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2015年3月17日 (火)

アクター

クローゼットの扉を開けると、そこには幾枚もの「皮」が吊下がっていた。

「くくく…♪これは全部俺のモノなのだ!!」
圧し殺した笑いが出てくるのを、俺は止める事ができなかった。
その「皮」は老若男女、背丈も恰幅も様々、肌の色の違うものまである。
そして、その「皮」を着る事で、俺はその人物に成りきる事ができるのだ。

 

元々の「俺」は冴えないヲタクだった。
怪獣映画に憧れ、巨大化した自分が町並みを破壊する姿を想像して悦に入っていた。
勿論、俺はヒーローではなく、悪の化身の怪獣そのものだった。
将来はスーツアクターになりたいと、演劇の勉強もした。
が、俺は俗に言う「ヲタク体型」であった。当然運動能力も低く、役者としてやっていく事などできはしなかった。

そんな時、得体の知れない男が俺に声を掛けてきた。
「君はスーツアクターを志望していたよね。」
男はアルバイトの話を持ちかけてきた。「皮」を着てその人物に成りきる…俺の顔は出ないし、中に俺が居る事も悟られないようにするのだ。
期間はその「娘」の祖父が死ぬまで…病魔に冒された資産家の老人が最期には可愛い孫娘に看取ってもらいたいと言い出したのだ。
勿論、その孫娘は可愛げもなく、老人を看取る優しさの欠片も持っていなかった。
老人の関係者は必死に代役を探したが、どこかで別人である事が露見されてしまうのだ。
そんな中、「皮」を持ち込んだのがこの胡散臭い男だった。

 

俺は見事に演じた。
(「皮」自体がこの娘の「癖」みたいなものを覚えているらしく、自然と娘に成りきる事ができたのだ。)
孫娘の献身的な介護の所為か、一時期は「回復するんじゃないか?」とも言われたか、宣告された死期を一ヶ月程過ぎた所で老人は呆気なく他界した。

(これでこのバイトも終わりか…)
と思っていたら、事態は思わぬ方向に進んでいった。
盛大な葬式が終わり、いくつかの法要を近親者で済ませた後、弁護士が現れて言った。
「ご老人の遺言には、全財産を孫娘に譲るとありました。」
当然、他人事として聞いていたが、あの男が現れまだしばらくはこの娘のフリをしていて欲しいと言われた。
この状況で「孫娘」が失踪したとなると、警察だけではなくマスコミを巻き込んだ大騒動になると言うのだ。
「じゃあ、本物の孫娘に替わってもらえば良いじゃないか。」
と言うと
「既に本人はこの世にいない…というか、あんた自身が本人なのだ。」
と言う。
詳しく問い詰めると、この「皮」がこの娘そのもの…本人の中身を無くして「皮」だけにしたものだそうだ。
「つまり、俺は一生この娘を演じ続けなければならないのか?」
そう言う俺に男から提案があった。
「ずっとその姿というのもストレスが溜まるでしょう。老人の資産は莫大なもので、そのすべてが今や貴女のものなのです。」
男は俺に耳打ちした。
「その金で他の「皮」を買いませんか?お高いですが、今の貴女にはどうという事はないでしょう♪」

 

 
俺は度々男から「皮」を買ってはふらりと旅行に出掛ける。
旅行中は「皮」の人物に成りきってストレスを発散させる。
イケメンの男の時は女を選び放題。何人もの女とヤりまくる。
女の時は女同士の気安さで、声を掛けてはレズ行為に引きずり込む。
勿論、女の時は声を掛けてくる男もいる。俺は女としての受け身のSEXも楽しんでいる。
(俺のハジメテがお祖父ちゃんだったのがちょっと気に入らないけどね♪)

 

金に飽かして色々と「皮」を揃えたけど、普段の「お嬢様」でいる時が一番落ち着くような気がする。
遺産のおこぼれにあずかろうと、親類縁者が彼等の意気の掛かった花婿候補を紹介してくるので、この姿の時は「男」と関係を持つ事のないようには気を付けている。
寂しくなった時に独りで慰める事も普通にヤっている。
お風呂の中で股間に指を這わす。指先を曲げ、ナカに押し込んでゆく。
「んあん♪ああん♪」
可愛らしい淫声が、俺の喉から零れていった…

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