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2014年12月21日 (日)

天狗の杜

夕暮れの街はクリスマス色に埋っていた。
彼女どころか男友達もいない俺は、クリスマスの喧騒から逃れるようにアパートの自分の部屋に急いでいた。
 
商店街を抜け、近道となる人気のない雑木林に囲まれた神社の境内を抜けてゆくと…
(え~ん…)
と子供の泣く声がした。
真夏には肝試しにも使われる鬱蒼とした茂みに囲まれた小径である。
既に辺りは暗く近所の子供なら近づく事もない場所である。
「え~ん」
歩みを進めると泣き声は近づいてくる。
そして、杉の巨木の影にその女の子は佇んでいた。
「どうした?迷子になったのか?」
多分、こんな時間にこの道を通るのは俺くらいのものだろう。もしかすると明日まで誰も来ない可能性もある。
「どうした?」
俺は女の子の頭に掌を乗せた。
女の子は泣き声を止め、俺を見上げた。
「えっ!?」
驚いたような声を上げる。
「行っちゃダメ…」
と女の子は小さく呟いた。
この娘を交番に届けるにしろ、見捨ててアパートに帰るにしろ、俺も他に行かずにここに留まっている訳にもいかない。
いずれにしろ、女の子を見捨てる訳にはいかない。この娘を連れ、もう一度神社を通って国道脇の交番に向かうのが最良の選択であろう。
(敷地は広いくせに、この神社は昔から無人なのだ!!)
「とにかく、交番に行こうね?」
と女の子の手を引こうとすると、
「そっちにいっちゃダメなの。絶対にっ!!」
「迷子なんだろう?こういう時は大人の言う事を聞くもんだよ。」
と半ば強引に彼女を引っ張った。
「ダメだって言ったんだからね…」
そう言った後、彼女はおとなしく俺についてきてくれた。

 
神社の社の前を通り過ぎようとした時
「待て。」
と頭上から声がした。
上を向くと
「うわっ!!」
俺は思わず叫んでいた。
巨大な天狗の顔がそこにあったからだ。
『こんな時間に女の子を連れ廻すとは不届き。神罰をつかわす。』
と天狗が言った。
「あたしはちゃんと忠告したんだからね。」
と女の子が言う。
俺は目の前が真っ暗になり、意識を失っていた…

 

 

「え~ん」
女の子が泣いていた。
(どこで?)
さっきまで手を引いていた娘が、また泣き始めたのか?
いや、今、俺の近くには誰もいない。それに、その声はもっと近い?

泣いていたのは「俺」だった。

杉の巨木の脇で俺はさっきの女の子がしていたように泣いていた。
否!!今の俺は、その女の子そのものだった。
視点が低い。足元の地面までの距離が近くなっていた。
足には女の子の靴とフリルの付いた靴下。
ズボンは穿いていない。スカートの下はショーツが穿かされているのだろう。
俺の意思とは無関係に、俺は女の子の声で泣かされていた。

「どうした?迷子になったのか?」
不意に男の声がした。俺は男が近付いて来るのに気付かなかった。
「どうした?」
と男の掌がが俺の頭に乗せられた。俺は男を見上げた。
「えっ!?」
思わず声を上げた。その男は「俺」だった。
「行っちゃダメ…」
俺は強制的にそう言わされていた。

男はしばらく思案した後、
「とにかく、交番に行こうね?」
と言って俺の手を引いて行こうとする。
彼は俺がした通りに行動している。
そして、女の子の忠告を無視した俺は天狗に神罰を受けた。
「そっちにいっちゃダメなの。絶対にっ!!」
俺は訴えるように男の目を見た。
「迷子じゃないのか?」
そう言って宙を見ていた。
男は俺と違い、迷っている…そして
「俺のアパートに行くか?」
と言った。
俺は「うん♪」と首を縦に振っていた。

俺は俺のアパートに戻ってきた。
が、子供の体のため背が低くいつもと視点が違う所為か、自分の部屋に帰ってきたという気がしない。
「寒かったろう?風呂、沸いているから入ってきなよ♪」
俺は彼の提案に従い風呂場に向かった。
脱衣所にあった鏡に「俺」が写っていた。その娘は木の下で泣いていた女の子に間違いなかった。

俺は鏡の前で服を脱いでいった。
ショーツ一枚だけの姿が鏡に写っている。
胸は平らなようでも男の子とは違う起伏がある。
大人になれば、それなりに膨らんでくるに違いない。
卑しいオジサンの視点で眺めていたが、その将来の姿は未来の俺自身であることを思い出す。
(元に戻れなければ、俺は一生この娘として生きなければならないのだ!!)
つまり、形の良い膨らみは俺自身の胸に形作られるのだ。
そのふくよかな胸を揉みあげる男の手は、俺自身の手ではないのだ。
俺が「男」に抱かれ、オンナの艶声をあげ淫らに悶えるのか?

…ぢっっ…
股間に違和感があった。
そこの湿度が異様に高くなっている。
(まさか?ガキの体の癖に俺の妄想で股間を濡らしているのか?)
俺はショーツを脱ぎ去った。
当然とはいえ、股間には男の証たるペニスは存在せず、そこには深い溝が刻まれていた。
割れ目に指を這わせ、中指をその中に沈めてゆく。
中指は湿り気を纏い、更に奥まで…
「嫌っ!!」
強烈な痛みに俺は凍りついてしまった。
指が敏感な箇所に触れてしまったのだ。
(クリトリスだったのか?)
未開発の肉体は、その刺激は快感に至らないようだ。

「大丈夫か?」
とドアの外から彼が声を掛けてきた。
「な、何でもありません。」
俺は慌てて湯船に身を沈めた。

 

 
カップ麺の晩飯を済ませ、早々と布団に送られた。
「俺」はパソコンに向かっている。俺としては寝るにはまだ早い時間なのだ。
「なんだ、眠れないのか?」
振り向いた彼が俺が寝付けないでいるのに気付いたようだ。
「もう子供が起きていて良い時間じゃないんだぞ♪」
そう言って俺の脇に添い寝する。
「男」と寝る形になってしまったが、あくまでも俺はガキ扱いされている。
このまま色事に発展する事もなく、俺は彼の思惑通り、いつしか完全に寝入ってしまっていた。

 
俺はそのままこのアパートに居付いていた。
もともとは俺のアパートであり、俺の記憶にも帰る場所はここしかないのだ。
彼はこれまでの俺と同じように、朝部屋を出て夜に戻ってくる。
これまでと違うのは、寄り道をせずに戻って来る事と、俺の分の食事を考えている事だろう。
俺はと言えば、見かけない女の子が辺りをうろうろしていると、要らぬトラブルに巻き込まれ兼ねない。
だから、外には一歩も出ず、テレビを見たりパソコンをして時間を潰していた。
が、少し後ろめたい気もしたので、食後の食器洗いと洗濯物の片付けくらいは手伝うようにしていた。

 
そして、クリスマスイブの日がやってきた。
あの日、俺はクリスマスに彼女がいない事を愁いていたのだ。それは「彼」も同じであろう。
如何せん彼も俺であるから今のコブ付き状態でなくとも「彼女」を作る事などできはしない。
が、それでもである。
俺が居る事で彼に迷惑を掛けている事には違いない。
時は今、クリスマスイブだ。少しは彼に良い思いをさせてやっても良いのではないだろうか…
 
その夜、彼は奮発してクリスマスケーキを買って帰ってきた。
「ありがとう♪」
「メリークリスマス」
ささやかなクリスマスパーティーが催かれた。
彼はクリスマスプレゼントも用意していた。
クマのぬいぐるみだった。
俺としてはぬいぐるみを有難がる事はないが、見た目通りの女の子であれば…
「ありがとう。うれしいわ♪」
と彼に抱きついた。
「あたしからもプレゼントがあるのよ♪」
「何んだい?」
「それは…ア・タ・シ♪」
そう言って彼を押し倒し、ズボンのベルトを開放した。

「あはっ。天狗さんのお鼻だ♪」
無邪気さを装って、彼のペニスに肉薄する。
が、いざとなると元は俺のものであっても、コレを咥えることには躊躇がある。
(これは天狗さんのお鼻。天狗さんのお鼻…)
と自らに言い聞かせる。
そして、俺は天狗の鼻を咥えた。
「ああ、気持ち良いよ♪」
俺の口の中で彼のペニスが一層硬くなるのを感じた。
自らの行為に反応が見られるて、俄然面白味が増してくる。
舌や喉の奥を使って様々な刺激を与えると、即に反応を現す。
ストローでタピオカやシェイキを吸い取るように息を吸った。
「っあ!! 出る…」
と言っている傍から、どくりとペニスの中を昇ってくるものがあった。
それが「俺」のザーメンである事を意識する間もなく、口の中が濃いモノに満たされていた。
「ごくん!!」
口から溢れそうになったので、思わず呑み込んでしまった。

