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2015年2月 9日 (月)

親友

男同士というもの…

気軽に語りあえる。
多少ハメを外しても許容してもらえる。
オンナの事で盛り上がる。

 

奴とは十年来の付き合いである。
互いに今だ独身だ。女の子の機嫌を気にしながら付き合うより、気楽に付き合える奴といた方が良いと、ことごとく出会いのチャンスを逃してきた結果であるのだから、誰に文句を言える訳でもない。
「人生、家庭を持つことが全てではない!!」
そう意気投合するのだが、俺の頭の片隅には一抹の不安が生まれ始めていた。

 

「もし、俺達が女同士だったなら、今と同じような友情を継続できただろうか?」
ふと、そんな命題が頭に浮かんだ。
「まあ無理だろうな。」と奴は素っ気なく言った。
「女は友情よりも男を取ると言うじゃないか。もし友情が続いていたとしても、今の俺達と同じ訳ないだろう?」

 

俺は想像してみた。俺達が出会った高校の頃…学生服を着て机を挟んで話をしていた。
もし、俺達が女だったら…セーラー服のスカートの裾を気にしつつも、あたしは上体を捻って机越しに親友とお喋りしていた。
「十年経ってもあたし逹は友達でいられるよね?」
「まあ無理じゃない。」と彼女は素っ気なく言った。
「女は友情よりも男を取ると言うじゃない。もし友情が続いていたとしても、今のあたし達と同じ訳ないでしょ?」
「なら、もしあたし逹が男同士だったら?」
「考えたくないね。こんなに可愛い乙女のあたし逹が、何をすき好んでゴツくて汚くてスケベな男になんなくちゃいけないのよ!!」

 

「って、そんな事言ってた時もあったよね♪」
あれから十数年経って、突然思い出したようにそんな話しをしていた。
今はもうあの時のような「可愛い乙女」ではなくなっているが、お互い家事や育児の合間を縫って「友達」を続けていた…

 

「もし、あたし逹が男同士だったら?」
…なんて考えてる「あたし」って「誰」?

 

「だから、女は友情よりも男を取ると言ったろう?」
あたしの前にいるのは高校の時からの「腐れ縁」ってやつ?
(良い加減腹を決めてもらわないといけないんだケドね♪)
「じゃあ、あたしとあんたの間にあるのは友情じゃないの?」
「友情だったのは、お前が男だった時の事だよ。女になったお前との間にあるのは愛情だよ♪」
(そう♪その言葉を待ってたのよ!!)
「って言うか、そろそろけじめを付けないといけないんだよな。このままズルズルと友達同士のような関係を続けていてはいけないんだよな。」
(うんうん♪)
「お前が女になってしまったのは誰の責任でもない。が、俺は女になったお前を愛してしまったんだ。これ以上は自分を偽れない。お前さえよければ結婚してくれないか?」
そう言うかれにあたしは身を乗り出して彼の耳元に「イエスよ♪」と囁き、その頬にチュッとキスしてあげた♪
「えっ?!」と彼は驚いていた。まさか即答されるとは思っていなかったのだろうか?

 

 
高校3年の夏。あたし=俺は急性性転換症を発症して「女」になってしまった。
腫れ物を触るような形だけの付き合いになってしまったクラスメイト逹。彼だけがこれまでと同じように接してくれた。
一緒に受験勉強の追い込みを行い、揃って同じ大学に合格した。
高校では女の体になっても学生服で通したが、流石に大学ではそれなりの格好をするようにした。
大学では元の「俺」を知ってるのは殆どいなかったので、あたしは生まれた時から女だったかのようにして、女の友達もできた。が、彼との付き合いはこれまでどおりだった。

そのうち、彼にもあたしが「女」である事を意識してもらえるよう、時には過剰にフェミニンな格好で迫ったりもしてみた。

大学も4年目に入りお互い就職先も決まったので、卒業旅行に行くことにした。
いつもと違う場所、色気漂う湯上がりの浴衣姿。お酒も入った夜の旅館。
あたしは彼に抱かれていた。
あたしは「女」としてのハジメテを彼に捧げたのだった。

 

(わざと忘れていたの?)
あれ以来、彼はあたしを抱くことはなかった。
でも、あたしが体を許すのはあなただけなのよ♪
だから、今日からはもう大丈夫よね?
「ねぇ、ホテル行こうよ♪」
あたしは彼の腕を取り立ち上がらせた。

 

複写装置

「このコートがどうしたと言うんだ?」
俺の親友はマッドサイエンティストだった。その彼から手渡されたトレンチコートに、俺は袖を通した。
「これってボタンが左右逆になってるぞ。女物なのか?」
「そこいら辺は堅い事いうな。そろそろ圏内に何か引っ掛かる筈だよ。」
「引っ掛かるって、何がだよ?」
そう言った途端、不意に体が熱くなった。
「な、何だよコレ。体がムズムズするぞ。」
「慣れればどうって事ないよ♪そろそろ定着した筈だ。ボタンを外してみなよ。」
言われるがままボタンを外してゆく。そして袷を開くと…
「ど、ど、ど、どうなっているんだ??」

 

コートの下から現れた「俺」の体には、女の服…ワンピースが着せられていた。

服だけではない。
下着もまた女物に変わっているようだ。
スカートの裾から覗く脚にはストッキングが穿かされている。ストッキングは覗いている部分だけではなく、膝から上、太股を覆い腰にまで達しているようだ。
その下には面積の乏しいパンティが股間を覆っている。
(こんなんで俺のペニスを包みきれるのか?)
等という心配をしている所ではなかった。
胸を締め付けているのはブラジャーであろう。
カップが豊かな肉塊を孕んで、形良く膨らんでいる。
(膨らんでいる?!)
俺は胸に手をあててみた。
フニッと、本物の女性の胸に触れた時の触感が指先から伝わってくる…と同時に、俺の胸からは触れられた感覚が…
「どうなっているんだ??」
「それは、この装置だ。」
と俺の着ているコートのポケットから、アンテナを生やした小さな金属製の箱を取り出した。
箱はケーブルでコートのポケットにつながっている。
「こいつはこの周辺を探索し、似たような形状のコートの内側をスキャンしてデータ化する。」
彼は装置を元に戻すと、あたしの着ているコートを捲った。
「コートの裏側の全面に小さな穴が開いていて、そこから特殊な物質を噴射してデータを再現する仕組みなんだ。」
「良くわかんないんだけど、それとあたしがどういう関係になるの?」
「どうやらナノマシンは期待通りの効果をあげているね♪」
「だから、何なのよ!!」
「被写体の再現が表層に止まらず、脳構造にまで影響を与えているという事だ。」
「あたしには全然理解できないわ。もっと簡単に言えないの?」
「そうだなぁ。じゃあ、お前の本来の性別を言ってみな♪」
「本当の…ね?こんな格好になっちゃったけど、あたしは…」
「どうした?」
何かあたしの頭の中で記憶がぐしゃぐしゃになっている。
小さい頃はおままごとが好きだった筈なのに、男の子逹とサッカーしていた記憶がある。
あたしってお転婆だったの?
中学はセーラー服だったのに、学ランを着ていた記憶がある。
目の前の彼は「親友」の筈なんだけど、「あたし」の記憶には存在しない。
(彼って「誰」?)

