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2015年2月 9日 (月)

複写装置

「このコートがどうしたと言うんだ?」
俺の親友はマッドサイエンティストだった。その彼から手渡されたトレンチコートに、俺は袖を通した。
「これってボタンが左右逆になってるぞ。女物なのか?」
「そこいら辺は堅い事いうな。そろそろ圏内に何か引っ掛かる筈だよ。」
「引っ掛かるって、何がだよ?」
そう言った途端、不意に体が熱くなった。
「な、何だよコレ。体がムズムズするぞ。」
「慣れればどうって事ないよ♪そろそろ定着した筈だ。ボタンを外してみなよ。」
言われるがままボタンを外してゆく。そして袷を開くと…
「ど、ど、ど、どうなっているんだ??」

 

コートの下から現れた「俺」の体には、女の服…ワンピースが着せられていた。

服だけではない。
下着もまた女物に変わっているようだ。
スカートの裾から覗く脚にはストッキングが穿かされている。ストッキングは覗いている部分だけではなく、膝から上、太股を覆い腰にまで達しているようだ。
その下には面積の乏しいパンティが股間を覆っている。
(こんなんで俺のペニスを包みきれるのか?)
等という心配をしている所ではなかった。
胸を締め付けているのはブラジャーであろう。
カップが豊かな肉塊を孕んで、形良く膨らんでいる。
(膨らんでいる?!)
俺は胸に手をあててみた。
フニッと、本物の女性の胸に触れた時の触感が指先から伝わってくる…と同時に、俺の胸からは触れられた感覚が…
「どうなっているんだ??」
「それは、この装置だ。」
と俺の着ているコートのポケットから、アンテナを生やした小さな金属製の箱を取り出した。
箱はケーブルでコートのポケットにつながっている。
「こいつはこの周辺を探索し、似たような形状のコートの内側をスキャンしてデータ化する。」
彼は装置を元に戻すと、あたしの着ているコートを捲った。
「コートの裏側の全面に小さな穴が開いていて、そこから特殊な物質を噴射してデータを再現する仕組みなんだ。」
「良くわかんないんだけど、それとあたしがどういう関係になるの?」
「どうやらナノマシンは期待通りの効果をあげているね♪」
「だから、何なのよ!!」
「被写体の再現が表層に止まらず、脳構造にまで影響を与えているという事だ。」
「あたしには全然理解できないわ。もっと簡単に言えないの?」
「そうだなぁ。じゃあ、お前の本来の性別を言ってみな♪」
「本当の…ね?こんな格好になっちゃったけど、あたしは…」
「どうした?」
何かあたしの頭の中で記憶がぐしゃぐしゃになっている。
小さい頃はおままごとが好きだった筈なのに、男の子逹とサッカーしていた記憶がある。
あたしってお転婆だったの?
中学はセーラー服だったのに、学ランを着ていた記憶がある。
目の前の彼は「親友」の筈なんだけど、「あたし」の記憶には存在しない。
(彼って「誰」?)

 
「さあ、自分の本当の性別を言ってごらん♪」
「本当もなにも、あたしは生まれた時から女の子だったのよ!!何で男の子だったみたいな記憶があるの?」
「そうか、被写体の記憶まで再現してしまってたか。じゃあ、その男の子の記憶に集中してくれないか?過去から現在に遡ってくるんだ。」

あたしは何故か彼の指示に素直に従っていた。
見知らぬ男の子の記憶を辿ってゆく。
「その記憶の中に僕はいるかい?」
サッカーボールを蹴っていた小学生の頃から、学ランを着ていた中学生の頃の記憶に…順を追って辿ってゆく。
一年生、二年生…文化祭、体育祭、修学旅行…高校受験の思い出は合格発表だけだった。
高校生になった。新しい制服はまた学ランだった。
(あたしは制服で高校を選んだ方だけどね♪)
入学式、クラス割りが発表される。
初めての教室、初めての級友…
そして、あたしの隣に「彼」がいた。

「思い出せたか?」
「あんたに初めて会ったって記憶はあったわ。高校に入学した時ね。でも、これはあたしの記憶じゃないわ。」
「ナノマシンの行動が予想以上だったんだ。そこまでやるつもりはなかった。」
「ねぇ、あたしが男だったなんて嘘でしょ?」
「ナノマシンは既に停止している。これ以上の記憶の侵食はない筈だ。」
「答えになってないわ!!あたしって何者なの?」
「僕の親友で、僕の発明したコート型複写装置の試験に付き合ってもらった…」
「マッドサイエンティストの人体実験…てやつだよな?これまで何度付き合ってやった事か。」
俺はこれまで奴のやらかした実験の結果を思いだしていた。
「俺の家が貧しく、小遣い稼ぎに付き合ってやったのが始まりだったよな。」
「元に戻ったのか?」
「頭の中にはまだ二人分の記憶がある。気を抜けば自分が元から女だったと錯覚してしまいそうだがな。」
俺はコートを脱いで奴に渡した。
「で、どうやったら元に戻るんだい?俺もいつまでもこんな格好でいる訳にもいかないんでね。」
「今回は実験の結果を判り易くするため女の体を複写してみたんだ。同じように男の体を複写すれば元にもどるよ。」
「じゃあ、すぐに…」
「今すぐは無理だ。ナノマシンを調整しないと三人目の記憶を刷り込む事になってしまう。調整が終わるまで、その姿のままでいてくれないか?」
「どれくらいかかるんだ?」
「今は何とも言えない。とりあえずは2~3週間見ておいてくれないか?」

 

 
「まだぁ?」
俺は甘ったるい声で彼を急かした。
結局、半年経った今もナノマシンの調整は終わっていない。
(まあ、毎日のように俺が押し掛けていては研究も進めようがないのだろう♪)
俺はその間にも「女」として生活する事に慣れていた。
経費は彼持ちなので、何も気にすることなく女物の服や化粧道具、アクセサリーを買い揃えた。
(3週間を過ぎた頃、生理もあった。今ではその処理も慣れたものである。)
言葉では彼を急かしてはいるが、俺は既に男に戻る事を諦めてもいた。
彼と一緒にいれば、アクセクと働く必要がない。気が向いた時に彼の世話をやいてやればそれでよいのだ。
(男に戻っても何が徳になるのだろう?)

「ねぇ♪結婚しちゃおうか?」
そんな事を言ってみる。勿論、俺が花嫁だ。
小さい頃、憧れた白いドレスを着るんだ♪
(…って、これは彼女の記憶だったっけ?)
「良い考えでしょ♪何か問題ある?」
俺は彼を押し倒した。彼の顔に胸の膨らみを押し付け、硬くなった肉棒を俺の股間に導いてゆく♪
(そうか!できちゃった婚もありかも♪)
そんな考えも頭によぎる中、俺は貫かれる快感に酔いしれていた♪

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