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2014年12月21日 (日)

天狗の杜

夕暮れの街はクリスマス色に埋っていた。
彼女どころか男友達もいない俺は、クリスマスの喧騒から逃れるようにアパートの自分の部屋に急いでいた。
 
商店街を抜け、近道となる人気のない雑木林に囲まれた神社の境内を抜けてゆくと…
(え~ん…)
と子供の泣く声がした。
真夏には肝試しにも使われる鬱蒼とした茂みに囲まれた小径である。
既に辺りは暗く近所の子供なら近づく事もない場所である。
「え~ん」
歩みを進めると泣き声は近づいてくる。
そして、杉の巨木の影にその女の子は佇んでいた。
「どうした?迷子になったのか?」
多分、こんな時間にこの道を通るのは俺くらいのものだろう。もしかすると明日まで誰も来ない可能性もある。
「どうした?」
俺は女の子の頭に掌を乗せた。
女の子は泣き声を止め、俺を見上げた。
「えっ!?」
驚いたような声を上げる。
「行っちゃダメ…」
と女の子は小さく呟いた。
この娘を交番に届けるにしろ、見捨ててアパートに帰るにしろ、俺も他に行かずにここに留まっている訳にもいかない。
いずれにしろ、女の子を見捨てる訳にはいかない。この娘を連れ、もう一度神社を通って国道脇の交番に向かうのが最良の選択であろう。
(敷地は広いくせに、この神社は昔から無人なのだ!!)
「とにかく、交番に行こうね?」
と女の子の手を引こうとすると、
「そっちにいっちゃダメなの。絶対にっ!!」
「迷子なんだろう?こういう時は大人の言う事を聞くもんだよ。」
と半ば強引に彼女を引っ張った。
「ダメだって言ったんだからね…」
そう言った後、彼女はおとなしく俺についてきてくれた。

 
神社の社の前を通り過ぎようとした時
「待て。」
と頭上から声がした。
上を向くと
「うわっ!!」
俺は思わず叫んでいた。
巨大な天狗の顔がそこにあったからだ。
『こんな時間に女の子を連れ廻すとは不届き。神罰をつかわす。』
と天狗が言った。
「あたしはちゃんと忠告したんだからね。」
と女の子が言う。
俺は目の前が真っ暗になり、意識を失っていた…

 

 

「え~ん」
女の子が泣いていた。
(どこで?)
さっきまで手を引いていた娘が、また泣き始めたのか?
いや、今、俺の近くには誰もいない。それに、その声はもっと近い?

泣いていたのは「俺」だった。

杉の巨木の脇で俺はさっきの女の子がしていたように泣いていた。
否!!今の俺は、その女の子そのものだった。
視点が低い。足元の地面までの距離が近くなっていた。
足には女の子の靴とフリルの付いた靴下。
ズボンは穿いていない。スカートの下はショーツが穿かされているのだろう。
俺の意思とは無関係に、俺は女の子の声で泣かされていた。

「どうした?迷子になったのか?」
不意に男の声がした。俺は男が近付いて来るのに気付かなかった。
「どうした?」
と男の掌がが俺の頭に乗せられた。俺は男を見上げた。
「えっ!?」
思わず声を上げた。その男は「俺」だった。
「行っちゃダメ…」
俺は強制的にそう言わされていた。

男はしばらく思案した後、
「とにかく、交番に行こうね?」
と言って俺の手を引いて行こうとする。
彼は俺がした通りに行動している。
そして、女の子の忠告を無視した俺は天狗に神罰を受けた。
「そっちにいっちゃダメなの。絶対にっ!!」
俺は訴えるように男の目を見た。
「迷子じゃないのか?」
そう言って宙を見ていた。
男は俺と違い、迷っている…そして
「俺のアパートに行くか?」
と言った。
俺は「うん♪」と首を縦に振っていた。

俺は俺のアパートに戻ってきた。
が、子供の体のため背が低くいつもと視点が違う所為か、自分の部屋に帰ってきたという気がしない。
「寒かったろう?風呂、沸いているから入ってきなよ♪」
俺は彼の提案に従い風呂場に向かった。
脱衣所にあった鏡に「俺」が写っていた。その娘は木の下で泣いていた女の子に間違いなかった。

俺は鏡の前で服を脱いでいった。
ショーツ一枚だけの姿が鏡に写っている。
胸は平らなようでも男の子とは違う起伏がある。
大人になれば、それなりに膨らんでくるに違いない。
卑しいオジサンの視点で眺めていたが、その将来の姿は未来の俺自身であることを思い出す。
(元に戻れなければ、俺は一生この娘として生きなければならないのだ!!)
つまり、形の良い膨らみは俺自身の胸に形作られるのだ。
そのふくよかな胸を揉みあげる男の手は、俺自身の手ではないのだ。
俺が「男」に抱かれ、オンナの艶声をあげ淫らに悶えるのか?