 
「さあ、自分の本当の性別を言ってごらん♪」
「本当もなにも、あたしは生まれた時から女の子だったのよ!!何で男の子だったみたいな記憶があるの?」
「そうか、被写体の記憶まで再現してしまってたか。じゃあ、その男の子の記憶に集中してくれないか?過去から現在に遡ってくるんだ。」

あたしは何故か彼の指示に素直に従っていた。
見知らぬ男の子の記憶を辿ってゆく。
「その記憶の中に僕はいるかい?」
サッカーボールを蹴っていた小学生の頃から、学ランを着ていた中学生の頃の記憶に…順を追って辿ってゆく。
一年生、二年生…文化祭、体育祭、修学旅行…高校受験の思い出は合格発表だけだった。
高校生になった。新しい制服はまた学ランだった。
(あたしは制服で高校を選んだ方だけどね♪)
入学式、クラス割りが発表される。
初めての教室、初めての級友…
そして、あたしの隣に「彼」がいた。

「思い出せたか?」
「あんたに初めて会ったって記憶はあったわ。高校に入学した時ね。でも、これはあたしの記憶じゃないわ。」
「ナノマシンの行動が予想以上だったんだ。そこまでやるつもりはなかった。」
「ねぇ、あたしが男だったなんて嘘でしょ?」
「ナノマシンは既に停止している。これ以上の記憶の侵食はない筈だ。」
「答えになってないわ!!あたしって何者なの?」
「僕の親友で、僕の発明したコート型複写装置の試験に付き合ってもらった…」
「マッドサイエンティストの人体実験…てやつだよな?これまで何度付き合ってやった事か。」
俺はこれまで奴のやらかした実験の結果を思いだしていた。
「俺の家が貧しく、小遣い稼ぎに付き合ってやったのが始まりだったよな。」
「元に戻ったのか?」
「頭の中にはまだ二人分の記憶がある。気を抜けば自分が元から女だったと錯覚してしまいそうだがな。」
俺はコートを脱いで奴に渡した。
「で、どうやったら元に戻るんだい?俺もいつまでもこんな格好でいる訳にもいかないんでね。」
「今回は実験の結果を判り易くするため女の体を複写してみたんだ。同じように男の体を複写すれば元にもどるよ。」
「じゃあ、すぐに…」
「今すぐは無理だ。ナノマシンを調整しないと三人目の記憶を刷り込む事になってしまう。調整が終わるまで、その姿のままでいてくれないか?」
「どれくらいかかるんだ?」
「今は何とも言えない。とりあえずは2~3週間見ておいてくれないか?」

 

 
「まだぁ?」
俺は甘ったるい声で彼を急かした。
結局、半年経った今もナノマシンの調整は終わっていない。
(まあ、毎日のように俺が押し掛けていては研究も進めようがないのだろう♪)
俺はその間にも「女」として生活する事に慣れていた。
経費は彼持ちなので、何も気にすることなく女物の服や化粧道具、アクセサリーを買い揃えた。
(3週間を過ぎた頃、生理もあった。今ではその処理も慣れたものである。)
言葉では彼を急かしてはいるが、俺は既に男に戻る事を諦めてもいた。
彼と一緒にいれば、アクセクと働く必要がない。気が向いた時に彼の世話をやいてやればそれでよいのだ。
(男に戻っても何が徳になるのだろう?)

「ねぇ♪結婚しちゃおうか?」
そんな事を言ってみる。勿論、俺が花嫁だ。
小さい頃、憧れた白いドレスを着るんだ♪
(…って、これは彼女の記憶だったっけ?)
「良い考えでしょ♪何か問題ある?」
俺は彼を押し倒した。彼の顔に胸の膨らみを押し付け、硬くなった肉棒を俺の股間に導いてゆく♪
(そうか!できちゃった婚もありかも♪)
そんな考えも頭によぎる中、俺は貫かれる快感に酔いしれていた♪

感覚シミュレーター

(これが…オンナのカ・ラ・ダ♪)
俺は股間に這わせた指を折り曲げた。
既に愛液にまみれた指がズブズブとめり込んでゆく。
そして、俺の下半身は胎内に侵入してくる異物を感じていた。

 

今、俺は「感覚シミュレーター」の中にいる。
この中では実際に自分の体を動かす事はできない。動かそうという信号を捉えて、繋がれたコンピュータの中に造られた肉体が動くのだ。
そして、その情報が俺の脳にフィードバックされ、実際に体が動いたように感じるのだ。
勿論、フィードバックされるのは動かした対象だけではない。動いたことによりシミュレーションされる様々な事象がその肉体に与える感覚をも返してくる。
例えば、掌で顔を扇ぐと、生み出された空気の流れが顔に当たる感触を得ることができるのだ。

そして、その究極が自分とは異なる肉体…異性の肉体を体験する事だった。

 

設定は若い女性。全裸でベッドに寝ている。既にオナニーに向け肉体は臨戦態勢に入っている所だ。
女の感じている感覚がフィードバックされてくる。股間が愛液に濡れているのを感じた。
チリチリと乳首が疼いている。勃起した乳首…それ以上に豊かな乳房の重みが、この肉体がオンナである事を伝えてくる。
意識を腕に集める。持ち上げ、掌を腹の上に広げる。
そこから上に滑らせてゆくと、即に障害に接触した。
(乳房だ♪)
ゆったりと掌で揉み上げる。俺は乳房を揉まれるという体験を初めてした。
(初めてはまだまだあるよ♪)
もう一方の掌を下に下ろしてゆく。
指先が陰毛に触れ、更にその先に進めてゆく。
男であればある筈の障害物はそこにはない。
指先が愛液に触れた。
そこには溝が穿たれていて、愛液に濡れていた。
俺の指先が愛液にまみれる。
伸ばした指を溝に沿って這わせる。
そして、その指をゆっくりと曲げた。
指はズブズブと割れ目の中の秘洞にめり込んでいった。
「んぁん…」
俺の漏らした吐息は、甘いオンナの淫声になっていた。
俺の下半身が胎内に侵入してくる異物を感じた。
指先を肉壁に沿わせてぐるりと回した。
(一本じゃ物足りないな♪)
中指に加え、人差し指と薬指を参加させた。
(オンナはここに男のペニスを咥え込むんだよな?)
自分の指ではその太さも長さも再現できそうにない…
俺の目の橋に止まったものがあった。
それは、男のペニスを模したディルドゥだった。
(これを挿れたらどうなるんだろう?)
俺は無意識の内にソレを手に取っていた。
「男」である俺が、こんなモノを欲しがるなんて…と躊躇いはあるものの、好奇心がそれを上回っていた。
俺は脚をM字に広げると、その中心に挿入を開始した。
(イキむんじゃない。ゆっくりと息を吐くんだ。)
「ダメよ。そんな太いの挿れられたら壊れちゃうわ。」
(大丈夫だ。オンナの体はどんな男のモノでも受け入れられるようになってるんだ。)
俺は一人二役で挿入されるシチュエーションを悦しんだ。
(もしかしてお前、処女なのか?)
「……えぇ……」
(まあ、痛いのは最初だけだ。そのくらい我慢しろ。)
「男に破瓜の痛みなんてわかるもんですか!!」
(五月蝿い。いくぞ!)
そして、ぐいっとペニスがあたしの膣に割り込んできた。
引き裂かれるような痛みに一瞬意識が飛んでいた。
気がつくと太いペニスはあたしの膣を一杯に満たしていた。

が、それは本物のペニスではない…ディルドゥ…疑似ペニスだ。
いや、そもそも「この空間」自体が造りモノではなかったか?
そう。これはコンピュータの中に造られた仮想空間なのだ。この肉体とて「俺」のものではない。
俺は今、「感覚シミュレーター」の中にいるのだ!!

 
俺は何とか「俺自身」を保つ事ができた。
が、これ以上性的な刺激に晒されていては、いつ再び「女」に流されてしまうか解らない。
俺はシミュレーターの停止シークエンスを起動させた。

 

 

「どうでした♪ハジメテの体験は?」
全身の拘束が解かれ、カプセルから起き上がると助手の大毅が声を掛けてきた。
「何でお前がここにいる?」
彼はシミュレーションをモニタしていたに違いない。そう思うと一気に赤面した。
「主任がこんな事にシミュレーターを使うとはね♪」
大毅のニヤニヤ顔が癪に障る。
「以前から知っていたのか?」
「面白そうだったので差し入れをしておきました♪」
「アレを置いておいたのはお前か?」
確か、ディルドゥなど当初の設定にはなかった筈だ。
「指だけでは物足りなくなると思いましてね♪それとも、茄子や胡瓜の方が良かったですか?」
俺は自らの股間に茄子や胡瓜を突っ込んでいる姿を想像してしまい、頭を振って震い落とした。
「俺は単なる学術的好奇心を…」
「オンナになってみたかったんでしょう?良い事を教えてあげます♪」
大毅はそう言いながらデータグローブを手に嵌めていった。
「主任がソフトの開発に掛かりきりになっている間にハードも進化しているんですよ。」
彼は俺に近付いてくると、首筋に何かを貼り付けた。
「機能は限定されますが、シミュレーションにカプセルを使わなくても良くなっているんです。今貼り付けたシートで感覚のフィードバックが可能になっているんです♪」
彼がデータグローブで俺の胸に触れる。掌が何かを掴んだ形で止まった。
俺の胸で乳房が揉まれ、乳首が摘ままれている。
刺激が快感を呼び覚ます。
「ぁあん♪」
俺はオンナとして喘ぎ声をあげていた。
その「声」は俺本来の男の声とシミュレーターからフィードバックされた女の声が重なっている。
「やはりお前は淫乱なオンナなのだな♪もう股間をぐっしょりと濡らしているのだろう?」
確かに俺の股間には愛液で濡れている感触がある。
「どうなんだ?」
ふうっと耳元に息を吹き掛けられた。

