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2015年5月 9日 (土)

魂の行方

冷たい風が通り抜けていった。
俺はコートの襟を立て、少しでも冷気に触れないように背中を丸めた。

「寒いのか?」
隣を歩くイシが声を掛けてきた。
こいつは「寒さ」などには縁遠く、鍛えられた四肢を冷風に晒している。
「こんなのは気の持ちようだよ♪」
とイシは言って退ける。が、いまだ鍛えられていない肉体の俺は、寒さに身を震わしているしかない。

陽も落ちれば、更に寒さは厳しくなるだろう。
「何とかならないものか…」
俺の呟きをイシは逃さない。
「だから、俺が暖めてやる。って言っているだろう♪」
と下心ミエミエでイシが提案してくる。
「却下だ!!」
と俺は拒絶するが、いつまで保つことができるだろうか…
そもそも、今の俺にはその気になったイシを押し止めることなど不可能に違いない。
か弱い「女」の肉体では…

 

俺達が受けた仕事の内容は、実に奇妙なものであった。
「この指輪をある人物に届けてもらいたい。そして、その人物と一緒に戻ってきてもらえば良い。」
素直に従ってもらえるのか?と聞くと、
「この指輪を嵌めてしまえば、どんな事でも君逹の考えに従ってもらえるよ。」
と言う。また、
「担保として、君達どちらかの肉体を預からせてもらう。」
とも…

相談した結果、俺の肉体を預けることにした。そして俺の魂は指輪に封印された。
どのくらいの時間が経過したか分からない。一瞬だった気もするが、気が付いた時は俺は女の体の中にいた。
確かに、その「女」は俺の考えた通りに動いてくれる。
指輪を嵌められた女は俺と魂を入れ換えられてしまうので、指輪の中に封印された女はどんな抵抗もすることはできないのだ。

女は俺の指示通りには動くので、「俺」のペースで歩き出した。
しかし、俺には「女」の肉体のバランスなど知る由もない。更に、動き難い女物の服に踵の高い靴が運動能力を阻害してくれる。
ましてや、女の肉体は本来の俺の肉体のように鍛えられてはいなかった。
程なく細い脚が悲鳴をあげてきた。
この女を意のままに動かす事はできるが、女の感じる苦痛もまた俺が甘受しなければならなかった。

痛みは耐えることはできるが、無理をするとこの女の肉体が故障してしまうのが目に見えていた。
結果、予定よりも小刻みに休息を取りながら歩みを続ける事になる。
しかし、その休息では肉体のダメージは十分に回復させる事はできない。
そして、積み重なった疲労の上に寒さが追い討ちをかける。
本来の「俺」であればイシ程ではないにしろ、こんな寒さなど…
と思いつつ、俺の意識は次第に遠退いてゆき、最期にはイシの腕の中に倒れ込んでいた。

 

 
「ここは?」
暖かなベッドの中で俺は目覚めた。
「すまんが、宿に担ぎ込ませてもらった。」

普段の俺達であれば野宿が定番である。旅をしている時は滅多な事でなければ宿は使わない。
宿を使うとしても、別々に宿を取る。別にリスク回避とかではない。一緒に泊まる女の好みに合わせるとそうなる。
そう♪気に入った女と寝る時にだけ宿を使うのが常であった。

俺は目が覚めてしまったが、まだ、夜明けまではかなり時間があった。
イシは俺の脇で、一睡もせずに俺を看てくれていたようだ。
「俺は大丈夫だから、イシも休めよ。」
と言ってから、この部屋にはベッドが一つしかないことが判った。
幸いにもベッドは狭くなく、今の俺はかなり小さい。
「一緒で悪いが♪」と、イシに場所を開けてやると「良いのか?」と聞いてきた。
「俺が誘ってるんだ。気にするな♪」そう言ってやると、やおらイシは服を脱いで全裸になった。
(何で?)と思うより先にイシが俺の上に伸し掛かってくる。その股間は激しく屹立していた…

俺は今の「俺」がシザースという「男」ではなく、カミラという名の「女」だった事を思いだした。
俺達にとり、宿を使うのは「女と寝る」のが常であった。
今は俺が彼を「誘った」形になっていた。更に、体を休めるために全ての衣服が剥ぎ取られていたのだ!!
イシは目の前の「女」が「俺」である事をすっかり忘れ果てているようだ。
それはイシにとってはあたりまえの行動だったのだろう。
今の俺にはイシを制止させる腕力も能力もなく、奴の行為を黙って受け入れるしかなかった。

