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2015年3月17日 (火)

痴漢に会った日

「んあん♪」
悩ましいオンナの喘ぎ声が聞こえた。

 
ここは満員の通勤電車の中だ。
俺は吊革に掴まり、いつものようにぼーっと窓の外を眺めるでもなく見ていた。
声は昇降口の方から聞こえてきていた。
見るとドア脇の棒に掴まり、必死に何かに耐えている若い女性がいた。
良く見ると、ドア側のスカートの裾がずり上がっている。
そこに背後から伸びてきた手がスカートの内側に入り込んでいた。
(痴漢?)
とはいえ、彼女の所までは距離がある。大声をあげても犯人を捕まえる事などできはしない。

その行為に気づいているのはどうやら俺だけのようだ。
他の乗客はゲームや音楽に夢中か、居眠りの最中で誰も気づいていないようだ。

「あっ…」
彼女の声が上がる。
痴漢の手は彼女のショーツの上から触れているのに飽きたらず、ショーツの中に滑り込ませていた。
指先を曲げ、彼女の股間の割れ目に潜り込んでゆく。
条件反射のように、彼女の意図に逆らい、股間には蜜が溢れ始めていた。

(!!)
彼女が俺を見ていた。
(気がついているなら、この状態をなんとかしてよ!!)
彼女の目が、そう訴えていた。
そうは言われても、俺にはどうする事もできない。
(じれったいわね!!じゃあ、あたしが何とかするから、代わってくれない?)
代わるってどういう事?君の代わりに僕が痴漢されるのかい?
(そうよ。あんたがウンと言えば、それで代われるわ♪)
な、何をバカな事言ってるんだ?男の俺が痴漢に合って何になるんだ?
(ぐだぐだ言ってないでウンと言いなさいよ!!男でしょ♪)
嗚呼、良いよ。代わってやるよ。ウンでもハイでもどうぞ!!
(言ったわね?契約成立♪入れ替わり実行!!)

 

一瞬、くらりと目眩がした。
吊革に掴まっていた筈の俺の手は、棒を掴んでいる。そして体を壁にもたれるかけていた。
「あっ!!ちょっと済みません。」
突然、男の声が社内に響き渡った。
俺の股間を弄んでいた手がビクリと硬直した。
満員の社内を「すみません」と声を上げ男が近づいてくる。
ゲームや居眠りなどを中断された乗客の、迷惑そうな視線がその男に注がれていた。
「大丈夫か?」
男が俺に声を掛けると、乗客逹の視線が俺にも注がれる。
既に痴漢の手は消えていたが、スカートは捲れたまま…
「痴漢は?」
と俺の背後を睨む。
「お、俺は違うぞ…」
と顔を背ける若い男がいた。

 

俺は「俺」を見上げた。
「次の駅で一旦降りよう。」
そう言う彼に俺は頷くしかなかった。
快速なので次に停まる駅まではしばらく時間が掛かる。
俺は彼に守られるようにして立っていた。

(これって、あの女の身体なんだよな?)
今さらながら自分が入れ替わり、女の身体になっている事を実感する。
靴は踵が高く不安定だ。脚にはストッキングが貼り付いている。
スカートの裾が脚に纏わりつくのを感じる。

股間に貼り付くような下着…さっき痴漢に弄られて少し濡れている。痴漢の指がここからナカに入ってきていたのだ。
そこは「女」にしかない場所。それは男には経験できない感覚だった。
「大丈夫か?」
彼が耳元に声を描けてきた。
どうやら、あの感覚を思いだし少し顔が紅潮していたのだろう。

社内アナウンスが次の駅への到着を予告する。降車扉は反対側だった。
「すみません。次降ります。」
と彼が周囲に声を掛けると人垣の中に一本の通路ができていた。
俺は彼に守られるようにして反対側の昇降口に到達した。
電車が減速する。
ホームの端が見え、ブレーキが掛かり、停車位置に止まった。
扉が開き、人の流れに押し出される。
が、俺の背後にはしっかりと彼が付いていた。

 

人の流れを避け、自販機の脇で立ち止まった。
「これくらいの事、何でできないのかなあ?」
頭上から彼の言葉が降ってくる。
「す、すみません…」
俺は恐縮し、謝る事しかできなかった。
「本当に、あんた男やってる資格ないよ。このまま女してた方が良いんじゃないか?」
「そ、そんな…」
「別に不都合はないんだろう?俺もこの身体気に入ったし、このままで良いよね♪」
そんな事はない!!と言えないまま、次の電車がホームに入ってきた。
「じゃあな♪」
と彼は入ってきた電車に乗り込む。
発車ベルに続いて扉が閉まり、電車は彼を乗せてホームを離れていってしまった。
俺は頭の中が真っ白になっていた…

 

 

 

 

ホームの時計が目に入った。
(もうこんな時間?遅刻しちゃうじゃない!!)
見るとホームには電車が止まっていた。
あたしは慌てて飛び乗る。
扉が閉まり、発車する。
ホームが遠退いてゆくと、そこにはいつもと同じ朝の光景があった。

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