…ぢっっ…
股間に違和感があった。
そこの湿度が異様に高くなっている。
(まさか?ガキの体の癖に俺の妄想で股間を濡らしているのか?)
俺はショーツを脱ぎ去った。
当然とはいえ、股間には男の証たるペニスは存在せず、そこには深い溝が刻まれていた。
割れ目に指を這わせ、中指をその中に沈めてゆく。
中指は湿り気を纏い、更に奥まで…
「嫌っ!!」
強烈な痛みに俺は凍りついてしまった。
指が敏感な箇所に触れてしまったのだ。
(クリトリスだったのか?)
未開発の肉体は、その刺激は快感に至らないようだ。

「大丈夫か?」
とドアの外から彼が声を掛けてきた。
「な、何でもありません。」
俺は慌てて湯船に身を沈めた。

 

 
カップ麺の晩飯を済ませ、早々と布団に送られた。
「俺」はパソコンに向かっている。俺としては寝るにはまだ早い時間なのだ。
「なんだ、眠れないのか?」
振り向いた彼が俺が寝付けないでいるのに気付いたようだ。
「もう子供が起きていて良い時間じゃないんだぞ♪」
そう言って俺の脇に添い寝する。
「男」と寝る形になってしまったが、あくまでも俺はガキ扱いされている。
このまま色事に発展する事もなく、俺は彼の思惑通り、いつしか完全に寝入ってしまっていた。

 
俺はそのままこのアパートに居付いていた。
もともとは俺のアパートであり、俺の記憶にも帰る場所はここしかないのだ。
彼はこれまでの俺と同じように、朝部屋を出て夜に戻ってくる。
これまでと違うのは、寄り道をせずに戻って来る事と、俺の分の食事を考えている事だろう。
俺はと言えば、見かけない女の子が辺りをうろうろしていると、要らぬトラブルに巻き込まれ兼ねない。
だから、外には一歩も出ず、テレビを見たりパソコンをして時間を潰していた。
が、少し後ろめたい気もしたので、食後の食器洗いと洗濯物の片付けくらいは手伝うようにしていた。

 
そして、クリスマスイブの日がやってきた。
あの日、俺はクリスマスに彼女がいない事を愁いていたのだ。それは「彼」も同じであろう。
如何せん彼も俺であるから今のコブ付き状態でなくとも「彼女」を作る事などできはしない。
が、それでもである。
俺が居る事で彼に迷惑を掛けている事には違いない。
時は今、クリスマスイブだ。少しは彼に良い思いをさせてやっても良いのではないだろうか…
 
その夜、彼は奮発してクリスマスケーキを買って帰ってきた。
「ありがとう♪」
「メリークリスマス」
ささやかなクリスマスパーティーが催かれた。
彼はクリスマスプレゼントも用意していた。
クマのぬいぐるみだった。
俺としてはぬいぐるみを有難がる事はないが、見た目通りの女の子であれば…
「ありがとう。うれしいわ♪」
と彼に抱きついた。
「あたしからもプレゼントがあるのよ♪」
「何んだい?」
「それは…ア・タ・シ♪」
そう言って彼を押し倒し、ズボンのベルトを開放した。

「あはっ。天狗さんのお鼻だ♪」
無邪気さを装って、彼のペニスに肉薄する。
が、いざとなると元は俺のものであっても、コレを咥えることには躊躇がある。
(これは天狗さんのお鼻。天狗さんのお鼻…)
と自らに言い聞かせる。
そして、俺は天狗の鼻を咥えた。
「ああ、気持ち良いよ♪」
俺の口の中で彼のペニスが一層硬くなるのを感じた。
自らの行為に反応が見られるて、俄然面白味が増してくる。
舌や喉の奥を使って様々な刺激を与えると、即に反応を現す。
ストローでタピオカやシェイキを吸い取るように息を吸った。
「っあ!! 出る…」
と言っている傍から、どくりとペニスの中を昇ってくるものがあった。
それが「俺」のザーメンである事を意識する間もなく、口の中が濃いモノに満たされていた。
「ごくん!!」
口から溢れそうになったので、思わず呑み込んでしまった。