イシの顔が迫り、俺の唇に吸い付いてきた。
口の中の酸素を吸い取られ、頭の中がぼーっとしてゆく。
イシの舌が割り込んできて俺の口内を蹂躙する。
奴の唾液が滴り、俺のと混ざってゆく…

奴の手が俺の胸に伸びてきた。
乳房が揉みあげられる。
不思議な快感が沸き起こっていた。
「んあっ♪」
俺の喉がオンナの喘ぎ声を発した。
乳首が摘ままれて、思わず吐いていた。
「感度は良いようだね♪」
とイシ。
俺は彼の顔を直視できなかった。
(これ以上弄られたら、俺はどうなってしまうのだろう?)
そんな心配を他所に、イシの手が俺の身体を這い廻る。
「ああんっ♪」
性感帯という奴なのだろう。弄られると媚声が出てしまう。
「そろそろ良いかな?」
とイシの指が俺の股間に触れた。
「イヤッ!!」
俺はその手を阻止しようとしたが、既にそこが濡れているのが確認されてしまった。
「誘ったのはシザー…カミラちゃんだったよね?」
俺は何の抵抗もできないうちに脚を開かされていた。
「どうだい♪俺のは?」
俺の濡れきった膣はすんなりとイシのペニスを納めていた。
満たされる至福感が沸き上がる。
無意識の内に俺は脚を絡め、彼との密着度を強めた。
ペニスは更に奥に入り、先端が突き当たる。
「これって…子宮?」
「その身体は紛れもない本物の女の身体だ。お前が意識しなくとも、ちゃんと反応してくれているよ♪」
「ああん♪あ~ん♪」
イシが腰を振ると、カリが膣壁を擦り、快感が生まれる。
「もしカミラちゃんが危険日なら、俺の精液で妊娠しちゃうかもな♪」
イシはそう言ったが、初めての快感に翻弄されている俺は、危険日とか妊娠とかを具体的にイメージする事ができなかった。
「何コレ?子宮が疼いているの?」
俺は快感を追い求める事しか考えられなくなっていた。
「ああ…、もっと激しくぅ♪」
「おお…!! 良いぞ♪お前の中は…イキそうた!!」
「良いの♪キテッ♪ナカに射してっ!!」
あたしは彼を締め付ける。そのナカで彼のペニスが暴れまわっている。
「あぁ♪イイッ!!いくぅ…イッちゃう~~♪」
「お、俺も…」
とイシが呻き声をあげると、あたしのナカに彼の精液が打ち込まれる♪
あたしの快感の塊が爆発して、あたしは意識を失っていた…

 

 

「シザー…シザース?」
遠くで誰かが誰かを呼んでいた。
あの声はイシ?
あたしはゆっくりと目を開けた。
「大丈夫だったか?」
心配そうにあたしを覗き込む。
「大丈夫よ♪普通にイッただけだから。」
「良かった。あのままシザースが戻らなかったらどうしようかと思った。」
「シザース?」
あたしが疑問符付きで聞くと、イシの表情が凍りついた。
「お…お前、自分の名前、言えるか?」
と変な事を聞いて返す。
「あたしはカミラよ♪それがどうかしたの?」
あたしがそう言うとイシは天を仰いだ。
「どうしたの?もう続きシないの?」
あたしはそう言ってイシの腰に顔を近づけた。
すっかり萎えてしまったペニスが復活しないかと、口に咥えてみた…

「やめろっ!!」と突き放される。
あたしはベッドの上に転がっているしかなかった。
「そうだ。指輪だ!!」
とあたしの手を引っ張った。そこには不思議な色に輝く輝石の填められた指輪があった。
「お前はこの指輪の事を覚えているか?」
と聞かれる。
この指輪の事は、あたしの記憶の中で大きな位置を占めている筈なのに、思いだそうとすると蜃気楼のように遠くに逃げていってしまう。
(何故?)
と自問しても答えは出て来ない。
「この指輪はいつ手に入れた?」
「それは、この仕事の依頼主があたしの指に嵌めるようにって…イシが持ってきてくれたのでしょう?」
「じゃあ、お前と俺はいつ出会った?」
「いつ…って、ガキの頃からの腐れ縁じゃないか♪」
「その頃のお前はどんな格好をしていた?」

小さい頃のあたし?
おばあ様にもらったドレスを着て花摘みをしたり…
イシとは玉蹴りとかしてたっけ。あたしってお転婆だった?
ダンスの練習もしてたっけ。素敵な王子様に手を取ってもらうのを夢見て…
だからって、イシは当然王子様なんかじゃない。イシとは男同士の絆で…

(?)