「あっ、ああ…」

脚から力が抜けた。
彼の腕があたしを支えている。
そのまま、ゆっくりと床に下ろされた。
「コレが欲しいんじゃないのかな?」
あたしの目の前に逞しい肉棒が突き出されていた。
躊躇いつつも、あたしは首を縱に振っていた。
「ギブアンドテイクだ。まずはお前が僕を気持ち良くさせてくれないか?その可愛いお口でね♪」
あたしはおずおずと口を開き、肉棒の先端を口の中に入れた。
「もっと奥まで呑み込めよ♪」
これはもうシミュレーションではない。本物のペニスがあたしの喉を圧っしている。
苦しいのだが、あたしは彼に逆らう事ができなかった。
しばらく抜き差しを繰り返したのち、彼の精液があたしの喉の奥に放出された。
ごくりと喉を鳴らして精液を呑み込んだ。
(次はいよいよあたしの番だ♪)
が、彼の指示はあたしの期待とは少し違っていた。
「尻を向けて四つ這いになれ!!」
あたしはどんな形でも、彼のモノが欲しかった。言われるがまま尻を向け、高く持ち上げた。
彼の手があたしの腰を支えてくれている。
「いくぞ♪」
彼のペニスがあたしの膣の中に侵入してきた。
造り物のディルドゥではない。本物のペニスにあたしは貫かれている…
「ああ、いいっ!!」
その媚声に触発されてか、彼の動きも激しくなる。
あたしのナカがぐちゃぐちゃに掻き回され、快感のるつぼに堕されてゆく。
頭の中がまっしろに染まり肉体はあたしの意思から外れ、快感に勝手に反応する。
「ああん♪イクぅ~♪イッちゃう~~!!」
快感の頂点に達したところで、あたしは意識を失っていた。

 

「主任もすっかりオンナの顔になりましたね。そのアへ顔、素敵ですよ♪」
声のする方を見た。
あたしの前に大毅が立っている。
(でも、あたしは腰を掴まれ、ナカにはまだペニスが…)
その感覚がシミュレーターにより造り出されたものである事にようやく気付いた。
あたし…俺は「男」でその股間に膣などは持っていないのだ。肉棒に貫かれた感覚は全て造りモノだったのだ。
「おや♪男の意識を取り戻しましたか?でも、もう手遅れだと思いますよ。立ち上がって自分の姿を確認してご覧なさい♪」
彼がそう言うと同時に、膣からペニスが引き抜かれる感触があった。俺の腰を支えていた手も外されていた。
立ち上がると、重力に捉えられて膣の中から精液が内股を滴っていった。

俺は大毅が用意した姿見の前に立った。

(!?)

そこに見えたのは、全裸の女の姿であった。
意識を集中すると、うっすらと「俺」の姿が重なって見えた。
「どうです?面白いでしょう♪」
どうやら感覚のフィードバックが強すぎて、本来の感覚認識を上書いてしまっているようだ。
「やり過ぎだぞ。即に接続を切るんだ!!」
彼に届いているのは本来の男の声だろうが、俺の耳には女の声にしか聞こえない。
「そうですか?こうしておけば、主任は四六時中女性でいられるんですよ♪」
「バカな事は言わないで!!自分の認識は女でも、他人から見たらあたしはあたしなのよ。」
「問題ありませんよ。既にご自身で補正を掛けてるじゃないですか。今はもう、ちゃんと女性の声に聞こえますよ♪」
「えっ、うそ…」
あたしは自分の声とシミュレーターが伝えてくる声を比較してみた。
「あ、ああーっ」
しかし、どうやってもシミュレーターからの声と違えて発声する事ができない。
「どうです?主任はご自身の性別を認識できますか?」
「あたしは女よ。…って、あたしは…あたしは…」

 

 

「主任?ご気分はいかがですか?貧血を起こすなど働き過ぎですよ。」
助手の大毅君が湯冷ましを持ってきてくれた。
あたしとしてはそう根を詰めていたとは思わなかったが、体が休息を欲しているのに気が付いた。
「そうね。今日はもう上がらせてもらうわね♪」
あたしはそう言って更衣室に向かった。
ロッカーを開けると、今朝着てきたブラウスとスカートが掛かっていた。
(これって自分の服だったっけ?)
一瞬、違和感に囚われたが、これが自分のロッカーであり、確かに朝はこれを着てきた筈なのだ。
単なる気の迷いね♪と切り捨て、あたしは着替え、お化粧を直すと家路についた。

 

 

 
建物を出た所でシミュレーターとの接続が切れ、俺は「自分」を取り戻した…

 

鬼の嫁取り

奈落です。

毎度 足を運んでくださりありがとうございます。
鬼の嫁取り は節分までにはアップしたかったのですが、時期を逸してしまいました。
すみませんです。

(1)~(7)までありますので、長いのがお好きでない方はパスしてください。

今後ともよろしくお願いいたします。

鬼の嫁取り(1)

「何で俺たち鬼は退治されなきゃならないんだ?」
俺は島の財宝を盗みに来た、自称「勇者」様ご一行を追い返した後、長老に尋ねてみた。

「それは妬みじゃな。彼らに比べるとワシ等の身体能力は数段上をいっている。何かと理由を付けてはワシ等を排斥してきたんじゃ。」
「本当にそれだけの事なんですか?」
「彼等は力の強い者の庇護の元でしか生きられないんじゃ。だから、彼等の上にいる者は己が最強でいなければならない。それを知らしめる為にもワシ等は邪魔な存在なのじゃ。」
「なら、俺達が奴等を庇護してやれば良い!!」
「否。その手段は一度破綻し、封印されたのじゃ。お前も亞渡の都の話は聞いた事があるじゃろう?」
「そ、それは… だからといって、このまま虐げられているのは嫌です。」
「ならば、奴等の内に入って奴等がどう考えているかを見聞してきてはどうか?」
「この成りでは、どんな変装も役に立たないでしょう?」
俺は2mの身長と分厚い筋肉を纏った体、そして厳つい顔はどうにかできるものではないと改めて思っていた。

「ここに先史の秘薬がある。これを使えば奴等と同じ肉体に変わる。勿論、身体能力も奴等並みになってしまうがな♪」
「そんなモノがあるのですか?是非使わせてください。」
「これは一つの試練じゃ。志半ばで挫折した例も多くある。何より元の姿に戻る為には、もう一度この島に戻って来なければならないんじゃ。」
「試練ですか?」
「お主、あまり考えてなかろう?その体では島と陸は何度も往き来しているものな。じゃが、奴等の体ではなかなか難しいものなんじゃ。」
確かに、海底を歩いてでも陸まで行ける俺達と、潮の流れに逆らって船を漕いででしか島に渡れない奴等では比較にもならないだろう。
「一晩考えて、それでも行ってみたければ、明日の夜にここに来なさい。勿論しばらく島を離れる事を前提にな。」

 

 
こうして、俺は宵闇の海を渡っていった。
浜に上がり、持たされた水密箱を開けると、一番上に秘薬が載せられていた。
長老に言われた通り、松林の茂みの中に隠れると、一気に飲み下した。
その途端、全身を締め付けられるような痛みに襲われた。
鬼の耐力がなかったら、一瞬で気を失っていたか、最悪の場合、ショック死さえしかねない。

俺は痛みに耐え、自らの肉体の変化を見守った。
手足が小ぶりになってゆく。多分、身長もそれなりに低くなっているのだと思う。
筋肉が削げ落ち、柔らかな脂肪に被われてゆく。
筋肉の下にある骨達も長さ、太さともに縮退していた。
それは鬼の手が触れただけでポキンと折れそうなほどである。
剛毛は抜け、柔らかな産毛が生えていた。
頭の髪も生え代わり、ふさふさとした長い髪が肩に掛かっていた。
胸元に視線を落とす。視力も奴等並みになってしまったようで、暗がりでははっきりモノが見えない。
が、胸毛に被われていた俺の分厚い胸板がまったく別のモノに変わっているくらいには判別できた。
俺の胸には「女」のような乳房が二つ出来上がっていた。
手を伸ばし掴んでみる…指先からはフニフニとした官能的な感触が伝わり…俺の胸からは「掴まれている」という感覚が伝わってきていた。
(どういう事だ?俺は女になってしまったのか?)

