしは言葉には出さずにパパの事を言うママを見ていた。
もし、あたしが娘だったらパパと同じ事を形を変えてあたしにしていたに違いない…
いや、今のあたしは「娘」なのだから、これまでママがしたくてもできなかったアレコレを一気に実現しようとしているに違いない。
この食器逹も明日には…いや、今夜の食卓から、可愛い女の子向けのものに変わっていてもおかしくはないだろう…

「で、これがお前の作っただし巻き卵か?」
と彼の箸があたしの自信作に手を伸ばした。
大根おろしと一緒に口の中へ…
「旨い!!」
彼の顔が綻ぶ
「えへっ♪」
あたしも嬉しくなる。
「これなら良い奥さんになれるよ♪」
あたしは優しい旦那さまと可愛い子供逹に囲まれた幸せな家庭を思い浮かべていた。
「良いわよ。いつでもこの娘を嫁にもらってって頂戴♪」
とママ。
その言葉にぼんやりとしていた旦那さまの顔が晴れてゆき、彼の顔になった。
つまり、彼の奥さんがあたしで、彼の子供逹はあたしが産んだの?
「おばさん。そんな話はまだ早いですよ。僕も働いて一人前になるまでは、結婚とか考えられませんよ。」

…そう、家族を持つ前に結婚という儀式がある。
やはり、教会が良いかな?
純白のウェディングドレスを着て、バージンロードを彼の元へ…
って、何を考えてるのよ。あたしは!!
あたしは早く元に戻って、いずれは純白のウェディングドレスを着たお嫁さんを待つ方に立つのよっ!!

 

 
「そうそう。幼いままだと不便な事もあると思うから、大人になるおまじないを渡しておくわ。有効時間は一時間しなないから気を付けてね♪」
食事が終わると、ママは「実験の立ち会いに呼ばれたから出掛けるわ。今夜は戻れないから。」と、身支度を始めた。
「戸締まりよろしくね♪」と「おまじない」をあたしに渡すと出て行ってしまった。
「なんか慌ただしいね。」
と彼。
「後片付けしちゃうから、部屋で待ってて♪」
と彼をあたしの部屋で待たせ、あたしは食事の後片付けを始めた。

 
(背が低いって、何て面倒なの?!)
あたしは食卓の上のものは椅子に乗って。台所ではいちいち踏み台を移動させて高さを調整した。
シンクに食器を集めて、下洗いをしてから食洗機に放り込む。
食洗機は便利ではあるが、今のあたしには踏み台の昇り降りが必要で面倒このうえない。
乾いた食器や調理道具を所定の場所に戻して片付け完了。
あたしはエプロンを外して、彼の所に向かった。

変身(3/3)

「ふ~ぅ♪」
と一息吐いた。
部屋に戻ると、彼はいつものようにゲームを始めていた。
「ご苦労さん。少し休んでから対策会議を始めようか?」

そう!!
今、彼があたしの部屋にいるのは、早くあたしを元に戻してもらうにはどうすれば良いか?という事を相談する為だった。
(でも…)

「あたしもゲームする。混ぜて♪」
彼がゲームをしているのを見ていると、あたしも我慢できなくなっていた。
彼の脇に腰を降ろし、空いているコントローラーを手にした…

 
瞬く間に三連敗してしまった。
「何でなのよ!!」
あたしは当たる事しかできなかったが、
「多分、まだその肉体に慣れてないからじゃないかな?微妙なタイミングだけどズレがあるよ。その隙でロストが発生してるようだ。」
「もう一回っ!!」
とあたしが要求すると、
「今日はゲームをやりに来たんじゃないだろう?まあ、我慢できないのは小さい子の特質ではあるけどね。」
「つまり、あたしの行動が肉体に影響されてるって事?」
「特に、無意識の行動がね。ほら、今君の座り方って女の子の座り方だろ?」
確かに、あたしはいつも胡座をかいているんだけど、今は女の子の座り方になっていた。
「こ…これは、スカートを穿いてるからよ。さては、あたしに胡座をかかせてスカートの中を覗こうとしたな?このスケベがっ!!」
「多分、発想も女の子になってきてるんじゃないか?」
「発想って?」
「例えば、さっきおばさんが結婚とか言ってただろう?君なら結婚式は神式が良い、教会が良い?」
「…教会…かな?」
「その時着る服の色は何色?」
「白に決まってるじゃない。」
「それはウェディングドレスだからかな?」
「えっ!?」
確かに、男…新郎側は白と決まっている訳ではない。
しかし、今のあたしは純白のウェディングドレスを着ている姿を想像してしまっていた。
「あたし、このままどんどん女の子になっていっちゃうの?」
「そうさせない為にも、早く元に戻れるようにしないとな♪このままだと、最悪、元に戻らなくても良いと思うようになってしまうよ。」
「…そ…そうね。」

