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2014年11月14日 (金)

パートナー(前)

「どあぁぁぁっ!!」
俺は気合いを入れて長剣を振るった。
雑魚どもが一気に斬り倒される。
「力を使い過ぎるな。先はまだ長いぞ。」
相棒のハシスが俺をたしなめる。
「いつでも全力全開。それが俺のモットーだ!!」
俺はそう言い放つと、次の雑魚どもに斬って掛かっていった。

 

俺たちは賞金稼ぎだ。あちこちのダンジョンに潜む魔物を退治して報奨を獲るのを生業としている。
賞金額の高い魔物程深いダンジョンに潜み、大量の手下をはべらせている。
魔物自身も数々の魔法で護られているため、容易に攻略する事ができない。
とはいえ、俺たち賞金稼ぎは事前に復活の魔法を仕込んでからダンジョンに突入するので、仮に奴等に倒されても「死」ぬ事はないようになっている。
(但し、復活の魔法は高価な為、一度使うと次を仕込むのに必要な資金を貯め込まなけれならない↓)
とはいえ、この程度の階層でへたばっていては、二つ名を持つ俺としては心外この上ない。
俺はハシスとともに一気に三階層を下っていった。

「意外とあっさり降りてこれたな♪」
俺は四階層目に移動しながらハシスに言った。
「まあ、お前の腕なら…って事もあるが、雑魚が弱かったのも確かだ。こんな時はえてしてトラップが仕掛けられているものだ。」
「問題ないよ。トラップごと片付けてやるよ♪」
「そうもいかないのがトラップだろうが?」
俺はハシスの話が終わるのを待たずに四階層の扉を開けていた。
「おお、ここでもう中ボスか?」
待ち構えていたのは雑魚の他に、多少は魔法も使える2体の魔物がいた。
「雑魚は任せた♪」
とハシスに言い渡すと、俺は中ボスに向かった。
2体の真ん中を突っ切る。やはり反応速度には違いがあった。
奴等が連携攻撃を仕掛けてくる前に反応の良かった方と対峙する。
できれば奴の動きを封じてからゆっくりと止めを刺したいのだが、今回はもう1体魔物がいる。
一気にカタを付けるために、俺は直接急所に狙いを点け、長剣を突き刺した!!

中ボスの1体は倒れた。
俺はもう1体と対峙する。長剣はさっきの奴に刺さったままなので、短剣で戦うしかない。
こいつは、運動能力は低そうだが、装甲が厚くいかにも頑丈そうである。
もちろん、急所は巧みに隠されている。短剣でそこまで届くか一抹の不安が過る。
先ずは揺さぶりを掛けて奴を動かす。動けばどこかに隙ができる。
俺は奴の周囲を廻り、攻撃を加えてゆく。
繰り返される攻撃で装甲に傷でも付けば、奴も動かざるをえなくなる。
そして…奴が動いた。
奴の攻撃は余裕でかわせる。更に奴を動かす…
その一瞬を逃さず、俺は全体重を掛けて奴に体当たりした。
奴はバランスを崩し仰向けに倒れる。
急所が露になる。
その一点を目掛けて短剣を突き立てる…が、切っ先は急所に届いていない!!
「受けとれ!!」
ハシスの声とともに俺の長剣が飛んできた。
短剣から手を放して長剣を受け取る。
奴の急所はいまだ曝けだされたまま。
間髪を入れずに俺の長剣はそれを貫いていた。

 
「結構手こずっていたようじゃないか?」
とハシス。
「たまにはこんな事もあるさ♪」
と俺は短剣を拾い上げた。
そのまま宝物箱に近づく。手にした短剣で封を切り、蓋に手を掛けた。
「気を付けろ。トラップだ!!」
ハシスの叫び声を聞いたが、蓋を開ける動作を止めるまでには至らなかった。

閃光が弾ける!!
すべてが光に包まれた。

俺の肉体が光に溶かされてゆくような感じがした。
そして、そこで俺の意識は途絶えてしまった…

 

 

 

目に映ったのは、安宿の天井に違いない。
今俺は安宿のベッドに寝かされているのだろう。
「気が付いたか?」
とハシス。
「復活の魔法が発動したのではないようだな。」
「そうだ。俺がダンジョンから運んできた。」
「ご苦労だったな。重かったろ?復活の魔法を使えば楽だったろうに♪」
「トラップの所為でな。ちょっと面倒な事になっている。それに今のお前ならそう重たくはない…」
「歯切れが悪いな。何か隠し事でもあるのか?」
「べ、別に隠そうとしている訳でもないのだが… お前、何か気付いた事はないか?」
「気付く…って、何をだ?」
そう言って、俺は自分の声がいつもと違っている事に気付いた。
「むふんっ。ああ。あ~~…」
「どうだ?」
「声がおかしい。普通に喋ると、いつもより高い声が出てくる。」
「それだけじゃない。お前、かなり軽くなっている。街中にいる女の子と較べても軽い方じゃないか?」
俺は腕を伸ばして見た。これまで鍛練を重ねて築き上げたぶ厚い筋肉は跡形もなく失われてしまっていた。
それは筋肉だけではない。骨格さえも華奢になってしまったようだ。
体毛もあるかどうかわからない肌はすべすべで色白…それはまるで「女」の腕のよう…

(?!)