 
「あがっ!!」
突然の痛みに呻き声をあげてしまった。
骨が変形した時は、まだ俺は「鬼」であった。頭の頂きから足の爪先まで、全身を苛む痛みさえ耐えられていた。
しかし、再び始まった内蔵の配置変えであろう。痛みは腹の中だけではあるが、既に「鬼」ではなくなった俺には耐えられるものではなくなっていた。

 

空は白み始めていた。
俺は松の茂みの中で意識を取り戻していた。
明るくなった中で、もう一度自らの姿を確認した。
俺はもう「鬼」ではなかった。しかし、単なる人間の姿への変身ではなかった。
変身後の姿は、人間の「女」となっていたのだ。
俺は股間に手を伸ばした。そこには「男」の証は存在せず、深い切れ込みがあった。
そこに指を這わし、内へと沈めてゆく。指は俺の胎の中にまで入っていった。
最後の内蔵の変化で、俺の腹の中には「女」の器官が出来上がっていったのだろう。

俺は長老から渡された水密箱の中を確認した。
そこには人間に変身した時のサイズに合わせた服が入っている筈であった。
俺はそれを手に取った。
それが女物の衣服であることはひと目で解る。
(つまり、長老は秘薬で変身した姿が「女」である事を知っていたという事か…)

しかし、今更長老に文句を言っても始まらないし、長老は海の向こうの「島」にいるのだ。
仕方なく、俺は女の服を着、折り畳んだ水密箱を肩に掛けて立ち上がった。

 

変身した事で背がかなり低くなっている。それも「女」という事で人間達の男よりも低いのは間違いない。
体力もほとんど無いに等しいのだろう。
これまで俺が相手してきたのは「勇者」を自称する輩であり、人間達の中でも腕っぷしの強い連中であったのだ。
この体では「何か」あった場合、これまでのように腕力で解決することなど端から無理であろう。
しかし、
(まあ、為るようなるだろう♪)
と楽観的になるしかなく、俺は浜から里の方に向かって歩きだしていた。

 

これまでも何度か陸に上がり、奴等の里に侵入した事もある。
とはいえ、その時は宵闇に紛れ、寝静まった里に侵入を試みただけである。
長老達大人からは「鬼」の姿は決して人間に見られてはならないと言われてきたからだ。
だが、今は女とはいえ鬼の姿ではない。
陽の照る下の街道を堂々と歩いていけるのだ。
夜目に見た景色には殆ど色が無かったが、昼間の陸は美しかった。
狭い島の中では広大に広がる田畑を見る事はできない。緑豊かに風に靡く様には感動を覚える。
遠くから、島では耳にしない鳥や虫の声が届いて来る。

しばらく行くと、前方から里の者が歩いてきた。
俺の姿を認めると、慌てたように駆け寄ってきた。
「娘さんよ。大事はなかったかね?ここいら辺は夜になると鬼がでる。食い殺されかねないぞ。」
「娘さん」と呼ばれ、それが「俺」の事であると認識するまでにしばらく時間が掛かった。
「な、何もなかったですけど…ここの鬼は人を食べるんですか?」
「何もなかったからといって、この先も独りで行かせる訳にもいくまい。腕っぷしの強い若い者を付けてやるから、一度里の方に寄りなさい。」
と、半ば強引に里に向かわされた。

道すがら、再び鬼について聞いてみると
「屈強な若者達が鬼退治に島に渡るが、一度として勝って帰って来た者はいない。そして、帰って来れぬ者も数知れぬ。中には鬼に食われて骨になって浜に打ち上げられてた者もいたんだな。」
と、そんな事が解った。
鬼が人を食わない事は鬼である俺自身が良く知っている。が、今は正体を明かすべきではないのだろう。俺は、
「それは恐ろしいですね。」
と彼等に迎合するような相槌をしておいた。
まあ、骨になって打ち上げられた輩は、途中で海に落ちて溺れ死んだ後に魚についばまれたという落ちなのであろう。

 
そのまま里に入り、明日までに付け人を選んでおくからと、その日は村長の家に泊まる事になった。
初めて「布団」に寝たが、なかなか気持ちが良かった。柔な人間にはこのような寝具が必要である事も理解できた。

人の気配で目が覚めた。
まだ日の出前ではあったが、既に里の人の一日は始まっていた。
俺も布団から抜け出すと「何か手伝う事はないか?」と訊いた。が、
「お客さんはゆっくりしてなさいな♪」
と部屋に押し戻された。

改めて部屋の中を確認すると、前面を布で被った鏡台があった。
布を捲ると鏡があった。
そこには見知らぬ女の顔が写っている…こ、これが「俺」か?
勿論、そこには「俺」の面影も「鬼」であった痕跡も残されていない。
愛くるしい顔は誰もが好感を寄せるであろう。
化粧はせずとも、肌は白く頬には赤み差し、熟れたような唇は紅色に染まっていた。

 

鬼の嫁取り(2)

朝飯の後、付け人の男とともに里を出た。
男は何も言わずに俺の脇を歩いていたが、男と女の体格差であろうか、しばらくすると俺の方が後ろになり、置いていかれそうになる。
早足で歩けば追い付けるだろうが、「鬼」とは比べ物にならない位体力がない筈である。
無理はできないと、俺は自分のペースを維持し続けた。
「そんな足だと、即に陽が暮れるぜ。」
幾度となく男は足を止めて俺を待つが、いい加減痺れを来したようだ。
「別に急ぎの旅でなし、陽が暮れればそこに野宿すれば良かろう?」
と俺が応えると、
「だからぁ、あんたは何処のお嬢様なんだ?この辺は鬼が出ると聞いただろう?野宿なんかできる訳ないだろっ!!」

 

次の里まではかなり距離があるらしい。
このまま進んでも夜までに辿り着くことはできないようだ。
男は街道を離れ、山に向かった。
「この先に狩猟の時に使う小屋がある。資材置き場で布団などないが、鬼から隠れるくらいはできる筈だ。」
鬼なら微かな臭いだけで跡を見つけられるので、隠れたうちにも入らないのだが、今は彼に従うしかないだろう。
なんとか陽のある内に小屋に辿り付いた。とはいえ、山影は陽が傾けば即に暗くなる。
小屋の中には灯りなどないので、まだ外の明かりが届くうちに寝る場所を確保するのが精一杯だった。
俺が奥の板の間に寝転ぶ。彼は戸口の前にゴザを敷いていた。

陽の上がる前から、彼は起き上がり、朝飯を作っていた。
小屋の外に小さなかまどがあり、鍋の中で何かをぐつぐつ煮ていた。
「この辺にはイモが生えているんだ。すり潰して団子にして食うと美味いんだが、そのまま煮て食うのもありなんだ。」
煮あがったイモを皿に載せ、俺に渡す。もうひとつは自分の皿に載せた。
彼のやるように、皮を剥き、ふーふーと息をかけて冷ました後、がぶりと噛みついた。
「あ、甘~い♪」
思わず俺が感動の声をあげると
「女子供には評判が良いんだ。」
と彼はニッと笑みを浮かべた。

 

山は降りたが、俺達は再び街道には戻らず、山裾の古道を進んでいた。
こちらの方が昨夜のような小屋が点在しているらしい。
次の里からは離れてしまうが、近道にもなっているという事だった。

