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2014年8月 7日 (木)

暗示

ヘッドホンを外した。

ボクはそこが自分の部屋のベッドの上である事を確認する。
今まで聞いていたのはネットから入手した催眠音声だ。
ちゃんと解除音声まで聞いた筈だけど、まだ少し催眠暗示の効果が残っているみたいだ。

勿論、勉強の為の暗記学習なんかではない。18禁のアダルト版だ。つまり、ボクは催眠効果の中でセックスを経験してきたのだ。
当然の事だけど、ボクは童貞で、特定の恋人もいない。…と言うより、催眠効果の中では、ボクが本来経験できない立場でのセックスをしている。
ボクは「女の子」として男に抱かれ、彼のペニスで膣を貫かれ、胎内を精液で満たされるのを疑似体験していたのだ。

その時の精液が、まだ胎内に残っている感じ、膣に挟まったペニスの感じが引き続いている。
しかし、胸に手を宛てても、彼に揉みしだかれた乳房は存在しない。
ズボンの中に手を入れると、おしっこをするだけの器官に手が触れる。勿論、その裏側に膣口が開いている訳ではない。
股間は汗で少し濡れているが、あれ程淫らな音を発てていたボクの愛液や彼の精液は痕跡さえ残っていない。
全てはボクの頭の中だけに繰り広げられた幻でしかない…

 

 
金曜の夜から日曜にかけては十分な時間があった。
ボクはパーフェクト版を試してみる事にした。
ベッドの上に寝て、ヘッドホンを装着すると、再生を開始した。流石にパーフェクト版だけあって、一気にいつもより深い催眠状態に落ちていった。

「意識はありますか?」
ナビゲータの女性の声が聞こえた。ボクの頭の中では様々な情報が混沌と押し込まれたような感じで、少しふらつくような気もした。
「大きく深呼吸しましょう。さあ、吸ってー…」
ボクは女性の声に従い、深呼吸をした。少し落ち着いた感じになる。
「先ずは最初のミッションです。貴女の頭の中には、既に必要な物が何かは詰め込まれています。貴女の部屋の中を確認して、不足しているものを洗い出してください。」
ボクはヘッドホンを外して立ち上がると、引き出しの中などを探してまわった。
見つかったのはタオルやハサミなどものの数点だけだった。
再びヘッドホンを着けると次の指示があった。不足しているものをネットショッピングで購入するのだ。
ボクは何の疑いもなく、化粧品や女の衣服を発注していた。
「夜更かしは美容の大敵よ。今夜はもう寝ましょうね♪」
ボクは何も考えることなく、彼女の指示に従っていた。

 
朝、目が覚めるとシャワーを浴びた。それは寝汗を流すだけでなく、無駄毛の手入れも含まれていた。
体毛を剃り落とし、肌から石鹸の臭いがするくらい刷り込んで仕上げた肌は、ピチピチ・スベスベになっていた。
そう、ボクはまだ催眠暗示の中にいた。寝ている間に更にさまざまな指示が与えられていた。
ボクは何の疑いもなく、指示された事を実行していった。
時間指定で届いた宅配便の箱から、下着を取り出し身に着ける。
勿論、下着はブラとショーツ…女の下着だ。更に、ミニのスカートにブラウス。カーデガンを羽織った。
次に、机の上に鏡を立ててお化粧を始める。
これまでもお化粧はさんざん疑似体験してきたので、手順に不安はない。
目の周りを決め、眉毛を整える。髪の毛が短いのでボーイッシュにまとめた。
唇にグロスを塗ってお化粧はとりあえず完成。
(ネイルまでやりたかったが、初心者じゃ時間的に無理よね♪)
お化粧の終わった姿をスマホに撮って指定されていたURLに送付した。