「女」のよう?
それは「腕」だけではない。
俺の「声」は女みたいに高くなっている。
ハシスは俺の体重も女と同じと言っていた…
(まさか?)
俺は伸ばした腕を曲げ、掌を胸に充てた…
そこには、男にはある筈のない膨らみがあった。
指に力を入れると、それを掴む事ができた。
ゆっくりと指を動かすと、女の胸を揉んでいるのと同じ感触がある…
だが、俺の胸からは揉まれている感触が伝わって来た。
(ごくり…)
俺は唾を呑み込んだ。
もう一方の手は俺の股間に到達していた。
掌をその上に被せる。
ゆっくりと圧してゆく。
…いつもの「存在」が感じられない。
そればかりか、中指が肉に挟まれていた。
そこに「女」のような…「ような」ではない。この割れ目は「女」の股間そのものに違いない。

「…お…俺は、女になってしまったのか?」
「ああ。その場に居合わせた俺でさえ、こんな可愛い娘がお前だと信じる事が難しいくらいだ。」
(?)
ハシスの言葉に違和感があった。
いや、ハシスの言葉に反応した俺自身に違和感がある。
「女」になってしまったというとんでもない人生の一大事だ。
その悲惨さに押し潰されてもおかしくない状況である。にも拘わらず…
…「可愛い」というハシスの言葉にウキウキしている自分がそこにいた。

 

 

 

「あの長剣は、今のお前には絶対無理だ。」
俺たちは賞金稼ぎ向けの武器屋に来ていた。
ハシスはこんな姿になってしまった俺が賞金稼ぎを続けるのは無理だと言っていたが、俺はまだまだハシスと一緒にこの仕事を続けていたかったのだ。
やはりと言うか「女」向けの防具は露出度が高く、肉体のラインを強調するものばかりだった。勿論、防護魔法で露出部は被われており、デザインも体の動きを阻害するものではない。
…が、やはり「男」の意識のままコレを着るには恥ずかしいことこの上ない。

そして、防具の次に武器を選ぶ。
俺の戦い方からして長剣以外のモノは考えていなかった。
できれば同等の強度で軽めのものを…と思っていたが、この腕で振れるモノとなると、美術品のような細身の剣しかなかった。
「こんなのじゃ、即に曲がったり折れたりするんじゃないか?」
とついつい「俺」の長剣と比較してしまう。
「今のお前では、あの長剣が扱えない事は解っているだろう?なら、少しは技を磨いてこういう剣でも戦えるようにするしかないね。」
今さら弓や薙刀に鞍替えするのも考えられない。俺は最後に手にしていた細剣を買うことにした。

「じゃあ、次に行こう♪」
「まだ何かあったか?」と俺は買い揃えたものに不足がない事を再確認した。
「お前の服を買わなければな♪」
「服なんて、今着ているこいつ一枚で充分足りてるぜ?」
俺はハシスが用意してくれた女物の軽装を確認する。ボトムはジーンズのショートパンツ。上は伸縮性のある下着に袖無しのジャケットを羽織っている。
男の意識のままの俺がなるべく抵抗なく着れるようにと選んできたようだ。が、
「女の子が同じ服を着続けるなんて考えられないぞ!!」
と、武器屋で買ったものは宿に送らせ、俺逹は次の店に入っていった。

……

多くは語らない。
想像通り、俺は着せ替え人形にされてしまった。
更に、何故か俺逹は店の人に恋人同士と間違えられていた。
まあ、今の俺は見た目「女」でハシスとはベッドこそ別であるが、同じ部屋に寝泊まりしているのだ。
そのような勘違いも否定はできないのだが…
「彼って優しい?夜は激しいの?」とか聞かれ、適当に返事をしていたが…よく考えてみると…
俺がハシスと「男と女」の関係を営んでいると見られていたのだ。と、後になって気付いたのだ。
つまり、女である「俺」がハシスの男性自身を受け入れるということ…
俺がハシスに抱かれ…
組み敷かれ…

そんな事を考えていると、俺の下腹部の奥が熱くなり、疼いてきた。
ジュンッと股間に何か滲み出てくるものがある。
股間が濡れている?
そう、女が性的に興奮すると愛液で股間を濡らすというが、まさにそんな状態になっていた。

…って、「俺」が愛液を滴らせているのか?!
俺の肉体は「女」であるのだから、女と同じ機能があってもおかしくはない。
男を受け入れる「膣」があり、よりスムーズに受け入れられるよう愛液を漏らす…
と言う事は、今の俺には子宮や卵巣があり、条件が揃えば「妊娠」することもあるっていう事だ。
妊娠し、胎児が俺の腹の中で大きくなる。
月が満ちて出産し、生まれた赤ん坊に俺がこの胸から母乳を与えている。
母になった俺…この子の父親は、

ハシス?

 

 

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