彼はそう言ってくれたが、あたしの心の片隅では、既に「このままで良いんじゃない♪」と囁く声に同意し始めていた。
(大人になって、さっきイメージしたようなウェディングドレスを着て結婚式を挙げれたら幸せよね♪)
ほんわかした気分があたしを包み込んでいた。
今はそんな時ではないと思いつつ、彼の顔を見ると、祭壇でタキシード姿で待っている彼と重なる。
(あたしは彼のお嫁さんになるの♪)
あたしはもう、彼を親友として見ることができなかった。
彼は異性…あたしの愛する男性としか見えていない…
あたしは女として、彼に愛してもらいたかった。
触れ合いたい♪
抱き締められたい♪

抱かれたい♪

こんな小さな幼い肉体ではなく。もっとセクシーな女らしい体になって彼を受け入れるの♪
ハジメテは痛いかも知れないけど、彼が悦んでくれるなら何でもするわ♪
そして、何度も何度もあたしをイかせてっ♪♪

 

「お、おい。どうしたんだ?大丈夫か?」
彼が声を掛けてくれた。
「大分顔が赤いぞ。少しベッドで休んでいた方が良いんじゃないか?」
「ち、違うの。大丈夫よ。」
あたしは妄想を振り払うかのように、頭を左右に振った。
「ダメね。どんどん余計な事を考えちゃう。そう、元に戻るのよね。」
「本当に大丈夫なのか?」
と、彼の掌があたしの額に触れた。
ひんやりとした彼の掌が心地好い…

「やっぱり熱があるぞ。今は横になってた方が良い。」
「でも、せっかく来てくれたのに…」
「まあ、良いさ。おばさん、今夜は帰って来ないんだろう?朝まで付き合ってやるよ♪」
「女の子の部屋で二人きりで一晩を過ごすの?期待して良いのかな?」
「な、何を期待してるんだよ。お前はっ!!」
「そうよね。もっとオトナじゃないとその気になれないわよね♪」

「ま、待てっっ!!」
彼が慌ててあたしの行動を阻止しようとしたけど、ママからもらったおまじないは発動していた。

 
「痛っ!!」
体が締め付けられる。
プチンとボタンが弾け、ビリビリと服が破けていった。

 
あたしは大人の体になっていた。
服は散り散りになり、あたしは真っ裸だ。
あたしの前で彼が硬直している。
良く見ると、彼の股間は勃起している。

「これなら良いわよね♪」
あたしは彼のズボンのベルトを外し、パンツの中から憤り勃ったペニスを剥き出しにした。
素敵な香りがあたしを包む。
ジッ!!とあたしの股間に淫汁が湧いてきた。
我慢できずに、彼自身の先端を舐めあげた。
「お、おい。止めろよ。」
と彼は言うが、それは口だけ。彼自身は更に硬さを増していた♪
あたしは軽く口を開き、ナカに誘ってゆく。
先端が喉の奥に当たり苦しくなったが、彼の感じている呻き声に気分が良くなる。
上目使いに彼を見てみると、恍惚とした表情を浮かべている。
あたしは一気にフィニッシュに向かった。

彼が呻く。
熱いモノがペニスの中を通り抜け、あたしの口に、喉の奥へとザーメンをぶちまけた。

「へへっ♪呑んじゃった♪」
ペロリと口の端に垂れていたのを舐め取ると、あたしは何もできない彼から服を剥がしていった。
そのままベッドに倒れ込む。あたしと彼の間で豊かなバストが押し潰された。