同じような小屋に泊まり、イモの食事を採るのが数日の間繰り返された。
「明日は街道に戻る。古道を真っ直ぐ進めば良い。その先の橋を渡れば隣の縣だ。俺が付いてゆくのもここまでだ。」
暗がりの中、彼が言った。
「結局、鬼には襲われなかったな。ありがとう。」
「礼を言われるような事じゃねえよ。それより、お嬢ちゃんには鬼より気を付けなければならない奴を教えてやるよ。」
と彼は立ち上がり、小屋の奥にいる俺の方に来た。
覆い被さるようにして俺を覗き込んだ。
「女にとって、男は決して気を抜いて良い奴じゃねえ。いつ鬼に変わってもおかしくはないんだ。」
俺は鬼から人間に変身しているのだ、人間が鬼に変わるのもありなのだろうか?
そんな事を考えていると、彼は片手で俺の両腕の動きを封じた。勿論、女の力では外す事はできない。
そうこうしているうちに、彼は残った手で器用に俺の服を脱がしてしまった。
「今夜が最後だ。こんな美味しそうな餌をずっとオアズケくらっていたんだ。」
彼の手が俺の股間を撫であげる。
「まだ処女なんだろうが構いはしない。犯らせてもらうぜ♪」
今度は指先に唾液を絡ませ、俺の股間になすり付けた。

何が起ころうとしているのか?
頭では理解できていた。が、それが今、自分に対して為されようとしている実感はなかった。

男の指が俺の股間に侵入する。
唾液が付けられたとはいえ「濡れている」とは言い難い。
が、男は俺に覆い被さるようにのし掛かってきた。
股間に彼のペニスが触れ、一気に押し入ってきた。
強烈な痛みが全身を走り抜ける。
何が起こっているのか?頭の中がパニックで訳が解らない。
肉体は痛みに支配され、俺の意思の届かないところにある。
俺は自分が叫び声をあげていたかさえわからなかった。
男が腰を突き続ける。
痛みだけが頭の中で跳び跳ねていた。

男は達したのだろうか、呻きを上げ動きを止めていた。
膣の中が精液に満たされている?
接合部から太股に溢れた液体が滴ってゆく。

男は再び勢いを取り戻し動き始めた。
幾度となく俺の膣に精液が放たれる。
いつの間にか、俺は意識を失っていた。

鬼の嫁取り(3)

目覚めた時には彼の姿はなかった。
俺は小屋を出ると、近くを流れる渓流の水で股間の汚れを落とした。

彼が言った通り、古道は街道に合流し、大きな橋がその先にあった。
縣境を越えると、その先に街があった。
一歩づつ都に近づいているのだろう。
水密箱にはお金が用意されていて、街では宿に泊まることができた。

 
食堂で晩飯を食べていると、男が近付いてきた。
「嬢ちゃん、独りかい?」
俺は「嬢ちゃん」と呼ばれる事にも大分馴れてきていた。
「そうだが、何か?」
男は俺の了解も得ずに隣に座り込んだ。
「少し小遣いを増やしたいと思わないか?2~3時間で良いんだ。」
確かに、野山と違い街では寝泊まり、飲食等何かにつけて金が掛かる。水密箱に金があると言っても、使えば必ず減ってゆくものだ。
少しでも足しになるものがあれば試してみる価値はあろう。
「で、何をすれば良いんだ?」
「な~に、簡単な事だよ。何かと気苦労の絶えないお方の話し相手になってもらえればよい。しかし、ただの愚痴であってもその内容は口外無用だ。あんたは口が硬そうなんで声を掛けてみたんだ。」
「単なる話し相手ね。相手はそれなりの重鎮という事か?」
「勿論、誰の相手をしたかも口外してはならない。できるか?」
「私が了承したとして、あんたの方はどうなんだ?私は明日にもこの街を出てゆく。その先で口外したとしても追っては来れまい?」
「内容にもよるな。だが、我々のネットワークを甘く見ない方がよい。気が付いた時には嬢ちゃんは死体さえ消えて無くなっている。」
男は俺の顔色を窺った。そして、
「報酬は嬢ちゃんの期待を裏切らない筈だ。」
と続けた。
「良かろう。」
俺は立ち上がり、男に付いて店を後にした。

外には人力車が用意されていた。
「悪いな。これも決まりなんでな。」
と車に乗ると目隠しをされた。
荷車で運ばれるよりはましであるが、初めての人力車である、車上からの景色も眺めてみたかったが、仕方のない事と諦めるしかない。
一行は街中を右に左に曲がりながら進んでゆく。臭いや雑踏の雰囲気から、同じ所を何度か通ったようだが、俺の思い違いかも知れない。
いずれにしろ、行き先を知られないように最短ルートを通っていない事は確かであろう。

車輪が踏み固められた路ではなく、砂利を敷き詰めたような場所に入っていった。
既に数人の係員が待ち構えていた。
「こちらへ。」
と女性の声もする。まだ目隠しは外させてもらえない。建物の外観はおろか、建屋内も必要最小限しか見せてもらえないのだろう。
「こちらでお召し替えを。」
と目隠しをされたまま、女の手で服を脱がされる。
下着も全て替えさせられたが、新たな服は締め付けはきついが、どれも肌触りが良いものばかりである。
締め付けといえば、特に胴廻りは念入りに締め付けられ、元の俺の太股よりも細くされてしまったようだ。
そのどれもが背中側など、自分の手の届かない場所で結ばれているため、この服は独りで脱ぎ着する事が不可能であることは明らかだった。

ようやく話し相手の待つ部屋に案内された。
「目隠しは外して良いよ。」
と男の声がした。
俺は勝手に相手が年寄りだと思っていたのだが、そこに居たのは壮年の紳士だった。
部屋には他には誰もいない。
「こっちに来て座らないか?」
と男は自分の座っている長椅子の隣を指し示した。
俺に与えられた仕事は、この男の話し相手になる事だ。その為には彼の脇に座る必要があるだろう。
俺は踵の高い靴、ボリュームのあるスカートにバランスを崩されないようにソファに向かった。
「ぁっ!」
最後の最後にバランスを崩してしまう。
男に倒れ掛かるようにしてソファに落ちてしまった。
男は器用に俺を受け止め…俺は彼の腕に抱かれる形になってしまった。
「すみません。こんな服、着慣れていないもので…」
俺は慌てて離れようとしたが、しっかりと肩を抱かれて身動きが取れない。
「このままの方が僕もリラックスできるから、力を抜きなさい。」
今は彼に従うしかないのだろう。俺はおとなしく彼にもたれ掛かった。

「もし君が暗殺者なら絶好のチャンスだよね♪」
彼はそんな事を言った。
「暗殺って、あんたそんな重要人物なのか?」
「まあ、僕を殺したい奴は両手では数えられないな。と言うより、君は本当に僕の顔を知らないのかい?」
俺はもう一度、男の顔を見た。
「済まん。ずっと島で暮らしていたんで、陸の事はほとんど知らないんだ。」
「ほう。奴等も良い娘を選んできたな♪君は旅の途中なんだよな?」
「ああ、明日には都に向かってこの街を出て行くさ。」
「…明日ねぇ?君は素直に帰してもらえると思っているのかな♪」
「ここでは2~3時間話し相手になっていれば良いと聞いている。」
「そうかぁ。僕は大変君が気に入ってしまったよ。偶然にも僕も明日、都に向かう予定なんだ。良かったら一緒に行かないか?」
「良いのか?」
「勿論だとも。だから2~3時間と言わずに今夜はここに泊まっていけば良い。」
「どこに泊まろうと私は構わないが、宿には私の荷物を置いてきている。」
「問題ないよ。手の者に取りに行かせるから、君はこのまま僕といてくれないか?」

「だれか。」と彼が声を上げると即に黒服の男が現れた。
「彼女の荷物を宿から回収してきてくれないか?」
彼がそう言うと「御意」と言って黒服の男は姿を消した。
「これで心配はないね。ゆっくりと楽しもう♪」
と彼が俺の頭を撫でた。
俺はうっとりとその感触に浸っている。次第に思考力が無くなってゆくのを感じていた。

いつの間にか、体を締め付けていた紐が解かれていた。
「君はなかなか良いものを持っているみたいだね。」
「良いもの?」
「女の子は素直が一番良いんだよ♪」
「そうなんですか?」
(姿は女の子でも、俺は鬼の男なんだがな…)
そうは思っても今は言う訳にはいかない。
(こんな俺は「素直」ではないだろう?)

