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2015年5月31日 (日)

無題

「ぐあ゛!!」

その痛みは突然やってきた。
腹の中をミキサーで粉々にされてしまったかのようだ。
更に骨がメキメキと音を発てて変形してゆく。
全身の汗腺から大量に汗が吹き出してゆく。
貧血を起こしたように耳鳴りが鳴り響き、目がかすみ、闇が押し寄せてくる。

勿論、立っていられる筈もない。
どのように倒れたかもわからない。壁にもたれて頬を付けていたと思っていた「壁」は「床」だと気付いた。

辺りには誰もいなかった筈だ。
もし、助けを呼べたとしても何ができただろう?
救急車が呼ばれ病院に運ばれたとしても、今のこの痛みが無くなる訳でもない。
このまま身体を丸めて痛みに耐えていれば、いつか痛みは収まってくれると祈るしかない。

そして、フッと痛みが消えた。
何事もなかったかのようだが、汗に濡れた服が冷たく肌に貼り付いていた。
ゆっくりと身体を起こすと、パラリと目の前を遮る黒い物があった。
(髪の毛?)
目の前の髪の毛を掴むと、頭が引っ張られる感じがした。
(髪の毛が異常に伸びたのか?)
しかし、その「異常」は髪の毛だけで終わってはいなかった。
髪の毛を掴んでいた「手」が目に入った。それは自分の「手」とは思えない程、白く華奢になっていた。
また「手」の大きさ自体も小さくなっているようだ。
それは「手」だけではなく、全身に渡っているのだろう…
シャツの腕の部分がぶかぶかになっている。袖を伸ばせば掌も隠れてしまうようだ。
立ち上がると、背が縮んでいることが実感できる。
ずれ落ちそうなズボンをベルトで締め上げてみたが、裾を折らないと引きずってしまいそうだ。
当然、足のサイズも違っている。普通に歩こうとすると、靴は簡単に置いてけぼりとなってしまう。

(あれだけ骨が軋んだのだ…)
と体型の変化を妙に納得させる。
痛みもなく、体力もそんなに落ちていなかった。家まではそう遠くないので、靴を引きずるようにして歩いていった。
(先ずはシャワーでも浴びてすっきりして、乾いた服に着替えよう♪)

 

 
とは言え、家に辿り着いた時には相当疲れ果ててしまっていた。
風呂場に転がり込み、服を脱いでシャワーの下に来ると、立っているのが辛く、座り込んでいた。
コックを捻ると暖かな滴が降り注いできた。

「ふ~~う♪」

と溜め息が漏れる。
(?)
聞きなれない声にはっとした。
確かに自分の口から出た溜め息だった。
が、それはいつもの自分の声よりも数段高い…女の声のように聞こえた。

「あーー…」
と「声」を出してみた。
無理やり低く出そうとしても、本来の自分の「声」には遠く及ばない。
長い髪、白い肌、華奢な指…全体的に小さくなった身体…考えられるのは…

(女になってしまった?)

 

今になって、床の上に「女の子座り」しているのに気付いた。
無意識にこんな座り方をしていたのだ。
よく見ると、微かではあるが胸が膨らんでおり、乳首が突出していた。
更に、股間を覗き込んだ。

(……ない……)

 

 

シャワーを止め、脱衣所の鏡に自分を写してみた。
(誰?この娘…)

鏡の中には見知らぬ女性が写っていた。
これが今の「自分」である事に疑いの余地はない。
あの「痛み」と共に「女」に造り変えられてしまったのだろう。
誰がこの姿を見て「自分」であると認めてくれるだろうか?
一歩この家を出てしまえば、それは「自分」とは一切関わりのない、身元不明の「女」でしかない。
当然であるが、このままでは一切の収入がない。
飯を食い、生きてゆくためには何かしら稼ぐ必要がある。
そして「女」が手っ取り早く稼ぐには…肉体を売るのが一番である事に異論はない。

つまり「男」に抱かれるという事だ。

 

想像してみる。
自分が男に抱かれている…
全裸になり、脚を広げ、股間に…膣に男性自身を迎え入れるのだ。
目の前に勃起したぺニスがあった。それは自分の股間にあったモノ…
今、それを正面から見ている。
(コレを挿れるの?)
しかし、ソレを見ているだけで肉体は勝手に反応している…股間が濡れ始めていた。
「痛くしないでね♪」
とベッドに背中を落として脚をM字に広げた。
男が身体を重ねてくる。彼の腰が近づいてくる。
先端が股間に触れた。
入る場所を探しているかのように、辺りを徘徊する。
「来て♪」
膣口で一瞬静止していたソレが、ゆっくりと膣内に侵入してくる。
「あぁ…」
これまで経験のない、膣内を満たされる感覚に思わず媚声が漏れる。
ペニスは更に奥へと侵入してゆく…
彼の腰が股間に触れようとした時、ペニスの先端が障壁にぶつかった。
(子宮口?)
その先にある器官が何かを待ち望むかのように熱を帯び、疼いていた。
「頂戴♪」
それが欲しているのは、彼の精液…その中にいる精子逹だ。
大事な卵子に受精させ、子宮内で育てあげ、一人のヒトとして産み出したいと望んでいる…

 

(そうか…何も考えずに男とSEXすれば、この肉体は妊娠してしまうんだ)
そんな事が頭に浮かんだが、即に男が動きだし、こみ上げてきた快感に何も考えられなくなっていた。
「あんあん♪」
と勝手に嬌声をあげていた。
オンナの快感に全てが支配されている。
何度も、何度も昇り詰める。
膣も子宮もこの肉体から湧き出た愛液と、男の射した精液に満たされている。
快感だけがそこにあった…

 

 
俺はベッドの上で毛布にくるまっていた。
いつの間にか寝てしまっていたようだ。
股間には愛液の名残が残っていた。

起き上がり、もう一度自分の肉体を確認した。
それが「女」の肉体である事は疑いようがない。

(先ずは服をなんとかしないとな♪)
いつものように穿いたトランクスがぶかぶかなのに加え、もう前開きから出すモノもないんだ…と実感する。
(やはり、女の身体には女の服…下着も揃えるしかないな♪)
ズボンを穿き、ベルトで締めあげ、裾を折り上げた。
大きめのTシャツは、小さくなった身体にはワンピースのように見えた。
鞄に財布などを入れ、今の足には大きすぎるサンダルを履いて外に出る。

近所の人が不審そうに俺を見ていた。
「じゃあ行ってくるね♪」
あたかも「俺」がまだ家の中にいるかのように声を掛け、近所の人には笑顔で会釈する。
俺の事を泊まりにきた「俺」の彼女とでも思ってくれただろうか?
しばらくは、俺は「俺」と同棲している彼女を演じる事になるのだろう…

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