「ありがとう。でも、こんな事をするのは大人になってからにしようね。」
「じゃあ、サンタさんに即に大人にしてもらうわ♪」
「サンタ…って…」
「サンタさんがダメなら天狗さんにお願いするわ♪」
『ほ~う。ワシに願うか?』
と天井から声があった。
見ると天井に天狗の顔が浮き上がっていた。
『大人になりたいとな?それもまた面白い♪』
天狗がそう言うと、俺の体が一気に膨れ上がった。
見ると俺は大人の女の体になっていた。
「ふがっ!!」と「俺」が呻いた。
彼の顔にぺたりと何かが貼りついていた。天井から天狗の顔が落ちてきたようだ。
そして「俺」の体に変化が始まった。
天狗の顔と同じ色に皮膚が染めあげられ、贅肉のない均整のとれたアスリートのような筋肉質の体になっていった。
『そのカラダでワシを楽しませてみ?上手くできれば赦してもやろう♪』
彼は「俺」ではなく「天狗」そのものになっていた。
股間のモノは「俺」のよりも禍々しく屹立していた。
しかし、不思議にもソレを嫌悪する気持ちにはなれなかった。それどころか、ソレに貫かれた時に得られるであろう快感に期待していた。

俺はもう一度ペニスを咥えた。
大人の体になったのでさっきよりも楽にできると思ったが、天狗のペニスは凶器の如く更に太く大きくなっていった。
結局、射精に至ることなく『もう良いだろう♪』と仰向けに転がされた。
(あがっ!!)
強烈な痛みに声も出ない。一気に押し入ってきたソレに股間が引き裂かれる!!
大人の体になったばかりである。俺の体が処女であった事は間違いない。
そこに、平均以上の巨根が挿入されたのだ。
意識を保っていられるだけでも誉めてもらえるだろう。
『なかなかな名器じゃないか。気持ち良いぞ。』
天狗は独り悦に入り、腰を突きたてている。
俺は何もできずにソレを受け入れているしかできなかった。
そして…

どくり!!

と天狗が射精した。
大量の精液が膣を満たし、膣口からも溢れ出ていた。
『なかなか良かったぞ。赦してつかわす。』
そう言うと、いつの間にか法衣を纏った天狗は漆黒の羽を広げ舞い上がった。
そこには天井などないかのように昇っていった。
跡には天狗の精液にまみれた俺が独り残された。
そう。「俺」もいない。
俺の部屋には「女」の姿のままの俺だけが居た…

 

 
翌日。俺は久しぶりに外に出てみることにした。
何故か、目が覚めると部屋の中が一変し「女」の部屋になっていた。
着るものも、女物が揃っていて、みな今の俺の体のサイズに合っていた。

外に出た所でばったりと大家のおばさんと顔を合わせてしまった。
おばさんは不審がることもなく、
「めずらしいわね。今日はおやすみなの?」
と声を掛けてきた。
どうやら、俺は生まれた時から女だったように思われているようだ。

取敢えず、天狗のいた神社に向かっていった。
鬱蒼とした雑木林の中を抜けて社の前に立つ。通いの神主が社の中で祝詞をあげていた。
境内は掃き清められ、昨夜の天狗の痕跡はどこにもなかった。
神主はお務めが終わったようだ。社から社務所に続く渡り廊下を歩いてきた。
(どきっ!!)
俺の心臓が高鳴った。
俺は神主ともろに視線を合わせていた。
神主は予想とは違い、若い男性だった。天狗とはちがう優男の風貌であるが、神職の精悍さが際立っていた。
(何なんだ、今の「どきっ!!」は?)
いや、訊かずとも答えはひとつしかない。
それは「ひとめぼれ」だ。
俺は男に恋する事などありえないと思っていたのだが、女の体がそうさせたのだろうか?
「学生さんですか?もしこの冬休みに時間が空いていたら、アルバイトしませんか?」
「アルバイトですか?」
俺は彼から声を掛けられた事で正常な意思決定ができなくなっていたのだろう。
「暮れから正月に掛けては神社は忙しくてね。雑用ばかりですが、手伝ってもらえると嬉しいです。」
彼と一緒の時間が過ごせるのだ♪
俺は何のためにこの神社にやってきたのか忘れ果てていた。

 
年が明け、俺は巫女の衣装を纏い、参拝客に破魔矢やお札を手渡していた。
夕べ、俺は彼と結ばれた。幸せな気持ちに満たされていた。
このまま女として生きるのも悪くないかな?
なんて思い始めている。勿論、彼と一緒の人生であることが前提だ。

もう、無理して「俺」て言う必要もないわね。
あたしは生まれ変わって、新しい年を迎えることができた。

これって天狗…神様の御利益なのかな?

 

河童の池

河童が嫁さんを探していた。
勿論、別嬪で器量よしなど高望みは限りない。
さらに、己が河童であるので、水の中で生活できるのが大前提だ。

「河童は河童の嫁をとるのが一番だ。」
と長老に諭されるが、こいつは聞き耳を持っていない。
「ならば造るか?」と長老
「ヒトの玉と仙丹を捏ね、形を造り、己が肌でひと月温め続けるのだ。」
「それで出来るんですか?」
「捏ねている時、お前の唾液を混ぜ込めは、お前の言う事は全て聞くようになる。」
へへ~と有り難い仙丹を貰い受けた河童は、先ずヒトの「玉」を取ってくる事にした。

河童が取るヒトの玉と言えば「尻こ玉」と相場が決まっている。
が、こいつはどこをどう間違えたか「魂」を取ってくるものと思い込んでいた。

河童は村を出て、人間逹の多く住む「街」に出てきていた。
街はハロインとかで、河童の奇異な姿も見咎められる事はなかった。
河童は街で一番大きな病院に向かった。
予想通り、病院の周辺にはヒトの魂が集まっており、選り取りみどりであった。
その中でも一番活きの良い魂を選ぶと、ひったくるようにして持ち去っていった。

 

 

そこは森の中の深い池の中だった。
その河童はいつも池の一番深い所で、瞑想するかのように静かに暮らしていた。
「お前はもう要らん。」
と河童は言った。
「捨てられるの?どうして?」
と聞くと
「飽きたからだよ。それから、もう俺の近くには近づくなよな。」
彼の命令には逆らえない。後ろ髪を引かれつつも池の底から離れていった。

自分は何者なのだろう?
気が付いた時には「河童の嫁」として、この池の底にいた。
しかし、自分は河童ではない。だから、彼の「嫁」になれる訳もない。
しかし、彼の命令には逆らう事はできない。いや、嬉々として彼の言うことに従っていた。
自分は何者なのだろう。
その姿は絵本にあった「人魚姫」にそっくりである。が、この姿が本来の自分の姿ではない事は知っていた。
水面に近づくにつれ、あやふやだった昔の記憶が蘇ってくる。
そうだ。俺は人間だったのだ。
街で暮らしていた。
二本の足で立ち、服を着て生活していた。
何より、俺は「男」だったのだ。

 
その俺が女のように河童に奉仕していた!?
いや、この姿は半分は「女」である。奴を受け入れることのできる肉体であり、実際に奴に貫かれ、歓喜に悶えていたのは事実である。

そしてもう半分は魚の尾ひれになっている。
このままでは陸に上がれない。
童話では美声と引き換えに魔女から人間になる薬をもらったのだが、この場に魔女はいない…

「長老ならおるがな♪」
振り向くとそこに老河童がいた。
「あいつめ、尻こ玉ではなく魂を取ってきてしまったようだな。」
「魂…って。俺、死んじゃったんですか?」
「まだ微かに魂の糸が繋がっているようにも見える。お前さんが自分の肉体に戻れば生き返る事はかのうだろう。」
「本当ですか?」
「じゃが、この糸はいつ切れてもおかしくはないな。戻るんなら急いだ方が良い。」
「急ぎたいのは山々なんですが、今の俺には足がないんです。長老さんが魔法とかでなんとかできませんか?」
「わしには魔法とやらは使えん。じゃが、お主は尻こ玉ではなく魂から造られている。特別な力を持ってる筈じゃ。試しに、足になるように念じてみ?」
「念じるんですか?」
俺は長老に言われたように、尾ひれが足に変わるよう念じてみた。
すると、尾ひれから鱗が消えて行き、二股に分かれた。上半身と同じ肌の色に染まり、形良く引き締まっていった。
膝やくるぶしが確認できた。筋肉の下にはしっかりとした骨の存在が窺える。
足先には5本づつ、指が形作られている。綺麗に切り揃えられた爪もできていた。
俺は膝を立て、足に力を入れてみた。足はちゃんと体重を支えてくれそうだった。
立ち上がると、俺は全身に重力を感じた。特に、胸からはこれまで感じたことのない異質の質量の存在が伝わってきた。
「もしかして、男に戻るのも可能なのか?」
「ああ、不可能ではない。じゃが、止めておいた方が良いぞ。今の能力で糸が大分弱まってしまっている。」
「わかった。とりあえず、これで陸を歩ける。助かったよ。」