彼の手が俺の乳房を持ち上げていた。
柔らかく揉まれる事でリラックスしてゆく。
俺は彼の行為に無条件に身を委ねていた。
「んぁっ…」
快感に吐息が漏れる。
「感じ易いんだね♪」
俺は彼の言葉に答えられなかった。
快感に全身が疼いてゆく。口を開けば、喘ぎ声しか出て来なかった。

 
いつの間にか服が脱がされていた。
俺はソファに横たえられ、折り重なるようにして彼が覆い被さってきていた。
唇が合わされ、彼の舌が俺の口の中で俺の舌を追い回す。
楽器を奏でるように、彼の指が俺の肌の上を乱舞する。
俺は止めどない快感に翻弄されていた。

 
「もう良いかな?」
彼は俺の股間の濡れ具合を確かめた。
いつの間にか俺の股間は俺が滴らせた愛液でぬるぬるになっていた。
俺は無意識のうちに脚を開いていた。
彼が近づき、ペニスの先端が俺の股間に触れた。
ペニスはそのまま俺の膣に侵入してきた。充分に濡れていた為か痛みは殆どなかった。
「嗚呼。君のナカは凄く気持ちが良いよ♪」
彼はそう言ったが、俺もまた「女の快感」に目覚め始めていた。

 
「んあぁぁん♪」
オンナの淫声が俺の口から溢れてゆく。
俺は彼という演奏者に奏でられる「楽器」であった。
良いように操られ、彼の望む淫声を流してゆく。
繋がれたまま揺さぶられ、肌の上を指が撫で上げてゆく。俺は快感とともに唱っていた…

 

鬼の嫁取り(4)

気が付くと俺はベッドの中に寝ていた。
信じられないくらいフカフカの布団に包まれていた。
「お目覚めですか?」
ドアの外に控えていて、俺が起きる気配を窺っていたのだろうか、女が近付いてきた。
その声から、昨夜俺にドレスを着せた女であるとわかった。
「お召し替えを。」
と俺を立たせた。

彼と結ばれていた時は全裸だった筈だが、今は薄絹のゆったりした服を着せられていた。
女はそれを脱がせ、再び俺を裸にした。
彼女には昨夜も裸を見られているし、多分、寝ている時の服も彼女が着せてくれたのだと思う。
彼女が用意してくれた着替えは、勿論昨日までずっと着ていた旅装束ではない。
昨夜のようなドレスではあったが、締め付けはキツくはなく、動き易くなっていた。

朝食を終えると都に向けての移動が始まった。
彼一人が行くものと思っていたが、一緒に運ぶ荷物が10台近い荷車に載せられるので、そのお守りをする人逹も一緒に行動する事になる。

「こっちだ。」
と彼の声がした。ワゴンの入り口で手を振っている。
動き易くなったとはいえ、ドレスのまま都までは歩いていけないと思っていたところだった。
ワゴンに乗せてもらえればドレスの件は問題なくなる。
俺は彼に腕を引かれてワゴンに乗り込んだ。

大きめのワゴンは三人が並んで座っても余裕のある広さがあった。内装も手が込んでおり、隅には簡単な調理台も設えてあった。
調理台があれば、食器も用意されている。壁面には緩衝材に挟まれて皿やグラスが納められていた。
「なんならワインでも呑むかい?」
と彼がボトルを取り出そうとしたが、
「昼間からそれはないだろう?それに、外ではあんなに働いている人逹がいるぞ。」
「彼らには充分な報酬を払っている。僕逹が気に掛ける必要はないんだよ♪」
「それでも…まだ動きだしもしないうちからは…」
多分、都まで彼と二人だけでこのワゴンに乗り続けなければならないのだろう。
俺は昨夜の恥態を思い出していた。彼と一緒にいると、調子が狂う。俺が男である事を忘れ果て、無垢な女の子になりきってしまうようだ。
こんな状態でアルコールを摂取したら「俺」の意識がいつまで保てるだろうか?

「そうだな。都までは時間が掛かる。慌てる事はない。」
とワゴンの席にどっしりと腰を落ち着けた。
彼が御者に合図を送ると、彼らは声を掛け合い隊列が動き始めた。
昨夜の人力車もであるが、俺はこれまでこのような乗り物に乗った事がない。
(鬼であればその体力にモノを言わせ、二本の足だけでどこへでも行ったものだ)

窓の外の景色は、これまで見た事のないものであった。
まず、視点が高い。普通に歩くより遠くが見える。特に人間に…女になった事で、鬼の時よりも低い視点でしか見れていなかったので、爽快な気分になった。
更に、車輪で移動するため(多少は路面の起伏の影響はあるが)景色が揺れる事がない。すーっと後方に流れてゆくのだ。

そしてスピードだ。
ワゴンは馬に牽かせているので、歩くよりかなり早い速度で移動していた。
「それでも都までは三日は掛かる。夜も寝ずに走り続ければ別だがな♪」
とは彼の談だ。

「何の為にあの街に来ていたんだ?」
俺が聞くと
「視察ってやつかな?僕にはこの国の安全を守る責務がある。この近くに脅威となるものがあると聞いて確認に来たんだ。」
「脅威?」
「ああ。あの近郊の村々が人外のものに教われた…との話があったんだ。」
「人外のもの?」
「そうだ。鬼が出たらしい。」
俺は俺自身の事を言われたかと思い、どきりとした。
「この辺りには昔から鬼の伝承がある。が伝承であって、実際に鬼を見た者はいない。今回も鬼を騙ったちんけな盗賊の仕業だとわかった。国の脅威とはなり得ないね。」
「それで、この仕事は終わりなのか?」
「ああ、都に戻って報告して終わりだ。だから、都に着くまでは好き勝手できるんだ。」
「好き勝手って…」
「本当に何をしてても大丈夫だ。勿論、今から酒を呑んでても、昨夜の続きをしてても♪」
「昨夜の続き…って?!」
それが、俺が女として彼と繋がり、淫声をあげ続けた…アレである事は間違いない。
俺は恥ずかしさに顔が紅潮するのを感じた。
「どうやら、君とは相性が良いらしい。流石にここでは、いつ覗かれてもおかしくはないな。でも、宿に着いた後なら良いだろう?」
彼の言葉に俺は顔を赤らめたまま、首を縦に振っていた。
そして、それが何を意味するかが後追いで俺の脳に達し、俺は更に顔を上げられなくなってしまった。

 

「ところで、君の出は何処なんだい?確か島とか言っていたよな。」
「ああ。ちいさな島だ。あまり外との交流もない…たまに海賊のような奴等に襲われるがな。それ以外は至って平和な島だよ。」
「ほう♪海賊が出るのか?山賊に海賊…鬼のような奴等が多いな。国の存亡に関わる程ではないが、民の生活には支障となろう。早いうちに手を打てるよう心に留めておこう♪」
流石に俺逹が「鬼」そのものであるとは言えなかった。
「それで?君が都に行く理由は何なんだい?差し支えなければ教えてもらえないか?」
「陸に行けば、島が海賊のような奴等に襲われる原因がわかるだろう と長老に言われたんだ。」
「ほう♪原因ね?だから長老さんは都に行けと?」
「長老は島の外を見て来いと言っただけだ。都に行くと決めたのは自分だ。都に行けば近くの里だけよりも色々と見聞きできるだろうと…」
「だが、既に自分の知らなかった事の多さに狼狽えている。といったところかな♪」
「確かに色々知る事ができた。が、このまま島に戻ろうとは思わない。とにかく都へは行ってみようと思っている。」
「そうか。なら僕も協力してあげよう。僕と一緒なら、色々な事がわかると思うよ。」
確かに彼は博識であり、ワゴンの中では道々この国の歴史について教えてくれた。
「表面だけ捉えてはいけないよ。そこに至った経緯、背景を知らないと正しくは理解できないからね。」
彼は口癖のようにそう繰り返していた。

 

鬼の嫁取り(5)

陽が暮れて里に入ると、先行していた従者が本日の宿に一行を案内してゆく。
ワゴンが停まり、俺が降りようとすると
「ちょっと待って♪」
と彼に引き止められた。彼の方が先に降りるのか?と彼を先に通そうとした直後

ふわっ!!

と、俺の足の下から床が遠ざかった。
俺は彼に抱き抱えられていたのだ。
彼はそのままワゴンを飛び降りていた。
「恥ずかしいだろ。降ろしてくれ。」
目の前にあった彼の耳にそう告げると
「僕と一緒にいるのであれば、こういう事にも慣れてもらわないとな♪」
つまり、こういう行為が嫌なら彼の元を離れるしかないという事か?
否。彼からはもっといろいろな事が聞き出せる筈だ。
俺はこれからも彼の傍に居たい…でも、それは本当に見聞を広めたいだけなのか?