今度はスマホにステレオイヤホンを付けて次の指示を待った。
「お腹が空いたでしょ?外に食べにいきましょう♪」
ナビゲータの指示に従い、ボクはポシェットに必要なものを入れて、踵の高いサンダルを履いた。
駅前まで出てきた。
コーヒーショップでサンドイッチとアイス・カフェオレを頼んだ。
昨夜から何も食べていなかったのだが、何故か即にお腹がいっぱいになってしまった。
カフェオレをストローで少しずつ飲みながら、ボクは次の指示を待っていた。
「もう少ししたら男性が現れるわ。貴女の事をミカと呼ぶからハイと返事してあげてね♪」
(男性?)
「これから先は彼がナビゲートしてくれるから、スマホは切っても良いわよ。」
ボクはイヤホンも外し、その男性を待った。
(どんなヒトが現れるのかしら?)
ボクがわくわくしていると、30台後半のスポーツマン風の男性が近付いてきた。
「ミカちゃん?」
彼がボクに声を描けてきた。
「ハイ。」
言われた通りに答える。
「写真より可愛いね。」と彼
「写真?」
「ほら♪」
彼がスマホを操作すると、画面に今朝お化粧済ました後に撮った画像が表示されていた。
「君の今回の経験をお手伝いさせていただきます。佐伯と言います。よろしく♪」
「お手伝い…って?」
「ここからは僕がナビゲーションするから。聞いているよね?」
「は、はい…」
そこまでは女性ナビゲータから聞いていた通りだ。
「君は男性に抱かれたいのに、なかなか自分から行動できずに催眠音声に頼っていたんだろう?」
唐突な彼の言葉だったが、ボクは否定する事もできず首を縦に振っていた。
「そして、パーフェクト版を使う事にした。君はパーフェクト版についてあまり理解せずに始めたんじゃないか?」
恥ずかしさに消え入りそうだったが、またも首を縦に振る。
「パーフェクト版では、〈疑似〉ではなく実際に男性が相手をして〈本物〉を経験できるようになっているんだ。君のこれまでのアクセス履歴から、君の嗜好に合った男性として僕が選ばれたんだ。」
確かに彼は(女の子としての)ボク好みであるには違いない。が…
「これから僕が君をエスコートして、君が望んでいたコトを現実に経験するお手伝いをしてあげるんだ。」
「経験…って…本当にスるとこまでやるんですか?」
「…えっと、君はまだ処女なのかな?痛くはないようにするけど、どうしても処女のままでいたいと言うなら、やり方を変える事もできるよ♪」
「そ、そう言う訳じゃないけど…」
彼にはボクの事をどうやって伝えれば良いのだろうか?
ボクが本物の女の子でない場合まで彼は想定しているのだろうか?
ホモの場合、お尻の穴を使うって言うけど、そうなっちゃうのかな?
でも、ボクはホモなんかじゃないんだ。女の子として抱かれるのが良いんだ…

 

「ん……」
ボクは彼にキスされていた。唇を密着させる大人のキスだ。
それは、ボク自身の現実世界での初めてのキスだった。
抱き締められ、息を吸われて頭がぼーっとしてくる。
ここが、ホテルの一室であることは朧げに理解していた。
彼の手で服が脱がされてゆく。
スカートのファスナーが外され、足元に落ちると、下着だけのボクはお姫様だっこされていた。

ベッドに寝かされ、ブラの上から彼の手がボクの乳房を揉み上げてゆく。
(これは疑似体験ではなく、本当にボクの胸が揉まれているんだ♪)
彼の手が胸元からブラのカップの中に入ってくる。
パット越しではなく、彼の指が直接ボクの肌に触れていた。
「んあんっ♪」
彼の指に乳首を摘ままれ、ボクは声を上げていた。

「君は処女じゃないって言ってたよね?」
ボクは首を縦に振る。
「でも、実際の男性経験も無いんだろう?」
再び首を振る。
「そうだよね♪」
彼は合点がいったようだ。
「君のような娘には、ちょっと特別なメニューが必要だね。すこしチクリとするけど我慢してね♪」
と腕にアルコールを塗ったようなスッとする感覚があり、チクリて針が差し込まれた。
薬液が注入されてくる。
「副作用はないから心配しなくて良いよ♪」
針を抜いた跡を彼が優しく揉んでくれた。
体が暖かくなる。頭の中が霧の中に埋もれてゆく。だけど、彼の声だけははっきりと聞こえていた。
「今の君は、僕に抱かれようとしている〈女の子〉だ。それ以外の何者でもない。」
ゆっくりと、彼はボクに言い聞かせるようにそう言う。
(今のボクは女の子…)
それが催眠暗示の続きである事に気付くことはなかった。
「他の娘より多少発育が遅れているけど、ちゃんと胸で感じる事ができたでしょう?」
(うん。乳首を弄られて声をあげちゃった♪)
「君はちゃんと〈女の子〉になっているんだよ。勿論、お股もちゃんと女の子になっている…」
(お股…って?)
「脚を広げてご覧♪お股の縦筋の中には、女の子の証のクリトリスがあり、その先には膣口が開いているよ♪」
ボクが自分の股間を覗き込むと、彼が股間の縦筋を開いて膣口に指を充てていた。
「ほら、もうじくじくと愛液が染み出てきているだろう?ココはちゃんと男性を受け入れる準備ができているんだ♪」
「っああっ!!」
彼の指が少しだけ、ボクの膣の中に入ってきた…
「大丈夫。君は問題なく男性を受け入れる事ができるよ♪」
彼の指がクニクニとボクの膣口を揉み解していた。
「じゃあ、いくよ♪」
彼の言葉にボクは首を横に振っていた。
すると彼が伸し掛かってきた。

全裸の肌と肌が触れ合う。
彼の暖かさが伝わってくる。
広げられた股間に、彼の腰が降りてくる。
膣口に触れたのは彼の指ではなく、ペニスの先端?

「息は止めないで、ゆっくりと、大きく…」
彼に誘導されながら、すー、はーと深呼吸を繰り返す…

  ずんっ!!

