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2015年2月 9日 (月)

鬼の嫁取り(7)

新たな街が造られ始められた頃、俺は彼と伴に都に呼ばれていた。
これまでも何度か都に行く話もあったが、俺は島との連絡を絶やす訳にはいかないため、彼だけが都に赴いていた。
今では賊の討伐に島の手を借りることはほとんどなくなっていた。長老からもたまには都に行くのも良いと言われ、今回の都行きとなった。

俺が行かなければ、彼は数人の部下との騎行で済むのだが、今回はまたワゴンを仕立てての移動となる。
だが。今回は更に規模が大きくなっているようだ。
「長老からいただいた献上品などもあるからね♪」
それだけで納得できるようなものではなかったが、久しぶりに賊の討伐から離れて彼との旅ができるということで、俺は深く追求することはしなかった。

ワゴンの中では会話も弾み、夜は宿のベッドで激しく愛し合った。
彼の愛撫に俺は淫声をあげ続ける。彼に貫かれ、その先端から迸る精を膣と子宮に受け止める。
俺は幸せに満たされ、幾度となく意識を飛ばしていた。

 

久々のワゴンでの移動の所為か、数日が過ぎたころ不意に吐き気をもよおした。
彼は宿場につくなり、医者を手配した。
医者はいくつかの質問をした後、にこりと笑みを浮かべた。
「これは悪阻だな♪」
「悪阻?」
「そうだ。君は妊娠している。おめでとう♪」
俺はしばらく医者の言った意味がわからなかった。
(俺は男で、秘薬で女の姿になっているだけだ!!)
そう意識する裏側で
(俺と彼との子が俺の腹の中にいるのか?俺は本当に彼の妻になれる♪)
と喜んでいる俺がいた。

医者の診断結果は即にも彼に報じられていた。
「よくやった。もう誰にも文句は言わせないぞ♪」
彼は子供のようにはしゃぎまわっていた。

一行の進む速度は俺の安全を確保するため、いっそうゆっくりとなった。
更に、先行して触れまわる者がいるらしく、あちこちからお祝いの品々が集まってきた。

ようやく都に辿りつくと、王への挨拶もそこそこに別室に連れていかれた。
そこには純白の清楚で可憐なドレスが用意されていた。
「あなたのためのウェディングドレスですよ。明後日にはこれを着て王子様との結婚式ね♪」

俺がウェディングドレスを着ることになるなどと、誰が想像できたであろう。
しかし、俺はこれを着て彼とともに父王から祝福を受けていた。
宮殿には知らせを受けた近隣の有力者が集まり、俺達の結婚式を見守っていた。
都は市民がお祝いムードで浮かれている。
楽隊が華麗な楽曲を奏で、尽きることなく花火が宙を舞っていた。

 

 

俺が次に都を出たのはそれから一年近くが経ってからだった。
俺は可愛い女の子を産んでいた。
この子と伴に旅ができるまでと足止めされていたのだ。

ワゴンが新しくできた港街に近づいてきた。
一際高い尖塔を持つ建物が目を引いた。
「あれが僕逹が暮らす館だよ。」
俺は娘を抱き上げると、ワゴンの窓越しに彼が指し示す館を見せた。
彼女は嬉しそうにキャッキャとはしゃいでいた。

俺は彼を見つめた。
「これが僕達の街だ。僕達のね♪」
彼は優しく俺にキスをした…

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コメント

新作お疲れ様です。
最初桃太郎の逆視点かと思ったら
洋風になったのでこういうのも面白いなと思いました。
男の鬼だけど女の幸せを感じる彼のハッピーエンドできれいに終わったな~って
流石奈落さんだと思いました。

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