こうやって彼に抱かれていると、俺は幸せな気持ちになる。
彼と体を触れ合わせていられるだけでも良い…
(何で俺はそんな事を思っているのだ?!)

彼は俺を抱えたまま宿の中を進み、部屋に入るとベッドの上に俺を下ろした。
「今夜も良いよね♪」
と言われ、俺は反射的に首を縦に振っていた。
それが何の事であるかを理解するまでには、しばらく時間が掛かっていた。
彼が同意を求めたのは「今夜も」という事から、昨夜と同じ事であろう。
俺の同意を求めると言う事は…

(俺が女として再び彼に抱かれるという事か?)

それ以外に俺の同意を求めるようなものは見当たらなかった。
俺はそれを意識することなく同意してしまっていた。
…いや、意識していなかったという事はない。俺の内では多少なりとも、それを期待していたふしがある。
男同士…という意識はまったくなかった。俺は女として彼に抱かれた事を嬉しく思っていたのだ。
(また、あの幸福感を味わうことができるのだ♪)
その期待に、自然と俺の股間が湿り気を帯びてきていた。

今の俺は「女」なのだ。
男に抱かれて悦んでいるのも自然なことなのだ。
彼にもっと愛してもらう為にはなにをしても咎められることはないのだ…

「今から…」
俺は何を言おうとしている?
「今からでも良いぞ♪」
俺は憂いた瞳で彼を見上げていた。
「良いのか?」
と近づいた彼の腰に俺は腕を回していた。
ズボンのチャックを開ける。
中から彼のペニスを引き出し、その先端を舌で舐めた。
途端に硬さと大きさを増す。
愛しさにチュパチュパと音をたてて吸い付いていると
「っああ…。良いのかい?」と彼。
俺が頷くと、ドクリと熱いモノが昇ってきて、俺の口の中を満たした。
俺は一滴も残さないように、ごくりと飲み込むと、舌で残りを綺麗に拭い取った。
「今度は僕がしてあげるよ♪」
と彼は僕をベッドに押し倒すと、スカートの中に頭を突っ込んだ。
下着が剥ぎ取られると、彼の舌が俺の「女」の秘所を嘗めあげた。
鼻先と舌とで俺の股間に刺激を与えてゆく。挿れられた訳ではないのに、快感に意識が飛んでしまう…

気が付くと、既に俺は全裸にされていた。
彼の優しい愛撫が続いている。
快感に喘ぎ声が漏れる。
「じゃあ、次に行って良いね♪」
彼は俺が気付くのを待ってくれていたようだ。
彼が体を重ね、俺の内に侵入してくる。
「ああ…」
自分が内側から物理的にも精神的にも彼に満たされ、俺は幸福感に媚声を漏らす。
再び快感の大波に揺さぶられる。
俺は歓喜の艶声をあげ、全てを彼に委ねる。
俺の「男」としての意識が小さな泡に砕かれ、弾け、消えていった…

 

 

一行は都に到着した。
ワゴンはそのまま、都の中心にある壮麗な建物の中に入っていった。
巨大な扉の前に停まる。大勢の出迎えが左右に整然と並んでいた。
「今日は少し歩いてもらうことになるから♪」
と彼が言う。
ワゴンのドアが開かれる。建物の巨大な扉も開かれ、そこに向かって絨毯が敷かれていた。
俺は彼に抱えられワゴンを降りると、絨毯の端に彼と並んで立たされた。
左右に並ぶ人々は深く頭を下げている。
彼が合図を送ると、一斉に頭が上がり、全ての視線が俺達に注がれた。
「さあ、行くよ♪」
彼に手を引かれ、俺は歩き始めた。
数えきれない視線に追われる中、建物の中に入る。
背後で扉が閉まり、視線の数は一気に減ったが「この女、何者?」と俺を推何する視線は相変わらずだった。

彼に手を引かれたまま、建物の奥に向かう。
いくら俺でも、この建物が王宮である事は理解していた。
入り口に近い部分は政務を行う場所や外部の者との交渉場所、多くの人々と一堂に会せるホールなどがあるのだろう。
そして、奥まったドアを過ぎると雰囲気が一変する。人が生活するのに心地好い雰囲気がする。王家の居室に違いない。
この場所に入れるという事は、彼もまた王族の一員なのであろうか?

一際立派なドアの前で止まった。
「私です。ただ今戻りました。」
と部屋の中に声を掛けた。
「入りなさい。」
重厚な声が届き、彼がドアを開いた。
部屋の中には恰幅の良い初老の紳士が書類の積まれた大きな机に着いていた。
多分、彼がこの国の「王」なのだろう。
「父上。辺境の視察から戻りました。…」
(ち…父上?)
つまり、彼は王子ということか?俺は知らないとはいえ、王族の最たる「王子様」に抱かれていたという事か?
独り狼狽している俺を余所に、話しは進んでいた。
「…詳しくは今後の計画と併せて報告しますが、やはり治安の乱れが進んでいます。場合によっては彼等の協力を得る必要があるやも知れません。」
「彼等…とは鬼逹の事か?」
「はい。」
(な、何故そこで「鬼」が出て来る?)
もう、俺の頭の中はぐちゃぐちゃだ。
「我々だけで個々に賊を潰すには限界があると考えています。」
「彼等の力を借りるとして、その対価はどうする?」
「この所頻繁に勇者と称する賊が島に向かっているようです。治安が回復すればそのような賊も抑え込めます。彼等も平穏に暮らせるようになるでしょう。」
と彼は意味ありげに俺を見た。

「わかった。その話しは追々聞くとしよう。それよりも、その娘さんは?」
「僕の妻として迎えいれたいと考えています。」
「ほう。お前の眼鏡にかなったのか♪しかし、家柄等で良い顔をしない者逹もおる筈じゃぞ。」
「父上は鬼の嫁取りの話しをご存じでしょうか?いくら優秀な血筋でもその中で閉じていてはいずれ滅びる。鬼は成人すると、外に出て嫁となる娘を探してくることで滅びを回避しているという。」
「お前に覚悟があればそれで良い。わしは何も言わん。」
「ありがとうございます。それでは。」
と、再び俺の手を引き王の居室を辞した。

 

「な、何がどうなっているんだ?」
俺は頭の中を整理するのを放棄したくなっていた。
「僕は鬼逹との交渉に行く。そして、鬼逹と供に辺境の治安を回復する。そうすれば、君の島も平穏になるだろう?」
「それは解る。が、鬼は実在しないのではないか?…いや、それよりも…妻…にするって?」
「いやかい?君は聡明だ。僕の伴侶として申し分ない。なによりナニの相性がこの上ない。」
ふうっと耳元に息を吹き掛けられ、思わず感じてしまった。
「んぁっ♪」と吐息を漏らし、脚から力が抜けてゆく。
俺は彼の逞しい腕に支えられ、ようやく立っていられた。
確かに、俺はもう彼なしではいられない女になってしまっていた。
しかし、彼は一国の王子でありその伴侶であれば「后」として国民の前に立つ事になるにちがいない。
「鬼」であり、本来「男」である俺がそのような立場に立って良い筈がない!!