「まだじゃ!!」
と長老。
「何ですか?」
「お前さん、その格好のまま街に行くつもりかね?若い女子が真っ裸で街をあるけばどうなるか解らないでもあるまい?」
「えっ、あっ、嫌っ!!」
俺は無意識に胸を隠してしゃがみ込んでしまった。
「若いのに何か取りに行かせるからしばらく待ってなさい♪」

 

俺は用意された女物の服(当然下着もだ)を着て街に向かった。
これらの服をどこから調達してきたのかは聞かぬが華であろう。
とはいえ、今の俺は無一文である。電車やバスは使えない。
ヒッチハイクも考えたが、「女」としての対価を期待されるリスクを考えると、歩き続けるしかないのだろう。
幸いにも、この肉体は造られたものである。疲れることもなく、飲食も不要であった。
(試しに呼吸を止めてみたが、窒息することもなかった)
昼も夜も歩き続けて、俺は見知った街の景色を見る事ができた。

俺のいた病院に向かう。
俺な復活した記憶では、俺は怪我や病気で入院していた訳ではなかった。
腹痛で外来に来た友人の付き添いだったのだ。健康そのものだった俺が何で生死の際にいなければならないのだろうか?
憤りを覚えつつも、俺はその病院に入った。
俺の名前を言い、病室の場所を訊いた。
「ご関係は?」
と訊かれ、流石に「本人です」とは言えず「恋人です」と言ってやった。
怪訝な顔をされたので「遠距離恋愛で、ようやくこちらに来ることができたんです。」と言ってやった。
入館記録に適当に女の名前を書き、教えてもらった病室に向かった。

 

そこには点滴につながれた「俺」がいた。
生命力が尽きかけているのだろう、頬は痩け、皮膚は土気色。皮下脂肪が失われ、張りの失われた「俺の皮」が骸骨にまとわりついている風であった。

「さてと。どうすれば俺はこの肉体にもどれるだろうか?」
尾ひれを足に変えた能力を使えば簡単なのだろうが、長老が言っていたリスクがある。
能力を使っている間に「俺」が死んでしまえば元もこもない。
先ずはオーソドックスにキスでもしてみるか♪

 
俺は「俺」の顔を覗き込んだ。
(俺の顔ってこんな風に見えるんだ…)
鏡やビデオで自分の顔を見た事はあるが、全ては二次元の映像である。
このように立体として自分の顔を見るなどという経験は、そうそうあるものではない。
その「俺」の顔が近付いて来る。
(近付けているのは俺自身なのだが…)
唇が触れるまであと少し…

そして触れた。

俺の魂がこの肉体から「俺」自身に戻れることを願って、息を吹き込む…

意識が飛んでいくようだ。

 

目を開いた…
俺はベッドに寝かされていた。
そこが病室である事は即に解った。問題は「俺」がどうなったか…である。
手を胸に伸ばした。
そこには平な胸があった。
(股間は?)
胸に当てた手を下に下ろす。

それは「俺」の肉体だった。
俺は自分の身体に戻っていた♪
枕元には人魚の人形が転がっていた。
これがさっきまでの「俺」だったのだ。
愛しさというものだろうか?俺は人魚の人形を手に取ると、その唇に俺の唇を合わせた…

再び意識が遠くなる…

 

俺は床の上に転がされていた。
慌てて起き上がろうとするが巧くいかない。
その理由は…
俺の下半身が尾ひれに変わっていたのだ。
俺は再び人魚に戻っていたのだ。立ち上がれないのは当然である。

…見ると、辺りには俺が着てきた女物の服が散らばっている。今の俺は全裸だった。
慌てて服を集めるが、上半身はなんとかなっても、ショーツとかの下半身部分を着る事ができない。
(能力を使って足に戻せば良いじゃないか♪)
俺は慌てていて、そんな事に気付くのにも時間が掛かってしまった。
が、ショーツを穿き終え、スカートを直していると、どたどたと急いでこちらに向かって来る足音が聞こえた。
ドアが開く。
「処置をしますので退室願います。」
と目の前でカーテンが閉じられた。
「患者さんの容態が急変しています。医師を呼んでください。」
カーテンの向こう側で館内通話のやりとりが続く。
今はもう一度「俺」に触れる事は叶いそうにない。
俺は「俺」のいる病院を後にした。

 
「俺」の容態が急変したのが俺の所為である事は容易に想像がついた。
能力を使ったからだ。
が、人魚の姿のままあの場所に居る事もできない事は確かであった。
そして、あの場所から離れるには、どうしても「足」は必要である。
俺の選択に誤りはあったのだろうか?

答えの出ない命題に頭が振り回されていたが、俺はこれからどうすれば良いのだろうか?
幸いと言うか…この肉体は飲食は不要である。寝る必要もない。
が、街中を彷徨き続けていれば、いずれ不審者として問い質される事は間違いない。
今の俺はこの世界に存在しない人間なのだ。他人と関わる事はできるだけ避けたい。
とにかく、夜に身を隠せる場所が必要である。

先ず頭に浮かんだのは「俺」の部屋である。
流石に「俺」が入院している間に処分されている事はないだろう。
鍵はいざという場合に備えて合鍵を郵便受けの中にガムテープで止めてあるのだ。
辺りに誰もいないのを見て、合鍵を取りだして俺は俺の部屋に入った。

多分本来の俺より身長が低い所為なのだろう。いつも見ていた「自分」の部屋とは違って見えた。
それ以上に気になったのは「臭い」だった。
臭くて耐えられないというようなものではなかったが「男」の臭いが充満していた。
その臭いはベッドからのものが最も強かった。
俺は臭いに引き寄せられるようにベッドに向かい、そのままうつ伏せに布団の上に倒れ込んでいた。

俺は「俺」の臭いに包まれていた。
「俺」自身に抱かれているように錯覚してしまう。
俺の女の肉体が反応する…ジンと下腹部の奥で子宮が疼きをあげる。
乳首が勃起していた。
股間が潤み始めていた。
俺は「俺」自身に欲情しているというのだろうか?
俺は肉体の欲求に抗うことができず、自らの指を股間に挿し込み慰めていた。

 

気が付くと、俺は部屋の中に浮かんでいた。
つまり、魂だけの状態になっていたのだ。
「俺」と接触した事で魂が分離し易くなったのではないのだろうか?

ベッドを見下ろすと人魚の人形が転がっていた。
再び人魚の肉体に戻った場合、尾ひれを足に戻すのに能力を使う事になる。
今の「俺」には耐えられない筈だ。

となれば、病院に戻り「俺」の内に入れないかを確認するのが一番であろう。
はたして…

 

俺は病院のベッドの上で目覚めた。
体力の回復と様々な精密検査の後、俺はようやく病院から解放された。

俺は俺の部屋に帰ってきた。
俺が別の肉体で体験してきた事が、全て夢の中の事であったかのように思えていた。
が、部屋は確かに俺の部屋であり、一部を除いて俺が病院に行った日のまま残されていた。
違うのは…

床に散らばった女物の衣服。
そして、ベッドの上には人魚の人形が転がっていた。


全ては夢ではなかったのだ。
つまり、もう一度この人形と唇を合わせれば、俺は人魚になる…という事か?