ビクリと彼の分身が反応する。
「いっぱい溜めてたの?」
あたしは体をずらすと、彼の腰の上に跨がった。
彼の先端があたしの股間に触れている。

 
「あたしのハジメテをあげるね♪」
あたしはゆっくりと腰を降ろしていった。
充分に濡れているあたしの膣の中に、彼の先端が潜り込んだ。
少し痛みはあったが、我慢して挿入してゆく…
(ぶちっ)
何かが千切れるような音がした。
処女幕が破れたのだろう。
更に挿入を続ける。
あたしの膣が彼のペニスに充たされていった。

「ねっ♪全部入っちゃったよ。何か感想は?」
「あ、暖かくて…気持ち良い。」
「これで動くともっと気持ち良くなるよ♪」
「あ、あんまり刺激を与えるなよ。即に射してしまいそうだ。」
「じゃあ、どんどん射しちゃおう♪あたし、いっぱい欲しいんだもの。」
「な、生だぞ。お前、避妊なんか考えてないだろうが!!」
「良いもん♪あなたの赤ちゃんならバンバン産んじゃうわ♪」
「そ、そういう問題じゃ…あっ…」
言っている傍から、熱いモノが…今度はあたしのナカに放出されていた。

「ああー♪良いわぁ~♪」
多少オーバーだったかもしれないが、あたしがヨがると彼の分身が再び硬さを取り戻していた。
「今度はあたしが下でも良い?」

おまじないの効果が切れてあたしが再び幼い姿に戻るまで、あたし逹は繋がったまま快楽にのめり込んでいた…

 

「お前、元に戻るのを本当に諦めてしまったのか?」
翌朝、ベッドの中で彼が声を掛けてきた。
頭を撫でてくれる手が気持ち良い。
「今な小さな女の子の姿のままではいけない事ははっきりしたわ。」
「そ、そうか♪」
「あたし、早く大人のオンナになるわ♪」

あたしの言葉に彼は絶句している。
『よく言ったわ。これから先は本人の意思が重要なの。』
どこからかママの声がした。
「実験てっ… まさか、あたし逹の事ずっと見てたの?」
『「へへっ♪呑んじゃった♪」って初々しかったわよ♪』
「いやっ!!」
あたしは頭から毛布を被り丸まっていた。
「つまり、今は一時間限定でしか大きくなれないが、本人の確固たる意思があれば、大人の姿に固定できるという事ですね。」
『まあ、そういう事ね…』
「で、その代償は何なんですか?」
『す…鋭いわね。代償って程大袈裟なものじゃないけど…固定的に変身できるのは2形態に限られているの。大人の形態を固定化するなら、幼女か魔女っ子かのどちらかを諦めるしかないのよ。』
「さらりと言ってますが、彼女はもう元の姿…『男』に戻る事はできなくなってるじゃないんですか?」
『えっ?何?うちの子供は生まれた時から女の子だったのよ。知らなかった?』

彼があたしを覗き込む。
あたしは「知らない」と首を左右に振った。
『パパがね、男の子が良いって言ったから、男の子として育ててきたのよ。』
「あの…僕には男子トイレで並んで小便した記憶があるんですが…」
『まあ、ちょっと遺伝子を弄って、らしくしておいたからね♪』

あたしは元々女の子だったのに、肉体を改造され、男の子として育てられてきたって事?
男の子のあたしって何だったの?

でも…
元々が女の子だったんなら、彼を好きになっても、彼とエッチしても、何も問題は無いという事よね♪
あたしは毛布から顔を出し、起き上がった。
「ママが望むなら、たまには魔法少女やっても良いから、いつも彼と一緒にいれるように、大人の体にして。」
『はい♪良く言えました。即に処理するから待っててね。』

ママがそう言ってしばらくすると…

ブーーン…

虫の羽音が耳元を横切っていった。
そして、一呼吸した後 チクリ と手の甲に痛みがあった。
そこには悠々と血を吸っている「蚊」が…否、ロボット蚊があたしの血管に新たなマイクロマシンを送り込んでいた。

ドクリッ!!

心臓が高鳴る。
ミシミシと骨が変形し、あたしは大人の体に変化していった。
「痛いのか?」
彼があたしの涙を見て心配そうになっていた。
「痛いことは痛いけど、この涙は違うわ。本来のあたしの姿を取り戻してゆく、嬉し涙よ♪」
「あ、ああ…」
と涙の意味を理解した彼は、そのままあたしに覆い被さり、あたしをギュッと抱き締めてくれた。

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