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2015年2月 9日 (月)

親友

男同士というもの…

気軽に語りあえる。
多少ハメを外しても許容してもらえる。
オンナの事で盛り上がる。

 

奴とは十年来の付き合いである。
互いに今だ独身だ。女の子の機嫌を気にしながら付き合うより、気楽に付き合える奴といた方が良いと、ことごとく出会いのチャンスを逃してきた結果であるのだから、誰に文句を言える訳でもない。
「人生、家庭を持つことが全てではない!!」
そう意気投合するのだが、俺の頭の片隅には一抹の不安が生まれ始めていた。

 

「もし、俺達が女同士だったなら、今と同じような友情を継続できただろうか?」
ふと、そんな命題が頭に浮かんだ。
「まあ無理だろうな。」と奴は素っ気なく言った。
「女は友情よりも男を取ると言うじゃないか。もし友情が続いていたとしても、今の俺達と同じ訳ないだろう?」

 

俺は想像してみた。俺達が出会った高校の頃…学生服を着て机を挟んで話をしていた。
もし、俺達が女だったら…セーラー服のスカートの裾を気にしつつも、あたしは上体を捻って机越しに親友とお喋りしていた。
「十年経ってもあたし逹は友達でいられるよね?」
「まあ無理じゃない。」と彼女は素っ気なく言った。
「女は友情よりも男を取ると言うじゃない。もし友情が続いていたとしても、今のあたし達と同じ訳ないでしょ?」
「なら、もしあたし逹が男同士だったら?」
「考えたくないね。こんなに可愛い乙女のあたし逹が、何をすき好んでゴツくて汚くてスケベな男になんなくちゃいけないのよ!!」

 

「って、そんな事言ってた時もあったよね♪」
あれから十数年経って、突然思い出したようにそんな話しをしていた。
今はもうあの時のような「可愛い乙女」ではなくなっているが、お互い家事や育児の合間を縫って「友達」を続けていた…

 

「もし、あたし逹が男同士だったら?」
…なんて考えてる「あたし」って「誰」?

 

「だから、女は友情よりも男を取ると言ったろう?」
あたしの前にいるのは高校の時からの「腐れ縁」ってやつ?
(良い加減腹を決めてもらわないといけないんだケドね♪)
「じゃあ、あたしとあんたの間にあるのは友情じゃないの?」
「友情だったのは、お前が男だった時の事だよ。女になったお前との間にあるのは愛情だよ♪」
(そう♪その言葉を待ってたのよ!!)
「って言うか、そろそろけじめを付けないといけないんだよな。このままズルズルと友達同士のような関係を続けていてはいけないんだよな。」
(うんうん♪)
「お前が女になってしまったのは誰の責任でもない。が、俺は女になったお前を愛してしまったんだ。これ以上は自分を偽れない。お前さえよければ結婚してくれないか?」
そう言うかれにあたしは身を乗り出して彼の耳元に「イエスよ♪」と囁き、その頬にチュッとキスしてあげた♪
「えっ?!」と彼は驚いていた。まさか即答されるとは思っていなかったのだろうか?

 

 
高校3年の夏。あたし=俺は急性性転換症を発症して「女」になってしまった。
腫れ物を触るような形だけの付き合いになってしまったクラスメイト逹。彼だけがこれまでと同じように接してくれた。
一緒に受験勉強の追い込みを行い、揃って同じ大学に合格した。
高校では女の体になっても学生服で通したが、流石に大学ではそれなりの格好をするようにした。
大学では元の「俺」を知ってるのは殆どいなかったので、あたしは生まれた時から女だったかのようにして、女の友達もできた。が、彼との付き合いはこれまでどおりだった。

そのうち、彼にもあたしが「女」である事を意識してもらえるよう、時には過剰にフェミニンな格好で迫ったりもしてみた。

大学も4年目に入りお互い就職先も決まったので、卒業旅行に行くことにした。
いつもと違う場所、色気漂う湯上がりの浴衣姿。お酒も入った夜の旅館。
あたしは彼に抱かれていた。
あたしは「女」としてのハジメテを彼に捧げたのだった。

 

(わざと忘れていたの?)
あれ以来、彼はあたしを抱くことはなかった。
でも、あたしが体を許すのはあなただけなのよ♪
だから、今日からはもう大丈夫よね?
「ねぇ、ホテル行こうよ♪」
あたしは彼の腕を取り立ち上がらせた。

 

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