「あまり深刻に考えなくても良いよ。国政は兄逹が問題なく仕切ってくれる。僕等は辺境に屋敷を建て、治安の維持に務めていれば良いんだ♪」
と俺にキスをする。そのキスで俺は身も心も蕩けてしまう。
再び頭の中が混沌とする。
「君はいつでも僕の傍に居てくれれば良いんだ♪」
再度のキスで俺は完全に考えることを放棄してしまった。

 

鬼の嫁取り(6)

俺達は再びワゴンの中にいた。
今度は賊の討伐隊を率いての行軍だった。行き先は辺境地帯…先ずは「鬼」逹との交渉に当たる。
「本当に鬼がいると信じているのか?」
と俺が聞くと
「彼等が伝承されている鬼の姿をしているかは問題ではないんだ。彼等にそのような伝承を生ませるだけの力がある事が重要なんだ。」
「姿は関係ない?」
「たとえば、君の住む島だ。度重なる海賊の襲来にも耐えて現在も存在を続けている。それはかなり例外的な事なんだ。だから、僕は最初に君の島を訪ねたいと思っている。」
そして彼はにっこりと笑い、
「勿論、君を嫁に迎えるにあたり、君の親御さん逹に正式にご挨拶する事の方が大事だけどね♪」

(親に…って…)
多分、俺のこの姿を知っているのは長老だけであろう。
はたして女の姿の俺を両親は受け入れてくれるのだろうか?
島に戻れば、俺は元の姿に戻れる。
が、俺は女のまま彼と伴にいたいと思っている。
(そんな事が許されるのだろうか…)

 

島の近くに到達した。
彼は仮設の基地を作らせ、軍隊をそこに落ち着かせた。
近隣の賊の情勢を確認するよう指示を出すと、彼は俺と数人の部下を率いて島に向かった。
港のある村で船を調達する。彼は即に乗り込み出港しようとした。
「待って。」
俺は彼等を止めた。
「今出ては潮目が良くない。出るなら明日の朝が良い。」
勿論、彼は俺の助言を全面的に受け入れた。
俺達はワゴンの中で一夜を明かす事にした。

「起きて…起きてください。」
俺は彼の耳元に囁いた。
「どうした?」
彼は即座に目を醒ました。
時刻を確認する。
日の出まではまだ、かなりの時間がある。
「船を出します。」
と彼に告げる。
「船長は?」と聞くが、彼は即に理解したようだ。
「あまり知られたくないのだな?」
俺はゆっくりと頷いた。
彼は配下の者を起こし、音をたてないようにして船に乗り込んだ。
舵は俺が握った。
彼を含め、男逹が櫂を漕ぐ。静かに…力強く。
港を出ると帆を張り推力を得る。
空が白み始めた。
俺は目を凝らし、陸の地形を確認した。
舵を切り、慎重に潮目に誘導してゆく。
「鬼」の体の時は難なくこなせたものが、ひとつひとつが苦労になる。
彼が傍らで補助してくれなければ、俺もまた海に沈んでいたかも知れない。

「あの島かい?」
岩礁を抜け、大きめの無人島を回り込むと、俺達の島が目の前に現れた。
「ほーっ、ほーっ!!」
岬に向かって声をあげた。本来の俺の声ではないが判ってくれると信じるしかない。
「符丁だな?岬にいる見張りにか?」
「ああ。これで不意打ちされる事はないと思う。」
実際には岬だけでなく、水中にいる連中への合図でもある。
俺が仲間だと認められなければ、知らぬうちに船底に大穴が開けられているだろう。

早速に連絡が届いたのであろう。港に数名の人影があった。
俺は彼等を知らなかった。彼等は「鬼」の姿をしていない。
俺を女に変えた秘薬を使ったのだと合点する。
船が桟橋につながれ、俺達は島に降り立った。
「よう戻ってきたな。知りたい事は解ったかな?」
好好爺した姿は多分長老だろう。
「いえ、まだまだ充分ではありません。それに、戻ってきたというよりは長老に彼を会わせたかったのだ。」
「ほう?♪」と長老。そして彼を見て
「話は館で良いかな?」
「はい。」と彼…

 

 
一同は長老の館にあった。
彼は自分の身分を明かし、長老に二つの願い事を告げた。
それは俺に言っていた事…賊の討伐への協力依頼と…俺を妻に迎えたい…との事だ。

「お前はどう思っているんだ?」
長老の問いかけは当然後者に関するものであるが…
「我々が彼等に協力するにあたっては、我々が協力している事を他の誰にも知られない事が大前提でしょう?」
「彼はお前の正体を知っているのか?」
「彼は我々の正体を正確に推測できていると思います。秘薬の存在を知らないので未だ確信に至っていませんが。」
「先ずはそっちからか?」
長老は諦めたように俺から視線を外し、彼に向かった。
「我々は正体を知られるべきではない。それは理解して欲しい。」
長老の視線は彼の瞳を貫いた。彼はそれを受け止め大きく頷いた。
「良いかな?」と長老は一同の同意を確認すると変身を解いた。
目の前に現れた「鬼」の姿にも彼は動じる事はなかった。
「ご協力感謝いたします。」
「我々は表に出る事はない。この娘をつなぎとしてあんたに預ける。それで良いな?」
「ありがとうございます。」
「お前も良いのだな?これから先は元に戻る事はできないぞ。」
と今度は俺を見据えた。
「はい。後悔はしません。」
俺はそう答えていた。

 

 

俺達は陸に戻った。
そして本格的に賊の討伐が始まった。
鬼逹は賊の拠点が判明すると、その退路を絶つように様々な細工を施す。彼の討伐隊が正面から突入する。
正規軍が相手では、賊にはもう何もする事ができない。
鬼の存在は完全に秘匿されているため、彼の成果のみが華々しく報じられる事になる。

一通りの成果が出た所で長老から彼に提案が出された。
それは島の近くの陸に新たな港町を作らないかと言うものだった。
彼の成果が上がるにつれ、討伐隊の規模も膨らんできた。
人が集まればそこに商機を見る商人が寄ってくる。
隊の基地もいつまでも「仮設」のままではいられなくなっていた。
彼は長老の提案に応じた。

 

鬼の嫁取り(7)

新たな街が造られ始められた頃、俺は彼と伴に都に呼ばれていた。
これまでも何度か都に行く話もあったが、俺は島との連絡を絶やす訳にはいかないため、彼だけが都に赴いていた。
今では賊の討伐に島の手を借りることはほとんどなくなっていた。長老からもたまには都に行くのも良いと言われ、今回の都行きとなった。

俺が行かなければ、彼は数人の部下との騎行で済むのだが、今回はまたワゴンを仕立てての移動となる。
だが。今回は更に規模が大きくなっているようだ。
「長老からいただいた献上品などもあるからね♪」
それだけで納得できるようなものではなかったが、久しぶりに賊の討伐から離れて彼との旅ができるということで、俺は深く追求することはしなかった。

ワゴンの中では会話も弾み、夜は宿のベッドで激しく愛し合った。
彼の愛撫に俺は淫声をあげ続ける。彼に貫かれ、その先端から迸る精を膣と子宮に受け止める。
俺は幸せに満たされ、幾度となく意識を飛ばしていた。

 

久々のワゴンでの移動の所為か、数日が過ぎたころ不意に吐き気をもよおした。
彼は宿場につくなり、医者を手配した。
医者はいくつかの質問をした後、にこりと笑みを浮かべた。
「これは悪阻だな♪」
「悪阻?」
「そうだ。君は妊娠している。おめでとう♪」
俺はしばらく医者の言った意味がわからなかった。
(俺は男で、秘薬で女の姿になっているだけだ!!)
そう意識する裏側で
(俺と彼との子が俺の腹の中にいるのか?俺は本当に彼の妻になれる♪)
と喜んでいる俺がいた。

医者の診断結果は即にも彼に報じられていた。
「よくやった。もう誰にも文句は言わせないぞ♪」
彼は子供のようにはしゃぎまわっていた。

一行の進む速度は俺の安全を確保するため、いっそうゆっくりとなった。
更に、先行して触れまわる者がいるらしく、あちこちからお祝いの品々が集まってきた。

ようやく都に辿りつくと、王への挨拶もそこそこに別室に連れていかれた。
そこには純白の清楚で可憐なドレスが用意されていた。
「あなたのためのウェディングドレスですよ。明後日にはこれを着て王子様との結婚式ね♪」

俺がウェディングドレスを着ることになるなどと、誰が想像できたであろう。
しかし、俺はこれを着て彼とともに父王から祝福を受けていた。
宮殿には知らせを受けた近隣の有力者が集まり、俺達の結婚式を見守っていた。
都は市民がお祝いムードで浮かれている。
楽隊が華麗な楽曲を奏で、尽きることなく花火が宙を舞っていた。

 

 

俺が次に都を出たのはそれから一年近くが経ってからだった。
俺は可愛い女の子を産んでいた。
この子と伴に旅ができるまでと足止めされていたのだ。

ワゴンが新しくできた港街に近づいてきた。
一際高い尖塔を持つ建物が目を引いた。
「あれが僕逹が暮らす館だよ。」
俺は娘を抱き上げると、ワゴンの窓越しに彼が指し示す館を見せた。
彼女は嬉しそうにキャッキャとはしゃいでいた。

俺は彼を見つめた。
「これが僕達の街だ。僕達のね♪」
彼は優しく俺にキスをした…

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