誘惑に駆られる。
今は十分に体力は回復している。一回くらい能力を使っても問題はないに違いない。
(何の為に?)
それは理性の声なのだろうか?
(お前は女になる事を望むのか?)
いや、「男」としての俺を亡きものにしてこの先一生を女として過ごす気など、さらさらない。
それは「好奇心」だ。
元に戻れる保証があればこそ、もう一度「女の快感」に身を委ねてみたいと思う。
「男」の俺自身の肉体を味わってみたいと思う…

俺はベッドの端に腰掛け、人形を手に取った。
唇を合わせると魂が人形に吸い取られてゆく。
気が付くと俺はベッドの上で「男」の隣に寝ていた。
男は「俺」である。
「良いよね?」と、俺は男の服を脱がせてゆく。
トランクスを外すと萎えたペニスが現れる。
俺の…女の指に絡まれると、どくりと血流が活発化するのがわかった。
肉体の意思に関係なく、ペニスが勃起してゆく。
俺はそれを口に咥え、更に大きく、硬くしてやった。

俺の「女性自身」も受け入れ準備ができている。
熱く潤った膣口がヒクヒクとそれを待ち望んでいた。

俺は上体を起こし、能力を使って尾ひれを足に変えると「俺」の上に跨がった。
ペニスの先端が膣口に触れると、俺はゆっくりと腰を沈めていった。
俺の膣に俺のペニスが侵入してきた。
俺は俺自身を異物として感じていた。
しかし、異物の方が感じる…俺は今「男」に貫かれていた♪

 

俺の精液が俺の膣を満たしていた。
最初の絶頂を迎えたことで、少し心に余裕ができていた。
「俺」の顔を見た。
予想以上に衰弱が激しかった。
どうしよう…
(お前はどうしたい?まだまだ女の快感を享受したいのだろう?)
確かに、一度ではもの足りない。
(男の肉体を捨てる覚悟があれば、好きなだけその快感に浸れるぞ♪)
その提案は魅力的である。それに、この肉体は死ぬ事がない…
だが…
「俺」は死ぬ事になる。
俺はこの世に存在しない存在となる。
また、この肉体も人外のものである。
(良いではないか♪永遠にその肉体で快楽を享受できるぞ♪)
否。それはもう「俺」ではない。俺は俺である事を辞めない!!

俺は俺の魂を「俺」に吹き込んだ。

 

 

 

俺はようやくカッパの里を探しだした。
紙袋には俺が着てきた女の服の一式が入っていた。
勿論、「河童を見た」などという証言などない。
が、それだけ巧妙に隠れているからこそ、河童達はここに棲めるのだろう。
池を囲むこの森の景色は、俺の記憶と寸分の違いもないのだ。

俺は池のほとりの社の脇に紙袋を置き、ショルダーバックからタオルにくるんだ人魚の人形を取り出した。
(世話になったな♪)
俺は社に置いた人形に、そう声を掛けると河童の里を後にした。

 

家族

その日、俺の息子が死んだ。
正確に言えば「俺の息子の魂が、俺の肉体と共に死んだ」となる。

 

発端は大学生の娘が、海外旅行の土産に買ってきた呪いの品にあった。
旅行から帰ってきた娘が自慢げに土産を広げた途端、その呪いが発動したのだ。

呪いは俺逹四人家族の魂と肉体を入れ換えてしまった。
高校生の息子の魂が俺の肉体に、妻の魂が息子の肉体に、娘の魂が妻の肉体に…
そして、俺の魂は娘の肉体に移されていた。
「とにかく、外では見た目に合わせて行動するしかないだろう。」
俺はそう言うしかなかった。
「俺と優也は明日も会社と学校だな。美穂は大学どうなんだ?」
「単位は足りてるから行かなくても大丈夫。それよりパパにあたしの代わりができるのが判るまで、外に出て欲しくないわ。」
「そうね。お父さんお化粧なんてした事ないでしょ?女の子はいろいろ大変なのよ♪」
「で、俺が親父の代わりに会社に行くのか?」
「あんた前に親父の仕事なんて俺にもできるぜ、とか言ってなかった?」
「く、口で言うのと実際にやるのでは次元が違うよ!!」
「取りあえず、一旦会社には行ってくれ。そしたら仮病を使ってでも早退してくれば良い。その時、引き出しから書類を持ってきてくれると助かる。」
「そんなんで良いのかよ?」
「取りあえずの次善の策だ。その後どうするかはじっくりと考えよう。」

それが、俺の甘い考えであった事は即に思い知らされる事になった。

 

 

「えっ?パパが?」
最初に電話に出たのは、妻の姿をした娘だった。
彼女は受話器を手に俺を見た。
「優也」の事である事を理解するまで、しばらく時間が掛かった。

優也は慣れない電車通勤、いつもとは違う疲労に翻弄される中、階段を踏み外して転げ落ちてしまった。打ち所が悪く、即死であった。

病院に行き医者の話を聞いた。遺体を確認して家に戻ってきたんだと思う。
俺が、頭が真っ白になって呆けている間にも、妻と美穂はてきぱきと「俺」の遺体を引き取り、葬式の準備などをすすめていた。

 

俺は喪服=黒のワンピースを着せられていた。
黒のショーツに黒のストッキング…俺は娘の服を身に着けてている。
目の前にあるのは「俺」の写真。そして、棺桶の中には「俺」がいる…

蓋が閉じられ、火葬場に運ばれる。
骨となった「俺」は骨壺に納められ菩提寺へ。
そして墓の下に納められた。

和服姿の美穂が喪主として挨拶を陳べていた。優也の姿の妻は学生服に身を包み、会葬者に手土産を渡している。
俺はただ、ぼーっと立っていただけだった。

 

「お姉ちゃん。行くよ。」
と妻に声を掛けられた。
「お姉ちゃん」が俺の事だと気が付くまで、しばらく時間が掛かった。
タクシーで家に帰った。
「ふう。疲れたわ。パパったら何もしてくれないから、全部あたしがしなくちゃならなくなっちゃったじゃない!!」
「でも、変に動いてボロが出るよりは良かったんじゃない?」
妻がお茶を淹れて持ってきた。
「まあね。父親を亡くして呆然自失の娘、としてみれば、ちゃんと演じていたわね♪」
「お、俺だって…」
「って?何が出来るの?パパは仕事するしか能がないじゃない。それに、俺じゃなくて、あたしよ!!ちゃんとしておかないと無意識に出ちゃうからね。」
「そうね。家の中でも気にしてないといけないわね…いけないな!! でも、それは明日からにしないか?今日は皆疲れたでしょ?」
「そうね。明日もイロイロありそうだけどね♪」
「じゃあ、おやすみ。」
と、俺は優也の姿の妻と俺達の寝室に向かった。

 

「ねぇ、あなた。お願いがあるの。」
「何だい?」
優也の声で呼び掛けられるのもそうだが、それに答える俺の声が美穂の声である事に違和感満載であった。
「若い子ってどうにもならないものなのかしら?」
「どうにもって?」
俺が聞くと
「コレよ。」
と俺の手を取り、自らの股間に導いた。

妻の股間で息子が硬く勃起していた。
「あたしがやってあげてたみたいに、やってもらえない?」
「俺が?」
「良いじゃない。夫婦なんだから♪」
「だからって…」
「あたしがしていたようにヤれば良いだけなんだから♪」
と俺の頭を強引に押さえ込んだ。
今の俺は「男」の力に抗うことができない。
妻と俺の男女が逆転している事を実感させられる。
今の俺は「女」なのだ…俺は口を開き、妻の息子を咥え込んでいた。
「ああ、良い…」
妻が呻く。
堪えることができず、あっと言う間に熱い塊を放出した。
「どう♪美味しい?」
「これのどこが?」
「女は愛しい人のモノなら何だって美味しいって言えるのよ♪」
妻は満足したように寝息を発て始めていた。

 

朝、妻は既に起きていて朝食の支度をしていた。
どうやら美穂も手伝っているようだ。
「早いな。」と声を掛けると。
「早く起きるのが、ママの体に染み付いてるみたいね。無意識に台所に立ってたわ♪」
と振り返った…
「み、美穂ちゃん!?何て格好してるんですか!!」
と美穂が声をあげた。妻も俺を見て、
「ここは俺がやっておくから、母さんは姉さんの方を看てやって♪」
見た目は息子の優也である妻が、妻の姿の娘の美穂に言った。
俺としては起き抜けにパジャマを脱いで下着姿でいるのはいつもの光景である。
が…
「美穂も年頃の娘なんだから、ちゃんとしなさいね!!」
と美穂の部屋から取ってきたワンピースを着せ、髪にブラシを掛けた。
「ちゃんとお化粧ができるまでは外出禁止ですからね。それまではお化粧の特訓よ!!」

食事が終わると、妻は自分で作った弁当を鞄に入れ、優也の通っていた学校に向かった。
美穂も「お役所とか、いろいろ手続きがあるから」と、妻の姿で出ていってしまった。
俺は独り、家に残され、鏡の前で特訓することになる。
夕飯前に、その日の成果を妻と美穂に評価してもらう毎日が続いた。

 

 
その日は朝から下腹がシクシクと痛みを訴えていた。
朝食中に股間が濡れたように感じ、急いでトイレに駆け込んだ。
美穂のショーツに紅い染みが付いている。
「パパ?心配ないから開けてくれない?」
美穂がドアの外にいた。
「あたし、割りと周期が安定してるの。生理なんでしょ?」
その言葉でようやく理解した。男では知る筈のない女体の神秘である。
俺がドアのロックを外すと、美穂はてきぱきと処理を済ませ、俺にナプキンの使い方をレクチャーしてくれた。
「あたしはそう重くない方だけど、ハジメテは精神的に参ってる筈。今日は一日ベッドにいても良いわよ♪」

