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2015年2月 9日 (月)

鬼の嫁取り(5)

陽が暮れて里に入ると、先行していた従者が本日の宿に一行を案内してゆく。
ワゴンが停まり、俺が降りようとすると
「ちょっと待って♪」
と彼に引き止められた。彼の方が先に降りるのか?と彼を先に通そうとした直後

ふわっ!!

と、俺の足の下から床が遠ざかった。
俺は彼に抱き抱えられていたのだ。
彼はそのままワゴンを飛び降りていた。
「恥ずかしいだろ。降ろしてくれ。」
目の前にあった彼の耳にそう告げると
「僕と一緒にいるのであれば、こういう事にも慣れてもらわないとな♪」
つまり、こういう行為が嫌なら彼の元を離れるしかないという事か?
否。彼からはもっといろいろな事が聞き出せる筈だ。
俺はこれからも彼の傍に居たい…でも、それは本当に見聞を広めたいだけなのか?

こうやって彼に抱かれていると、俺は幸せな気持ちになる。
彼と体を触れ合わせていられるだけでも良い…
(何で俺はそんな事を思っているのだ?!)

彼は俺を抱えたまま宿の中を進み、部屋に入るとベッドの上に俺を下ろした。
「今夜も良いよね♪」
と言われ、俺は反射的に首を縦に振っていた。
それが何の事であるかを理解するまでには、しばらく時間が掛かっていた。
彼が同意を求めたのは「今夜も」という事から、昨夜と同じ事であろう。
俺の同意を求めると言う事は…

(俺が女として再び彼に抱かれるという事か?)

それ以外に俺の同意を求めるようなものは見当たらなかった。
俺はそれを意識することなく同意してしまっていた。
…いや、意識していなかったという事はない。俺の内では多少なりとも、それを期待していたふしがある。
男同士…という意識はまったくなかった。俺は女として彼に抱かれた事を嬉しく思っていたのだ。
(また、あの幸福感を味わうことができるのだ♪)
その期待に、自然と俺の股間が湿り気を帯びてきていた。

今の俺は「女」なのだ。
男に抱かれて悦んでいるのも自然なことなのだ。
彼にもっと愛してもらう為にはなにをしても咎められることはないのだ…

「今から…」
俺は何を言おうとしている?
「今からでも良いぞ♪」
俺は憂いた瞳で彼を見上げていた。
「良いのか?」
と近づいた彼の腰に俺は腕を回していた。
ズボンのチャックを開ける。
中から彼のペニスを引き出し、その先端を舌で舐めた。
途端に硬さと大きさを増す。
愛しさにチュパチュパと音をたてて吸い付いていると
「っああ…。良いのかい?」と彼。
俺が頷くと、ドクリと熱いモノが昇ってきて、俺の口の中を満たした。
俺は一滴も残さないように、ごくりと飲み込むと、舌で残りを綺麗に拭い取った。
「今度は僕がしてあげるよ♪」
と彼は僕をベッドに押し倒すと、スカートの中に頭を突っ込んだ。
下着が剥ぎ取られると、彼の舌が俺の「女」の秘所を嘗めあげた。
鼻先と舌とで俺の股間に刺激を与えてゆく。挿れられた訳ではないのに、快感に意識が飛んでしまう…

気が付くと、既に俺は全裸にされていた。
彼の優しい愛撫が続いている。
快感に喘ぎ声が漏れる。
「じゃあ、次に行って良いね♪」
彼は俺が気付くのを待ってくれていたようだ。
彼が体を重ね、俺の内に侵入してくる。
「ああ…」
自分が内側から物理的にも精神的にも彼に満たされ、俺は幸福感に媚声を漏らす。
再び快感の大波に揺さぶられる。
俺は歓喜の艶声をあげ、全てを彼に委ねる。
俺の「男」としての意識が小さな泡に砕かれ、弾け、消えていった…

 

 

