« 妄想 | トップページ | 泳いだ後に… »

2015年5月 9日 (土)

変身丹

「あ…、あれっ?」
俺の声ってこんなに甲高かったっけ?
これではまるで女の子の声みたいだ。

「どうだ?一気に変わっただろう♪」
目の前にいたのは、俺の親友の木戸賢吾だった。
俺は彼が持ってきた「変身丹」を飲んだ所だった。
「ちょっと待ってよ。何であたしが女の子になってるの?」
と抗議するが、その声ばかりか、しゃべり方まで女の子になってしまう。
「賢吾はスーパーマンみたいに力が強くなっただけで、見た目は全然変わってないじゃない?」

こんな得体の知れない物を口にさせようとしたんで、先ずは賢吾に試してもらったんだ。
スーパーマンみたいになれるならと、俺も一粒もらって口に入れたのだった。
「何でこうなっちゃうのよっ!!」
あたし…俺はぶかぶかの服で、一ヶ所だけピチピチになっている胸に手を当ててみた。
服の布越しではあるが、この身体が「女の子」である証しのように、おっぱいが膨らんでいた。
「下も変わってるか?」
賢吾のデリカシーのない一言に
「バカ、エッチ!!」
とあたしは罵声を浴びせてやった。が…
「でも、可愛さは10倍アップしてるんじゃないか?」
「だから、可愛い可愛いって…」

(?)
何でだろう。あたしは「可愛い」って言われる事が嫌だった筈なのに…賢吾にそう言われて、少しだけだけど「嬉しい」って感じてる…

 
賢吾は元々スポーツマンで、日々鍛えた肉体を誇示しついる。
あたし…俺は貧弱な身体なところに「童顔」なため、よくよく「可愛い」と評される。
俺の理想は賢吾のような精悍な身体である。「可愛い」などとは言われたくない。
が、無精でなかなか床屋に行かないので、肩まで髪の毛が伸びていて制服を着ていても「女の子」に間違えられる事がしばしばあった。

 
だからと言って、何で俺の身体が「女の子」になっちゃうのよ!!
賢吾みたいな筋肉ムキムキの身体に憧れてたのに…「可愛い」って誉められるより、早くその逞しい腕でギュッと抱き締めて欲しいの…♪

って、俺は逞しくなった腕で女の子を抱き締めたかったのであって、自分が抱き締められたい…なんて、恥ずかしくて口にできないだもん♪

 

「どうした?可愛い顔で百面相か?」
と賢吾があたしの顔を覗き込んでくる。
(ドキッ)
何でここで心臓が昂るのよ!!

「な、何なのよ。この薬は!!」
「だから、変身丹だって。望みの姿に変身できる……あっ…」
「何よ!!」
「すまん。多分俺のミスだ。」
「どう言う事?」
「効能に書いてあった《望む姿》って、主語が欠落していたみたいだ。」
(?)
「つまり、この薬を飲んだ人物の望みではなく、この薬の所有者の望む姿に変身させるようだ。」
「つまり、あたしが女の子なのは、賢吾がそれを望んでたって事なの?」
「…まあ、そういう事になるかな♪もしお前が女だったら、結婚して、子供ができて、幸せな家庭が作れればな…なんて♪」

(あ、あたしが賢吾のお嫁さん?)
赤レンガの教会で、真っ白なウェディングドレスを着たあたしが、バージンロードを歩いてゆく。
その先には、最愛のダーリン♪賢吾が待ってるの…

 
「もしもし?大丈夫か?」
賢吾の声に、あたしは妄想から現実に舞い戻ってきた。
「だ、大丈夫よ。…いや、大丈夫だ。が、ちょっとでも気を抜くと自分を保っていられないようだ。」
「本当にすまないと思ってる。責任は取らしてもらう。」
「当然だ。が、この薬の効力はいつまでなんだ?お前のスーパーマン状態はとっくに終わってるんだろう?」
「ああ。願望か叶った事が確認できると自動的に効力が失われる事になっている。」
「じゃあ何で俺はまだ女のままなんだ?お前も俺が女になった事がわかったんだろう?」
「多分、俺の望みがお前を女にするだけで終わってないんだよ。」
「じゃあ、いつまで俺はこの姿でいる事になるんだ?このままだと、三日もすれば自分が男だと思えなくなりそうだよ。」
「多分、俺と結婚して子供を産むまでは元に戻れないんじゃないかな?」
「お、俺が…産む?」
「だから、最低でも十月十日だが、俺逹が結婚できる年齢になるまでの期間も考えないとな。」
「き、気が遠くなりそう…」
「大丈夫。俺に任せておけ。きっと幸せにしてやるから♪」
「賢吾…」
あたしは改めて彼の顔を見つめた。
真剣な眼差しであたしを見ている。
(このヒトなら、あたしを幸せにしてくれる?)
「…きっとよ♪」
あたしは賢吾と約束の指切りをした。

 

 

 

「…アナタ♪」
あたしは賢吾…旦那様に貫かれ、喘ぎ声をあげた。
(隣のベビーベッドに寝ている娘を起こさないように、以前のような嬌声をあげる訳にはいかないけど…)
賢吾の責めにあたしの「女」が素直に反応する。
「あぁ、シアワセ♪」
あたしは心からそう呟いた。

「あっ!!ヤバイッ!!!!」
と、突然賢吾が身体を起こした。

「どうしたの?」
と聞いたあたしの声…
あたしの声ってこんなに低かったっけ?これではまるで男の人の声みたいじゃない。
(…って、以前にも同じようなシチュエーションがあったような気が…)
「何よコレっ!!」
あたしは声が荒らぶるのを抑えられなかった。
「薬の効力が切れたんだ。お前は元の…男に戻ってしまっている。」
あたしは自分が「男」だった事を忘れ果てていた事に気付いた。
昔の事が堰を切ったように思いだされた。
そう、あたしはあの薬=変身丹で女の子になってしまったんだ。
「ねえ、もう一度変身丹を飲ませてよ。」
「ああ。ここにあるよ。」
「じゃあ、早く頂戴♪」
あたしは奪い取るように変身丹を受け取ると口の中に放り込んだ。
何故か今度は意識が遠くなる。
賢吾があたしの耳元でささやいていた。
「ごめん。この薬は一度変身した姿には戻れないことになってるんだ。でも、俺たちは死ぬまで夫婦だからな。愛してるよ♪」

 

「ねえ、もう一度シよ♪」
SEXの後の快感にまどろんでいたようだ。
妻がもう一度とせがんできた。俺は妻に幸せにしてやると誓ったのだ。
だから、もう一度身体を合わせる…

(もう一度?)

何でだろう。妻とは結婚し娘まで作っているのに、今の俺は童貞の若造に戻った気分だった。
彼女の中に俺自身を挿入してゆく。
「ああ、良いわぁ♪」
いつものように妻が喘いでいる。
「愛してるわ。死ぬまでずっとよ♪」
彼女が俺の耳元で囁いた…

 

« 妄想 | トップページ | 泳いだ後に… »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 変身丹:

« 妄想 | トップページ | 泳いだ後に… »

無料ブログはココログ