俺は美穂の意見に従った。
何故か、その晩は赤飯だった。

 
俺の生理を期に、各自の部屋割りを見直す事になった。
妻とは夫婦であっても、肉体は若い男と女である。一緒のベッドというのは良くないという事になった。
俺達夫婦の部屋は美穂が使い、妻は優也の部屋、俺が美穂の部屋を使う事になった。

 

 

それぞれの時間が過ぎて行った。
俺はまだ女子逹の中に溶け込む事はできなかったが、一介の女子大生として大学の授業を受けるようになっていた。
ママ=美穂は家計を維持する為に働きに出ている。パートではなく、準社員として駅前のビルに事務所を構えている会社に勤めている。
妻=優也は男子高校生として、ノビノビと青春を謳歌しているようだ。本来の優也も結構モテていたようだが、今はその容姿に女の子の気持ちが解る妻の魂の組み合わせは無敵に違いない。

「再婚しようと思うんだ。」
ママ=美穂が突然そんな事を言った。
「良いんじゃない♪」と妻=優也。
「やっぱりパートナーは必要だよ♪」
「って?優也もイイ娘いるみたいね♪」
「近いうちにママにも紹介するよ。結構可愛い娘だよ♪」
そう言う妻に愕然とする。
「お、お前…女の子と付き合ってるのか?」
「俺も男だからね。いつまでも溜めてられないの、解るだろ?」
「溜めてる…って、女の子と…」
「ちゃんとスキンは付けているよ。この年齢で妊娠させる訳にはいかないからね♪」
「美穂もコレって男を決めるまでは、しっかりと避妊しておきなさいね♪」
ひ、避妊…って…
それは、俺が男に抱かれ、男とSEXすると言う事だ…
「お…俺は、男となんか…」
「美穂!!あんた自分が女の子だって忘れてない?女と男が結ばれるのは自然の摂理でしょ?」
「そうだよ。姉ちゃんも早くオトコを作った方が良いよ♪」
「だから俺は…」
と言っても二人が聞いていない事は明白だった。

 

次の日、妻=優也は部活で遅くなると言っていた。ママ=美穂も残業だと言っていた。
が、あんな事を言っていた翌日である。妄想が膨らんでゆく。
ママ=美穂は残業と偽って、再婚したいと言っていた男とデートしているに違いない。
俺の妻の肉体が、他の男に愛撫され、貫かれているのだ。
今の俺には妻の肉体を悦ばす事はできないし、「娘」を抱くことなど理性が許さない。
仕方のない事なのだろう…

一方、妻=優也も部活と称してガールフレンドと付き合っているのではないのかと思う。
制服の女の子のナカに若い憤りを挿入したりしているのだろうか?
俺の愛した妻が俺から離れて別の人を愛す…相手が「男」でないから、まだ救われるか?
いや、俺だってまだ妻を愛している。姿が変わっても…そう、逆転はしても男と女なのだ。俺の肉体は妻を満足させる事ができる…
が、俺は本当にソレができるのだろうか?妻=優也のペニスを俺の膣に挿入させてやる…物理的にできない事ではない。
が、肉体的には俺達は夫婦ではなく姉弟なのだ。いつまでもこの状態を続ける訳にもいかない。
ママ=美穂の結婚を阻止する事などできない。家の中に第三者がいる状態では、俺達は肉体に合わせた行動をとるしかないのだ。

いずれは優也も男として結婚し、家庭を持つのだろう。
それが「自然」なのだ。
俺も、その「自然」に従えば、女として男のもとに嫁ぐことになるのだ。
女として「男」に抱かれる…この膣に男のペニスを受け入れる事になるのだ。

「あん、ああん♪」
俺は女の喘ぎ声を聞いた。
それは俺の…美穂の声だった。
その声は、俺が今放ったものではない。美穂の肉体に残っていた美穂の記憶が呼び覚まされたのだろう。
「良いわよ。頂戴♪」
美穂は脚を広げ、男を迎え入れる態勢をとった。
俺は、今自分が同じ事をしているような錯覚に陥っていた。
いや、錯覚だけではない。俺の股間には愛液が溢れ、膣は男を迎えいれようとヒクついていた。
美穂の…俺の上に男が被さってきた。
その大きさ、力強さに、俺が小さく、か弱い女である事を思い知らされる。
太股が抱えられ、男の腰が俺の股間に割り込んでくる。
ペニスの先端が股間に触れる。ソレは膣口を探しあて…一気に挿入してきた。
「ああん♪あ~~ん!!」
俺は快感に媚声をあげていた。
肉棒が俺の膣を満たしていた。彼の股間が俺の股間に密着する。
その先端は子宮口に達していた。
「ああ、素敵♪ねえ、動いてあたしを滅茶苦茶にしてっ♪」
俺は膣に力を入れ、彼を絞めあげた。
その圧力をものともせずに、彼が肉棒を引いた。カリ首が膣壁を刺激する。
「んあん♪最高~!!」
再び男が突き入れる。そして、それが繰り返される中、俺はどんどん昇り詰めてゆく。やがて、その頂きが見え隠れする。
「あん、あん、あん。イくの?イっちゃうのぉ?」
「お、俺も限界かも。」
「じゃあ、一緒に♪」
堪えきれずに、彼が放出する。大量の精液が子宮口にぶちあたる。
それが引き金となって、俺も一気に絶頂に達していた…

「あっ、ああーーーっ♪」
単に美穂の記憶を追体験していただけなのだが、俺は自ら歓喜に嬌声を発していた。

 

これが女の快感なのだ。
男に貫かれるということが、どういう事かを知ることができた。
(もっと欲しい…)
俺はぐしょぐしょになった股間に指を這わせた。肉襞がひくひくと蠢いている。
俺はその中に指を挿れた。
「娘」の膣を弄ぶ父親…そんなイメージは即に吹き飛んでしまう。
「挿れる」より「挿れられる」感覚が勝っていた。
妻を愛撫していたように、自らを慰める…妻が感じていた快感を、今、俺も感じているのだ♪

ココが感じる♪という場所があった。
集中的に弄っていると、美穂の記憶にあったように、快感がどんどん増してゆく。
「ぁあん…」
自然と喘ぎ声が漏れる。
俺の指が激しさを増す。
「ああ…イくの?イっちゃう?」
そうだ。俺は今、イこうとしているのだ。オンナの快感を自らの指で達しようとしている…
俺は「オンナ」なんだっ!!

俺は強烈な快感の渦に呑み込まれた。
何か叫んでいたように思うが何も記憶がない。
俺は快感の中、意識を失っていた。

 

 

ママ=美穂の結婚式。
俺はヒラヒラのドレスで着飾っていた。
今では普通の女子と同じくらい化粧する事ができるが、今日は髪の毛のセットとともにプロに仕上げてもらっている。
ウェディングドレスのママ=美穂は、更に念入りに仕上げられているが、それ以上に彼との愛で肉体的にも若返っているみたいだ。
肉体的には母娘であるが、知らない人には姉妹と見られているかも知れない。
(内面は娘父なのだが…)

「これは美穂ちゃんに♪」
教会での式が終わったあと、ママ=美穂は手にしたブーケを俺に手渡した。
「貴女も早く素敵なお嫁さんになってね♪」

「お嫁さん」か…
いずれは俺もママのような純白のウェディングドレスを着る事になるのだろうか?
「お姉ちゃん、自分のドレス姿を想像してたんじゃない?」
と優也に図星され、慌てて現実世界に舞い戻った。
「あ、あたしは…」
「気にする事はないよ。女の子はみんなそう思うものだもの。俺ももう一度着てみたいなぁって♪」
「そ、それは止めておいた方が良いぞ。」
「わかってるって。」
そう言う優也の横顔には寂しさが浮かんでいた。

 

二人を新婚旅行に送り出し、俺は優也と家に戻ってきた。

「こうやって夫婦二人だけになるのって久しぶりじゃない?」
優也が「妻」に戻って言った。
「夫婦って言っても、見た目は姉弟だけどね♪」
「最初はどうなるかと思ったけど、どうにかここまでやってこれたわね。」
「ああ、娘を嫁に出した父親…っていうにはほど遠い状況だけどね。」
「多分、あの娘が一番辛かったんだと思う。あたし逹は若返って人生をやり直すみたいな所があるけど、彼女は一気に30年近くを失ってしまったんだもの。」

俺は「俺」=優也が死んでからのあれこれを思い出していた。
「ねぇ、久しぶりに一緒に寝ない?何か新婚の頃を思い出しちゃったわ♪」
妻の提案に反対する理由も見つからず、風呂から出た俺は「夫婦の寝室」に向かった。

