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2014年11月14日 (金)

パートナー(後)

 
俺はひらひらのスカートを揺らして街を歩いていた。
街の中には同じような格好の娘が何人かあるいていて、殊更俺が目立つような事はなかった。
が、こんな姿の娘が武器屋に居ると話しは別となる。
彼女逹は武器屋ではなく、ブティックやアクセサリーショップに足を向ける。
今の俺は、この体に馴れることが目的になっている。となると、その行き先は武器屋ではない。
ブティックは先日の着せ替え人形の記憶が鮮明だったので、アクセサリーショップに向かった。
先客がキャピキャピ言いながら髪飾りを選んでいた。
俺は彼女等から少し距離をとり、ネックレスやブローチを眺めていた。
改めて女が使うアクセサリーの多さに驚かされる。
いずれは俺もピアスやネイルをすることになるのだろうか?いや、それ以前に「化粧」というハードルがある。
ハシスは化粧まではしなくて良いとは言っているが、この周りに化粧をしていない女など目に付かない。
俺の足は無意識のうちに化粧品のコーナーに向かっていた。

そこには様々な薬瓶が並んでいた。
当然のように、瓶のラベルからして何のことだかちんぷんかんぷんである。
「お試しになりますか?」
と店の人が声を掛けてきた。
「あまり濃くならないようにしましょうね♪」
俺を椅子に座らせると、俺の顔に化粧品を塗り付けていった。
「若いうちからお肌に栄養を与えていないと、年を取ってからの老化の度合いが違いますよ。」
とマッサージも兼ねて刷り込んでゆく。
その上に筆で陰影が描かれてゆく。とくに目のまわりは丹念に描き込んでいた。
最後に口紅を塗り
「どお?」
と鏡に写る俺の顔を見せた。
あまり派手ではないが「お化粧をしている」とはっきりわかる。
唇の赤さは当然だが、目が一回りも二回りもパッチリと大きくなっていた。
「化粧まではしなくて良いよ」とハシスは言っていたが、可愛さ・美しさがこれだけ顕著にアップするのだ。
(ハシスも喜んでくれるよね?)
俺は今使った化粧品と化粧道具を一式買うことにした。
「これはサービスね♪」
と可愛い化粧ポーチも用意してくれたので、俺は益々気分が良くなっていた。
「これなんかも可愛いかも♪」
と店に来ていた女の子逹に混じって、アクセサリーを試着していた。
ネックレスと髪飾りも購入して、宿に戻ったのは、陽も暮れかけた頃だった。

部屋ではハシスが様々な情報と格闘していた。
「ただいま。ハシス♪」
と声を掛ける。
「どうだ?馴れたか?」
と振り向いたハシスが一瞬凍りついたようだ。
「本当にお前か?」
ようやくそれだけ声が出た。
「少しお化粧もしてみたんだ♪どお、似合ってる?」

 

俺はハシスに顔を近付けた。
「な…何と言って良いか…か、可愛いよ。」
しどろもどろではあったが「可愛い」と言ってくれた。
「ありがとう♪」
俺はそのままハシスに抱きついていた。

「ち、ちょっと離れてくれないか?」
とハシスが俺の上機嫌を中断させる。
「馴れろとは言ったが、女になりすぎてないか?」
「な、何だよ。俺は少しでもハシスに喜んでもらえるようにって…」
「それは有り難い。が、その発想自体が今までのお前にはなかったんじゃないか?」
「そ、そうかな?」
「それっ!!そのしぐさも無意識に出てるのか?」
しぐさ…って、俺は今女の子がするように可愛らしく小首を傾げていた?
「お、俺…そんなつもりじゃ…」
「そこで目を潤ますな!!」
(涙?)
俺は今にも泣きそうにハシスを見上げていた。
「先ずは化粧を落として来い。顔を洗って来るんだ。」
「わかったわ。」
俺はハシスに背を向け、洗面台に移動した。
石鹸を顔中に塗り込み化粧を落とす。
鏡には化粧の落ちた俺の顔があった。
(でも、お化粧と肌の手入れは別だよね♪)
俺は化粧水を叩き、保湿液を顔に刷り込んだ。
(できれば口紅だけでもしておきたい…)
でも、ハシスは嫌がるのだろう。俺は手櫛で髪を整え、再び髪飾りを付けてハシスの元に戻った。
「飯食いに行くか?」
と彼が立ち上がる。
(な、何で?今お化粧落としたばかりじゃない!!)
何故か俺は化粧をしないで公衆の面前に出るのを恥ずかしいと思っていた。
「どうした?」
躊躇っている俺にハシスが声を掛けてくる。
化粧を落とせと言ったのはハシスだろ?と言いたかったが、言った所で彼に理解できる筈もない。(俺自身も理解できていないのだ)
だから、今はハシスに従って食事に出るのが最良の選択肢なのだろう。
俺は彼と並んで宿を出ると近くの居酒屋に入った。