どうしてあたしとイシが「男」同士なの?
あたしは生まれた時から「女」よね。現に今もイシに「女」として抱かれてイッたじゃない?
「あたしの中に男だった記憶がある?」
「それがお前=シザースの魂が持っているお前本来の記憶だ。」
「あたしはカミラよ。シザースなんて知らないわ。」
「それは、その肉体が持っていた記憶でしかない。お前自身の正体は俺の昔からの親友であるシザースという男なんだ。」
「あたし…が、男…?」
それはあたしの理解を越えていた。
でも…

あたしには「カミラ」としての記憶がある。
この肉体は「女」であり、カミラそのものなのだ。
…そして、イシに抱かれて感じまくり、幸せに包まれ、イッてしまった。
その事実は、今のあたしが「女」である事で間違いはないのだ。
だから…

「あたしはカミラでもシザースでも構わないわ。だから、もう一度…いえ、もっと!何度でも、あたしをイかせて♪」
あたしはイシに抱きつき、熟れた肉体を擦り付ける。
イシ自身が拒絶しようとも、彼の肉体は正直に反応する。
あたしは彼に馬乗りになると、自らの股間に「彼」を突き刺し、盛大に悶え狂った…

 

 

 
「あたしは本当にシザースの肉体に戻らなければならないの?」
もう何度も確認した。
「魂は本来の肉体に戻らなければならない。それが自然の摂理だ。」
イシは同じ答を繰り返す。
依頼主の館は、もう目の前に来ていた。

イシがドアを叩いた。
使用人が現れ「お待ちしておりました」とあたし逹を招き入れた。
案内された部屋に依頼主がいた。
促されてイシと並んでソファに座った。
「どうですか?女の体には慣れましたか?」
「慣れた…と言うより、彼女は完全に女性です。シザースの存在はもう殆ど感じられません。どういう事なんですか?」
イシが依頼主に問い掛けると、依頼主はあたしをもう一度見た。
「…その指輪、外さなかったのか?」
「あんたからは彼女に指輪を嵌めろとは言われたが、それ以上の事は言われていないぞ。」
「嗚呼…」
依頼主が天を仰いだ。

「すまない。説明が不足していた。娘の魂と入れ換えたら、指輪を外す必要があったのだ。」
あたしは指に嵌めた指輪を見た。
「いずれにしろ、この指輪は返すのよね。」
あたしは指輪を外し、依頼主に渡した。
「既に彼の魂は指輪から漏れ出た娘の魂と融合してしまっているな。この指輪にはもう魂は入ってない。」
「では、シザースを元の体に戻す事はできないと言うのか?」
「この指輪をもう一度使えば…この女の体から魂を抜き、その男の体に納める事は可能だ。が、その男の魂と娘の魂を分離する事はできない。」
「つまり、このままの状態で男の体に戻るしかないという事か?」
「あるいは、その女の体のまま一生を終えるかだ。」
「あんたの依頼は彼女をここに連れてくる事だった。あんたは彼女に何かさせようとしていたのではないのか?」
「いや、一定期間行方不明になってもらえれば良かったのだ。既にその女に利用価値はなくなっている。使うなら勝手に使ってくれて構わない。」
「どういう事だ?」
「知らない方が良い事もある。これが報酬だ。その女を連れて好きな所にゆくが良い。男の体は適当に処分しておく。」

あたしは机の上に置かれた金塊の入った袋を、そしてイシを見た。
「あたしはこのままで良いんでしょ?」
イシは少し考え込んだ後、
「ああ。そうだな。」
と金塊の入った袋を手に立ち上がった。
「行くか?カミラ♪」
とあたしの方に手を差し伸べた。
あたしはその手を取り、イシの脇に立った。
「では失礼する。」
とイシは言い、あたし逹は依頼主の館を後にした。

 

 

 
その頃、王宮では王子の婚礼の準備が始まっていた。
彼の結婚が決まるまで王都を始め周辺の町や村ではひと騒動があったらしい。
役人が年頃の娘のいる家々を巡り、ある靴が履けるかを確かめて廻ったようだ。
そう言えば…

「あたし」の記憶に王子様とダンスを踊ったような記憶があった。
舞踏会が終わる直前に一人の女の子が会場から走り出ていった。背格好はあたしと同じくらいだっただろうか?
たぶん、新しい王子妃はその娘だったようにも思える。
もし、あたしにその靴が履けていたら、もしかすると王子様と結婚していたのはあたしかも知れない…
けど、そんな事は関係ない。
あたしにはイシがいる♪
今夜も彼のペニスがあたしを貫いてくれる。
あたしを精液と幸せに満たしてくれる。
「ああん、あ~~ん♪」
あたしは最高の気分で嬌声を張り上げる…

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