「ねぇ、シてくれる?」
妻は俺の手を自らの股間に導いた。
俺の手に妻のペニスが触れた。「男」のペニスだ。
硬く勃起している。「手」だけで済まないことは容易に想像がついた。

俺は布団に潜り込み、妻の股間に顔を近づけた。
それは「俺」の股間にもあった「ペニス」である。が、今の俺はこれを受け入れる立場なのだ。
舌先で舐めあげた後、俺はそれを口の中に挿れた。
「ああ。良いわ。あなたの口の中、最高!!」
以前、妻のペニスを咥えさせられた時は、あっという間に達していた。が、妻もだいぶ経験を積んだのだろう。かなりの時間を堪えられるようになっていた。
口の中に放たれた精液を飲み込む。
「どう♪お味は?」
「愛しい妻のものだからね♪」
そう言うと妻が俺の頭を撫でてくれた。

「今度はあたしがあなたを悦ばせてあげる♪」
そう言って、俺は半転させられた。
仰向けになり、妻=優也の顔を見る。
「いくよ♪」
と言う妻に、俺はこくりと首を上下させた。
俺にとってハジメテ本物の「男」を受け入れる瞬間であった。
美穂自身が処女でない事は肉体の記憶から知らされていた。が、俺自身は彼女の記憶を幾度となく追体験はしていても、精神的には処女なのである。
肉体的には「弟」であるが、俺は妻を一人の男性として受け入れる覚悟だった。
(俺は妻に貫かれて「女」になるのだ!!)
「来て♪」
と妻を抱き寄せる。

俺の膣に妻のペニスが挿入された。
更に深く抱き締めあう。
俺の乳房が、妻の平らな胸に押し潰される。
妻の顔が近づき…唇が合わさった。
彼の舌が俺の口の中を舐めまわしてゆく。
唾液が混ざりあう。
愛されている悦びに頭がぼーっとしてくる。
「動くね♪」
いつの間にか上体は離れ、逆に結合部は更に深く繋がっていた。
「ああん♪」
彼のペニスが俺の膣の中を動き始めた。膣壁が擦られる度に快感がもたらされる。
俺は喘ぐことでこれに応じ、堪えきれない快感に身を捩り、悶えるのだった。

 

 
朝、シャワーを浴びてすっきりしていると、既に優也は身支度を終えていた。
俺の分の朝食も出来上がっている。
「今日は遅くなるから、晩飯は自分で調達してね。」
と言って、彼女のもとに出掛けていった。
もう、俺には妻を束縛しておく事ができないと実感する。
昨夜、俺は女として優也に抱かれたことで吹っ切れたのだろう。
彼は俺=あたしの「弟」であり、それ以外の何者でもないのだ。
もう二度と彼に抱かれる事はない。
俺=あたしは彼とは別の男性に抱かれる…

俺は男に抱かれるという事を、ごく自然に受け入れていた。
俺は下腹に掌を当てた。
この奥には膣があり、子宮があるのだ。膣に男を受け入れ、精液を注ぎ込まれる。
妊娠し子供を産む。

 
俺は「女」なのだから…

 

机の上にママから貰ったブーケがあった。
あたしがウェディングドレスを着る日も、そう遠くない気がした♪

 

 

無題

俺は、誰がどう見ても「ストーカー」以外の何者でもないのだろう。
だが誓って、美穂ちゃんに直接迷惑をかける行為は行っていない。

美穂ちゃんの後ろで尾行する事はあっても、直接彼女に触れるのはおろか、声を掛ける事もしていない。
遠くから超望遠レンズで美穂ちゃんのプライベートを撮す事はあっても、ネットはおろか他の誰にも見せたりはしない。
美穂ちゃんの電話を盗聴する事はあっても、直接彼女に電話する事もない。

それが何で??

いきなり、お巡りに掴み掛かれれて警察署に連行された。
善良な市民の俺を、まるで犯罪者かのように扱うのだ!!
散々説教じみた拷問の末に「今後は一切美穂ちゃんに近づくな!!」と言い渡された。
美穂ちゃんに近づく勇気がないからストーカーのような事をしているんだ。と言っても耳を貸すような輩ではない。
俺は打ち蔆がれたように、警察署を出るとあてもなくトボトボと街を歩いていた。

 

 

「おい。そこの若者。」
と声を掛けられた。
俺の目の前に胡散臭そうな男がいた。
「世の中思い通りにならないと憂いておるのだろう?良いものをあげよう♪」
その男が差し出したのは、直径2cm・長さ30cm程の両端が半球状の筒だった。
「これにその人の髪の毛なり爪の先ならを入れて呪文を唱えれば、その人を思い通りにする事ができるんだよ♪」
その男はそう言って、この筒と呪文を書いた紙を僕に手渡した。
そんな物はいらない。と返そうとしたが、既に男の姿はそこにはなかった。

(髪の毛…か…)
美穂ちゃんの髪の毛なら、俺には膨大なコレクションがある。手に入れた一本一本に手に入れた日時とその時の状況を記したメモを添えてファイリングしてある。
男の言う事が正しければ、俺は美穂ちゃんを操って俺の下に来させることができるのだろう。
彼女の方から俺に近づいて来る分には、お巡りも何も言えないだろう。
俺は急いで部屋に戻ると、一番新しい美穂ちゃんの髪の毛を筒に入れて、紙に書かれた呪文を唱えた。
そね途端、俺の意識はスーッと遠くなっていった。

 

 

 
気が付いた時、そこは俺の部屋ではなかった。
勿論、病院に運ばれた訳ではない。この内装には見覚えがあった。
(美穂ちゃんの部屋だ♪)
超望遠レンズで覗いた部屋の内装、そのものだ。そして今、俺は美穂ちゃんの部屋を部屋の中から見ているのだ。
(?)
俺はいつの間に美穂ちゃんの家に上がり込んでいたのだ?
それに、ここは美穂ちゃんのベッドの上だ。
美穂ちゃんや家族に見つかったら、警察に突き出されて今度こそ犯罪者として刑務所に送られるに違いない。
(やばいよ、やばいよ!!)
俺はベッドから降りようとしてバランスを崩した。
「きゃん♪」
俺は尻餅を突き、悲鳴を上げた…?
(きゃん?)
女の子じゃあるまいし、そんな可愛らしい悲鳴をあげるか?
いや、その悲鳴の声自体、女の子みたいにトーンが高くなかったか?
(な、何だ?)
その時初めて、俺は目の前にあり得ない物を見ていた。
(これは…)
それは「胸の谷間」であった。位置関係からすると、その谷間を作っている双つの膨らみは、どうやら俺自身の胸に付いているようだ…

 
ひとつの可能性が頭を過った。
「その人を思い通りにする事ができる」と男は言っていた。
たとえば「憑依」なんかしてしまえば、言葉通りに自分の思い通りできるのだろう。
俺は鏡を探した。美穂ちゃんの机の上にはお化粧の為だろう、鏡が置いてあった。
覗き込むと、そこには美穂ちゃんの顔があった。
(もっと大きな鏡は?)
クローゼットの扉の裏側だ♪
そして、扉を開けると美穂ちゃんの全身が映しだされた。

ひとしきり、様々なポーズをとらせた後、俺は美穂ちゃんを「俺」の部屋に向かわせる事にした。
俺は、お気に入りのワンピースに着替えると、机の上の鏡を見ながら寝乱れた髪にブラシを掛け、軽くお化粧して出掛けた。

今日はストーカーがいない事が判っているので、気分が軽かった。
俺は何の疑いもなく「俺」の部屋に向かっていた。

 

カギの掛かっていないドアを開ける。
玄関でサンダルを脱ぐと、まっすぐに「俺」の部屋に入った。
部屋の真ん中に男が倒れている。「俺」だ。
手には例の筒が握り絞められていた。
寝息が聞こえたので、どうやら死んではいないようだ。
しかし、こんな所に倒れていては邪魔なだけだ。が、か弱い美穂ちゃんには、「俺」を仰向けに転がさせるのが精々だった。
(とりあえずは無視しときますか♪)