一行は都に到着した。
ワゴンはそのまま、都の中心にある壮麗な建物の中に入っていった。
巨大な扉の前に停まる。大勢の出迎えが左右に整然と並んでいた。
「今日は少し歩いてもらうことになるから♪」
と彼が言う。
ワゴンのドアが開かれる。建物の巨大な扉も開かれ、そこに向かって絨毯が敷かれていた。
俺は彼に抱えられワゴンを降りると、絨毯の端に彼と並んで立たされた。
左右に並ぶ人々は深く頭を下げている。
彼が合図を送ると、一斉に頭が上がり、全ての視線が俺達に注がれた。
「さあ、行くよ♪」
彼に手を引かれ、俺は歩き始めた。
数えきれない視線に追われる中、建物の中に入る。
背後で扉が閉まり、視線の数は一気に減ったが「この女、何者?」と俺を推何する視線は相変わらずだった。

彼に手を引かれたまま、建物の奥に向かう。
いくら俺でも、この建物が王宮である事は理解していた。
入り口に近い部分は政務を行う場所や外部の者との交渉場所、多くの人々と一堂に会せるホールなどがあるのだろう。
そして、奥まったドアを過ぎると雰囲気が一変する。人が生活するのに心地好い雰囲気がする。王家の居室に違いない。
この場所に入れるという事は、彼もまた王族の一員なのであろうか?

一際立派なドアの前で止まった。
「私です。ただ今戻りました。」
と部屋の中に声を掛けた。
「入りなさい。」
重厚な声が届き、彼がドアを開いた。
部屋の中には恰幅の良い初老の紳士が書類の積まれた大きな机に着いていた。
多分、彼がこの国の「王」なのだろう。
「父上。辺境の視察から戻りました。…」
(ち…父上?)
つまり、彼は王子ということか?俺は知らないとはいえ、王族の最たる「王子様」に抱かれていたという事か?
独り狼狽している俺を余所に、話しは進んでいた。
「…詳しくは今後の計画と併せて報告しますが、やはり治安の乱れが進んでいます。場合によっては彼等の協力を得る必要があるやも知れません。」
「彼等…とは鬼逹の事か?」
「はい。」
(な、何故そこで「鬼」が出て来る?)
もう、俺の頭の中はぐちゃぐちゃだ。
「我々だけで個々に賊を潰すには限界があると考えています。」
「彼等の力を借りるとして、その対価はどうする?」
「この所頻繁に勇者と称する賊が島に向かっているようです。治安が回復すればそのような賊も抑え込めます。彼等も平穏に暮らせるようになるでしょう。」
と彼は意味ありげに俺を見た。

「わかった。その話しは追々聞くとしよう。それよりも、その娘さんは?」
「僕の妻として迎えいれたいと考えています。」
「ほう。お前の眼鏡にかなったのか♪しかし、家柄等で良い顔をしない者逹もおる筈じゃぞ。」
「父上は鬼の嫁取りの話しをご存じでしょうか?いくら優秀な血筋でもその中で閉じていてはいずれ滅びる。鬼は成人すると、外に出て嫁となる娘を探してくることで滅びを回避しているという。」
「お前に覚悟があればそれで良い。わしは何も言わん。」
「ありがとうございます。それでは。」
と、再び俺の手を引き王の居室を辞した。

 

「な、何がどうなっているんだ?」
俺は頭の中を整理するのを放棄したくなっていた。
「僕は鬼逹との交渉に行く。そして、鬼逹と供に辺境の治安を回復する。そうすれば、君の島も平穏になるだろう?」
「それは解る。が、鬼は実在しないのではないか?…いや、それよりも…妻…にするって?」
「いやかい?君は聡明だ。僕の伴侶として申し分ない。なによりナニの相性がこの上ない。」
ふうっと耳元に息を吹き掛けられ、思わず感じてしまった。
「んぁっ♪」と吐息を漏らし、脚から力が抜けてゆく。
俺は彼の逞しい腕に支えられ、ようやく立っていられた。
確かに、俺はもう彼なしではいられない女になってしまっていた。
しかし、彼は一国の王子でありその伴侶であれば「后」として国民の前に立つ事になるにちがいない。
「鬼」であり、本来「男」である俺がそのような立場に立って良い筈がない!!

「あまり深刻に考えなくても良いよ。国政は兄逹が問題なく仕切ってくれる。僕等は辺境に屋敷を建て、治安の維持に務めていれば良いんだ♪」
と俺にキスをする。そのキスで俺は身も心も蕩けてしまう。
再び頭の中が混沌とする。
「君はいつでも僕の傍に居てくれれば良いんだ♪」
再度のキスで俺は完全に考えることを放棄してしまった。

 

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