 

「カクテルを呑んでみたいな♪」
と言うと
「この間まで酒は生のままが良いと水で割るのも嫌がっていたんじゃなかったか?」
「何かそんな気分なのよ。文句ある?」
「文句はないが、食うのも肉ばっかり食っていたのが、今日はサラダが中心になってないか?」
「多分、この肉体の嗜好なんじゃない?馴れるにつれ、この肉体の欲求に流されてしまうようになっちゃったみたい。」

 
「って、こんなにも酒に弱かったのか?」
酔いが全身に廻ってしまったようで、手足にぜんぜん力が入らなかった。
俺はハシスに抱えられるようにして店を出た。宿までは近いので何とか戻れたが、俺はそのままベッドに倒れ込んでいた。
「気分は?」
とハシスが俺の顔を覗き込む。
俺は手を伸ばし彼の首に手を掛け、そのまま引き寄せた。
ハシスの唇が俺の唇と合わさる。吸い付いて舌を伸ばし、彼の舌に絡める。
彼の唾液が俺の口の中で俺の唾液と混ざり合う。
「な、何だよ?突然に。」
ハシスは優しく俺を振りほどいた。
「俺…女なんだよな?」
「そうなってしまったな。」
「俺は女でハシスは男だ。だから…シて♪」
「お前、自分が何を言っているのか判ってるのか?呑み過ぎてるんだろ?」
「これは俺が…あたしが女に馴れる為に、絶対にしなければならない事なの。」
「よ、酔いが醒めてからもう一度考えるんだ。」
「こんな事、酔ってなきゃ言えないわよ。それにあんただって満更でもないんでしょ?」
あたしは彼のズボンに触れ、布地の向こう側が硬くなっているのを確認していた。
あたしは彼のズボンのベルトを外して直に手を触れた。それを外に導き出す。
コレが、この間まであたしの股間にも存在した等と思う事もなかった。
今はコレをあたしの股間に挿れてもらいたいとしか考えていない。
「どうなっても知らんぞ?」
「ええ。良いわよ♪」
彼の手があたしのスカートの中に入り、下着を外す。彼も下着を脱ぎ去り、あたしの上に覆い被さってきた…

 

 

 

 
「フリーズ!!」
俺の前でスライムが動きを止めた。
すかさず細剣を急所に突き立てる。
スライムは一瞬で消失した。

この肉体は魔法との相性が良いようで、かなり高等な魔法も難なく習得し、容易に行使できてしまう。
集団で押し寄せてきたスライムに対しては
「アーカイブ!!」
とひとまとめにして片付ける。
復活の魔法は効かなくなったが、転移魔法で危機を脱出できるようになった。

細剣の使い方にも馴れていた。
昔のように力押しするのではなく、風になびく柳のように受け流し、急所のみを的確に貫く戦法を身に付ける事ができた。
「おい。あまり無茶をするんじゃないぞ!!」
ハシスが心配げに声を掛けてくる。
「まだまだ大丈夫よ。これくらいでネをあげてては、あたし逹の子供は務まらないでしょ♪」

そう。俺の腹の中には新しい命が宿っていた。俺とハシスの子だ。
この子が産まれれば、俺は賞金稼ぎを辞め子育てに勤しむことになる。
だから、俺は一刻でも長くハシスと一緒に戦っていたかったので、いつにも増して精力的にダンジョンの攻略をすすめていた。

「オーバードライブ!!」
俺は加速して中ボスの懐に飛び込んだ。
そして、中ボスよりも早く魔法を唱える。
「アンロード・プロテクト」
中ボスの魔法防御を無効化する。
そのタイミングに合わせてハシスが突っ込んできた。
中ボスの意識が逸れる。
「ここッ!!」
と俺の細剣が奴の急所を突き抜けていった。

「さあ、ラスボスが待ってる。」
ハシスが手を伸ばす。
俺は彼の手に掴まり立ちあがった。
「あっ…」
俺が声を漏らすと「どうした?」とハシス
俺は彼を見上げ、にっこりと微笑んだ。
「お腹の中でこの子が頑張れって応援してくれてるわ♪」

俺逹は手を取り合って、次の階層に降りていった。

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