と、彼のモノがボクの中に潜り込んできた。
「感じるかい?僕は今、君の中にいる。君と僕は繋がっているんだ♪」
ボクは首を縦に振った。
「よい娘だ♪じゃあ、激しくいくぞ!!」
彼が動き出す。ボクの中でペニスが動いている…快感が沸き上がってくる♪
「ああ、いいっ♪」
「お前も、僕との相性は最高だ♪良い感じに締め付けてくるぜ。」
ボクは彼のペニスの先端が子宮口に触れるのを感じていた。
(…子宮?)
一瞬、違和感を感じた。が、違和感は即に霧散する。
(今のボクは女の子なんだ。彼のペニスを受け入れているのは膣だ。その先に子宮があるのは当然じゃないか♪)
ボクは単純に納得していた。

そして、ボクは彼の手で次々と快感を開発されてゆく。
その度に高みに放り上げられる。
「ああ、またイく♪イっちゃう~!!」
彼の精液が膣の奥に打ち付けられる。
快感に絶叫する。
頭の中が真っ白に染め上げられた…

 

 

ボクは気を失っていたようだ。
ホテルのベッドの上である事は既に把握していた。が、部屋の中はボク一人のようだ。
彼の姿はどこにもない。が、ボクの脱いだ服は綺麗に畳まれてテーブルの上に置かれていた。

頭の中はまだぼーっとしていた。
確かにボクは現実世界で(疑似体験ではなく)女の子として彼に抱かれ、貫かれ、イかされたのだ。
ボクはハジメテを経験し、処女ではなくなった…筈だ。

けれど、本当にそれは実際に実体験したものだったのだろうか?
ボクの体に付いた汚れ…彼の精液やボクの愛液(?)…は綺麗に拭われていて、それが存在していた事を確認できなくしていた。
胸は元通り、平らに戻っている。
催眠暗示から醒めたボクは自分が「男」である事を認識していた。

まだ頭の中はぼーっとしているが、いつまでもホテルに居続ける事はできない。
下着だけの半裸状態であったが、先ずは服を着なくてはならない。
しかし、着てきた服は女物だった。(勿論、着ていた下着も女物だ。)
昨日は自分を「女」と思い込んでいたのでそうは思わなかったが、女物の服を着るということは「女装」するという事だった。
疑似体験で覚えた化粧もして、完璧な「女装」でホテルを出た。
お日様は高く、もうすぐお昼の時間になるようだ。
日曜の駅前には人々が行き交っている。「男」も、「女」も…
女の服を着たボクは「女」として認識されているのだろうか?
そんな事を考えながら、ぼーっとしたまま部屋に戻ってきたボクは、それ以上何も考える事ができず、結局夜寝るまでスカートを穿いたまま過ごしてしまっていた。

 

 

それは次の土曜日の事だった。
それまでの一週間はこれまでと変わらずに過ごしていたが、その日のボクは何故か朝からスカートを穿いていた。
そして運命の電話が掛かってきた。
スマホから呼び出し音が流れて、耳に当てる。

『ミカ?』と彼の声。
彼の声を聞いた途端、股間がむずむずしていた。
(催眠暗示の影響?彼の声に反応したのか?)
『出れる?』と彼。
ボクは「はい」と答えていた。

電話を切ると、即にも出かけたい欲求を圧して、股間のむずむずの正体を確認すべくトイレに入った。
スカートをたくしあげ、ショーツを下ろして便器に座る。
そして、股間を覗き込んだ。
(…)
ボクの股間には縦筋があり、割れ目は少し湿り気を帯び始めていた。
(いつの間に女の体になった?いや、そもそもこの一週間、ボクの股間にペニスは存在していたか?)
記憶を辿る。確かに、立って小便はしていなかった…

 
ボクは先週の喫茶店で彼と待ち合わせ、そのままホテルに向かった。
その晩も彼に抱かれ、次々と快感が開発されていった。
そして、快感に意識を失う…

「さあ、これでパーフェクト版もエンディングだ。君に最期の暗示を与えるね♪」
彼の言葉に、今日彼と会う事が予め設定されていたものだったと気付いた。
「君は現実の男性に抱かれる事を怖がっていた。だけど、実際に僕に抱かれ、本当の女の快感を得ることができた。それは今夜も確認できた事だよね?」
彼が優しい目でボクを見つめている。
「もう怖くないね♪今の君は充分に魅力的な女性だよ。だれにでも声を掛けてごらん。きっと応えてくれるよ♪」
そう言ってボクに口づけをする。
うっとりとして瞼を閉じる。
しばらくの後、彼の唇が離れる。
余韻を惜しむかのように瞼を開くと、
もうそこには彼はいなかった。

 

ボク…あたしは立ち上がった。
あたしはもう一度、自分が「女」である事を確認した。
(そう♪もう何も躊躇うものはないのよ!!)
あたしは自信をもって街に出ていった。

 

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