 
で、次に何をしよう?
折角、俺の部屋に美穂ちゃんが来てくれたのに、俺は何をしてもらうか全く考えていなかったのだ。
(とりあえず脱いでもらおうか?)
俺は窓のカーテンを閉めると美穂ちゃんのワンピースを脱がせた。
(これで良い?)
と「俺」に訊く
(まだだ。下着も取って全裸になれ!!)
(嫌よ。恥ずかしいわ。)
(何を言ってるんだ?俺の言う事には全部従う事になってるんだろう♪)
(はい…そうでした…)
俺は美穂ちゃんの下着を脱がせた。
俺の前に全裸の美穂ちゃんがいる。
(次は何をすれば良いの?)
(そうだな…俺のズボンの中からペニスを引き出せ。)
「俺」を見ると、ズボンの前が大きく膨らんでいた。
(勃起しているの?)
(ああ。全裸の美穂ちゃんを見ては勃起しないではいられないよ♪)
俺は「俺」の傍らに膝を突いて座ると、ズボンのベルトを外し、中から勃起した「俺」のペニスを取り出した。
(美穂ちゃんの手で弄ってくれないか?)
俺は「ハイ…」と言って、それを握った。
(でも、手だけで終わる訳ないよね…)
と頭の隅で思いながら、握った掌を上下に動かしていった…

 

 
ドクリッ!!
苦い粘液が俺の口の中に溢れていた。
「俺」のザーメンだ。
「俺」自身は美穂ちゃんに奉仕してもらって気持ちが良いに違いないのだろうが、今現在「奉仕」を行っている俺自身には何のメリットもないように思えた。
(次は美穂ちゃんのおまんこに挿れさせてくれないかな♪)
と、次の要求があった。
そこに至るのも必然とは思うが、美穂ちゃんはまだ処女なのだ。
それは俺の想像ではなく、俺は処女である事を知っていた…それは美穂ちゃん自身の記憶だった。
俺の内に美穂ちゃんの記憶の断片が紛れ込んできていた。
「美穂ちゃん」は「俺」の指示に従う事を嫌がっていた。
が、俺は「俺」の欲望を満たす事を優先した。それが俺の存在意義に違いないのだから…

俺は「俺」のズボンを剥ぎ取った。依然と「俺」のペニスは硬く勃起していた。
俺は美穂ちゃんを「俺」の上に跨がらせた。
ペニスの先端が股間に触れている。
俺は腰の位置を調整し、膣口に先端を誘導した。
ゆっくりと腰を降ろしてゆく。
俺の膣の中に異物が侵入してくるのが解った。
「痛ッ!!」
思わず声をあげてしまう。「俺」のペニスが処女膜を突破しようとしているのだ。
(さあ、挿れてしまおう♪俺と美穂ちゃんがヒトツになるんだ♪)
痛みを堪えて、更に腰を下ろす。尻たぶが「俺」の脚に触れ…密着した。
(俺と美穂ちゃんは、これでヒトツになれたんだね♪)

「それは良かったな。お前の望みは叶えられた訳だ♪」
男の声がした。
いつの間にかそこに、俺に筒を渡した男が立っていた。

(まずい。下半身まるだし!!)
(イヤッ。まっ裸じゃない!!)
(何で、エッチの最中に?)
(ドア、カギ掛けてなかった?)
様々な思いが俺の頭の中で一気に爆発した。
「望みは叶ったが、まだ満足できてないのだろう?私が手伝ってあげようと思ってね♪」
「手伝う?」
「そう。こうするんだよ♪」
奴は「俺」の髪の毛を抜くと、あの筒の中に入れた。
「さあ、これからが本番だよ♪」

思いもしなかった方向から声がした。
見ると「俺」が目を開き、卑しい笑みを浮かべていた。
「美穂ちゃんには、私が徹底的にオンナの快感を教えてあげるからね♪」
「な、何を言ってるの?あた…俺は男で…」
「おまたに私のチンポを咥え込んだ状態で、まだそんな事を言うのですか?」
「これは俺のだ。その体も…」
「貴女の体はそれでしょう?貴女が愛して止まないオンナのカラダ…」
力強い腕が、あたしをベッドの上に転がした。
「さあ、たっぷりとオンナの快感を教えてあげるよ♪」
あたしの膣の中で、彼のペニスが更に太く、硬くなったのを感じた♪

 

任務

その巡洋艦は単独である恒星系に向かっていた。
「本艦のミッションはこの恒星系より発っせられた怪信号について調査するものである。」
と艦長は言っていたが、我々下っ端は命令が下れば実直にこれを遂行するだけである。
そして、揚陸艇の発進指示が下りた。

 

巡洋艦は信号が発っせられたと推定された惑星の衛星軌道上にあった。
我々の任務は調査隊を揚陸艇で地表に送り届けるというものだ。
その先は「待機」。
調査隊が何らかの成果を持ってくれば、そのまま彼らを巡洋艦まで連れ戻す。
何らかの異常事態が発生すれば、調査隊の援護に向かう。
最悪の場合、艦長からの指示があれば、調査隊を残したまま巡洋艦に帰投する。
我々は実直なまでに命令を遂行するだけなのだ。

 

指示のあったポイントに揚陸艇を降ろした。
大気成分は地球と大差がなく、生命維持装置がなくても問題ない事は解っていた。調査隊は再度有毒物がない事を確認すると、揚陸艇のハッチを空けて外に出ていった。
隊は二班に分かれ、一方は信号の発信源に向かい、もう一方は降下地点からそう遠くない場所にベースキャンプを展開した。
キャンプに建てられた営舎の一棟から煙が立ち上った。
キャンプからは調理等で火を使っているだけだから気にするなと連絡があった。
我々は狭いコクピットに押し込められたまま、凝縮口糧の冷たい食事しか与えられない。
これも任務であるから、我々は実直に遂行するだけである。暖かなスープは任務が終わればいくらでも食べられるのだ。

彼らは近くの水源からポンプで水を汲み上げていた。
キャンプ内には充分な量の水がストックできるらしい。
聞く所によると、温水のシャワーが使えるそうだ。
が、我々に与えられた水分は生命を維持するために必要な最小限であり、巡洋艦に戻るまでは、この作業着を脱ぐ事も許されていない。

羨ましいとか、そういう問題ではないのだが、我々は「任務を遂行する」という意志に揺らぎを生じさせてはならないのだ。

 

その範囲であれば「待機」の間、我々にはかなりの自由が与えられている。
音楽を聴くもよし、読書をするもよし…

今、揚陸艇に残っているのは俺一人である♪
許されている範囲であれば、どんな事をしても構わないのだ。
どんな変な声をあげようが、誰に聞かれる心配もない。
俺はとっておきのエロビデオをセットした。
スピーカーからは淫靡なオンナの艶声が流れだし、コクピットを満たしてゆく。
俺の股間は一気に硬くなる。排泄器がズボンの中で追従してくる。
(排泄器は大小に限らず、なんでも吸引し股間を快適にしてくれるのだ)
俺はズボンの上から刺激を与えてゆく。女優の喘ぎに合わせて俺の逸物が女体を蹂躙してゆくのを想像する。
「どうだ♪感じるか?」
「ぁあ、良いわぁ♪凄い…。ああ、もっと突っ込んで~」
「イイとも♪ぐちゃぐちゃにしてやるぜ!!」
俺はシートに座ったまま、股間への刺激を強めてゆく。
「ああ、イイっ!!イっちゃう~~♪」
オンナが絶頂に達すると同時に、俺もズボンの中に白濁液を放出していた。

 

 

 
発信源に向かった隊は何の成果も得られずに戻ってきたようだ。
ベースキャンプが一時賑わいを増したようだ。営舎で料理がふるまわれているのだろう。
やがて、夜も更けて皆も寝静まっている。俺はセンサーに意識を集中していた。
想定外の外敵が居ないとも限らない。いざという時に調査隊に警報を送る事までは禁止されていない。
やがて、夜が明けると伴に俺は眠りに就き、目覚めればまたビデオを見て暇を潰していた。

 
異変の一報はベースキャンプからもたらされた。
隊員の一人に原因不明の発熱があった。
未知のウィルス等がないか、ベースキャンプの内外を再度確認した。
その間にも、発熱した隊員に染色体の異常が確認される。
やがて、特殊なフェロモンの存在が確認され、それにより誘発されたものであると特定されたが、その頃には隊員の体型は劇的な変化を遂げていた。
骨盤が広がり尻に脂肪が貯まっていった。腰まわりの肉は削り取られ、その分が胸に堆積してゆく。
皮膚は色素が現象し、体毛が細く柔らかくなっていった。
顔は丸みを帯び、細くなった首元から喉仏の膨らみが消えていた。
彼は「女」に変わっていた。

異常のあった染色体は性染色体で、男のものから女のものに変わっていた。
染色体の情報に従い肉体が再構成されたのだ。発熱はこの再構成に伴うものと推測された。

この症状が特殊なフェロモンに伴うものであれば、既に調査隊の全員が吸入してしまっている事になる。
既に2人目、3人目の発症が確認された。
調査は中断される。
巡洋艦からは営舎の気密を確保し、洗浄の後、待機が命じられた。
その間にも調査隊の半数が発症していた。

