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2014年8月 7日 (木)

RPG

電車の車窓を赤く燃えているような塊が過っていった。
「翼竜め。とうとう居場所を突き止めたか!!」
俺の隣で携帯ゲーム機を手にした男が呟いていた。
「先ずは防御結界が必要だな。グライツ、頼むぞ。」
男がそう呟くと、男を挟んで俺の反対側にいたサラリーマンが立ち上がった。
一瞬後、彼の服が魔導師のローブに変わっていた。彼は手にした杖を掲げ呪文を唱え始めた。
が、一瞬遅かったか、頭上を掠めた翼竜の火焔弾が電車の屋根を吹き飛ばしていた。
「ドワーフ達。時間を稼いでくれ!!」
すると、吊革に掴まっていた人々が男女を問わず小柄で筋肉質のドワーフになっていた。
斧やこん棒を手に、半裸のドワーフ逹が車両の後方に向かって走ってゆく。
そのまま、手にした武器を翼竜に投げつける。
翼竜が怯んだ隙に、どうやら結界が完成したようだ。

「メルン、ラキア。行け!!」
俺の向かい側で不安に見詰め合っていた女子高生が、奴の呟きに反応して立ち上がった。
セーラー服が露出度の高い女性用防具に変わる。素足にサンダルを履き、手には弓矢が握られていた。
メルン、ラキアとなった二人は左右の椅子に上がり、弓を引くと慎重に狙いを定めた。
ブン!!
と矢が放たれた。
白銀の矢は翼竜の羽根の付け根に突き刺さった。
翼竜が叫び、高度を落とす。羽ばたきが止まっていた。
が、今だ仕留めた訳ではない。
翼竜は群がって来るドワーフ逹を片端から払い退けている。
その体力は尽きる事がなさそうだ。
「フィレーネ。お前が止めを差してこい!!」
奴の目が俺を捉える。
(つまり、俺がフィレーネってか?)
俺は無意識のうちに立ち上がっていた。
服が、メルン逹と同じ防具に変わる。勿論、女性用だ。
俺の肉体も女になっていた。胸当てを押しあげるように乳房が盛り上がっていた。
剥き出しの腕は贅肉もなく、細くしなやかだ。(が、筋力は高まっているようだ)
両手に刀が握られていた。俺=フィレーネは軽々と刀を振り回すと、翼竜に向かって走りだしていた。

みるみると翼竜が近付いてくる。
「はあーーーっ!!」
と叫ぶ声は、その姿に似つかわしい美しい女声だった。
俺はジャンプしていた。
それまで俺がいた場所を翼竜の尾が薙ぎ払っていた。
飛び上がっていなければ、まともに一撃を受けていただろう。
そのまま空中で体を反転させる。
俺の目は一瞬たりと翼竜から離れることはなかった。
俺は翼竜の即脇に着地していた。
そのまま刀を水平に旋わす。
翼竜の脚の腱を切り裂いていた。
翼竜はバランスを崩すが振り回される尾の力は衰える事がない。
飛び退き、間合いを取る。
翼竜が俺を睨み付けていた。

翼竜の動きが一瞬止まった。
メルン逹はその時を待っていたかのように第二射を放っていた。
それぞれの矢が翼竜の目玉を貫いていた。

翼竜が咆哮する。

今を逃してはならない。
俺は翼竜の懐に飛び込んだ。
短刀で翼竜の喉を切り裂いた。
激しく血が飛び散る。
翼竜の動きが鈍る。
(心臓の位置は?)
俺の脳裏には翼竜のスケルトンが浮かびあがっていた。
心臓の位置、それを守る胸骨の並び、その隙間の場所が翼竜の胸にマーキングされる。
俺は両手で長剣を構えると、真っ直ぐにマーカーに突き立てていった。

切っ先が翼竜の心臓に届き、突き破った。
刺した場所から、一気に血が噴き出してきた。
俺はその血を盛大に浴びていた。
「俺」の意識は生臭さに閉口していたが「フィレーネ」は翼竜を倒した事を実感し喜びに溢れていた。

(アリエナイ!!)
俺はフィレーネとしての歓喜を圧して心の底から叫んだ。
翼竜が現れるなど、ゲームの世界の話でしかない筈だ。
人々が変身して戦うなど、現実世界にあってはならない!!

 
俺がそう意識したのがきっかけかは定かではないが、目の前に倒れている翼竜の姿が霞んでいった。
と同時に、翼竜に破壊された施設が次々と元通りになってゆく。
遅れまじとドワーフ逹が車両に戻る。
吹き飛ばされた屋根が復元されると、ドワーフ逹は姿を消し、いつもの車内の風景が戻っていた。

!!っ。それを眺めている「俺」はまだ車両の外にいた。
破壊された箇所は修復され、ドアも閉じられている!!
電車は動き始めていた。

俺は線路上に取り残されてしまった。
ファーン!!
と遠くから警笛が近づく。次の電車がやってきていた。
俺は慌てて線路脇に避ける。

ガシャッ!!

耳慣れない音がした。
刀の鞘が線路脇の壁に触れたのだ。
(刀?)
俺の腰には大小二本の刀が差されていた。
(変身が解けていない?)
俺は胸元を覗き込んだ。
そこには、膨らんだ胸と、胸に押しあげられた胸当てがある。
俺は女性用防具をまとった「フィレーネ」の姿のままであった…

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コメント

お気付きと思いますが、本作品は某TVコマーシャルにインスパイアされています。

後日談も考えましたが、キリが良いので今回は非アダルトでUPしました。

アダルトな後日談も呼んでみたいです!

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