「ありがとう。でも、こんな事をするのは大人になってからにしようね。」
「じゃあ、サンタさんに即に大人にしてもらうわ♪」
「サンタ…って…」
「サンタさんがダメなら天狗さんにお願いするわ♪」
『ほ~う。ワシに願うか?』
と天井から声があった。
見ると天井に天狗の顔が浮き上がっていた。
『大人になりたいとな?それもまた面白い♪』
天狗がそう言うと、俺の体が一気に膨れ上がった。
見ると俺は大人の女の体になっていた。
「ふがっ!!」と「俺」が呻いた。
彼の顔にぺたりと何かが貼りついていた。天井から天狗の顔が落ちてきたようだ。
そして「俺」の体に変化が始まった。
天狗の顔と同じ色に皮膚が染めあげられ、贅肉のない均整のとれたアスリートのような筋肉質の体になっていった。
『そのカラダでワシを楽しませてみ?上手くできれば赦してもやろう♪』
彼は「俺」ではなく「天狗」そのものになっていた。
股間のモノは「俺」のよりも禍々しく屹立していた。
しかし、不思議にもソレを嫌悪する気持ちにはなれなかった。それどころか、ソレに貫かれた時に得られるであろう快感に期待していた。

俺はもう一度ペニスを咥えた。
大人の体になったのでさっきよりも楽にできると思ったが、天狗のペニスは凶器の如く更に太く大きくなっていった。
結局、射精に至ることなく『もう良いだろう♪』と仰向けに転がされた。
(あがっ!!)
強烈な痛みに声も出ない。一気に押し入ってきたソレに股間が引き裂かれる!!
大人の体になったばかりである。俺の体が処女であった事は間違いない。
そこに、平均以上の巨根が挿入されたのだ。
意識を保っていられるだけでも誉めてもらえるだろう。
『なかなかな名器じゃないか。気持ち良いぞ。』
天狗は独り悦に入り、腰を突きたてている。
俺は何もできずにソレを受け入れているしかできなかった。
そして…

どくり!!

と天狗が射精した。
大量の精液が膣を満たし、膣口からも溢れ出ていた。
『なかなか良かったぞ。赦してつかわす。』
そう言うと、いつの間にか法衣を纏った天狗は漆黒の羽を広げ舞い上がった。
そこには天井などないかのように昇っていった。
跡には天狗の精液にまみれた俺が独り残された。
そう。「俺」もいない。
俺の部屋には「女」の姿のままの俺だけが居た…

 

 
翌日。俺は久しぶりに外に出てみることにした。
何故か、目が覚めると部屋の中が一変し「女」の部屋になっていた。
着るものも、女物が揃っていて、みな今の俺の体のサイズに合っていた。

外に出た所でばったりと大家のおばさんと顔を合わせてしまった。
おばさんは不審がることもなく、
「めずらしいわね。今日はおやすみなの?」
と声を掛けてきた。
どうやら、俺は生まれた時から女だったように思われているようだ。

取敢えず、天狗のいた神社に向かっていった。
鬱蒼とした雑木林の中を抜けて社の前に立つ。通いの神主が社の中で祝詞をあげていた。
境内は掃き清められ、昨夜の天狗の痕跡はどこにもなかった。
神主はお務めが終わったようだ。社から社務所に続く渡り廊下を歩いてきた。
(どきっ!!)
俺の心臓が高鳴った。
俺は神主ともろに視線を合わせていた。
神主は予想とは違い、若い男性だった。天狗とはちがう優男の風貌であるが、神職の精悍さが際立っていた。
(何なんだ、今の「どきっ!!」は?)
いや、訊かずとも答えはひとつしかない。
それは「ひとめぼれ」だ。
俺は男に恋する事などありえないと思っていたのだが、女の体がそうさせたのだろうか?
「学生さんですか?もしこの冬休みに時間が空いていたら、アルバイトしませんか?」
「アルバイトですか?」
俺は彼から声を掛けられた事で正常な意思決定ができなくなっていたのだろう。
「暮れから正月に掛けては神社は忙しくてね。雑用ばかりですが、手伝ってもらえると嬉しいです。」
彼と一緒の時間が過ごせるのだ♪
俺は何のためにこの神社にやってきたのか忘れ果てていた。

 
年が明け、俺は巫女の衣装を纏い、参拝客に破魔矢やお札を手渡していた。
夕べ、俺は彼と結ばれた。幸せな気持ちに満たされていた。
このまま女として生きるのも悪くないかな?
なんて思い始めている。勿論、彼と一緒の人生であることが前提だ。

もう、無理して「俺」て言う必要もないわね。
あたしは生まれ変わって、新しい年を迎えることができた。

これって天狗…神様の御利益なのかな?

 

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