更に事態が進展する。
肉体の再構成が終了すれば発熱は治まり、健康体となる。
が、精神は「男」のまま肉体は成熟した「オンナ」になった事で異常なまでに性欲に反応してしまうらしい。
気が付くと「男」の体臭に吸い寄せられ、男を押し倒してその性器に貪りついてしまう。
「男」の意識は拒絶しているのだが、肉体の欲求に抗うことができない。
更に罹症者一人がその行為に及ぶと、他の罹症者も誘発され、連鎖的に行為が広がってゆく。
なんとか罹症者を隔離したが、頻度は少なくはなったが、性欲は抑えきれず、罹症者同士で行為に及ぶ状態が続いていた。
そして、発症していなかった隊員であっても時間の経過と伴に順次発症していった。我々は傍観するしかなかった。
調査隊の全員が罹患している事はほぼ確実であった。
調査隊は決断を下した。
営舎の気密扉が次々と開かれていった。
中からは全裸の女逹がわらわらと出てきた。
そして、巡洋艦に補給物資が欲しいと連絡が入った。彼…彼女等はこの惑星に骨を埋める覚悟ができたようだ。
補給品は彼女等が(女性として)生活するに必要なもの、そして可能な限りそれらを再生産できる設備等であった。
勿論、これらを運ぶのは俺の役目である。直ちに揚陸艇を衛星軌道上の巡洋艦に向け発進させた。

 

 
補充品を下ろすと、俺は再び待機となった。巡洋艦が追加物資の受け取りに最寄りの中継基地に向かったからだ。
そして、今回の待機はコクピットを離れる事もに許されていた。
積み荷を下ろしたその夜。調査隊の隊長だった女が、俺を営舎での食事に誘ってきた。

その夜の俺はハーレムの主人であった。
豪華な料理がふるまわれ、全裸の女逹にサービスされる…それは、勿論食事だけではない。
女逹は性欲を持て余していたのだ。
女逹が一気に俺のペニスに群がって来る。ここ暫く遭遇していなかった「オンナ」の芳香にクラクラする。
気が付くと、俺も全裸になり、代る代る女逹と交わり続けていた…

朝、目覚めると朝食が用意されていた。
食事を採り、シャワーを浴びた後、俺は揚陸艇に戻った。
そのまま、あの場所にいては、昼間から際限なく絞り取られそうに思えたからだ。
とはいえ「待機」である事には変わりはない。
俺はコクピットに収まり、これまでと変わらぬ時間を過ごす事になった。

が、彼女等に絞り取られ過ぎたか、エロビデオを見てもあまり興奮してこなかった。
それでも何本か見て、まだ陽の高いうちに眠りに就く。やはり、夜の監視はあった方が良いだろうと判断したからだ。

 

巡洋艦からの呼び出し音に目が覚めた。
(もう戻ってきたのか?)
と、日付を確認すると、俺が寝てから既に3日が経過していた。
胸元の苦しさに違和感を覚えたが、先ずは艇内外の状況を確認する。
異常は認められなかった。
そこに再び巡洋艦からの呼び出しがあった。
「こちら、揚陸艇です…?」
声の調子がおかしい。俺の声ではないみたいだ。
『やはり、お前も発症してしまったか?』
(発症?)
ようやく、自分自身を確認しなければならない事に思い至った。
服はかなり水分を含んでいた。発熱・発刊が続いた証しだ。
胸元の苦しさは、俺の体型が変化したからなのであろう。
股間を確認すると、俺がもう「男」ではない事を如実に語っていた。
「どうやら、そのようですね。」
その声もまた「女」のものだった。
『要求のあったものは全て持ってきた。これを降ろしたら、この惑星は封鎖される。悪いが、お前も艦に戻す訳にはいかないのだ。」
「俺も…ですか?」
「イイ女になったんで抱いてもやりたいが、規則なんでな。積み荷を降ろしたらお前の任務は解かれる。お前を束縛するものはない。宇宙に上がろうとしない限り、お前は自由になるんだ。」

「抱いてやる」との言葉に俺の肉体が反応していた。
股間の湿度が増し、愛液が滴っていた。
そして、それが叶わない事と知ると、重苦しい喪失感に包まれていた。

 

 

巡洋艦からの荷物を運び終えると、俺は揚陸艇のエンジンを止めた。
静寂が広がる。
俺は本当にもう、二度とこのコクピットに戻る事はないのだろう。

ベースキャンプでは彩々りの服を着た女逹に迎えられた。
「貴女もわたし逹の仲間よ♪さあ、相応しい服に着替えて寛いでね。」
ここにはもう裸の女はいない。俺が降ろしてきた物資が有効に活用されているようだ。

 

 
そして、夜になる。

ここにはもうハーレムの主はいない。
が、妖艶な宴は今宵も開かれていた。
「貴女にいろいろと持ってきてもらって助かったわ♪」
そう。今のこの惑星には「女」しかいない。先日、俺が招かれた宴でも女同士で交わっていたが、それはお互いの指などで慰めあう程度でしかなかった。
俺が持ち込んだ資材の中には、男のペニスを模したものが大量に含まれていたようだ。

「貴女も、コレ、欲しいんじゃない?」
彼女がガウンをはだけると、全裸の股間が露になった。
(ごくり…)
俺は唾を呑み込んでいた。
彼女の股間には、ベルトによりディルドゥが装着されていた。
俺は黒光りするペニスから目が放せなくなっていた。

 
任務から解放された今の俺には、束縛するものなど何もない。
「ああ、イイっ!!イっちゃう~~♪」
俺はビデオの女優と同じように、絶頂に達するとオンナの嬌声を放ち続けていた♪

 

呪い

「最近、変な女につきまとわれていたんだ。」
久しぶりに親友の雄司に会うなり、俺は愚痴を吐いていた。

雄司と会うのが久しぶりなのは、俺が毎日のように違う女と付き合っているからで、俺が会いたいと思わない限り時間が取れないからだ。
そして、その変な女は俺の付き合っている女逹の一人ではない。その容貌では、俺から声を掛ける事さえあり得ないだろう。
「女ストーカーか?」
「そうなんだ。昼も夜も、気が付くと目の端にそいつが紛れ込んでいるんだ。」
「偶然とか、見間違いなんかじゃないのか?」
「まあ、怖がっていれば、どんな影でもお化けに見えるようなものかも知れない。」
俺は店の中に彼女がいないかと目を走らせてみた。
「夜、窓の外に気配を感じるのも毎晩の事になっている。少し寝不足にもなっていた。」
「それはちょっと不味い状態じゃないか?何か証拠でもあれば警察に突き出してやろうぜ。」
と雄司は言ってくれるが、その女の存在を証明できるものは…
「証拠として唯一あるのは、先日届いたこんなメールくらいかな?」
俺はメールの文面を雄司に見せた。
そこには『あなたがあたし以外の女と付き合っているのを見続ける事に我慢ができなくなりました。他の女と付き合えなくなるよう呪いを描けさせてもらいました。』とあった。
「送信元はフリーメールか。相手を特定する事は難しそうだな。」
「それより気になるのがその文面なんだ。呪いとか書いてあるだろう?」
「呪いなんて迷信だろう?それとも何か心当たりがあるのか?」
「多分、呪いの所為なんだと思う。このメールを受け取って以降、あれだけ付き合っていた女の子逹に会いたい・抱きたいと思わなくなっていたんだ。」
「そのストーカー女しか愛せなくなったということか?」
「それとも違うんだ。女性全般に対する性欲が失われてしまったようなんだ。」
「性欲がなくなった?」
「いや、なくなった訳じゃないんだ。方向が変わったみたいなんだ。」
「方向が変わった?女ではなく、男が好きになった?」
「そうなんだ。俺はお前を愛している事に気がついた♪大好きだ雄司♪俺を抱いてくれないか?」
「ちょっと待て。お前とは親友だが、俺には男を抱く趣味はない!!」
「問題ないよ♪今のボクはもう男じゃないんだ。胸はまだ発育途中だけど、股間はもう完全に女の子だよ♪」
「股間は…って、お○んこがあるのか?」
「ええ。今朝起きた時にはもうおち○ちんはなくなってたわ。おしっこは座ってしたのよ。その時に確かめたら、割れ目の奥にちゃんとお○んこも出来ていたの♪」
喋っているうちにあたしの声はだんだん高くなって、他の女の子と変わらなくなっていた。
胸が苦しくなるくらい、バストが急速に膨らんでいった。髪の毛が伸び、指が細くなった。
あたしは完全に「女の子」になってしまったようだ。

「お前…」

雄司があたしを見つめている。
その瞳にはある決意が窺えた。
「な、なんでお前は俺の好みにドストライクなんだ!!いくらでも抱いてやるぞ♪」
その夜、あたしはあたしのハジメテを雄司に捧げたの♪♪♪

 

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